5.薬草
短くてすみません。
書けたものから少しずつアップしてます。
診療所に着くと改めて建物内を説明される。
クラースが主に居る診察スペースを始め、少し狭い待合室や処置室などあるが、一番大きな部屋は奥の部屋だった。
「この部屋は薬草を保管している。お前にはここの管理を任せる」
「これ…全部薬草ですか?」
天井の高い部屋の壁には、十センチ角の引き出しがびっしりと並んでいる。
ーあ、これ数えたらいけないやつだ。
「管理するからには何がどの場所にあるのかは勿論、薬草全て覚えろ」
「全部!?」
「当たり前だ。入荷日はちょうど今日だからもうすぐ裏口に薬草が…あぁ、今届いたな。全て検品後棚にしまうように。間違えるなよ」
そういってクラースは診察室へ姿を消した。
これは大変な事になったと少し後悔しつつ花は急いで裏口へまわる。
船で運ばれてきた大量の薬草を一つ一つ検品していくうちに気付いたのだが、どうやらこの世界の薬草は中国でいう漢方や、インドのスパイス、ハーブなどであるという事。
実際聞いた事があるものや身近な飲み物だったものまで様々だ。
そうは言ってもこの膨大なな数からして知っているのはほんの一握りだろうが…。
船乗り配達員が荷物を降ろしながら声を掛けてきた。
「なあアンタ、新しい人だよな?ここで働くのか?」
「はい、今日から働く事になった花と言います」
「そっかそっか!俺はザックだ、宜しく。ところでクラースさんいるか?」
と、診察室のドアが開く。
「おいザックうるさいぞ」
「クラースさんおはよう!例のシルムヴァートの薬草持ってきたよ!」
「声が大きい!誰かに聞かれたらどうするんだ!ったく…」
そんなやり取りをしながらザックがクラースに紙袋を渡す。
ーシルムヴァートってなんだろう?
初めて聞く単語に花は興味津々で紙袋の中身を確認するべく二人に近付いてきた。
「そういやクラースさん、新しい人入ったんだな!こんな美人どこで見つけてきたんだか…しかもこの仕事を手伝ってくれるなんて珍しい」
「そいつは召喚者だ。属性無しで職探しに困ってたからうちで雇ったまでだ」
そう話しながらザックが花を見る。
花は昨日の凝ったヘアスタイルではくなく、艶やかな胸下まである黒髪ロングをアップにまとめあげている。元々顔立ちはハッキリとしているので化粧をしなくても十分綺麗だ。さらには肌も白いので、上の中…いわゆる美人の類に入る。
「属性無しは大変って聞くからなぁ…ま、なんかあったら言ってくれよ、力になるぜ」
「ありがとうございます。ザックさんは何の属性なんですか?」
「俺は水属性さ!この仕事にぴったりだろ!」
そう言って裏口に停めてある船を指差す。
「じゃあ俺もう行くな!今後とも宜しくお願いしまーす!」
元気に去って行くザックを見送り、クラースは診察室へ、花は入荷した薬草を引き出しへしまう為奥の部屋に戻っていった。
花だったらきっと全ての薬草覚えられるさ!