3.職探し
色々と設定かブレる!
しっかり一人称とか喋り方とか決めてからじゃないといけなんいですね…。
頑張る。
花は商店街に来ていた。
綺麗な装飾品や美味しそうな屋台は勿論、流石は魔法のある世界か杖や剣なども売られている。
見ているだけでも全く飽きる気がしない。
「あ、ここパン屋かな?いい香り〜!」
どう見てもフランスパンや食パンを模った、いかにもパン屋にありそうな看板が下がった店がある。
よく考えれば過去にも召喚されている人がいるはずなので、見た事のある形や食べ物があってもおかしくはないのだ。
店の中に入ると見慣れたパンが並んでいたのでいくつかトレイに乗せレジへ向かう。
ーそういえばお金ってどれがいくらの価値になるのかしら?
オドオドしていると、レジを対応していた二十歳前後の男性店員が声を掛けてきた。
「お、あんた召喚者だろ。その手首に付けてるの許可証だよな?ほら俺も召喚者なんだよ」
そういって見せてくれた手首には赤い許可証がある。
「あなたも召喚されたんですか?」
「俺は十年前に召喚されたんだ。名前はジェラルドな!生まれはアメリカ。困った事があったら頼ってくれよ!」
「私は日本人で本望 花よ。宜し…あれ?日本語?」
ーなんで今まで気付かなかったんだろう。ここは日本でも、ましてや地球でもないのに言葉が通じてる!?
固まってしまった私にジェラルドが笑いかける。
「あはは!ビックリだよな。詳しい事は分からないけど簡単に言うと一度死んで魂になったからなんだってさ。意味分かんねーよな、助かるけど」
なんとも便利な世界だ。
だが、確かに助かる。
そのままジェラルドにお金の事を教わり買い物を済ませると、ふと、レジ横のアルバイト募集の文字が目に入った。
「アルバイト募集ってまだしてますか!?私働く所探してるんです!」
「オッケー!ちょっと店長呼んでくるから待ってて」
店の奥に入っていったジェラルドはすぐに気前の良さそうな女性と戻ってきた。
「私がこの店の店長だよ。あんた働きたいんだって?ちょっと許可証確認させとくれ」
花は雇ってもらえそうな流れに期待しつつ許可証を女店長に見せたが、反応は思っていたものたは違った。
「あんた…これ無色だよね?属性がないのかい?」
「はい、そう言われました。でもレジとか接客に自信はありま…」
「悪いけどウチじゃあ雇えないよ。ウチはパン屋だから火属性が必須なのさ。属性魔法と職業の相性は重要なんだよ…知らなかったのかい?」
初めて聞きました。
何度もお願いするがどうしても無理だと言われたので仕方なく諦め、また来ますと告げ店を後にする。
ーこれはまずいかもしれない
嫌な予感がしつつも手当たり次第店に入り働き口をさがすが、やはりと言うべきか属性なしは雇ってもらえない。
どうやらこの世界の属性魔法はかなり重要らしい。
飲食系は火属性か水属性が必須条件。
得意の服屋は土属性か水属性が必須条件。
鮮生食品では食品によって違うがやはり属性が必要。
こんなに素敵な世界でまさかの就職難。ただ死ぬだけよりも絶対に貴重な体験をしているはずなのに就職先がないなんてあまりにも悲しい過ぎる現実。
陽も傾き始めており焦りを感じる。
「どうしよう…私就職先あるのかしら。後回っていない所…えぇ、診療所なんて一番無理よ。魔力以前に医学の知識なんて皆無じゃない!」
でもこのまま見つからなければ最悪娼婦…それだけは絶対に避けたい。
意を決して診療所に入ると片付けを始めている医者らしき人物が一名のみ。
「なんだ、今日は終わりだぞ。急患でもないなら帰ってくれ」
「す、すみません!あの、私召喚者なんですがこちらで働かせて頂けませんか?」
ジロリとこちらを見たおそらく五十歳前後の男は不思議そうに話す。
「あんた物好きだな。悪い事言わないから他の職を探した方がいい」
「いえ、その、私属性が無くてどこも門前払いで…もうここくらいしか…」
そう言って左手首にはまっている許可証を見せる。時間差で色が出るかもと期待したが許可証は無色透明のままだ。
「属性無しか…あんたも災難だったな。別に働く事は構わないが診療所なんて誰もやりたがらない職業だぞ?」
「働けるなら何でもします!ここを断られたらもう娼婦くらいしか…」
今にも泣き出しそうな花を見て、男はやれやれと溜息をつき働く事を了解してくれた。
「きつい仕事だが本当にいいんだな?」
「はい!お願いします!」
「分かった…なら明日から早速働いてもらう。朝の7時には来てくれ。俺の名前はクラースだ」
「本当にありがとうございます!私、本望 花といいます。花と呼んで下さい。それで、その、この辺りで部屋を借りれるところってありますか?今日召喚されたばかりで…」
「今日っ!?」
流石にクラースは驚いた。
この召喚者、花は今日召喚されたと言うのだ。
ーこちらの勝手で召喚しておきながら不要ならすぐに追い出すのか…腐った連中だな。
「部屋が必要なら裏にある俺の家に住めばいい。部屋がいくつか空いている」
「本当ですか!?何から何まで本当にありがとうございます!本当に…ほんと…うぅ」
「お、おい、泣くな!」
強気だと思われたクラースがオロオロと焦り出す。その姿を見て花から自然と笑顔が溢れた。
診療所の戸締りを手伝い裏手にあるクラースの家へ二人で向かいながら、これからの生活に想像を膨らませる花だが、まさか診療所が想像を絶する激務と知るのは明日の話。
花のお仕事スタートです。