仲がいい
ここからは主人公視点になります。
「団長、お話があります」
エンジュちゃんからの報酬である料理の出来上がりを待っていると、メルがそう切り出した。
「何?」
「女将さんの症状ですが、あれは人為的なものである可能性が高いです」
やはり思った通りか。あの症状はあまりにも不自然だったしな。
「そうだとすると、狙いがよく分からないな」
「その辺は店主さんに聞くしかない事でしょう。それで、団長はこの後どうなさるのですか?」
まあ、メルは真面目だからそう聞いてくると思ったよ。
「団長のことだから最後まで付き合うのだろう?メルも分かっているだろうに」
僕とメルの会話に割り込む形でノルンが口を開いた。
「はあ、分かってますよ。確認したかっただけです――」
メルはいつものことだから仕方がないという様子で溜息を吐いた。
「――で、ノルン。貴方はどうして団長の膝の上に座っているのですか?」
メルは頬をひくつかせながらノルンに問いかけた。メルが外で感情を露わにするなんて珍しい。
「いいじゃないか。昼寝をしている時に、君に呼び出されて使い走りの真似事をさせられたんだ。このくらいの役得はあってもいいはずさ――」
メルの言葉を微塵も気にすることなく、ノルンはミルクの入ったコップを両手で口に運んでいた。僕の膝の上で...
「――それとも何か、君が団長の膝に座りたいのかい?メル」
ニヤリと見た目にふさわしくない笑みを浮かべるノルン。
「なっ!」
「そうでないなら問題はないはずさ」
「団長もお疲れでしょうし...」
「我らの団長様が、この程度で疲れを見せるわけないだろう。苦しいね」
「ノルンの体重が重いでしょうし...」
「この幼気な姿を見て重いと思うかい?そんなこと言ったら君の方が私より...」
「分かりました分かりましたっ。私の負けです」
「ふふっ、それでいいのだよ」
メルはガクリと膝をつき、ノルンは勝ち誇った表情を浮かべた。
「君達、仲いいよね」
そう口に出さずにはいられなかった。