126 幼女の噂は純白を添えて
仕方がないのでサインを書いてあげると、オークは大袈裟と思える程に喜んだ。
この流れなら、悪い事しないでって、頼めそうだよね?
と、私は意を決して、オークに話しかける。
「あのね、オークさん。皆が困ってるから、水着とか下着とか盗らないでほしいの」
私が苦笑混じりにそう話すと、オークが本をしまって、私と目を合わせる。
そして少しの間目を合わすと、今度は私を上から下に舐めるように、いやらしい目つきで見てきた。
うぅ。
なんかやだなぁ。
私がその目つきに耐えていると、オークが気持ち悪くニヤッと笑う。
ひぃ。
私は、その笑いに耐えられなくなり後退ると、股間に違和感を感じた。
あれ?
私はいつの間にかオークが手に握っている白い物を見て、顔を青ざめさせながら、確かめるように股間をさわり確信する。
「ぴゃーっ!」
ぱ、パンツ盗られちゃったよ!?
え!?
なんで!?
なんでなのー!?
私がパンツを盗られて慌てていると、オークが楽しげに話し出す。
「デュフフ。昨日は水着を頂いたので、今日はおパンツを頂いたでござる」
「なんて事をするなのよ! これじゃあ、私が幼女先輩のパンツを透視出来ないなのよ!」
「敵ながらやるわね。コンプリートされてしまったわ!」
真剣な顔で何言ってるの2人とも!?
「毎度毎度、パンツばかり脱いで、ご主人も飽きないっすね~」
トンちゃん。
変な言い方止めて?
たしかに、いつもパンツ脱げてるよ。
でも、殆どが私の意志じゃないんだよ?
って、そんな事よりだよ。
パンツ盗られちゃったから、30分以内にパンツ穿かないと、私死んじゃうよね!?
よし。
とりあえず帰ろう。
うん。
それが良いよ!
私は呪いとも言えるこの能力の事を思い出して、及び腰になる。
すると、それを見たオークが愉快そうに笑いだした。
「デュフフフフ。拙者、孔明故、魔性の幼女たんの弱点は、最初から知っていたでござるよ。その少女、純白を纏いて敵を討つ。魔性の幼女たんの噂は有名でござるからな!」
え? 何その噂。
純白を纏いてって、パンツの事?
そんな風に言われているの?
凄く恥ずかしいからやめてほしいのだけど?
「噂に違わぬ純白のおパンツでござる!」
オークが私のパンツを広げて太陽にかざす。
広げるなー!
「流石幼女先輩なのですよ! 知名度がある分、弱点もバレバレなのです!」
いらない。
いらないよこんな知名度。
そもそも私の名前が魔性の幼女になっちゃってるし、しかもパンツの色と一緒に噂になっちゃってるなんて、生き恥晒しまくりだよ。
ただの痴女だよ!
オークがクラーケンに向かって跳躍し、頭の上に乗る。
「これで、拙者達を見逃して、おパンツを穿いて来る選択肢しか無くなったでござるな! 流石拙者頭良い! デュフフフフ」
「何て奴なの!? 今日のパンツは、私が後で美味しく頂く予定だったのに!」
え?
ちょっと待って?
ねえ? リリィ。
今、凄く怖い事言わなかった?
「そんな役にも立たない水の精霊なんて連れてるから、こんな結果を招いたでござる! さあ、行くぞクラーケン氏!」
役にも立たない水の精霊?
クラーケンがオークを乗せたまま、海に潜って行く。
「ごめんだぞ。アタシ、怖くて何も出来なかったんだぞ。……本当に役立たずだぞ」
プリュちゃんが、うるうると目に涙を溜める。
それを見て、私は怒りがこみ上がるのを感じて、静かにトンちゃんに話しかける。
「トンちゃん。私とプリュちゃんについて来て」
「ご、ご主人。落ち着くッス。ボクは水中じゃ呼吸も出来ないッスよ?」
「プリュちゃん。ごめんだけど、頭につけてるシュノーケルゴーグルを、トンちゃんに貸してあげて?」
「い、良いけど、これを付けても、海の中で呼吸なんて出来ないんだぞ」
プリュちゃんがそう言いながら、私にシュノーケルゴーグルを渡してくれた。
「ありがとう。大丈夫だよ。出来るようにするから」
私はそう言って受け取ると、シュノーケルゴーグルの中に、魔法で酸素を吐き出す植物を生み出す。
そして、海水が入らないように、魔法で特殊な膜を作った。
そうして出来上がった特殊仕様のシュノーケルゴーグルを、トンちゃんに渡す。
「流石ご主人ッスね」
「す、凄いんだぞ」
準備が整ったので、私は海に向かって走り出す。
すると、リリィが私を呼び止める。
「待ってジャスミン!」
その声に、私が立ち止まり振り返ると、リリィが不安そうな表情で言葉を続ける。
「悔しいけど、あのオークの言う通り、一度着替えに戻った方が良いと思うの!」
私はリリィの目を見つめて、柔らかく微笑んだ。
「ありがとう! でも、大丈夫だよ。すぐ終わらせて来るから!」
私はそう言うと、リリィに背を向けて再び走り出す。
「ジャスミン……」
逃がさないんだからね!
プリュちゃんをバカにした事、絶対に謝ってもらうんだから!




