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幼女、幽霊の話を聞く

 この前会った姿は見てないけど不思議でちょっと怖い女の子、メリーさんに言われてから自分が誰だったのかを良く考えるようになった。まだ何にも思い出せてないんだけど……

 だけど自分の事を意識してたら自然と足がある方向に向かってる気がする。進んだ先に何があるか知らない……知らない筈だけどもしかしたら忘れてるだけかな?


 また知らない人に暴力振るわれたら嫌だから道から外れて木が沢山生えてる所に隠れて進む

 ぼーっと考えながら足を進めていたら道に何か武器を持った人がいっぱい増えてた。隠れてて良かった


 こんな大勢でどこに行くんだろう……って思ってたら一台の馬車が通過していった。見間違いじゃなければメリーさんに会った時に見た馬車だと思う。もしかしてあの馬車にメリーさんが乗っているんじゃ?……どうしよう、行き詰ってるしまた頼ってみようかな……でもお姉さん怖いし


 うーーーーーん……


 と、とりあえず後を追ってみようかな、うん。お姉さんって人が怖く無さそうだったら相談しよう、そうしよう


…………


 しばらく後を着いていったら何故か馬車を降りて森の中へ入って行っちゃった。何しに行くんだろう……でもこの森って何か見覚えある様な……

 そんな事よりメリーさんがどの娘か全くわからないっ!小さい女の子ってイメージだけど……小さい子いっぱい居るし。そもそもメリーさんってあの娘達の中に居るのかもわからない、話しかけても人違いでしたっ!とかだったら恥ずかしいなぁ


と、とりあえず後を付けて見よう……


 女の子達は遭遇する筋肉お化け達に全く苦戦する事無く進んでる。凄い、あんな見た目怖い生き物に怯む気配すらないや……やっぱり旅してるだけあって魔物とかには慣れてるみたい、私なら急にあんなのにあったら絶対驚いちゃうよ


 そして途中少し立ち止まって何か話し合いして再び進みだしたけど、まさか私に気付いたとかじゃないよね?

 うん……こっちを振り向いたりしないし、たぶん大丈夫……


 女の子達は何かを見つけたのか木に隠れる様な格好で前の方を見てる。隠れるって事は強そうな魔物にでも会ったのかな……


 でも、彼女達が会ったのは魔物ではなく黒い髪の男の子……私はあの子を知ってる気がする

 気がするというか絶対知ってる筈だ……あの子を見ていると何故か殺さなきゃ、絶対に殺さなきゃって思うから


 あの男の子、いやアイツは女の子の一人に飛び掛かるとそのまま押し倒した

 あの光景にも見覚えある……あの光景を見ていると胸が痛くなって気持ち悪くなる。私は幽霊、死んでいる筈なのに


 あの女の子を助けなきゃ、って思うんだけど……身体が震えて動けない。何故?




 考えるまでもない……私も同じかそれ以上の目にあってるから


 あぁ……思い出した。私が誰だったか、何で今ここに居るのか、何で今こんな状態になってるのか。全て思い出した


 思い出したからこそ助けないと……分かってるのに動けない……っ!


 自分の情けなさに悔しがっていたら、白い髪をした女の人がアイツを蹴飛ばしてあの女の子を助けてくれた……良かった。あの子が助かって良かった……




「んふふー、早い再会だけど、ひょっとして後を付けてきたのかな?いけないんだー」


 !?

 また後ろから突然声を掛けられて吃驚しちゃった……


「メリーさん?」

「あれ?普通にもう喋れるようになったの?」

「……そうなのかな?あのね、私思い出したの」

「そうなんだっ!じゃあもう黒い変てこな姿から卒業できるねっ」


 へ、変てこ……そんなに今の私っておかしな姿してるのかな……

 でも姿を変えるってどうすればいいんだろう?


「お悩みだね、簡単だよ。自分が誰かはっきり認識する……ただそれだけ」


 自分を認識する……私は……


「メリーさん、私は佐倉遥子です」

「そ……おめでとうっ!サクラヨウコちゃん、貴女は一つ前に進んだねっ」


 そうなのかな……でもメリーさんが言うんだから、私は先へ進むことが出来たのだと思う

 自分を思い出した以上、次に考えなきゃいけないのは今後どうするか……私がやる事、やりたい事はもう理解してる


「じゃ、君が人の姿を取り戻した所でお姉ちゃんに会わせてあげようかな」

「え?」

「どうせ一人じゃどうにも出来そうにないんでしょ?」

「あ、うん……たぶん」

「なら会ってみなよ、お姉ちゃんが貴女に興味さえ持てば助けてくれるかも?」


 ……何だろう、顔も知らない子なのにこんなにお世話になっていいのかな

 とは言えメリーさんの言うとおり私だけだと目的を達成するのは難しいのも事実、お言葉に甘えていいかな


「メリーさん、何で貴女はこんなに親切にしてくれるのかな?」

「親切……?」


 私の目の前に急に身体が透けてる女の子が出てきた

 女の子達の中に居たのは覚えてる……この子がメリーさんだったんだ。この子も幽霊……


「勘違いしないでね?私は別に親切な気持ちで貴女を助けようとしてるんじゃないの」

「え……」

「私はただ、お姉ちゃんが楽しめればそれでいい……貴女の生き様がお姉ちゃんを楽しませる事が出来ればそれでいいんだよ?だから……お姉ちゃんが貴女に興味を持たなかった時点で用はないって事は覚えておいてね?」


 そう言ってメリーさんは私に笑いかけてきた……ただ、その目はその辺に落ちてる石ころを見る様に何の興味も無さそう


 なんだ、結局メリーさんも善意で私に近付いてきたわけじゃないんだ……

 そりゃそうだよね……知らない人、ていうか幽霊に好意的に接してくる人なんか居ないよね……いやこの子も幽霊だけど


 あーあ、やっぱりこの世界は優しくないや……早く帰りたいなぁ……




「盛り上がってる所悪いけど、ちい姉にお客さんだよっ!」

「こんな所でお客って何の冗談?」


 メリーさんが話しかけたのはメイドさん……じゃなくてメイドさんに抱っこされてる幼い女の子……

 え……?あの子がメリーさんのお姉ちゃん?姉と呼ぶには幼すぎる気がするけど……


 けど、好奇心旺盛な筈の子供がする目をあの子はしてなかった。あの目を見るとメリーさんの姉であると納得出来ちゃうなぁ


 近付くのが怖いけど、私は勇気を出してその子の元に向かった



★★★★★★★★★★



「あ、あの……メリーさんのお姉さん、ですか?」

「メリーさんとか知らん。出直せ」

「あー……メリーさんって私の事だよっ!言ってなかったね、私の本当の名前はアリスだよっ」

「そ、そうなんだ……」


 アリスの知り合い、なのだろうけど顔見知り程度って事か。何で連れてきたのだろうか

 だが今はこの謎の幽霊に構ってる場合じゃないな、クソ女が小僧の気を引いてる内に先へ進んだ方がいいかもしれない


「あっはははははっ!ねじ切れろボケっ!」

「効かないよっ!姉さんの腕がねじ切れちゃえばいいんだっ!」

「ぃぎっ!?……この、ガキっ」


 クソ女の攻撃は防がれ、逆に左腕がねじ切れた。ぶっちゃけ喋ってるだけだから攻撃したか分からん。戦況としてはどうやらクソ女の方が劣勢みたいだな。このまま負けそうだし、やっぱり今の内に離れるべきか


 小僧は千切れたクソ女の腕を拾うとムシャムシャし始めた。間違いない、奴等は正真正銘のキチガイだ


「きはははっ!……姉さんの腕、あぁ……美味しい、美味しいねぇ」

「くはははっ!こんな事もあろうかとその腕は一週間身体を洗っていないオッサンの肉から作ったの!美味しい?ねぇ本当に美味しい?あははははははっっ!!」

「ぶふっ!?…うぇ、おえええぇぇぇぇぇ……やってくれたなー……おぇ」

「ざまーみろっ!ぃひゃひゃひゃひゃっ!」


 …………うん


「どうやらアイツ等と私達は生きてる世界が違うみたい、ほっといて先へ進みましょう」

「そうですね」

「えー?ベレッタさん置いてくんですか?」

「マオが無理やり担いでいけば?」

「むぅ」


 まぁベレッタがクソ女を置いて行くわけないからここに置いて行くしかないんだけど

 でも小僧は妙に鋭いから逃げようとしたら気付くだろう……それをクソ女に引き止めてもらおうと思った訳だが、あの様子じゃ突破されそうだ


「あの男の子をどうにかすればいいのですか?」

「?……出来んの?」

「はい……」


 黒い髪の幽霊ならどうにか出来るらしい……


「ちい姉っ!この幽霊はこの前冒険者達を殺しまくった張本人だよっ!」

「へー……800万の幽霊か」

「800万……?」


 冒険者を破裂させたコイツの力……もしかしたらクソ女とこれまた似たような力かもしれない

 こう何人にもポンポン使われたら同じく類似した力の奇跡ぱわー涙目じゃないか……


「でも何であんたがやんの?」

「……あの子は私の子供だからです」

「子供?実の子供?孕んで産んだ子供?」

「そうですよ……何でそんな言い方……えと、私が皆さんの前に現れたのはですね、アリスさんに聞いたのですがもしかしたら貴女達なら私に力を貸してくれるかも、と言われましたのでこうして出てきたのです」

「アリス……あなた無断でそんな事言ったの?」

「んーん?ちい姉が興味を持ったらって前提はつけたよ?」


 確かに私は興味ある事には首を突っ込む

 何か知らんが付き合い短い割にアリスは私の事を結構わかってるな


「で、ですね……あの男の子、まあ私の息子ですがアイツを倒したらお話というかお願いを聞いていただきたいのですが」

「倒したらじゃなく殺したらね」

「わかりました。すぐに始末致します」

「ねえアリス?こいつ私が興味持ったらって前提頭に入ってないんじゃない?」

「いいじゃん。聞いて欲しいって言ってるし、興味持たなきゃ本当に聞くだけ聞いておさらば~って事にすれば」


 こいつも大概悪い奴よのう……可愛い顔して性格がえげつない。家族には五月蝿い以外は可愛がられる存在だが、こと他人相手となると割と冷酷だ。その辺は私と似てるかもしれない


「ちょっと幽霊さんや」

「佐倉遥子と言います」

「じゃあサクラヨウコ、貴女の力もあのキチガイ達と一緒なの?」

「はい。元々は私の力です。あの白い髪の娘はわかりませんが、アイツは私の力を受け継いだようです。まぁ劣化版でしょうけど」


 こいつがオリジナルか……ならあのガキにも負けはしまい。クソ女が同じ力を持っているのはこの幽霊の死体が使われてるとかそう言う事だろう


 幽霊は何の気負いもなくキチガイが争っている場へ向かう。何かおどおどしてそうと思っていたが、案外度胸があるようだ


「お母さん……如何にアリスさんが連れてきた相手とはいえ、間違いなく面倒事の気配がありそうな幽霊の話を聞くとか良いのですか?」

「なに、人間ってのは不思議な事に自分で産んだ子供は経緯がどうであれ愛情を持ってしまうと聞いたわ。なら幽霊がガキを殺す事は出来ないでしょう」

「なるほど、だから倒すではなく殺すと」

「そう言うこと。まあ見てましょう」


 幽霊だから足音もせず静かに近寄って行ったが、流石にキチガイでも迫ってくる幽霊に気付いた様で戦闘を中断して警戒する姿勢をとった


「あ、れ……ママ……?」

「ママっ!ぷぷーっ……ぎゃははははははっ!ママだって!ベレッタ聞いた?マ、ママ……だってっ!」


 クソ女が下品な笑いをしているが、どうやらガキの興味はクソ女から幽霊に移ったようですでに眼中に無い


「ママ……幽霊になってまで僕に会いに来てくれるなんて嬉しい」

「うん。何であなたが生きてるのか知らないけど、さっさと死んで?」

「あぁ……ママが自殺したって聞いた時はもの凄く悲しかった……パパ達は全く泣いてないし、それどころかママの身体を使って実験するとか言ったんだよっ!!……まぁおかげで姉さんとか妹とか沢山出来たけどさ。ほとんど死んじゃったけど

 でもね?聞いてっ!ママのおっぱいだけは死守したんだっ!ちゃんと腐らないようにして壁に飾って毎日揉ん」

「死ね」


 小僧が白目をむいたかと思えば顔の穴という穴から大量に血が噴きだした

 そのまま地面に倒れこみピクリとも動かない……ありゃ死んだわ


「お姉ちゃん、愛情が何でしたっけ?」

「ふ……親が子に愛情を持つのは常識よ。ただ、絶対ではないわ……いい?マオ、この世に絶対なんて有り得ない。あなたが絶対無理と思ってる夢も諦めなければきっと叶う。そう、今回私が言いたかったのはこの世に絶対なんて有り得ない、そういうことよ」

「良い話にするには無理矢理すぎます」


 ですよね……

 うーむ、勘に頼らなかったとは言えあっさり実の息子を殺すとは思わなかった

 だが相手はキチガイ、もとい実験体の仲間。生首から復活する女がいるくらいだ、あの程度ではむくりと生き返ってもおかしくはない。一応近付いて確認してみよう




「……確かに死んでそうね」

「一つの戦いは終わった……だがフォース王国ある限り、同じ悲劇が繰り返されることだろう……」

「何でメルフィが締めんのよ」

「たまにはボケてみようかなって……」


 ボケんでいい。見ろ、ボケ担当が出遅れたって感じで悔しがってるじゃないか


「ユキ、完全に燃やしなさい。骨すら残しちゃ駄目よ」

「待って待って!どうせ燃やすなら私にコイツの肉ちょうだい?片腕ちぎれちゃったし」

「乗っ取られないでしょうね?」

「別に脳とか心臓を使う訳じゃないから」


 ぶちっ!!……と、小僧の手と足を力任せに引きちぎると千切れた腕の方に近付ける。するとウゾゾゾゾ……とすぐさま再生を始めた。きめぇ


「……後は燃やしましょう。さて、殺しちゃったものは仕方ないわ、約束通り話は聞きましょう」

「ありがとうございます」


 私達に何をして欲しいのか知らないが、あの小僧を簡単に殺せる力を持つ奴の頼みだ。きっと面倒に違いない……アリスに言われた通り聞くだけ聞いてサヨナラが無難だろう

 しかし話自体は面白いかも知れないので小僧を燃やし終えたところで幽霊の話を聞くことにした

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