124 幼女の親友はちょろい
ライリーさんとマノンちゃんのお家に到着すると、私はリリィと一緒にお風呂を借りる事になった。
スミレちゃんが羨ましそうにしていたのだけど、3人で入れるほど広いお風呂では無かったので、我慢してもらう。
そうして、私はリリィと背中の流し合いっこをして、一緒に湯船に浸かった。
やっぱり、お風呂は気持ちが良いなぁ。
今日の疲れがとれていくよぉ。
湯船に浸かりながら、私が気持ちよさそうにしていると、リリィが私の顔を見てクスリと笑う。
「ジャスミンって、本当に気持ちよさそうに、お風呂に入るわよね」
「えへへ~。そうかも~」
お風呂は前世でも好きな方だったし、確かにそうなのかも。
だって、温かくて気持ちいいんだもん。
って、あ。
そうだ。
リリィに報告しないとだよね。
「リリィ、そう言えばなんだけどね」
「なあに?」
「私、寿命が縮まってるみたいなんだよね」
「え?」
リリィが驚いて目が見開いた。
「ど、どどど、どういう事なの!? ジャスミン」
「あはは。実はね……」
私は顔を真っ青にさせたリリィに、シェルアイランドで知った事を話した。
すると、全ての話を聞いたリリィが、わなわなと体を震わせる。
「り、リリィ? 大丈夫?」
「え、ええ。大丈夫よ。私なんかより、ジャスミンの方が……」
「私は大丈夫だよ。全然平気。不老不死を目指す理由が、一つ増えただけだもん」
私が笑顔で話すと、リリィが力無く微笑んだ。
「そうね」
リリィはそう返事をすると、私を抱き寄せる。
「わっ」
リリィ?
震えてる……。
私はリリィが震えていたので、優しく頭を撫でてあげ……ようとしたのだけど、気がついてしまう。
あれ?
なんか鼻息荒くない?
「あのぉ、リリィ?」
「なあに? ジャスミン」
「鼻息荒いよ? 大丈夫?」
「うふふ。心配しないで? ジャスミンのスベスベ柔らかお肌を、舐め回したくなる気持ちを我慢して、堪能しているだけよ」
「なあんだ。なら安心……っじゃないよ!」
へ、変態だー!
もう完全に思考が変態のそれだよリリィ!
私は必死になって、リリィを体から離そうとするが、流石リリィ。
私の非力な腕力では押し剥がせない。
「はーなーしーてーっ!?」
「待って!? こんな時の為に、ほら。ちゃんと、ジャスミンのパンツは用意してあるのよ?」
リリィが何処からともなく、私のパンツを取りだす。
「なんで持ってるの!?」
「うふふ。そんな些細な事は、今はどうでもいいじゃない。後一時間だけ、このままでいさせて?」
「長いよ! って、リリィ鼻血! 鼻血出てるから!」
「やだわ、私ったら。でも、これ位なら大丈夫よ」
「大丈夫じゃないよ! もう、なんか色んな意味で大丈夫じゃないから!」
そんなこんなで、私は暫らくの間、リリィを体から離すのに苦戦しました。
◇
お風呂から上がると、私はライリーさんにキッチンを借りて、パンケーキを焼き始める。
それからパンケーキが焼き終わると、トッピングに生クリームやフルーツを添えて、リリィと一緒にパンケーキをお部屋まで運んだ。
「待ってたです!」
「あはは。お待たせー」
お部屋に着くと、ラテちゃんが目をキラキラと輝かせて、ベッドをパンパンと叩く。
「待ちかねたッスよ~。まったく、ご主人はお風呂が長――むぐ!」
くるんと宙を舞ってやって来たトンちゃんの口を、リリィが指でつまむ。
「ドゥーウィン。アンタ、契約について、他に喋ってない事は無いでしょうね?」
怖っ!
あわわわわわわ。
リリィが凄く怖い顔になってる!
「リリィ、やめてあげて? トンちゃんが可哀想だよ」
私が止めに入ると、リリィが不満そうに顔を顰めて、トンちゃんを離した。
「ジャスミンの優しさに感謝する事ね」
トンちゃんはしょんぼりと涙目になって、私を見た。
「ご主人。ありがとうッス」
「あ、あはは」
「で? 寿命の件は聞いたわ。他に何か隠している事はあるの?」
「無いッス。言わなくて、ごめんなさいッス」
「なら良いわ。当の本人のジャスミンが、アンタを責めないのに、契約と関係の無い私がこれ以上言っても仕方がないもの」
リリィはそう言うと椅子に腰かけて、一連の流れを無視して、美味しそうにパンケーキを食べているラテちゃんを見た。
「ラテ、アナタは何で、ジャスミンに寿命の事を言わなかったの? ドゥーウィンが喋っていない事は、知っていたのでしょう?」
今度はラテちゃんに白羽の矢が!
リリィってラテちゃんには優しいから、トンちゃんだけに言うと思ってたよ。
なんだか心配になってきたなぁ。
私が心配で顔を青ざめさせていると、ラテちゃんはリリィに目を向ける事なく、美味しそうにパンケーキを食べながら答える。
「ジャスは不老不死になる子だから、そんな関係のない事は言う必要が無いです」
ラテちゃんの言葉を聞いたリリィが、まるで虚をつかれたように、口を開けて驚いた。
「それともリリィは、ジャスが不老不死になれないと思ったです?」
リリィはラテちゃんに逆にそう訊ねられて、数秒固まるとクスクスと笑い出した。
「うふふ。そうね。ラテ、アナタの言う通りだわ」
私はその2人の様子を見て、ホッと胸をなで下ろす。
良かったぁ。
ラテちゃんがボソッと、ちょろいですって言ったような気がするけど、きっと気のせいだよね。
うんうん。
気のせい気のせい。
と、私が考えていると、今までその様子を黙って見ていた2人が騒ぎ出した。
「やっぱり、リリさんは怖いんだぞ」
「幼女先輩! 寿命の件って何なのですか!?」
あはは。
まあ、こうなっちゃうよね。
私は苦笑して、怯えるプリュちゃんを落ち着かせながら、スミレちゃんに説明をする。
残念ながら、プリュちゃんは怯えすぎて、パンケーキが喉を通りませんでした。




