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125 幼女は肖像権を発動したい

 天気は雲一つない青空が広がる快晴。

 サンゴ礁が広がり、何処までも続くエメラルドグリーンの綺麗な海の色。

 今日は、絶好の海水浴日和である。

 そんな天気がよく気持ちの良い朝に、綺麗で素敵な海を眺めながら、私は顔を曇らせて浜辺に立っていた。

 私は一緒に浜辺まで来た皆を見る。

 リリィもスミレちゃんもマノンちゃんも、可愛い水着を着ていて、楽しそうにお話をしている。

 ちなみにライリーさんは事件解決後に直ぐ船を出せるように、船の整備をしてくれているので、ここにはいない。

 今ここにいるのは、私と精霊さん3人と、リリィとスミレちゃんとマノンちゃんだ。

 私はリリィ達3人を見た後に、私が身に着けている水着を見た。


 これで、本当に大丈夫かなぁ?


 私は、自分が身に着けている水着を引っ張りながら、頭を悩ます。


 うーん。

 やっぱり上着も着てきた方が、良かったような……。


 私が何をそんなに頭を悩ませているのかと言うと、これには理由があった。

 今日、オークとクラーケンが悪さをしないように懲らしめる事になった私は、オークの能力の対策をしてきたのだ。

 でもそれは、リリィとスミレちゃんの勧めで、短パンとビキニとパンツだけと言うなんとも心許ない装備になってしまった。

 と言うか、可愛い可愛いと、もてはやされて気分がのった私が、そのままで来てしまっただけなのだけど。


 これだと、水着とパンツ盗られちゃうと、残るのが短パンだけなんだよね。

 馬鹿だなぁ私。

 なんで、こんな危険な格好にのせられちゃったんだろう?


 私がそんな風に頭を悩ませていると、頭上のラテちゃんが大きなあくびをして口を開いた。


「プリュイ、後の事は任せたです。ラテは限界なので、その辺で寝てるです」


「わ、わかったぞ」


 ラテちゃんは流石に朝はオネムなんだね。


 私が苦笑していると、ラテちゃんはフワフワと宙に浮かび、スミレちゃんのおっぱいの谷間へと入っていく。


「ジャスの頭の上には敵わないけど、中々の寝心地です」


 え?

 私の頭の上って、おっぱいより良いの?


「ラテちゃんにそう言ってもらえるなんて、光栄なのよ」


 スミレちゃんが嬉しそうに顔をニコニコとさせると、それを見ていたマノンちゃんが、自分の胸を見て顔を暗くした。


 マノンちゃんって、おっぱいにコンプレックスがあるのかな?


「ドゥーウィンはジャスミンと一緒に海に潜るの?」


「うーん。ボクもご主人と一緒に行きたい所ッスけど、海の中じゃ足手まといになるッスからね~」


「ドゥーウィンの分も、アタシが頑張るんだぞ」


「そうッスね。ここはプリュに任せるッス」


「ジャスミンの事、よろしく頼むわね」


 リリィがプリュちゃんに微笑むと、プリュちゃんは顔が強張りながらも微笑んだ。


 プリュちゃん、随分とリリィの事を怖がってるなぁ。

 うーん。

 2人には仲良くなってほしいんだけど……。


 と、私が考えていると、突然海から勢いよく水柱があがった。

 そしてそこから、オークとクラーケンが現れる。


「誰かと思えば、昨日の美幼女達でござったか。デュフフ。クラーケン氏、これは一世一代の大チャンスでござる」


「もたもたしてたから、見つかっちゃったッスね」


「う、うん」


 オークとクラーケンが現れると、スミレちゃんの後ろにマノンちゃんが隠れる。

 スミレちゃんは、ラテちゃんとマノンちゃんを護るように、2人をオーク達から隠すように立つ。


「そこの美幼女! お主の事は、調べさせてもらったでござる!」


 オークは大声を上げると、睨むようにして私を見る。

 そして、クラーケンの上から飛び降りて、浜辺に着地した。


「チャンスね」


 オークが浜辺に立つと、リリィがそう言って、オーク目掛けて走り出す。


「リリィ!?」


 私が呼びかけるも、リリィは止まらない。

 そしてオークに接近して拳を振り上げたその時、リリィは金縛りにあったかのように、ピタッと止まってしまった。


 リリィ?


 私が訝しんで見ると、オークがリリィの目の前に、何かを見せるように掲げていた。


 なんだろう?

 まさか、対象者を身動き出来なくする的な、そういう類の物なのかも!?

 もしそうだったら、リリィが危ない!


 私が直ぐにリリィを助けようと、魔力を集中して魔法を使おうとしたその時、リリィがオークの持つ何かに飛びついた。


「何よこれ!? アンタ! これが何か説明しなさいよ!?」


 え?

 リリィ?


「デュフフフフ。これは、拙者の愛読書、ツルっとパイけつ魔女っ娘ジャスたんの一巻ですぞ」


 ツルっと、なんだって?

 今、もの凄く頭の悪そうな単語が飛び出さなかった?


「この主人公の女の子は、そこにいる美幼女、魔性の幼女たんがモデルになっているのでござる」


 え? 何それ?

 そんなの、私聞いてない。

 て言うか、魔性の幼女で私の事が知れ渡ってるの?

 いったいどこまで広まってるんだろう?

 私、なんだかもう、諦めがついてきたよ。


「拙者の兄者が、そこにいる神からご教授を頂いて、生まれた神書でござる」


 兄者?

 神?

 ……あ。

 私、わかりたくないけどわかっちゃったかも。

 兄者って、あのオークの事だよね?

 神がスミレちゃんで……。

 神書って、薄い本の事じゃん!

 なんでこんな事になってるの!?

 肖像権! 肖像権がこの世界にも必要だよ!


「あの時のオークも、随分立派になったなのよ」


 スミレちゃんが海に向かって遠い目を向けると、うんうんと頷いた。


 スミレちゃんが感賞してる……。

 うーん。

 どうしよう?

 なんかもう、私、凄くどうでも良くなってきちゃったよ。


「さあさあさあ! 魔性の幼女たん! この本に、サインを書いて下され!」


 私は嫌気がさして、ため息を一つする。


 本当にどうしよう?

 サイン書いてあげたら、もう事件解決で良いかな?

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