4.属性
進まない。
スマホで書いてるからより進まない。
ふと、目が覚めた。
まだ日が昇らず辺りは暗い。
そっとカーテンを開けて窓の外を覗くと、ちょうど日の出のタイミングで徐々に空が明るくなってきた。
ー寝て起きたら夢でした、にはならないか。
建物の周りは水に囲まれておりその透明度は底が見える程だ。
二度寝する気にもなれず花は起床する。
昨夜、診療所を戸締りした後花の服を数着購入してからクラースとともに帰ってきた。
クラースから二階の角部屋を借りる事になったのだが、初めて会った召喚者…しかも属性無しを雇うどころか、部屋まで貸してくれたのだから良い人以外浮かぶ言葉がない。
「少し寒いな…」
温かい飲み物でも飲もうと一階のキッチンへ向かうと、既にクラースが起きておりテーブルの上には朝食が用意されていた。
「おはようございます、クラースさん。朝食の用意お手伝いせずにすみません…」
「おはよう。俺も今日は早くに目が覚めたからな、気にするな。それよりちゃんと寝れたのか?」
「はい、おかげさまで」
二人で席に着き朝食を食べ始めたところで、花はクラースに質問する。
「そういえばクラースさんってなんの属性なんですか?」
「俺か?土属性だが」
「じゃあ本来なら診療所で働くには土属性が必要なんですか?」
「必須ない。そもそも嫌われ職と言っただろう」
「嫌われ職…ってどういう事ですか?お医者様っていえば大変だけど憧れの職業を想像するんですが…」
そう、日本では間違いなくそうだった。
難しい勉強をして国家資格を取るのは大変だが、医者になれば高額の報酬が保証される。
合コンなんて開けばモテモテだ。
「お前がいた世界ではそうなのかもしれないが、ここでは違う。病気や怪我は神頼みで治すのがこの国の風習だ…全く馬鹿馬鹿しい」
「神頼みで?それで治るんですか?」
「治るわけないだろう!適切な処置に必要な薬を飲むべきだ!なんでそれが分からないのか…まあ、薄々気づいてる奴は俺の所に来るがな。分からん奴は神を冒涜していると馬鹿にしてくる」
衝撃的だった。
こんなにファンタジーな世界なのに神頼とは…なんでも治す万能薬でもありそうなのだが。
「今更なんですが、属性ってなんですが?魔法も使ってる人を見ないんですが…」
「当たり前だ、魔法は魔力が多い者しか使えない。一般人は魔法を使える程の魔力は持っていないし、魔力が多い者はここから見える…ほらアレだ。あの王城で働く規則になっている」
そう言ってクラースは窓から見える大きな城を指差す。
ー王城って、昨日召喚された場所だったんだ。立派な建物だったしなぁ。
「属性についてだか、属性は全部で六つある。火、水、風、土、星、影だ。お前も知ってる通り属性は職に就く時大きく影響してくる。中でも星、影属性の人間は希少だから魔力の大小関係なく王城へ連れて行かれるな」
「なるほど…あの、魔法ってどんな感じなんですか?」
「ん?俺もあまり見た事はないが…戦争が起こる度に大きな火柱が上がったり、水で大きな壁を作って街を守ったり…」
ーなんてファンタジー!!見たい!凄く見たい!!
自分に属性がないのは残念でならないが、いつか魔法を見たいと花は思った。漫画やゲームのような世界なんて楽し過ぎる。
ー空を飛んだり出来るのかな?
「あの、魔法があるなら神頼みなんてせずに魔法で治せばいいじゃないですか?」
ゲームなどでは回復魔法や解毒魔法など便利なものがあったはず…死んだ人間さえ復活させていた。
「そんなものがあったら誰も神頼みなんてしないだろうが…」
クラースがお前は馬鹿か?と言わんばかりに溜息をつく。
それもそうだ。
朝食を食べ終えた二人は身支度をしてから職場の診療所へ向かう。外に出ると朝日が水面に反射し水上都市はさらに美しさを増していたが、職場が近いのがこんなにも楽だとは…と花は違うところで感動していた。