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幼女が鎖骨を舐める話

「自ら怪物となったか、はたまた勝手に実験されたかは知らぬが人の身を捨てるとは悲しい事よのう……せめてもの慈悲として貴様等全て惨たらしく皆殺しにしてやるわっ!お前等やっちまいなぁ」

「どの辺に慈悲がありましたか……」

「いいのよ、オーガとして生きてるくらいなら死んだ方がマシって絶対思ってるわ」

「まぁ襲ってくるなら殺しますけどね」


 数時間前にハイキの森に到着したわけだが、予想通りオーガはこの森にもいた。というかこの森から外に出てきていると思われる。どうせならホットケーキを見たいのだがこの辺りには見当たらない


実験の成れの果てと思われるオーガだが私達を見るや襲ってきたので返り討ちにする事にした。獲物を見るや襲うとは魔物となんら変わりないな


「あのオーガを見なさい。ぱっつんぱつんのスカートを穿いてるわ。気色悪い」

「元女性だったのでしょう。今やムキムキのオーガですけど」


 オーガの倒し方は簡単。遠距離から放つ魔法だけで何とかなる……やはり動きが遅いので倒すのに苦労はしなかった。魔法使いがパーティに居る冒険者ってのは少ないから普通は脅威ではあるが

 ウチにはユキもサヨも居るし、二人には劣るがマオも魔法が使える。更に冒険者パーティにはまず居ないであろう精霊魔法の使い手が二人居る……と言うか一人は精霊だ


 つまり今のところ役立たずは私とアリスだけである!……悔しいから頭の上のマイちゃんも数に入れておこう


「やだっ!あの野獣ったら可愛いアリスちゃんを狙ってるよっ!」

「やけに数が多いわ……どんだけ人間使ったって話よ」

「確かに……まるで町一つ分の人間達で実験したって感じですね」

「最近よく無視されるよっ……ふぐぅ」


 結局冒険者が処理することになる実験体をこんな所に捨てんじゃねぇよって思う

 襲っては来るが私達なら戦わずに先へ進む事も可能だし、こいつらは他の冒険者に押し付けて蜂蜜を入手しに向かおうか


「オーガは無視よ、私達はさっさと花蜂の巣を探しましょう。こうしている間にぺけぴーだけ部屋でダラダラしてると考えると腹立つし」

「……そうですね」

「どうかした?」


 何か考えているのかサヨの反応は鈍かった。エロ担当のくせに真面目な顔をして思案中のようだ


「何か気になるの?」

「えぇまぁ……どうもこの先で暴れてる輩がいるようで」

「冒険者じゃない?」

「んー……にしては気配が強いと言いますか」


 曖昧すぎてまどろっこしい……どうせ向かうんだ、行きゃ分かる

 人外のサヨが気になる奴ってのが懸念材料だが、アリスの能天気さを見習って気にせず進もう


「目指すはホットケーキっ!進行方向にいるオーガだけぶっ飛ばして進むわよ!



☆☆☆☆☆☆



 宣言通り立ちはだかるオーガだけを魔法で吹き飛ばしながら森の奥、と思われる場所まで突っ走った。ここの森に限った話ではないが、何か湿気が多いな


 まだ花蜂の巣がある場所までは距離があるのだが、少し進んだ所から戦闘中と思われる音が聞こえたので一応立ち止まって警戒する


「先にいる奴がサヨが言ってた輩ね」

「やたら笑ってますね」

「戦闘狂なんでしょ。でも声を聞いた限りじゃガキっぽいわね」

「子供の戦闘狂とか厄介な奴しか想像出来ないのですが……」


 ガキは残酷なことを平気でするからな……私もするけど

 とりあえずガキがどんな奴か調べなくては……遠回りしてでもスルーすべきなんだろうが、ただでさえ先が長いのに迂回とかやってられん。二、三日以内には外へ出たいのだ


 少し離れた位置に見えるガキは中等部ほどの年……髪は黒く目も黒い……いや茶色だ。白シャツに半ズボンというガキの格好をしており顔は満面の笑みを浮かべている。このどこぞの坊ちゃんみたいなガキが一人で何をしているんだと


「何か呟いたかと思えばオーガが不自然にやられてます……いつぞやの女みたいな力ですね」

「というかまんまクソ女と同じでしょ」


 うーむ……クソ女と同等の力という事は不意打ちでサクっと殺すのがベストだ

 別に敵と決まってはいないのだが、何かムカつくので殺してもいい人類だろう。


「君達だぁれー?」

「うぉっ!?バレたわっ!殺すわよっ!」

「気が早すぎですよ……」


 ぬぅ……いつの間にかこちらに気付いていたか……最近こんな奴等が多すぎだと思う

 思わず殺そうと思ってしまったが、念のため敵かどうかを確認してから殺そう。何か私の中で結局殺すことになっていた


「私達よりもお前が誰よ」

「ぼく?ぼくは……ルピナス。思春期を迎えて女の子の身体に興味津々な健全な男の子だよ!はぁはぁ……」


 キモっ!こいつぁヤバイぞ……主にユキとかメルフィ辺りが狙われかねんっ!


「ユキ、メルフィ……貴女達は特に注意なさい」

「はい」

「うん」

「うわぁ……私にはぁはぁしてるよっ!アリスファンはどこにでも居るのねっ!」


 アリスは安定のスルー

 はぁはぁしながら周りのオーガを惨殺しているガキは私達の方へ徐々に近付いてくる


「あんたこんな所で何してんの?」

「ここはぼくの、ていうかぼく達の訓練場だもん。何してるって言われたら力を上手く使う訓練だよ」

「このオーガ共はあんたの練習相手ってわけね」

「そうそう!……ここに居る奴等は好きにしていいって言われてるよ。もちろんここに来た人間達もね」


 つまり私達も獲物という事だ


 あの小僧は私達を品定めする様に見回している。間違いなく襲ってくるな

 ならば襲われる、というかあの力を使われる前に殺るしかない。だが奴はユキやメルフィには一瞬目を向けた程度であまり興味がない様子……巨乳は嫌いなんかね


「先手必勝よ、ぶち殺してやりなさい!」


 奴に話し合いは通じないと皆思ったのか一斉に攻撃に掛かる。ユキとサヨは突っ込み、メルフィやルリは精霊魔法で援護する。マオは安定の置いてけぼりだ


「く……はぁはぁしてる変態のくせにいやに速い!?」

「では私が鞭で攻撃しますので姉さんは援護を」


 ユキが突っ込むと同時にガキの避ける位置を狙ってサヨが魔法、というか符を放つ……が、ガキは避けるどころか鞭を手で払って蹴りで反撃してきた

 しかしユキは今回は片手が塞がっていないのでちゃんと防御できた


「うーん……ぼくのお眼鏡に適ったのはメイドじゃないんだよねぇ……」


 ゲヘゲヘと顔を向ける先には私……!ではなくサヨが……


「ああああぁぁぁ!何か知らないけど君を見てるとチョメチョメしたくなるっ!特にその白い髪っ!ぼくの姉さんにソックリでそこがまた興奮するぅっ!!」

「うおおぉぉぉ!?こっち来ないでもらいたいいぃぃっ!!!?」


 サヨに向かって突進する真の変態は放たれる魔法を避けもせずもっと撃ってくれ!……と言わんばかりに全て食らっていた。実に気色悪い


 そしてついにサヨに飛び掛るガキ

 油断していたのか、焦ったのか、サヨはあっさりとガキに捕まった。というか押し倒されそうになった


「ひいぃぃぃぃっ!!」

「あのサヨが悲鳴をあげているっ!」

「……転移で逃げればいいのに」


 メルフィの言う事はもっともだが、切羽詰った時ってのは咄嗟の判断がなかなか出来ないものだ

 現在サヨを押し倒そうとしているガキをサヨが必死に押し返しているのだが、私達はどうしたもんだろうか


「思ったより力強いね……」

「離れなさい馬鹿猿っ!」

「やだっ!この湧き上がる劣情を君に静めてもらうんだ……そう、ぼくは今とてもはぁはぁしているっ」

「くそボケええぇぇぇぇっ!」

「ぐふふ……はぁい、力抜いてねー」

「な……!?」


 必死に両手で押しのけていたサヨだが、徐々にガキが覆いかぶさっていく……ガキが囁いた言葉で力が抜けた様だ。やはりあの力は厄介だ


「ほらほら……もうすぐキッスしちゃうよ?ぼくは紳士だからね、ちゃんとキッスから入るんだ」

「ぎゃあああぁぁぁぁ!助けてお姉様っ!!?」

「こんな幼女に何が出来るってのよ。矛先がこっちに来たらどうするつもり?」


 とは言えいよいよヤバイみたいだから何とかしないと……

 しかし何とか出来そうな人物はもうユキぐらいしか居ない


「ユキ」

「わかってます」


 そう言うとユキは亜空間を開き、何やら画材道具を取り出した。そしてエプロンの更に上にもう一枚エプロンを装着し、キャンバスに画用紙をセットし私に向き直る


「準備完了です。これで姉さんの初めてが散る姿を絵に残すことが出来ます」

「でかしたわ」

「ユ゛キ゛イイイイイイイィィィィィィっっっ!!」


 おお……サヨが地獄の底から聞こえる様な声をあげた。ぼーっと見てたマオやルリはその声にビクッと反応した


「あぁ……姉さんがやっと私を呼び捨てに……これで姉妹の絆がより深まりました」

「いい話だなー」

「おぼえてろおおおぉぉぉぉ!!!!」


 まだ元気があるサヨだが、ガキとの距離はもう目前……ふむ、さすがにもう限界か

 散々酷いことやったが何も本気でサヨの純潔を散らさせる気はない。ギリギリになった所で奇跡ぱわーで助けてやるとしよう


「ひゃ……!?このガキっ!涎垂らしましたねっ!?許さねええぇぇぇ!」

「許さなくていいよ!ちょうどぼくが居る時にこんな森に来た事を恨んで」

「ほ……?」


 恨んで……と言った瞬間にガキが吹っ飛ばされた


 別に私達が何かした訳ではない。かと言って勝手に吹っ飛んでいった訳でもない

 第三者が乱入してガキを蹴り飛ばしたのだ


「久しぶりだね?……こんなところで何してるのかな?」

「クソ女……」

「そろそろクソ女呼ばわりはやめていいんじゃない?」


 ガキを蹴り飛ばしたのはトゥース王国で生首にしたあのクソ女だった。今は普通に身体があるしもう復活した様子。こいつが居るって事はゾンビのベレッタも居るんだろうと思ったらサヨに近寄り起こしてあげていた……やはりゾンビっぽくない


「ありがとうございます……言葉を理解してるか不明ですけど」

「……」

「良かったわね、私はきっと助かると信じていたわ」

「……」


 ベレッタも無言だがサヨも無言だった。返事をしないのは初めてなので相当ご立腹らしい


「ルリさん、洗う、いえ消毒……いえ浄化しますので三大名水を出して下さい」

「わかったわかった、ホレ」

「どうも……」


 桶を取り出し、ルリが私が創った三大名水を入れていく。そしてサヨは少し服を肌蹴させ鎖骨の辺りを念入りに洗い始めた。何でそんな所をと思ったが、あそこにガキの涎が落ちたのだろう


「アイツがこのぐらいでやられる訳ないし……私がちょっくら止めを刺してきてあげる。これであの時の借りは返済ね」

「借りが何の事か分からないけどやってくれるなら宜しく」


 生首にした挙句髪の毛抜いてやったのに借りとか……命だけは助けてやった事だろうか?まあいい、楽出来るなら甘えよう

 あのガキは今しがた特攻していったクソ女に任せるとして、こちらはサヨの機嫌を何とかするか


「サヨさん、そこまで入念に洗わなくてもいいんじゃ……もう肌真っ赤ですよ?」

「この程度では肌に付着した穢れは消えませんっ……」

「魔法で浄化、さらにタオル6枚も使い捨てで洗ってるのですから十分ですよ」


 そんなに洗ってんのかよ……どんだけガキの唾液が嫌だったか良く分かる

 しかしマオの言う通り肌は真っ赤を通り越して血が滲んでいる。せっかくユキ同様白い肌だったのに勿体無い。そうだな……そういえば……


 今尚取り憑かれた様にゴシゴシ洗うサヨに近付き、こちらに気付いて訝しがるが無視して鎖骨に顔を近づけた。そして……


 ペロリ、と舐めてみた


「……ぅひ、お、おおぉぉおお姉様?い、いま何を」

「鎖骨を舐めただけよ。小さい頃に転んで怪我をしたときお母さんがこうやって舐めときゃ消毒になる、って言ってたからね」

「サヨ殿は別に怪我をした訳では……いや、確かに今は血が出ておるな。ならいいのか」

「な、舐め……ふひゅう……」

「流石ちい姉……!恐ろしい程の女殺しっ!」


 サヨは狂った様に洗うのは止めて正気に戻ったようだ。先程とは違った理由で赤くなってはいるがもう大丈夫だな


「もう平気ね」

「も、勿論ですっ!先程の穢れは神聖な聖液によって浄化されましたっ!」

「せいえきとかサヨ姉やらしい」

「あぁ、今の言い方は誤解を招きますね。では姉汁と言い直します」

「なお悪い」


 一人離れて何やら描いていたユキもこちらに近付いて来た。その手にある画用紙はサヨの治った機嫌を再び損ねると断言できる


「姉さん」

「何ですか?今の私は非常に機嫌が良いので先程の愚行は許してあげなくもないですが」

「これ何ですが『少女。汚された夏』と名付けて見ましたが如何でしょう?」

「私の晴れやかな気分がぶち壊しですよ。やはり貴女は全力でシバかないと気が済まない」

「わかりました。『巫女ヤラし。鎖骨濡らして』にしときます」



………



 こんな森の中で姉妹喧嘩が勃発した

 まだあの危険なガキもいるってのに馬鹿すぎるだろ。サヨが自分が押し倒されてる風景がリアルに描かれた絵を燃やそうと魔法を放つが、ユキはそうはさせるかと亜空間に仕舞いこむ。それを見たサヨはかなり激昂している

 あの短時間であそこまで描けるとはユキのエロスに対する執念は恐ろしいと言わざるを得ない。敵に回すと恐ろしいが味方にすると身の危険を感じる……!


「盛り上がってる所悪いけど、ちい姉にお客さんだよっ!」

「こんな所でお客って何の冗談?」


 姉妹喧嘩を呆れて見ていたらアリスが声をかけてきた。何の冗談と聞き返したのだが、確かにアリスの横には誰か居た。


 というか幽霊のアリスの隣に黒い髪の幽霊がいた

 ……幽霊ってこんなしょっちゅう会えるもんだっけなぁ

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