6.シルムヴァート
言語力がないから書きたいように書けません…。
進まない…進みたいけど進まない!
診療所に就職してから早一ヶ月。
今日も大量の薬草と絶賛睨めっこ中だ。
入荷した薬草にはタグがついているので名前が分かる、そこまではいい。
その薬草を仕舞う引き出しが厄介なのだ。
「クミン…クミン…ク…ク……ク…どこなのよ引き出し!!」
叫ばずにいられない。
引き出しを眺めて既に十分が経過しているのだから。一つを仕舞うのにこうも時間が掛かっては終わりが見えない。
「何か…いい方法はないかしら…これじゃあ今日中になんて終わらない…」
調合時に使用するテーブルに置いた、入荷したばかりの薬草達に目を移す。
この何千とある薬草を調合し薬を作るクラースはきっと凄腕の医者なのだろう。
そもそも神頼みのこの国でこれほどの知識をどこで得たのか。
「おい、昼休憩だ。一旦休診にするぞ」
「はーい、すぐ行きまーす」
いつのまにか時刻は昼時だ。
何も進んでないこの状況を見て見ぬ振りをし昼食を取るため裏手の家に帰る。
「クラースさん、ザックさんからこちらの薬草を預かりました」
家に入ると昼食の準備を始めているクラースへ紙袋を渡す。
「やっと届いたか」
「あの、その薬草って珍しいんですか?」
「あー…」
クラースが迷っている。これは珍しい光景だ。
「順を追って話すからまずは飯の準備するぞ」
どうやら教えてくれるらしいので、昼食の準備を手伝う。
今日の昼食はパンに薬草スープ。
クラースに身体の管理は日頃から、と薬草スープを毎日飲んでいるのだが、そのおかげで花は冷え性が改善した。
はじめは苦いだけで美味しくない薬草スープが苦手だったが、アレンジをきかせカレー風味にしたり、トマトベースにしたりと今では薬草スープは花が担当している。
私頑張ったわ!と美味しい薬草スープを飲んでいるとクラースが話し始めた。
「まず、アルメリア帝国は知っているな?」
「はい。アルメリア帝国の王都がここアルメリアですよね?」
「そうだ。アルメリア帝国は五ヶ国の国で成り立っている。そしてアルメリア帝国には基本人間だけが住んでいる。以前話したが神が信仰の対象となっていて、何かあれば神頼みだ」
初め花は、本当に神様がいるのでは?と考えていた。なんたってここは異世界で魔法が存在するとってもファンタジーな世界だから。
しかしこの一ヶ月で、それは作られた神様で神頼みしても何も効果がないと分かっている。
「そしてもう一つ大きな国がある。それが『シルムヴァート』だ。シルムヴァートには魔族や獣人、精霊に妖精など多種多様な種族が暮らしているが、一番長寿とされる魔族が国の中心を担っている」
ー今なんて言いました?胸が踊るような単語が並んでましたよ?
「この二カ国は不可侵条約を結んでいるが、アルメリアの国王と貴族達は何度もシルムヴァートに戦争をふっかけてる。こちらは魔法を扱える者が圧倒的に少ないから負けるなんて分かってるのに何度もだ」
「シルムヴァートは強いんですか?」
「格が違う。そもそも魔族は全員魔法が使えるし、獣人なんて身体能力が高いから魔法なしでも恐ろしく強い。さらに精霊は自然界の力を借りる事が出来るからなんでもありだ」
「じゃあなんで…アルメリアの王様は負けると分かっていて戦争なんてするんでしょうか?」
「魔族が自分達の領土を狙ってると思い込んでるんだ。だからシルムヴァートを滅ぼすまで戦争をふっかける。向こうが手加減してるとも知らずに次は勝てると思ってな」
初めて聞かされる内容に驚きながらも頭の中で整理する。
「ちなみにザックから取り寄せてるさっきの薬草はシルムヴァートで採れたものだ。アルメリアにはない薬草が数え切れない程あるし、効き目が段違いなんだよ」
「シルムヴァート…凄く…気になってきました」
「あ、間違ってもシルムヴァートには行くなよ。向こうは人間が大嫌いだからな」
「まあ…不可侵条約を何度も破る人間を信用しろって方が無理ですよね」
シルムヴァートは人間と関わりたくない為不可侵条約を結んでいる。
人間が何もしなければお互い平和そのものなのに、国王は何度も戦争をふっかけその度多くの犠牲者を出しているのだ。
ー国のトップがそれじゃあ先が思いやられるな。
食事を終え一服していると、外からバタバタと足音が近づいてくる。
何事だと二人は窓の外を見ると、ご贔屓にしている鍛冶屋の旦那が慌てた様子でこちらへ走ってくるではないか。
クラースが玄関を開けどうした、と声を掛ければ先生助けてくれ!とクラースにしがみ付いてきた。
ー息子がっ、誤って背中に大火傷を負っちまった!皮膚がただれて意識もねぇんだ!頼む!大事な跡取りだ、助けてくれ!!
頑固で厳しいと有名な鍛冶屋の旦那が、涙を流して助けを求めてきた。
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