ひとのうわさも75日
なし
「人の噂も七十五日」
そんなことを昔の人は
言っていた
そのことわざどおり
なんとなく
そんなことを許される
ご時世がまだまだ
昔はあったんだろう
しかしながら
昨今は
そういかないらしい
そんないまさらを
くだんの
テレビ局出演後
10日もたって
思い知った
世間は
坊主もあわてて走る年末での選挙
「うちのとうちゃん
要領わるいから
もうこのダブルパンチで大変さ」
朝もはやい10時過ぎ
パジャマ姿で
寝ぼけ姿の私に
定期的に事務所に来て
私のちらかり症候群
そして
山のように
積まれた
私の机上書類雪崩を防いでくれる
妹がすばやく
雪崩を崩壊させながらも
いつものように
話しかける
なんでも
妹の旦那が勤める
市役所
この選挙と予算請求が重なり
特に旦那様が所属する
総務課は
選挙管理委員会も所属していて
てんてこまいらしい
ぼやきながら妹が続ける。
「ただでさえ
年末に向けきぜわしいのに
まったくもってさ」
妹はぼやきながらも
今度は事務所の
カーペットに
掃除機をかけてくれている。
なんとも
まめな妹よ
この妹にしてこの自分。
今さらながらの
10日前の失態。
以前は
多くはないが
ぽつりぽつりと
来ていた
週刊誌の連載でないコラムや
短評
ラジオへの
電話インタビュー、
テレビのコメントなど
あの日以来
まったくもって
依頼がなく
鈍感な私でもわかったこと
それは
これはいよいよもって
干されたんだなと
いうこと
去年の今頃は
それこそ
年末進行でだいぶ
仕事もあったのに
今の自分には
自分にかける言葉すらない
今月
何度目かの
二日酔いの頭で
私でも役に立つかと
「何か手伝うことでもあるか」と
氣ぜわしくはたらく妹の背中に
聞こうとして
いやはや
自分の机や事務所も
そして自分の身辺整理も
できないのに
人のことなど自分が
手助けできるのかと
二日酔いで
痛む頭をかきながら
ただただ黙るしかなかった
新聞でもとろうかと
玄関に向かう私に
電話の音
すかさず
掃除機を止め
私より先に妹がでる
「はい、はい
わかりました。
・・・に15時ですね」
ひさかたに
事務所にかかってきた電話
そして
普段からしているかのように
事務所受付嬢のように
妹は受け答えする。
何や楽しそうに
電話する妹
そして一番
「お兄ちゃん
仕事よ
通夜と葬式の司会」
「仕事ないんでしょ
そんなんじゃ
年も越せないから
うけといたわよ」
何も言ってないのに
私の心を見透かす妹
そういって
メモがわたされた
なし