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幼女と蝶

 朝になって目が覚めた。昨日はうるふハーレムと戯れるのが忙しかったせいか、疲れていつもより大分早めに寝た。

 夜更かしもせずに早めに寝て朝きちんと起きる。こんなの私じゃない


 すぐ隣に人の気配がする。案の定ユキが私のベッドに潜り込んでいるようだ。ツインベッドの部屋を借りた意味がない。


 しかし、早起きしたのは逆に都合が良い。これなら昼前には眠くなるかも知れない。昨日考えた作戦の開始時刻が早くなるに越した事はない。


「…ユキより早く起きるとか初めてね」


 首だけ横を向けば2年間毎日見続けた美女の初めて見る寝顔。とりあえず起きようと思ったら身体をがっちりホールドされてるので首しか動かす事が出来ない。心なしか布の感触が少ないような…



「起きなさい、ユキ。主人より遅く起きるなんて従者失格よ」

「……ん…はぃ…」

「さっさと起きろ!外は快晴っ!絶好の旅行日和だわ!」



 朝っぱらからやる気出すとか何年ぶりだろうか。ユキの手を振りほどき、珍しくだらしない姿のメイドを起こすべく布団を取っ払う。



「さあさあ!さっさと準備して行くわよっ!今日こそは町の入り口でつまずく訳にはぎゃあぁーーーーーーーーっ!」



そこには全裸で眠る美女の姿がっ!



「うおぉぉいっ!あなた私に何をしたっ!?疲れて起きれなくなるまで私に何をしたのっ!?」

「……んー……おはようございます……」「起きろ!起きなさい!起きて私に謝罪と慰謝料を寄越しなさい!」

「ご主人様は何をそんなに怒っていらっしゃるのでしょう?」


 何をだと!?朝起きて全裸美女に抱きつかれてたら誰だって怒るっ!……ん?怒るか?……いいえ、ご褒美です






「なんだご褒美か」

「納得して頂いて良かったです」






「いやいや、ないわ。危うく納得しかけたけど、何故全裸で私の横で寝てたか速やかに答えなさい」

「ご主人様…お気づきになりませんでしたか?私はご主人様の荷物以外何も持たずにご実家を飛び出してきたので、洗濯をすると着替えがないのです」

「そこは買おうよ。貯金いっぱいあるじゃない。なぜ裸族になる道を選ぶ」

「私の貯金はご主人様のものなので許しなく使う事はあり得ません」

「そう、でももし人に見られて貴女の主人はメイドを全裸で侍らす趣味があるとか噂されても困るから、今日中に服と下着を数着買いなさい」

「かしこまりました。しかし、ご主人様。裸で寝るというのも中々の気分転換になると思います」


何か言い出したぞ、このメイド。



「敬愛するご主人様に服という壁を取り除いて密着した時…私は今まで以上の至福を味わいました」

「へー」

「ご主人様の素肌と私の素肌が触れ合ったら、それはもう極上の気分を味わえるかと」

「ふーん…で?」



「ご主人様も全裸になりましょう」

「断る」



「ではご主人様の為に私が脱がす事にします」

「何が私の為だ!嘘つけ!自分の欲望の為じゃないの!」

「違います!全裸で抱きあって頂ければ御納得して頂けますからっ!さぁご主人様っ!スッパ幼女!スッパ幼女!!」

「うおぉぉぉっ!誰がスッパ幼女になるかぁっ!ぶっ倒れなさいっっ!奇跡ぱわあぁぁぁーっ!!」



★★★★★★★★




「申し訳御座いません。寝ぼけておりました」

「嘘おっしゃい。私を脱がさんとする妖しい瞳の輝きはとても寝ぼけてるとは思えなかったわ」

「流石ご主人様、お見抜きになられますか」



 このメイド、反省の色がない。しかし今はユキに構っていられない。

 気絶から目覚めたらすでに昼前なのだ。



「滅多にない早起きが無駄になったわ」

「また早起きをすれば宜しいかと」



 誰のせいだと。簡単に言うが私に早起きを求めるのは母にお金の節約を説得するくらい難しいぞ





 ユキが全裸から普段のメイド服に着替え、準備も整ったようなので、そろそろ出発する事にする。私はユキに抱っこしてもらい、いざ出発だ!



「手筈通りにいくわよ。私は寝るから後はお願い」

「かしこまりました」



寝てるだけの簡単なお仕事です



★★★★★★★★★★



 どのくらいの時間が経ったか、私は眠りから目を覚ました。

 景色を見れば高速でめまぐるしく変わっていき、よく分からない。というか…



「酔う、ちょっと、ゆっくりでお願い…」

「お目覚めになられましたか。まだ目的地には少々かかります」



 私が起きた事を確認し、走るスピードを緩めてくれた。それにともない周りの景色も見えてくる。どんだけのスピードで走ってたんだユキは…



 木、木、木。見渡す限り木ばかりだ。山の中なんてそんなものか…他に何かないか見渡してみる。


 ユキが走っている足元を見れば人が足を運んでるとは思えない草むら。道なき道をゆく…何処に行く気だこのメイド。まさに未開の地へ行くつもりか


 何か生き物はいないか探せば、見えるのは普通より随分大きな蝶のみ。羽根の色は綺麗な青だ。

 鳥類と思われる声はするが、木に隠れて姿は見えない



「…特に見て楽しいものは無いわね…私はまた寝るから」

「かしこまりました。ゆっくりお休みください」


 おんぶの格好で寝ればまた違った寝心地が楽しめるか考えながら、私は再び眠りについた。



……




「再び起きたらまだ着いて無かったの巻」「申し訳ありません。これ以上速度を上げるとご主人様の身体に負担がかかりますので」

 これ以上早く走れるのか…是非ともやめて欲しい。

 ちなみに今回は私が起きる気配を感じたのか、目を開けたらゆっくりめに走っていた。


 景色はやはり代わり映えしない。木と先程みた蝶だけだ。魔物に襲われるとかないのか?



「ねえ、山の中なんだけど、魔物に襲われたりしないの?」

「この辺りの魔物では私の早さについてこれませんので。あと、一応魔物避けの結界を張ってます」


 ふーむ、ぶらっくうるふ以外の魔物を見た事ない私としては他の魔物も見たかったなぁ…


 ユキの肩越しに見る風景はさっきから何も変わらない。チラ見で良いから魔物見たい。



…さっきから何も変わらない?何か違和感が



「ユキ、ちょっと倍速で走って」

「宜しいのですか?」

「目を瞑ってるから大丈夫」

「かしこまりました」


 目を瞑ってるから分からないが、恐らく高速で疾走してるのだろう。

 しかし、何でこんなに衝撃が少ないのか…変な所でチートを発揮するメイドだ。おかげで良い抱かれ心地です。



「もう良いわよ。速度を緩めて」

「わかりました」



 目を開ける。そしてユキの肩越しに後方を見て違和感の正体を見つけた。




「あの蝶…追いかけてきてる」

「蝶…ですか?……あ、あの蝶ですね。恐らくあれはルリイロアゲハという蝶かと」「ほー…あの綺麗な青色はルリイロって言うのね」

「紫がかった青を瑠璃色というみたいです」

「物知りね~…で?あれも魔物?」

「いえ、ルリイロアゲハは普通の昆虫です…が、あの蝶は少々おかしいですね。本来ルリイロアゲハは5cm程の蝶なのですが…」

「あれはどう見ても50cmはあるわね」

「はい」



 ふーむ、ルリイロアゲハが突然変異して魔物にでもなったのだろうか…いずれにしても…



「ユキのスピードに着いてこれるとはただ者じゃない」

「ですね」

「このまま追いかけられても気分が悪いわ。止まって迎撃しましょう」

「かしこまりました」



 ユキが止まり、蝶の方を向いてどこからか鞭を取り出し迎え撃つ体勢になる。

 蝶も止まって羽根をパタパタさせて停止する。



「止まったわね」

「止まりましたね」



 どうも襲いかかってくる気配がしない。

 何となく手を差し出してみる。


 するとルリイロアゲハはヒラヒラとこっちに飛んでくる。

 警戒するユキを制し、近づいてくる蝶に集中する。



 攻撃を仕掛けてくる素振りをみせず、ルリイロアゲハは私の手に止まった。



「害はなさそうね」

「…その様です」



 ユキは何が起きても対処出来る様に警戒は解かない。

 私は何故かこの蝶が私に危害を加えるとは思えなかった。 …なんだろう、何か懐かしい感じがする。



「私は何だかこの子に会った事がある気がするわ」

「私の記憶にはございません。会った事があるとしたら私に会う前の事でしょう」



 ユキに会う前か、ルリイロアゲハ何て蝶は今日初めて見た。つまり今の姿は知らない。蝶が成長する前は…



まさか…



「マイちゃん…?」



 手の上に止まる蝶は肯定するかの様に羽根をパタパタさせた。



★★★★★★★★★★



「つまりこのマイさんはご主人様が昔飼っていた蝶…という事ですね」

「正確には芋虫ね。ちなみに出会ったのはユキと同じで学園の裏にある森の中よ」


 森と言っても五丁目町の中にある森なので魔物はいない。野生の小動物は居るが


「同郷の方でしたか」

「同郷って…そう…なるの?しかし…てっきり死んだかと思ってたけど、立派に成長したわねぇ…」

「なぜ今まで離ればなれに?」

「そうね…マイちゃんは私が初めて奇跡ぱわーを使った子なんだけどね…」

「む、何だか嫉妬します」

「まあ聞きなさい。元気になれって奇跡ぱわーを使って瀕死のマイちゃんを助けたのだけれど…初めてだったから加減がわからなかったのか、それはもう元気になったわ。身体が10倍くらいに成長するほど」

「10倍…ご主人様は最初から凄い力をお持ちだったのですね…流石です」


 ユキは流石です以外に誉める言葉を知らないのだろうか…。

 しかし懐かしい…まさか生きて再び会えるとは。マイちゃんとの突然の別れは10倍に成長した次の日という早い別れだった。





 当時はまだ朝にちゃんと起きていた。日課になっていたマイちゃんにおはようの挨拶をしようとすると篭の中で飼っていたマイちゃんは居なくなっていた。


 もしや大きくなって篭の中だと狭いから出ていったのかと思い嘆いていたが、部屋から出てこない私を呼びにきた母が篭の前で項垂れてる私にこう言った。




『何か急に大きくなって気味悪かったから塀の外の森に投げ捨てた』




 当時6歳の可愛い娘にこの仕打ちだ。子供だろうがブチ切れる時はブチ切れる


 人生最大の親子喧嘩が始まった。容赦なく奇跡ぱわーで電撃を浴びせ、起きたら奇跡ぱわーで水の弾丸を浴びせ、また起きて死なない程度に燃やした。

 最終的に土下座しながら泣いて謝ってきたので許したが…。




「思い出したら腹立ってきた」

「それなりの制裁はした様ですので許してあげては如何でしょう…こうして再び会えたのですし」

「そうね。マイちゃんとはまた一緒に居られるから良しとしましょう」

「はい。では引き続き目的地に向かいますね」

「うん、お願い」




 懐かしい友を新たに仲間?に加え、私達は先を進む事にした

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