表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
123/288

123 幼女は今日の寝床を確保する

 プリュちゃんとの契約を無事に成し遂げた私は、島に来た時と同じように、ライリーさんの船に乗って港町まで戻って来た。

 港町まで戻って来ると、リリィとスミレちゃんが待っていてくれて、手を振って迎えてくれた。


「お帰りなさい。ジャスミン」


「幼女先輩、お帰りなさいなのですよ」


「うん。ただいま。リリィ、スミレちゃん」


 私が船を下りて、3人でキャッキャッとはしゃいでいると、それを見ていたライリーさんが「船を停めて来ます」と言って、船を元あった場所に停めに行った。

 私がライリーさんを見送っていると、リリィがプリュちゃんをジィッと見つめて、ニコッと笑う。


「この子が水の精霊?」


「うん。プリュイ=ターウオちゃんだよ」


「プリュね。よろしく」


「よ、よろしくだぞ」


 プリュちゃんが若干怯えながら挨拶すると、トンちゃんがくるりと宙を舞って、プリュちゃんの横に並ぶ。


「契約をして、ご主人の記憶を見たんだから、ハニーが誰だかわかるッスよね?」


「わ、わかってるぞ」


「だったら、何で怯えてるッスか?」


「だって……」


 プリュちゃんがリリィを見つめる。

 そして、私をギュッと掴んで、涙目になる。


「だって、リリさんは変人なんだぞ」


 プリュちゃんの言葉に、トンちゃんが笑いを堪えて、ラテちゃんまでもが失笑して、スミレちゃんはうんうんと頷く。

 変人と言われた当の本人のリリィは、不思議そうな顔をして、首を傾げる。

 そして、口に手を当てて、可笑しそうに笑った。


「うふふ。変人なんて、初めて言われたわ。アナタには、そう見えてしまったのね」


 え?

 嘘でしょう? リリィ。

 気がついてなかったの!?

 そう見えてしまったって言うか、どっからどう見ても変人そのものだよ?

 プリュちゃんの言った事は、まぎれもなく真実だよ?


「でも安心て良いわよ? 私は変人ではないもの」


 プリュちゃんが心配そうにリリィを見る。

 すると、リリィはプリュちゃんに柔らかく微笑んだ。


「変人って変な人の事でしょう? 私は変な人では無いもの。でもそうね、あえて言うなら……」


 そう言うと、リリィは左上に目線を向けて考えて、直ぐにプリュちゃんに目線を合わせる。


「変態かしら?」


 いや、それもう一緒だよ!?

 変人と、そんなに変わらないよ!

 ううん。

 それどころか、むしろ悪化してる。

 私の中のイメージの問題かもだけど、変人より変態の方がやばい人って感じがするよ?

 うーん。

 でも、実際にリリィって変態だから、合ってはいるよね。


 プリュちゃんがリリィの言葉を聞いて、更に怯えだす。


 うぅ。

 なんて可哀想なのプリュちゃん。

 リリィがおバカな事を言い出すから、よけいに怯えてプルプルしてるよ。

 可愛いけど可哀想だよ。


「リリィ、プリュちゃんをイジメたら、可哀想なのよ」


 そう言って、スミレちゃんが何故かドヤ顔で、プリュちゃんを撫でる。


「別にイジメてないわよ」


「リリィは存在がイジメなのよ」


「スミレ、アンタ私に喧嘩売ってる?」


 そう言ってリリィがスミレちゃんを睨みつけると、スミレちゃんは涙目になった。


「ご、ごめんなさいなのよ! 新人にかっこいい所を、見せたかっただけなのよ」


 むしろかっこ悪いよスミレちゃん。

 9歳の女の子に睨まれて、怯える大人ってどうなの?

 残念な人にしか見えないよ?


「どうせそんな事だろうと思ったわ」


 2人の会話を聞いていたプリュちゃんが、スミレちゃんをじっと見た。


「スミレさん。よろしくだぞ」


「よろしくなのよ」


 なんとなくだけど、プリュちゃんがスミレちゃんに、親しげに声をかけたように見えた。

 それを見たラテちゃんが、ぼそりと呟く。


「プリュイがスミレを、ポンコツ仲間として認識したみたいです」


「もう。ラテちゃん、変な事言わないでよ」


 ラテちゃんも、たまに失礼な事言うよね。

 ポンコツは、スミレちゃんだけだもん。 


 私達がお喋りしていると、ライリーさんとマノンちゃんがやって来た。

 どうやら、船を元の場所に戻しに行った後に、迎えに来たマノンちゃんに会ったようだ。

 私がマノンちゃんと、ただいまとおかえりのやり取りをしていると、ライリーさんが私に話しかけてきた。


「魔性の幼女さん、今日はもう遅いですから、私の家で泊まっていって下さい」


 たしか、まだ今日泊まる所って、決めて無かったよね?

 うん。凄く助かるかも。


「お言葉に甘えちゃおうかな」


「是非そうして下さい。魔性の幼女さんを家に泊めたって、町の連中に自慢出来るってもんですよ」


 ライリーさんはそう言うと、気分良さげに大口を開けて笑い出す。

 すると、マノンちゃんがライリーさんを睨みつけた。


「ちょっとお父ちゃん。恥ずかしい事言わないでよ」


 私はそれを苦笑しながら見て、大事な事を思い出す。


「あ。そうだ。キッチンを借りていいかな?」


「ああ。もちろん構いませんよ」


「やった。ありがとー」


 良かったぁ。

 ちゃんとした所じゃないと、パンケーキも作るの大変だもんね。

 よーし。

 プリュちゃんに美味しいパンケーキをご馳走しよう!


 そんなわけで、私達はライリーさんとマノンちゃんの後に続いて、2人のお家に向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ