7.覚醒
勢いで乗り切ります
「花は大量のガーゼと火傷薬を全部持って来い!薬に必要な薬草も全部だ!向こうで調合しながら使う!」
クラースは手術道具が入ったカバンを持ち、鍛冶屋の旦那と先に走って行った。
花は急いで言われたものをカバンに詰め込み全力疾走で後を追う。
ー火傷薬、必要な薬草を覚えておいて良かった!
診療所から歩いて二十分くらい掛かる距離を全力で走っているせいで脇腹が痛い。でもここでスピードを緩めて後悔する結果にはなりたくはない。鍛冶屋に着くと裏口には人だかりが出来ていた。
「すみません!通して下さい!」
人を掻き分け中に入ると、大量の湯を持ってこい!タオル全部かき集めてこい!と声が飛び交っていた。
クラースを見つけ駆け寄る。
「遅い!!何やってた!」
「すみません!」
「いいか花!今から俺のいう通りに薬を調合しろ!俺は手が離せん!」
「は、はい!」
最近少しずつ簡単な調合を任されていたが、火傷薬は初めてだ。
花はクラースの指示通り調合を始める。
その間も関係者が忙しなく走り、協力してくれている。
「花!その薬を作ったらこっちを手伝え!」
「はい!」
火傷を負った生々しい背中が目に入る。
一瞬、息が止まる、がすぐに座りクラースの指示で薬を塗っていく。
と、その時。
「お前達っ!何をしている!今すぐその穢らわしい行為をやめろ!!」
ーこんな時に何!?
この緊急時に医療行為をやめろなどと正気ではない。すると七、八人の憲兵が近付いてくる。
「おい!やめろと言ってるだろ!こいつらを罪人として連れて行け!」
しかし凄い形相で憲兵を睨みつけたクラースも怒鳴り声を上げる。
「神頼みで傷が治るわけないだろうが!黙って見ていろ!!」
「もう少しで治療が終わるんです!話は後で聞きますから!」
「黙れ罪人!!連れて行け!」
治療がまだ終わっていないのにクラースが憲兵に引き剥がされる。
「ふざけるな!離せ!こいつを見捨てる気か!」
「祈りを捧げれば治る!」
ーどうしよう、このままではきっと助からない。もうすぐ、あと少しで治療が終わるのに。
神頼みで治る、と言い切る憲兵に花は苛立ちを覚える。
何を根拠にそういうのか、風習とは怖い。
そして花にも憲兵の手がかかり引き離される。
「待って!やめて!この人を助けたいの!」
「黙れ罪人!!」
「いやあぁっ!!!」
憲兵が花を持ち上げようとした時。
花の足元に魔方陣が浮かび眩い光を放った。
「「「!!?」」」
あまりの眩しさに、その場の全員が目を瞑る。時間にして三秒もなかったが、光が落ち着くと目の前には信じられない光景が待っていた。
重症の火傷が完治していたのだ。
急ぎ過ぎたかなぁ…でも書きたいものがまだまだ先。