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幼女、割と苦戦する

「とりあえず皆さんがボロボロな経緯を教えて欲しいです。ユキさんまでやられてるとは珍しいので」

「そんな暇ないんだけど……まぁいい、手短に言うわよ」


 皆ボロボロ……マオも実はボロボロになっている。何故かと言えば先ほどの魔法か何かはペンダントが守ってくれたが、魔法を受けた拍子にペンダントを落とした様で御守り無しで吹っ飛ばされた結果が擦り傷だらけの様と言うわけだ


「まず、サヨが転移した後にマオとメルフィが誘拐された。その後洗脳されて戻ってきた。二人を眠らせたら犯人が現れた。犯人をウンコで撃破」

「待って下さい」

「手短に言うって言ったじゃない」

「すいません……気のせいか、物凄い倒し方を聞いた気がしたので……気のせいですね」

「続きを言うわよ?ウンコで倒した後、犯人の男の体内からあそこに居る女が登場。ハトであと一歩まで追い詰めた所でマオに邪魔される。でも二人とも自力で洗脳を解いた。しかし呪いを受ける。

 この呪い……伝染るんです。その後狂った女がゾンビをいっぱい召喚して今に至る……分かった?」

「気のせいじゃなかった上に更に意味不明な言葉が……ちょっと待って下さい、整理しますから」


 自分で言ってて理解不能だから整理しても意味ないと思う。サヨはウンウン唸りながら考えてる……少し待つと考えが纏まった様で口を開いた




「つまり……ハトの糞から発症し、尚且つ伝染する病気がある、と」

「えぇ、医者も言ってたから間違いないわ。ハト以外の鳥からも伝染するみたいよ……風邪に似た症状で分かりづらいらしいから注意ね」

「話が変わりすぎです」


 ツッコミが入った所で真面目な作戦会議に戻る

 クソ女は今の所こちらを気にする素振りが無いので放置だ


 だがいざクソ女を殺す一番良い方法を考えようって時に周りが騒がしくなってきた。原因はゾンビではなく、この町の住民達だ


「騒がしい……人払いの結界が無くなったのかねぇ」

「あ、それ壊したの私です。妙な結界があったので破壊して来ました」

「お前が原因かい」


 犯人はサヨだった。まあ人払いの結界なんか壊れた所で問題ないか


 住民達はいきなり現れたゾンビを目にすると、普通じゃないっ!……とか叫びながら若干嬉しそうに逃げていた


「この分なら騎士団もその内やって来るでしょう……丸投げして逃げますか?」

「私が逃げると思う?」

「いいえ、言ってみただけです。家族を傷つけられた時のお姉様が制裁を与えないまま逃げる訳ありませんからね」

「その通りよ」


 そういえば母の時はサヨ達が主犯だったっけか……ずいぶん前の事の様に感じる


「さて、今後の行動を大雑把に言うわ。ぺけぴーをメルフィの護衛にして残りはクソ女に突撃。

 クソ女をぶっ殺したらメルフィとユキの呪いを奇跡ぱわーで解呪、以上これだけよ。メルフィの容態的にあまり時間はかけられない」

「迷惑をかける……」

「恩人は気にせず寝てなさい」

「あの女を殺した後ゾンビはどうします?指揮官が居なくなれば無差別に襲い始めると思いますが」


 その点も考えてある……私が気絶した後になるが、問題なく終われる筈だ


「馬鹿ね、ウチにもゾンビを操れる優秀な娘がいるじゃない」

「……なるほど、メルさんならゾンビ達をどうにか出来ますね」

「メルフィ、メルじゃなくてメルフィ」

「親しい者……両親はメルフィって呼んだそうよ。今の家族は私達だからメルフィって呼んであげなさい」

「わかりました。これから家族として宜しくお願いします、メルフィさん」

「メルフィさん宜しくお願いしまぁす」

「宜しくしてあげます」

「宜しく」


 と、挨拶も済んだことだし行動を開始しよう

 邪魔なゾンビを無視して進む、それが可能なのはお馴染みになりつつある空からの移動だな


「サヨの符で飛んで下から攻撃ある様ならユキが結界でガード、何か定番になりそうね」

「一番楽な攻め方ですし」

「あ、町に入る時に会った兵士達が来ましたよ」


 そりゃ町がこんなだから来るだろう。しかし人数が二十人にも満たないためゾンビ達を相手にするのは数の上でも質の上でも無理っぽい

 こちらに向かって来るのは五人ほど、恐らく四組に別れて住民達を避難させてるようだ


「戦う所を兵士に見られて大丈夫ですかね?」

「流石に他国の冒険者に干渉はしないでしょう」

「でもこっちに来ますよ?」


 こんな時に何の用だ?多分力を貸してくれとか言われると思うが、それは拒否。私達は私達で勝手に行動する


 程なくして兵士達が私達の前にやってきた


「君達、ボロボロじゃないか……特にそのふつくしい少女なんて重傷だ」

「何処から現れたか不明だが、このゾンビの数は普通じゃない。勝ち目は無いから君達も逃げるんだ」

「お断りよ。私達の事はほっといていいわ」

「まさか戦うつもりか?この数的不利な状況で……その度胸、普通じゃないっ!」


 この国の奴等はホント普通普通うるさいな……私達は無視してさっさと住民を避難させて逃げればいいのに


「リーダー……この町の危機を他国の冒険者、しかも女の子達ばかりに任せきりでは情けないと思いませんか?」

「え?別に……?」

「よし、我々も手伝うよ!」

「こら、待たんか」

「黙って下さい。ここで冒険者達が戦って我々兵士が逃げる様では他国どころかこの国でも笑い者です!」

「そうだ、良く言った!恥さらしになるくらいなら名誉ある死を選ぶっ!あそこにいるゾンビの女の子の胸を揉みながら殺される方がいい!!」

「どこが名誉ある死だ」

「リーダー!やってやりましょう!!」


 何か五丁目の冒険者達と気が合いそうな奴等だな。邪魔くさいが、参戦するなら囮にぐらいなって貰おう

 というか結界の外で必死に逃げてる住民がいるが、無視していいのか?


「……くそ、分かったっ!!いくぞ野郎共!!狙いは女ゾンビのおっぱいだっ!!野郎ゾンビは無視して突撃だッッ!!」

「「「「応ッッッ!!」」」」


 駄目だこいつら

 囮にもなりそうにない。こいつらの頭の方が普通じゃないわ


 兵士達が雄叫びと共に駆け出す……が、意気込みだけは良かったが結界の外でうじゃうじゃ固まっているゾンビを前に勢いが無くなった。何しに来た

 そのゾンビ達だがもう湧き出てくるゾンビは無さげだ。あのクソ女は宙に浮き、やらしい笑みでこちらを見ている。


「サヨ、今どれくらいゾンビがいるか分かる?」

「200体ほどです」

「ん?案外少ないわね……中継都市にはもっと沢山いたのに」

「あの女が操れる限界が200体なのだと思います」

「そういう事……だから同じくゾンビを操れるメルフィが欲しかったんだ」


 軍隊で言う所の指揮官が足らないという事だな。メルフィが何体操作できるかは不明だが、洗脳されたままだったらもっと多くのゾンビを相手にさせられてたんだろうなぁ


「じゃあ私達も行きましょ」

「よいしょ……ではお乗り下さい」


 いつもの大きな符に乗り兵士達の頭上を通過する。下を見たら唖然とした表情をしていた。そりゃ紙で空飛んでたら驚きだよな


「……他国ってすげぇな」

「だな……あ、あそこで住民が逃げてるから保護しよう」

「あの娘達が張った結界に避難させるぞ」

「了解!」


 兵士達は正気?に戻ったのか本来の仕事である住民達の避難誘導を再開した。邪魔されるよりはいいな


「杖を構えています。何か仕掛けて来ますよ」

「衝撃注意ね」

「……衝撃で済めばいいですが」


 ユキにしては頼りない発言だ。それほどクソ女は魔法に関してだけは脅威って事だ

 クソ女がこちらを見る目を薄目にした時、楽しそうに言葉を紡いだ


「結界もろとも吹き飛んじゃえ」


 同時にバリンッッ!……と結界が破壊された音が聞こえ吹っ飛ばされそうになる。サヨがすぐに新たな結界を張ろうと符を取り出したが


「爆」

「……ちっ!!」

「ちょっ!?お姉様!?」


 サヨが符を貼るまでは間に合わない。なので御守り持ちの私が防御する


 あっけなく吹っ飛ばされましたけどねー、痛くはないけど

 私は符から落下する……皆が助けようと行動を始める前に、念のため用意していた転移符を見える様に掲げた。気にせず進む様にジェスチャーで伝え、それを見てホッとした様に皆は再びクソ女の元へ向かう


「さて、どこに転移する……う?」

「っ……はぁ……ぐ……!」

「メルフィ……!とりあえずぺけぴーの所まで転移しましょう」


 落下しながらいざ転移しようと思った時、何かに抱えられたと思ったらメルフィだった

 自分が動くのも辛いだろうに私を助ける為に飛ぶとは……


 転移符でぺけぴーの元まで戻ってきた。あの兵士達が来たら面倒そうだから、さっきメルフィの背中から現れた羽を隠さないと


「ごめん、また呪いが伝染った」

「まだ動けるから問題ないわ」

「また、貰い受ける……」

「それ以上はやめときなさい。それよりその羽をさっきまでみたいに仕舞ったり、精霊魔法で見えなくなる様に出来る?」

「……精霊、羽を……透化」


 と言ったら消えた。透化って事は透明になってるだけかと思ったが、背中に手をかざしても何もないから羽を透りぬける様にもなってるくさい

 この謎仕様については後ほど聞くとして、どうしたものかとクソ女の方を見ればユキとサヨ、おまけのマオを余裕で相手にしている


 ユキの鞭も全く当たらない……というか不自然な動きをしてクソ女から逸れる、サヨはいきなり飛んでくる多種多様な魔法を防ぐのに精一杯ってところだ


 マオはまごまごしている




「奇跡人って案外大したことないのかもね」

「……そんな、事……ない」

「キツイなら喋らない方がいいわよ」


 あの娘達も馬鹿正直に真正面から攻めるからダメなんだ……クソ女は確かに強い、だが馬鹿

 気を逸らせてからの不意討ちがかなり有効な筈、というかそうしないと倒すのが難しい


 クソ女の注意を引く手を考えていたらふとクソ女と目があった……やばいんじゃない?


 と思ったらやっぱり私達の方を目掛けて白い炎らしき魔法が放たれた。結界の外から爆発音と共に割れる音。予想通りあっけなく結界を破壊される


「ゾンビが来るわ、転移符で移動するしかないわね」


 兵士と住民達も結界が壊れた事で慌てて再び逃げ出した。私達も早速転移しようとした時


「危ない……っ!」

「うきゃっ!?」


 第二波である魔法が飛んできた。いきなり来たので油断してもろに食らう……空気の塊がぶつかった気がしたので多分風魔法だ


 そんな事より今ので転移符が飛ばされたのが痛い……予備に数枚持っときゃ良かった


「このままじゃ私はともかくメルフィが危険ね……ユキ達が戻って来るとは思うけど」


 今回も結構な距離を吹っ飛ばされていたので急いでメルフィの元へ戻る

 ゾンビはすでに近くまで迫っていた。とりあえずぺけぴー無双に賭けようか、あんまり存在感ないけど割と強いし


「幼女達を見殺しにすることなぞ俺には出来ん!ここは俺に任せて逃げろっ!!」

「おい馬鹿!!」

「ふぬううううぅぅぅぅっ!!」


 ……などと考えていたらこの町の兵士の一人がゾンビの群れに突っ込んでいった。無茶しやがって……

 だが意外な事にあっさりやられるという展開にならず、どんどんゾンビ達を掻き分けて突っ走っていく


 そして急に止まったかと思ったらゾンビにしては綺麗な女に近付き、後ろから胸を鷲掴みにした。まさかの有言実行である


「俺がおっぱいを揉んでる内に逃げるんだ!!」

「お前って奴は……!何て馬鹿なんだっ!」

「リーダー!何故かゾンビ達が止まっているので住民達を外に避難させるチャンスではあります!」

「うそぉ!?」


 確かにゾンビ達はおっぱい揉まれてる女ゾンビの方を見ながら止まっている……何でだろうか


「てか、あんなのに助けられるとか屈辱なんだけど」

『くるっくー』


 喋れないメルフィに代わってぺけぴーが同意してくれた

 今の内にどこかにいった転移符を探そう。吹っ飛ばされた距離が結構あったため、広範囲を探すハメになったが案外あっさり見つけられた


「よし……!?」


 メルフィ達の元へ再び戻り、転移する前にユキ達の方を確認したら丁度サヨがクソ女の攻撃を左肩に食らってしまった所だった。まさか人外二号までダメージを受けるとは……


「二人が危ないわね……爆薬を使うか」


 着火して丁度クソ女の近くで爆発する様に時間調整をする。たぶん八秒くらいで投げれば丁度いい気がする。ただ、私では届かないので


「ぺけぴー、私が合図したら爆薬をクソ女目掛けて蹴り飛ばしなさい。ユキ達の命運はあなたの脚力にかかってるわ」

『くるっくー!』


 かなり距離があるが、ぺけぴーのこのやる気ならイケる!……筈

 導火線に着火し、八秒くらい経ってから叫ぶ


「今よっ!」

『くるっくーっ!!』


 唯一の懸念事項であった蹴った衝撃で爆発するか破裂してダメになる、という事はなく爆薬はクソ女の方へ一直線で飛んでいった


 そして狙い通りクソ女の付近、気付いて爆薬を魔法でどうにかする前に爆発して隙が出来る

 すかさずユキがクソ女の右肩から左脇にかけて鞭で切り裂いた。クソ女は落下していくが、さっき斬って生きてたしどうせ死にはしまい


「お?……うぉ!急に動き出した!?」

「おいどうしたっ!」

「女ゾンビが急に……!おっぱい揉みながら引きずられますっ!」

「あほっ!手を離せばよかろう!」

「む、無理です!病み付きになって離せません!」

「ダメだアイツ……何とかしないと!」


 何ともならんだろ

 兵士はほっといてあの女ゾンビだが、どうやらクソ女が落下した方へ向かっているようだ。クソ女を守る為か?

 他のゾンビ達も女ゾンビに続き私達から遠ざかっていく……まるで女ゾンビに従ってる様に


「まあいいや、ユキ達の所に転移するわよ」


 ちょっと女ゾンビが気になったが、今はユキ達の方を優先して転移した


……



 ユキ達も地上に降りていたので転移先は地面の上だ。サヨの肩は赤くなっているが、傷自体は塞いだようだ


「だらしない」

「ぅ……油断しました。すいません」

「お母さんのおかげで助かりました」

「また首を落とさなかったわね、さっき斬っても無駄だって分かったでしょうに」


 過ぎた事を気にしても仕方ないが。倒れたクソ女はと言えば、サヨが動けない様にと符で作った槍で縫い付けられた格好に……

 何本刺さってるか分からないが、軽く二十はある。怪我の恨みが割とあったようだ


「流石に刺しすぎね」

「しぶといのでこのぐらいはやらないと」

「まだ生きてるし確かにしぶといわ」


 顔を見ればこんだけやられてるくせにケヒケヒ笑っている……何が楽しいのやら


「ご機嫌いかが?」

「くひひ、痛い……でも痛いって事は生きてるんだよ?」

「良く喋れるわね、何者だって話よ」


 会話も割と意味不明だし、まるでヤバい薬をやってる奴と話てるみたい


「あまり不用意に近付かない方が……」

「大丈夫大丈夫」


 どんなラリった顔をしてるか見てみたくなったので覗き込む

 ニヤニヤ楽しそうに私を見ているが、動けないため攻撃をする素振りはない……結構珍しい紫色の目とチラッと合った時、何か見えたような……?


 もう一度良く見ると……数字?

 目の中に数字があるようだ。何で目ん玉に数字があるのやら……肝心の数字は


「27……?」

「あっはははははははははは!!!」

「目を、合わせてはダメ……!」

「はっ!そうです、ダメです!!」


 もう合ってるんですけどー?

 お……?何か視界がぐらぐらしてきた。立ちくらみした時の様に視界が白く……もしや洗脳?


 頭がズキズキしてきて気持ち悪くなり思わず地面に座り込む……意識が無くなったらヤバそうだな……ああ、頭痛い


 頭の中を何かが這いずりまわっているかの様な不快感、それを受け入れれば楽になれると漠然と感じる……意思の弱い者はこれをあっさり受け入れて洗脳されるんだろう……ならキツイが我慢だ


 周りで何か言って喧しいのが余計頭に響いてしんどい……しんどいが、私が洗脳なんかされたらマズいから耐えてやるか!

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