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101 幼女は泣き虫さんに同情する

 私は心を落ち着かせる為に、一つ、深呼吸をした。


 しっかりしろ私。

 ボーっとしてちゃダメだよ!

 大木が突然出て来たのは、サルガタナスの透過の能力だったんだ。

 それにしても、サルガタナスがまた出てくるなんて……って、そうだ!

 スミレちゃんは!?


 私はハッとなって、地面に横たわっているスミレちゃんを見る。


「スミレちゃん!」


「だ、大丈夫なのですよ。幼女先輩。けほっけほっ」


 良かった。

 無事だった。


 スミレちゃんが起き上がると、ルピナスちゃんが背中を優しく撫でる。


「油断したわね。まさか、エロピエロが、村の近くまで来ていたなんて」


「うん。どうしよう?」


「そうね。このままじゃ、村の皆が追い剥ぎにあってしまうわ」


 そっちじゃないよ!


 私は思わずガクッと足のバランスを崩して、こけそうになった。


 ねえ、リリィ?

 今、凄くシリアスな感じだったんだよ?

 なんでボケたの?

 あ。

 この顔、ボケてない。

 素の顔だよ。

 だって、もの凄く真剣な顔してるんだもん。


「やはり、ご主人の能力は変態を……」


 う。

 忘れていた事を……あ。

 そうだ。

 そう言えばだよ。


「トンちゃん。さっき、私が魔法を使えなかったのって、なんでなの?」


 さっき魔法を使おうとした時に、止めようとしてたって事は、何か知ってるって事だよね?


 トンちゃんが私の目の前に来る。


「簡単に説明すると、精霊の加護を受けた者は、精霊が扱う以外の属性が殆ど使えなくなるッスよ」


「殆ど?」


「そうッス。下位の簡単な魔法なら使えるッス。でも今回の様な上位の魔法、氷の魔法なんて、使えるわけがないッスよ」


「そ、そうだったんだ」


「と言っても、精霊と契約すれば、風なら上位の『嵐』か『雷』を、土なら『重力』か『生物』の魔法を使える様になるから、問題ないッスけどね」


 トンちゃんが説明をしながら、私の周囲をくるっと回る。


「上位魔法は色々と理由があって、って、まあ、それは良いッスね。とにかく、ご主人は能力があるから、風と土なら全部使えるッスよ」


 そう言う大事な事は、先に言ってほしかったよ。

 それなら、水の魔法はいつもみたいに、飲み水を用意する時とかにしか使えないね。

 ……あれ?

 実はあまり困らない?

 それに、今の私って、雷とかも操れちゃうんだ!?

 それってかなり凄いよね?

 でも、生物って何だろう?

 動物の声が聞こえるのは、これのおかげなのかな?


 などと私は呑気に考える。


「幼女先輩。結構、厄介なものを、食らってしまったみたいなのですよ」


 厄介なもの?

 どういう事だろう?


 私が首を傾げると、スミレちゃんはケホケホと咳をして言葉を続ける。


「さっきの煙で、嗅覚をやられたみたいなのです」


「え!?」


 嗅覚をやられた!?

 それって、スミレちゃんの変態的特技が、封印されちゃったって事だよね!?


「考えたわね。今思い返せば、フルーレティの銭湯に侵入した時も、スミレの嗅覚が使えなくなっていたわよね」


 そう言えばそうだっけ?

 私、すっかり忘れちゃってたよ。


「きっとアレの応用ね。まさか、完全に使えなくしてくるとは、思いもよらなかったわ」


「幼女先輩。面目無いなのですよ」


「ううん。無事だったんだから、それだけで良かったよ」


「幼女先輩~」


 スミレちゃんが泣きながら私を抱きしめる。

 相変わらず凄いおっぱいだ。


「それはそうと、本当に困った事になったわね。完全に敵を見失ったわ」


「うん。そうだよね」


 私とリリィが2人で頭を悩ませていると、ルピナスちゃんが私の肩をちょんちょんとつついた。


「近くにいるみたいだよ」


「え? わかるの?」


「うん。 さっきのピエロのお兄さんの声は聞こえないけど、アスモデちゃんの声は聞こえるよ」


 流石ルピナスちゃん!

 天使可愛いだけの事はあるよ!


「ルピナスちゃん偉い!」


 私はルピナスちゃんを、ぎゅうっと抱きしめる。

 すると、ルピナスちゃんは嬉しそうに、ぎゅうっと抱きしめ返してくれた。


「流石けもっ子ッス。どこぞやの使えないおっぱい女とは、大違いッス」


「そうね。流石はルピナスちゃんだわ。使えないおっぱいとは大違いね」


「2人とも辛辣しんらつすぎて酷いなのよ~」


 あらら。

 しゃがんで泣いちゃったよスミレちゃん。


「え!? ちょっと! 泣く事ないじゃない! ごめん。ごめんってば」


 わあ。

 珍しい。

 リリィが焦ってる。


「おっぱい女はポンコツッスからね~」


 こらこら。

 追い打ちをかけないで? トンちゃん。

 って言うか、トンちゃんは本当にブレないなぁ。

 逆に凄いよね。

 

 私は、しゃがんで未だに泣き続けるスミレちゃんを見る。


 におい嗅ぐの好きみたいだし、かなりショックが大きいだろうなぁ。

 ……ちょっと可哀想かも。


 そう思った私は、スミレちゃんに近づいて、頭を撫でてあげた。

 すると、ルピナスちゃんもやって来て、2人でスミレちゃんをいい子いい子してあげました。

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