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第01話:お前との婚約は破棄させてもらう!

悪役令嬢が活躍するアクションものです。

ゾンビなら斬っても斬っても問題ないですからね。

「アレサンドラ、貴様との婚約は破棄させてもらう!」


唐突なジャン王子の宣言は、平凡な第17回王立学園の卒業パーティーを一瞬で王国の政治を左右する舞台に変貌させた。


学生時代最後の思い出に、と精一杯着飾り、思い思いの談話を楽しんでいた卒業生達は、突然の婚約破棄宣言に動揺しているはずのアレサンドラへと、多少の同情と下種な好奇心のこもった多数の視線を豪奢な金髪と赤いドレスをまとった女生徒に集中させる。


名指しで弾劾されたアレサンドラは、王国でも有数の豊かな穀倉地帯を誇るクレモント侯爵家の令嬢。

王国の有力者をつなぎ止めるため、幼少期からの婚約者であることは王国社交界では広く知られた事実である。


それが、突然の婚約破棄宣言。しかも王立学園卒業式という、ハレの日の衆人環視の中での暴挙に及ばれたのだ。

誇り高きアレサンドラ女史が、どう反駁するのか。


周囲の学生達は固唾を飲んで、予想される激烈なアレサンドラの反応を見守るしかなかった。


一方で、当のアレサンドラ女史は、と言えば、いささかも動揺していなかったりする。


(やりやがったわね、あの女狐・・・!!)


その代わり心中に渦巻くのは天をも焼き焦がさんとする怒り。


アレサンドラに女狐呼ばわりされているのは、王子の傍らに寄り添うほっそりとした印象の強い白いドレスと紫紺の編み上げた髪が印象的な女生徒。

奥歯も砕けよとばかりの歯ぎしりを扇で隠し、アレサンドラはジャン王子を穏やかに叱責する。


「ふふっ。ジャン王子、あなたは魔物に騙されているのです。そこの白い女狐に」


「彼女は!ソフィーはそんなことはしない!」


「そんな、ひどい・・・」


名指しをうけた女生徒は、よろめいて王子にもたれかかり、王子はそれを嬉しそうに支える。

あんな見え見えの演技に引っかかるのだから、男というのは度し難い。


男爵家の出でしかないソフィーが、学園という建前としては全ての学生が平等な場所と女の武器を利用し周囲の純情な男子学生達を操っていたのはわかっていた。


彼女の周囲には常に多くの良家の男子学生達が集まり、侮れない政治力を持ち出していたのだが「しょせんは学生時代だけのこと」と見逃していたのはアレサンドラらしくもない失策だった。


まさか、学生という身分が失われるこの土壇場で仕掛けてくるとは!!


「失言は許してさし上げますわ、ジャン王子」


「こ、ことわる!」


裏返った声と、オドオドと逸らされた視線にアレサンドラは己の心が冷えていくのを感じた。


(あんな男との婚約が嬉しくて眠れなかった日もあったのよね)


これ以上の問題解決には政治的な決着が必要となる。

登城しているはずの父に相談しよう、と身を翻したアレサンドラの前に王子の取り巻き達が立ちはだかった。


「・・・通してくださる?」


「い、行かせるな!行かせてはならん!」


外部との接触を断つ方策か、と視線をはしらせれば、ただ一つの出入り口が今まさに施錠されるところだった。


(あの女狐、小癪な悪知恵がまわるわね)


ソフィーの権力が通じるのは学園という幻想の檻が続く間だけ。外気に触れれば、男爵風情の権力は侯爵家の前に吹き飛んでしまう。


(卒業パーティーの間に、どうにかして婚約破棄を既成事実にしよう、というわけね)


アレサンドラとソフィーの間に、不可視の火花が飛び散る。


無言で交わされる刃が緊張感をはらみ、それに耐えられなくなったのか元から顔色の悪かった男子学生が、どうっ、と音を立てて倒れた。

大神官の息子が、介抱するために慌てて倒れた学生に駆け寄った。


それにしても男子学生の顔色は悪い。青いを通り越して土気色に見える。


(まるで死人だわ)


周囲の視線は、そんな小さな騒動は意識の外に置いて、アレサンドラ女史が次に何を言うのか、に視線と神経を集中させていた。


だから、その光景を見たのはアレサンドラ、ただ一人だったに違いない。


倒れていた男子学生が、無造作に大神官の息子の喉を食いちぎったのだ。


ひゅごっ、と声にならない悲鳴をあげて大神官の息子は絶息し、首筋から壊れた噴水のようにぴゅーっ、と鮮やかな血が吹き上がった。


(あれじゃ即死ね。顔だけは良かったのに。もったいない)


その非現実的な光景に、アレサンドラは埒もない感想を抱いた。


後世に言う「死者達の夜祭り」ゾンビ・パーティー・ナイトの始まりであった。

だだっと駆け抜けるつもりなので、感想と応援をお願いします

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