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幼女とお姫様

 暇です。暇なら何か仕事しろって話ですが、お姫様なんて飾りです。なので別に政務なんてしなくてもいいですよね?どうせ出来ませんけど


 町に出る事も中々出来ないし、民達が憧れるほど良い身分じゃないんですよね……姫って

 親は選べないから仕方ないけど、せめてお買い物ぐらいは自由に出来ればよかったなぁ


 こう退屈な時や気分が滅入る時はいつもの花畑に行くに限ります。つまり毎日行ってる訳ですが……

 城の敷地内に頼み込んで作って貰った自慢の花畑、植える花を選んだのはこの私!我ながら良いセンスだと思います


 そんな自慢の花畑で一人まったりしようと思ってたら……いつもは誰も居ないのに先客がいました


 黒いドレス風の服を着たちっちゃい女の子が花畑のど真ん中に正座して何か食べ物?をちゅーちゅー吸ってます……


 ……誰?貴族の子かな?失礼な話だけど、この国の女の子にしては可愛いから他国の子と思います


「えっと、何をしているのかな?」

「おっぱいアイス食べてる」


 ……耳がおかしくなったのかな?子供の口からあまり出てこなさそうないやらしい単語が

 でも勘違いじゃないようです。ご丁寧に食べてる物を見せてくれました


 確かにおっぱいの形をしています。誰でしょう……こんな子供に変な物を売る人は


「えっと、えっとね?何でここで食べてるの?」

「私の家族に占いが出来る娘がいてね、花畑で面白い事があるとかないとか……当たるかをこうして検証中」

「占いかぁ……ところで変な事聞くけど、ここがどんな場所か知ってる?」

「知らん」


 知らないわけないじゃんっ!どうやって城に入って来たんだって話ですよ……


「ここ、お城って分かってるかな?」

「そうなんだ」

「私、お姫様。ここは私のお気に入りの場所、わかった?」

「まあ気にしないでこっち来て座りなさいな」


 お姫様って言ったのにこのタメ口……も、もしかして他国の偉い人の子供?もしくは同じお姫様だったり?

 仮にそうだったら弱小国として機嫌を損ねるのは不味いです。ここは大人しく言うことを聞きましょう


「す、座ったよ?」

「何で急にビビってるの?」

「気にしないで」


 じぃぃ……と見つめられて動揺しました

 そして女の子は急に立ち上がり何故か私の膝に座りました


 ……急に立ち上がったのでビクッとしたのは秘密です


「ど、どうしたの?」

「ん?貴女お姫様なんでしょう?お姫様の膝に座るなんて経験滅多に……というか普通はまず出来ないから今の内にってね」


 そりゃあそうだけど……私がこの子の立場だったら後が怖くてそんな事出来ないなぁ

 ぼーっとそんな事考えてたら胸の辺りがひんやりして……


「……何でアイスを私の胸に押し付けるのかな?」

「おっぱいアイスの正しい食べ方はこうでしょう?」

「私に聞かれても分からないよっ!てかそんなの何処に売ってあるの?!」


 どうせろくでもない食べ物だからろくでもない国でしょうね!


「この国の王都」

「ろくでもない国はここでした」

「そう?売上を伸ばす為のアイデアだし別にいいんじゃない?実際繁盛してたわ、主に男性客で」


 後でお父様に報告しておきましょう。昼間から如何わしい物を売る不届き者がいるって


 ん?いつの間にか入り口の所に侍女が……あ!




「ひ、姫様が……知らない子供に授乳プレイを……!!お、王様あああぁぁぁぁっ!!!」

「待って待ってえええぇぇぇぇっ!!!?」

「動くな」

「はい。じゃなくて!?このままじゃ私が授乳プレイにハマる痴女とか思われちゃうよ!」


 知らない女の子は目を閉じてちょっと考える素振りをして……


「それもまたよし」

「よくないっ!」


 怒鳴っても人事だと思って気にせずアイスをちゅーちゅーする女の子……ある意味凄い子です


「けぷ」


 ……ゲップ?でしょうか、何か可愛い……!!見た目相応に子供らしい、じゃなくて


「やっぱりCカップは多すぎたわ、Aカップにしとけばよかった」

「その内容でアイスの話って分かる人はいないよ」


 あーあ……侍女はもう追っても無駄でしょう。私は明日から授乳プレイのお姫様として暮らさなきゃ駄目なんだ……うわぁ


 もうどうでもいいやー……って思ってしばらくこの女の子の気が済むまでじっとしていましたら何か騒がしい気配がしてきました




「姫様っ!授乳プレイ中失礼します!!」

「もう広まってるし!!やだぁ!もうやだぁっ!!こんな国滅んじゃえばかぁ!!」

「今まさに国の危機です……!!」

「はい……?」

「……コリーア大森林から魔物が大挙して押し寄せて来てます!」


 ……なんなんでしょう?この急な展開は。今までコリーア大森林から魔物が攻めてくるなんてありませんでしたのに


 下を見ると女の子は相変わらずちゅーちゅーアイスを吸ってます。いえ、何か少し楽しそうに口元が笑っているような……?



カーン、カーン、カーン、カーン、カーン


 遠くから魔物の襲撃を告げる鐘の音が聞こえてきました。確か鐘を打つ回数によって危険度が違うんでしたっけ?


 回数は一回から六回まで。回数が増える事に危険になります。今回は五つ、つまり大分ヤバいみたいです……


「く、ふふ……昔読んだ本の絵そのままね。実物を見れるなんて良い経験になったわ。なるほど……確かに面白い」


 女の子が空の方を見て笑っています

 この非常事態に何だろう……と目線を追うと


 間違ってなければ幻獣と呼ばれるグリフォンがそこにいました


 えー……逃げる暇なかったんですけど……



★★★★★★★★★★



 ハイパー手強い町を出て早二日。少し速度を上げて進んでいるが王都まではまだまだかかる


「うむ、メルフィの座り心地とおっぱい枕もなかなか……というか大きいわね、ユキより大きいんじゃない?」

「そう?」

「メルフィさんはローブを着ていますから身体のラインが分からなかったとはいえ意外です」


 家族として受け入れる前はただ容姿がいいだけのどうでもいい存在だったのが、家族になってからは急に可愛く思えてくる不思議


「ところで元祖椅子係がいじけてますが」

「椅子係はマオさんの特権でしたしね」

「フッ……普通の座椅子と高級ソファーがあったらそりゃ高級な方に座るわよ」

「……ぐす」


 座椅子が更にいじけた

 今は馬車の隅に移動して体育座りをしている。あと一回くらいは耐えるな


「お母さん、村と思われる場所にもうすぐ着きます。休憩の為に寄りますか?」

「んー……村かぁ」


 確かにもう二日ほぼぶっ通しで走り続けてる。食事だってまともな調理をしてないから休憩もいいか。でも寄るなら町だな……そうだ


「マオ」

「……う?」

「ちょっとおいで?」

「……!は、はははいっ!はい!」


 構ってもらえて嬉しいのか、やたらハイテンションだった。そんな嬉しそうなマオにバッグから1000ポッケ取り出し笑顔で



「ジュース買ってこいや」



☆☆☆☆☆☆



「どうするんですか?家出ならぬ馬車出しちゃいましたが」

「そうね」

「……あの娘は一人じゃ危ないと思う。探しに行くべき」

「メルフィったら優しいこと」

「真面目に言ってる」

「やれやれ……付き合い短いからか、あんまりマオの事分かってないわね」

「?」


 マオの性格じゃあ精々馬車を飛び出すのが精一杯だろう


「ユキ、マオはどこまで家出ならぬ馬車出した?」

「ぺけぴーの隣までです」

「……近っ!」

「ま、あの娘じゃそんなもんでしょう」


 窓なら顔を出して見てみれば、膨れっ面でぺけぴーの横を小走りで並走するマオがいた

 ぺけぴーから迷惑そうにしている気配を感じる。邪魔だもんな


「マオ、ぺけぴーの迷惑になるから戻りなさい」

「ど、どうせわたしは何処にいても迷惑ですよ!!」

「そうね」

「ああっ!認めました!今認めましたね!?」

「そう思われたくないならさっさと馬車に戻りなさい。メルフィなんて結構心配したんだから」

「う……ごめんなさい……あれ?何でわたしが謝って」


 納得いかないって感じだが、言われた通り素直に馬車に戻ってくるのはマオらしい


 む、窓からマオを見ていたら視界の端に魔物らしき生物が見えた

 大きさは普通の豚ぐらいで見た目も色は何か茶色いが豚。じゃあ豚かアイツ……いや、豚がこんな所にいるわけないから魔物だな


「よし、ムカつく鶏に苦戦して以来数多の修羅場をくぐった今の私なら豚ごとき一人で始末できるはず!」

「豚?……ああ、あれですか」

「二日も馬車の中でだらだらしてるのも疲れたからちょっとやる気出してファイトしてくるわ」

「はぁ……別に構いませんけど、一応注意して下さいね?」

「大丈夫、どうせダメージはゼロよ」


 馬車を降りて二日ぶりの地面に立つ。豚の魔物は野草をもぐもぐ食べていて未だ私に気付いていない……いつもなら不意討ちする所だが今回は実力試し、私に一番似合わない真っ向勝負を仕掛ける


「今夜の晩飯にしてあげる」


 ナイフ片手に豚に向かって走る。あちらさんも気付いた様で食事をやめて突進してきた


「愚かね……どちらが捕食される身か教えてやるわ!!」


……



「これって食べれますかね?」

「食べれますよ、臭みがあるので取らないとキツイと思いますが」

「お姉ちゃん……大丈夫ですか?」

「当たり前でしょ、私だって昔とは違うのよ」

「はい、見事な受け身でした。もういつ吹っ飛ばされても安心です」

「うっさい」


 そう、威勢はよかったが私はあの豚ごときにあっさり吹っ飛ばされたのだ。

 御守りのおかげでダメージこそゼロだが精神的に割とへこんだ


「で?それ何て魔物?」

「これは猪と言いまして、魔物ではなく動物になります」

「……私は動物なんぞにやられたのね」

「一応人的被害が出る様な凶暴な動物ですからお気になさらず。しかし町の外に野生の動物が生息してるとは本当に平和な国ですね」

「コリーア大森林の魔物が化物すぎてこの辺りに棲む魔物がいないのでしょう」


 結局猪とやらはユキが一秒程度で瞬殺した。くそぅ……経験と言っても大体やられてたから強くなってる訳なかった


 その後は不貞腐れて王都への旅路を再開した。ちなみに猪は今夜ユキが美味しく調理するだろう



★★★★★★★★★★



 あれから更に日にちが経った。大体2週間って所か……数えてないから正確には分からないが

 現在は夜、流石のぺけぴーにも疲れが見えたので休憩している所だ


「暇でたまらん。何か面白い事やって」

「また無茶振りを……」

「……私が星占いでもしてあげる」

「おー、メルフィも万能というか……特技多いのね。じゃあお願い」

「占いと言っても星を読むだけ……えーと、姉さんは……」


 メルフィは結局私を姉さんと呼ぶ事にした。理由を聞いたら皆母やら姉と呼んでるから、そして今の私達は従姉妹の関係だからだと……正直違和感がありまくる


「ん、ちょっとよくない。王都に行く日をもっと先延ばしにした方がいい」

「何で?」

「姉さんが嫌いな面倒事に巻き込まれる。それも結構大きな」

「ほほぅ……それってこの国の危機とか?」

「そうかも」


 何が起こるかしらないが、依頼がうやむやになる様ならそれはそれで困る


「ふふん、占いなら私も得意です。符を用いたカード占い的なものですが」

「じゃあサヨの占いはどうでた?」

「えー、良き出会いも悪い出会いもあり、面白い出来事もありと。あと予定通り王都に行けば金の巡りがかなり良さそうですよ」

「メルフィと違うわね」


 金か……一気に稼げるならいいな、面倒事と金……うーむ。どちらも当たらないって事もあり得るけど


「ラッキーワードは花畑です」

「それは私も同じ、きっと面白い事があるとしたら花畑」

「なら王都にある花畑に行ってみるかな」


 まあ花畑にいつ行けばいいか不明だけど


「じゃ、予定通り行きましょ。メルフィの悪い占いが当たっても気合いで回避すればいいわ」

「ん、所詮占い。未来は確実じゃないから当たらない事もよくある」

「そうね」


 占ったのが共に長年生きてる二人ってのが気になる所だけど。どちらが当たるか王都に着いたら検証してみよう


………


……



 あれから更に数日経った


 移動中の暇な事暇な事……景色も代わり映えしないからより退屈だった

 しかし漸く、本当に漸く王都に到着した。マオの尻を蹴ってストレス解消する日々はおさらばだ


 窓から王都の建造物や住民を観察する。王都という割にごちゃごちゃしてはいないようだ。住民達の容姿はここでも普通だな


 王都だけあって露店や屋台もそれなりにある。その並んでる店を見るとなかなか繁盛している屋台が見えた。客は男ばっかだけど……えーと、売物の名前は……!


「何と興味深い……!」

「どうかしましたか?」

「マオ、おっぱい吸いたい」

「「ブフッ!?」」


 二人ほど吹き出した

 うむ、言い方が悪かったな、確かにあれは無いわ


「わ、わたしは何も出ませんけど……お姉ちゃんが満足するならっ!」

「いらん」

「あれぇーっ!!?」

「あれよあれ、あの店で売ってるおっぱいアイス食べたい」

「……おっぱいを吸いたい方へ、こだわりのおっぱいアイス1500ポッケから……無駄に高いですね」


 普通のアイスは200ポッケ程度だから確かに高い。恐らく中身ではなく容器が高いのだろう


「さすがにあの列に並ぶのは今からでは遅くなってしまいますから明日に致しましょう」

「それもそうね、明日の朝にサヨに買ってきてもらいましょう」

「何で私があんな恥ずかしい物を買わなければ……」

「クソ女の件で殴るって言ったじゃない?おっぱいアイスでチャラにしてあげる」

「……どーもありがとうございます」


 憎憎しげに屋台をにらむサヨ、店主に罪はないぞ


「サイズでアイスの量が違うみたいですね、Aカップは私、Cはマオさん、Dがユキさん、Eがメルフィさんという所ですかね……どれに致します?ちなみにBは無条件で却下します」

「何て嫌な選択肢、普通にサイズだけ言いなさいよ」

「それでは面白味にかけますので」


 食べられる量的にはAかBなのだが、Aだけは何となく選びたくない……!という事は必然的に次に少ない容量になるわけで


「じゃあCで」

「お姉様はマオさんをお選びになる、と?」

「その四股かけて本命を決めるみたいな言い方やめろ」

「お姉ちゃんが……わたしをっ!?」

「ほら、アホの娘が勘違いする」


 顔を赤くしながらこっちを見て勘違いしているアホを正気に戻すため奇跡すてっきを顔面にぶつけた

 あぅ……と鳴いた


「とりあえず泊まれる宿を探しますね」

「そうして」


 普通な国だけあって高級感あふれる宿は無さそうだな


 そして予想通り至って普通の馬車がおける宿に落ち着いた。値段も普通の宿代と変わらないし、王都と言えどトゥース王国はこんなもんですと言わんばかりだ

 空室は余裕であったのでいつも通り大部屋を一つとった。普通の宿とはいえベッドで寝るのは久々なのでゆっくり出来そうだ


「今日のところはどうします?」

「めし、ふろ、ねる」

「賛成です、さっさとベッドで横になりたいです」

「では食事に行きましょうか」


 発言無かった面子も異論はないようなので食堂へ向かう

 外で店を探してもいいが、どうせ普通の良くも悪くもない料理の店ばっかりだろうしわざわざ宿を出て外食する必要は無い

 早い時間なので客は居ないと思っていたがちらほらと居るようだ。たぶん冒険者一行だろう




「……あそこに見たくも無い輩が居るんですけど」

「お、誰だったっけ……顔は見覚えあるけど、名前を覚える程の価値ない奴だろうから忘れた」

「確かゴーランとか言う口だけの冒険者ですよ。ほら、シリウスという冒険者の幸運の腕輪を盗んだ……」

「あいつか、盗んだ腕輪は……ばっちり着けてるわね。壊れかけを装備するとは馬鹿な奴」

「一応あれはシリウスさんの形見の品、取り返しますか?」

「いいわ、どうせ壊れて不幸になるだろうし放っておきましょう、しかし悪い出会いってまさかアイツか」

「恐らく」


 シリウスの腰巾着から偉そうな冒険者にランクアップはしてるようだ。仲間と思われる他三名に上から目線で会話している。少し聞き耳を立ててみよう


「……の子供は高く売れるぞ」

「旦那、売れるにしても捕らえるのが厳しいんじゃないですかぁ?」

「ふん、俺を誰だと思っている?俺に任せておけ」

「さっすがゴーランの旦那だな」


 聞こえた単語だけで考えると子供を誘拐して売る、みたいな感じだ。よくまぁあの内容を聞こえる声量で会話できるな


「子供は高く売れるそうよ。今時奴隷制度とかあるわけ?」

「ある所にはあります。サード帝国とか……」

「うわー……あるんだ。自国が平和なだけに聞いただけじゃ実感わかないわ」

「それで良いかと。奴隷など無縁のままが吉です」


 奴隷と聞くと大多数は良い感情を持たないが、金で雑用係を買えるならいいんじゃないかと思う。ウチにはユキが居るから不要だけど


 などと話していたらゴーランとかいう不細工が手下を連れてドスドス不快な足音を立てながら出ていった。こちらには全く気付かなかったな


「ただでさえ普通な飯が不味くなりそうね」

「そ、そういうのは小声でどうか……」


 客の方が偉いんだからそんなに気にしなくていいのに……ゴーランなんぞに思考を使っていられないのでメニューを決めて早く食おう。そして今日はさっさと寝る

 特に目を引くメニューは無かったので無難にパスタ系にした。注文して二十分ちょっとで頼んだ品がきたが、見た目は何とも普通だった。これは間違いなく味も普通……不味くないだけマシなんだけど


 食事が終わるとさっさと部屋に戻り、今日の所は寝る事にした。風呂は朝起きてからでいいや……私の身体は風呂ではなくベッドを求めているのだ!……という訳で皆におやすみと伝え一番乗りで寝る事にした



☆☆☆☆☆☆



「今日の予定を言うわ」

「もう昼過ぎてますけど」

「文句言うなら起こしなさいよ」


 よく寝た……と思って起きたらすでに昼だった。予想以上に馬車の中での長い生活で疲労がたまっていた様だ。でも昼起きが私のデフォなので良く考えたらいつも通りだ


「えーと……ユキとメルフィが依頼を終わらせてくる事とパーティ加入申請ね」

「わかりました」

「サヨとマオはおっぱいアイスの買出しに行った後は適当に過ごせばいいわ」

「急に雑になったんですけど……」

「お姉ちゃんはどうするんですか?」

「私はあなた達がアイスを買ってきたら花畑にでも行くわ」


 二人が推す花畑にいけば何かイベントが起こるかもしれない。行ったその日に何か起こる可能性は低いが、無かったら無かったで次の国にでも向かおう。当たるか不明な占いの為に何度も花畑に通うつもりはない


「じゃ、そういう事で解散」

「花畑にはお一人で行かれるつもりですか?」

「ええ、いざって時は転移符を使うから大丈夫よ」

「……前科があるので心配ですが、まあリディアさんの御守りもありますから信用致しましょう」

「ユキさんは過保護すぎなんですよ、お姉様は馬鹿じゃありませんからそうそう怪我をする事はありませんよ」


 このペタン子め……!私の今までの負傷回数を知っての発言か。というかユキの過保護は和らいでいる方だ。以前なら絶対一人はダメって言ってたし


 話が終わった所でそれぞれの用事を済ませる為に宿を後にした。私はアイスが届くまで二度寝である


………


……



 サヨと付き添いで一緒に行ったマオが無事にアイスを買ってきたので溶けない内に花畑へ向かう。サヨがこのアイスは人の胸に押し付けて食べるのが通だと店主から聞いたと言っていた。それなら本物吸えばいいんじゃね?と思うが私としても他人の乳なぞ吸いたくないがアイスなら良いかと思うので需要はありそうだ


 で、肝心の花畑がどこにあるのか知らないので転移符では行けない。そんな時は奇跡ぱわーの出番である


 ちょっと試したい事もあるし丁度いい。奇跡ぱわーだけでも花畑に転移は可能だが、それでは気絶時間が結構長い。そこで転移符が補助の役割に使えるかを実験してみようと思う。上手くいけば転移分の気絶時間は無しになりそう


「上手くいけばだけど。じゃあ適当な花畑に転移してちょうだい、奇跡ぱわー!」


 転移符も場所は指定しないが発動しておく。実験が成功しようと失敗しようとアイスが溶けない内に起きれればいいなぁ……



☆☆☆☆☆☆



 目覚めたら何ともカラフルな花畑にいた。悪く言えば無節操に花を植えたって感じだ

 遠くに防壁らしきものが見えるのでどっかの屋敷の敷地内にある花畑って感じだが、広さがかなりあるので相当お金持ちなと思われる。


「おー……アイスが溶けてない。という事は数分の気絶で済んだみたいね」


 とりあえずアイスでも食べて待っていよう。何となく正座して食べる

 花畑に居る幼女とか絵になりそうなのに食べてるのが卑猥なアイスってのがぶち壊しだよなぁ


 しばらくちゅーちゅー吸ってたら人の気配がした。ひょっとしたら良い出会いとやらかもしれないな

 私に気付いたのかこちらへ近寄ってきた。と言っても無駄に広いためまだ距離は大分あるが……向こうから近寄ってくるなら私が歩く必要は無い、なのでその場で座ったままアイスを食べつつ待つ


 少ししてある程度距離を保った所でその人物は止まった。茶髪に水色のワンピース、顔はマオみたいにおっとりしてそうな顔


「えっと、何をしているのかな?」

「おっぱいアイス食べてる」


 もの凄く困った顔になった。第一声として失敗したみたいだ

 しかしめげずに話しかけてきたので適当だが返事を返してやる。大部分を聞き流していたけど、一つ聞き逃せない単語があった


 え?こいつ姫なの?


 あまりにも一般人にしか見えなかったから無礼な態度をとってしまったんだけど。まあ姫だろうと私にとっては敬う対象じゃないからいいや。とはいえ姫は姫……田舎者には人生で一度会えるかどうかの存在だ。押しに弱そうだから色々やらせてもらおう


 とりあえず隣に座らせてその上に乗った。ついでにアイスを胸に押し当てて赤ちゃんプレイしてみたが抵抗は無かった。いくら見た目子供のする事とはいえ大らかすぎるだろう……というかこの姫、私に対してめっちゃビビってるのは何でだ?


 途中こいつの侍女らしき女性が現れたが、盛大に勘違いして走り去って行った。姫さんはかなり慌てていたが動くなと言うと素直に聞く……他国の姫ならすでに突き飛ばしてるだろうに変な姫だ


「けぷ」


 やはりアイスの量が多すぎた……粗末に出来ないから全部食べるけど。ゲップしたら姫さんが心なしか悶えた様な気がした


「やっぱりCカップは多すぎたわ、Aカップにしとけばよかった」

「その内容でアイスの話って分かる人はいないよ」


 ごもっとも……再びちゅーちゅーアイスを吸い出したら騒がしい足音が聞こえる、姫さんも気付いた様で何事だろうと辺りの様子を伺っている

 少し経つと兵士が駆け込んできて姫さんに向かって叫んだ、どうもコリーア大森林から魔物が攻めてきたらしい……これは面白い事じゃなくて面倒なことの方か


 ん?何か上にいるぞ?

 日の光がまぶしいので薄めにしてじーっと見てみると、昔本で読んだグリフォンらしき生物が……てか鷲の頭にライオンの身体なら間違いなくグリフォンだろ……まさかこんな所で幻の生物が拝めるとは!


「く、ふふ……昔読んだ本の絵そのままね。実物を見れるなんて良い経験になったわ。なるほど……確かに面白い」


 流石はサヨとメルフィの占いと言うべきか……ここに居合わせた以上冒険者として魔物を討伐しなきゃいけないのは確かに面倒だが、珍しい幻獣を見れるだけ二人を信用した価値があった


「てかこの国の結界はどうなってんのよ」

「こ、こんな普通の国の普通な結界何か幻獣相手じゃ役に立たないって!は、早く逃げなきゃ!?」

「まあ落ち着きなさいな、どうもすぐに襲ってくることは無いみたいだし今のうちに最善の手でも考えましょう」

「す、凄い落ち着いてるね……」

「冒険者やってると色々経験するのよ、今更グリフォンぐらいじゃねぇ……」

「冒険者だったんだ……全く想像出来なかったよ」


 ぶっちゃけ経験とか嘘っぱちで御守りがある事による安心感なんだけどね

 空中を旋回しながら様子を見ていたグリフォンだが、どうやら狙いを完全に私達に付けたようで急降下で突進してきた


「まだアイス食べてるのに何て空気読めない奴……お姫さん、死にたくなければ私を盾にするといいわ。どうせ私は無傷だろうし」

「う、うん」


 この姫さん肯定の返事をしといて私を庇う様に抱きしめグリフォンに背を向けた


「こら、それじゃ死ぬわよ」

「ごめん!小さい子を盾にするとか出来ないっ!」


 ……何となく誰かに似てると思ったが、この姫さんはマオに似てるな。言いなりになる所やビビリな所、子供に何か甘い所とか


 すでにグリフォンは目前、転移符で逃げようかと思ったが気が変わった。ここで逃げたら姫さんの花畑が荒らされるかもしれない……無駄な事とはいえ庇ってくれたし、礼代わりに助けてやろう

 そう考えてすぐさまグリフォンに奇跡すてっきを向ける


「?」


 向けたはいいが視界の端から飛行する物体がチラっと見えた、と思ったらグリフォンにぶつかった。完全に不意を突かれたグリフォンはそのまま花畑に落下……せずに通路の方まで吹っ飛ばされた


「危機は去ったみたいよ?放しなさい」

「え?ほんと?」


 緩んだ手を振りほどいて姫さんの腕から脱出する。姫さんが思いっきり抱きしめるもんだからアイスの中身がブニュっと出て服に引っ付いた……最悪。気を取り直してグリフォンにぶつかった物体の元へ歩を進める


「良き出会いねぇ……あの不細工は悪い再会であなたは良い再会か」


 目の前には青い羽根をパタパタさせてる蝶が一匹、中継都市で会った時よりさらに小さくなって再び戻ってきた。山で蝶となって初めて会った時は50cmだったのに今は30cmほど


「おかえりマイちゃん、狙った様な良いタイミングだったわね」

「タダイマ」


 マイちゃんはやっぱり会話がバッチリ出来るようになって私達の元へ帰ってきたようだ

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