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幼女と触手

 馬車は通れないが今回はぺけぴーも同行している。留守番ばかりじゃ可哀想だし


 廃虚と言えど、ちゃんと建物の形を残してるのもあればバラバラに壊されてる建物もある。中には燃えたのか黒ずんだやつもあった


「道路がボコボコね、歩きにくいったらないわ」

「抱っこされてて何を仰いますやら」

「あんたらの事を考えての発言だってのに姉心のわからんグロリアね」

「それは気付きませんで」


 結構進んだが魔物は未だ現れず

 居ないって事は無いはずだが……人外ズに怯えて出てこないのだろうか?

 アンデッドが出てくると思ってたのに拍子抜けだ。魔物にやられた元人間の幽霊もいそうにない


「到着が遅すぎたわね……もう日が暮れそう」

「戻りますか?」

「いえ、戻ってまた来るの面倒だからここで一晩明かしましょう」

「こ、こんな不気味な場所でですか?」

「結界があるなら問題ないわよ」


 マオだけ否定的だった。一人ならともかく、皆して一夜を明かすのに何故怖がる必要があるのか


「どっか休める場所ある?」

「被害が少ない建物を探しますか」

「宿屋ばっかなのでベッドも有りそうですね、汚れてそうですが」


 宿屋か、まあ泊まるにはもってこいな場所だ。もしかしたら魔物が夜に襲ってくるかもしれないのでぺけぴーも中に入れて結界を張ろう



☆☆☆☆☆☆



 比較的被害の少ない宿屋は見つけられた。しかし中に入るとやはり汚い。血の跡と思われる染みが床にあるし、ここでも何らかの戦闘があったみたいだ


「どう?金目の物はある?」

「何しに来たんですか」

「言ってみただけよ」


 あるわけないよなぁ……貧乏が多い冒険者達が逃げる際に金目の物を忘れるとは思えないし


「一番広いですし、一階の広間でいいでしょう」

「それならぺけぴーも一緒出来るわね」

『くるっくー!』

「灯りが無いともう暗いだすなぁ」


 明るいと魔物ホイホイになりそうだがどうしたもんか


「魔物がこの部屋に入れない様に結界は張った?」

「すでに」

「よろしい。なら明るくしてもいいでしょ」


 ふむ、今日は早く寝るか。

 どうせジッとしててもつまらないし。


 今の時期は日が暮れるのが遅い。もう夜になるって事は今が夕飯時だろう


「夕飯食べて少ししたら寝ましょう。夜明けと共に探索再開よ」

「おぉ……お母さんが自ら早起き発言をっ……立派に成長なされて」

「母親かあんたは。私が母親だ」

「そりゃそうですが」


 という事で宿屋の台所は汚くて使えそうにないので例によってバーベキューセットで夕飯作りに取りかかった

 室内で大丈夫なんだろうか……




★★★★★★★★★★




「……起きた」


 夜中に何となく目が覚めた

 一度寝たら滅多に起きない私が起きたって事は何かあると思っていい


 窓の外を見れば真夜中の世界

 月は雲がかかってかろうじて明るさがある程度。廃虚には丁度いい暗さだ


「なるほど…」


 外にある影が見えたので危険だが部屋を出てみる

 どうせ人外ズがこっそり着いてくる筈だ



………



 外に出たがやはり魔物は現れず……何故隠れているのか


 それはともかく今は魔物よりも―




「久しぶりね」

パタパタ


 目の前には久しぶりに会う親友の姿

 約束通り以前よりは小さくなっている


「ダイエットは良い調子みたいね。もう一回り小さくなったら帰ってきなさい。それまでお帰りの言葉はおあずけよ」

パタパタ…

「あなたが居ない間に色々あったわ、話すと長くなるから戻ってきた時に言うけど……まあ楽しみにしてなさい」

パタッ!


 うむ、何か……何というか、やけに綺麗にな羽根になったなマイちゃん

 全身がちょっと光輝いてるようにも感じるし……まさか精霊化が進んでるんじゃないか?


「あなた余計な進化しちゃ駄目よ?具体的には人型になったり。マイちゃんは蝶のままでいなさい」

パタパタ

「……じゃ、もう行きなさい。短い時間だけど元気な姿を見れて良かったわ。あと少し頑張りなさい……またね」

「ガンバル」


 マイちゃんはパタパタといつぞやの様に暗い空へ翔んでいった。というか――


「……喋った」


 マイちゃんがなかなか良い発音で喋りおった。会話の練習もしてたのか、もしくは精霊化によるものか……


「念をおしたし、擬人化はしないでしょう……にしても臭いわね」


 漂う腐臭に眉をしかめる

 こんな臭いを嗅いでたら病気になりそうだ。さっさと宿屋に戻るとしよう



☆☆☆☆☆☆



「おら、起きなさい女郎共。まだ薄暗いけど朝よ」

「ま、まさか本当に早起きなさるとは……」

「最近のサヨは少々生意気よね?尻をだせ、お仕置きしてあげる」

「すいませんでしたっ!?」


 お仕置きは後でしてやろう。今は廃虚探索が先だ

 いつも通りアホの娘がまだ起きてない状況だが、どうやって起こしてやろうか……よし


「ユキ、マオをドアの前まで運んでちょうだい」

「よろしいので?ドアの向こうには……」

「大丈夫よ、これで目覚めはバッチリ」

「……まあ、確かに目は覚めそうですね」


 ユキはドアの前まで運んで、羽交い締めにして立たせる

 こんな事されても起きないとか大丈夫かこの娘……


「マオ、起きなさい。つか起きろ!」

「…ぅ?」

「半分くらい起きたわね。ほら、ドアを開ければマオにとっての楽園が広がっているわよ」

「……ぉー」


 言われるがままドアを開けるアホの娘


 開いた先には当然楽園などは無く、結界にへばり付いた腐りかけの元人間達…ゾンビが居た。皆一様に皮膚が削がれ、グロテスクな姿をしている。昨夜の腐臭はこいつらのせいだ


 マオはまだ覚醒してないようで、目の前にいるゾンビをぼけっと見ているようだ


 起きるまで待っていると……


「……ぅぁ?」

「……」

「……ッッ!?ふぉっ!!フォオオオオォォォォッッ!!?サヨさんが出たあああぁぁぁぁっ!!!!」

「どういう意味ですかこの尻魔あああぁぁぁ!!!!」

「おねぇーーぢゃあああぁぁん!!」

「むぎゅうっ」


 抱きつくにしても顔はやめろっ!息が出来んだろ。かなり力を入れてマオを押し、何とか隙間を空けて呼吸は出来た


 しかし、サヨが怒り心頭な様子。ゾンビを目の前で見てしまったマオはかなり動揺した様で思わずゾンビをサヨ呼ばわりしてしまった。そりゃ怒るに決まってるか


「落ち着きなさい、たかがゾンビよ」

「わたしは悪魔です!?」

「知ってる」


 だから何だと

 意味不明な事を言い出した。相当テンパってるようだ


「仕方ない。落ち着くように尻に奇跡すてっきを刺しましょう」

「落ち着きました」


 ならばよし


「サヨも落ち着きなさい、寝ぼけてサヨとゾンビを間違えただけでしょ?」

「その間違えは許せません」


 仕方ないじゃないか、元グロリアルだったんだから。あのインパクトのある容姿は忘れられん


「大丈夫。前はグロリアルだったけど、今の貴女はちゃんと可愛らしい少女よ」

「かわ…!?……こほん、まあ今回はお姉様に免じて許しましょう。ただし、昔の私の姿は忘れる様にっ!」

「わかりました、ゾンビさえ見なきゃ大丈夫と思います」

「……忘れる気ないですよね?」

「いいから行くわよ」

「囲まれてるだすよ?」


 たかがゾンビだ……いや待て、ほぼ冒険者のゾンビって事は中には手強い相手もいるかも



「よし、爆撃しよう」



……





「ふはははっ!!無抵抗なゾンビを吹っ飛ばすのは爽快よのう!!」

「昨日は見なかったのに凄い数ですね」


 現在、鬼の里でやった事と同じ要領で空中から爆撃中だ

 一泊した宿屋は見事にゾンビに囲まれていた。


 密集してるゾンビ達めがけて数本束にした爆薬を投下すると見事に臓物をぶちまけてくれる


「…しばらくお肉は食べれないです」

「だらしないわねぇ」

「全滅させるのですか?」

「それだと爆薬が勿体無いわね……魔法でいける?」

「出来ますけど、別に放置してもいいかと。どうせ結界は破られませんし」


 ならもっと早く言ってくれ……爆薬だって地味に高いんだから

 しかしこれだけのゾンビを放置して後々厄介なことにならなきゃいいが


「こいつらが中継都市の外に出たら道がゾンビだらけになるわね」

「他の魔物にやられるんじゃないですか?」

「ふむ、魔物とゾンビが潰しあってくれると」


 なら放置でいいか

 この辺りならモッキュンがもきゅもきゅ言いながら倒してくれる筈


「わざわざ討伐なんて面倒な事はしなくていいのね……ならゾンビがいない場所まで移動しましょう」

「では適当に飛ばしますね」


 それにしてもどんな魔物に滅ぼされたのやら……ゾンビの数からして冒険者がかなり揃っていたと思うが……


 そういや入口は壊されてたのに中に魔物が入り込んでいないなぁ


「もしかしたら魔物に滅ぼされた訳じゃないかもね」

「五体満足なゾンビが多すぎるのでその可能性が高いかと」

「そうなの?」

「魔物なら殺した後ほとんど食べるでしょうから」


 そういう考えも有りか、つまり人間以外の種族が攻めてきた線が高いと


「うーーーん……駄目ね、何が攻めてきたか思い付かない」

「そうですねー」


 思考を一旦中断して、下に見える街中を見回す。何か大きめの建物が見える

 ギルドだったっぽいので降りて入ってみよう


「サヨ、あの建物に行くわよ」

「わかりました」


 宿屋から結構移動したのでゾンビの姿は見えない。これなら降りてもいいだろう




 中に入るとやはりギルドだった。掲示板にはもはや受ける者はいないが依頼書が貼ってある

 その他に仲間募集の張り紙もあるが、道中死した冒険者の補充のためといった感じだ


 ふと思い立ったので―



「……見られるのって嫌いなのよね、さっさと出てきなさい」


 私がそういうと皆辺りを警戒し始めた

 しかし誰も現れない。まあ当然か……


「ごめん、言ってみただけ」

「何故その様な発言を?」

「敵でも味方でも建物の中に隠れて入ってきた者を観察するのって定番じゃない?適当に言ったら釣れるかなって」

「なんと紛らわしい……」


 何の反応も無いってことはここはハズレだな。当たりがあるかも怪しいけど


「どう?何かある?」

「特には……」

「受付の所に金庫みたいなのはあるだよ」

「でかしたブゥミン!ユキ、亜空間に仕舞っておきなさい。開けるのは後でのお楽しみよ」

「……気は進みませんがわかりました」

「どうせ中には何も入ってないってオチだろうから気にしないでいいじゃない」


 私達の前に来た冒険者だっているだろう。そいつらに中身は持ってかれてると思っていい


「これそう簡単には開きませんよ?」

「なら中にお金がたんまりある可能性もあるのね。尚更持っていくわよ」

「ついに私達も賊に成り下がりましたか……」


 金庫は高さ一メートル、奥行きも一メートル程度の四角形だ。かなり分厚い金属で作られた様で重そうだ。暗証番号を入力して開けるタイプらしい

 重かろうが亜空間魔法の前には無意味だ。底の方に亜空間を繋げてそのまま落とす、以上。簡単なお仕事です


「じゃあ次よ次っ!大きい建物ならまた金庫があるかもしれないわ」

「目的が変わってます」

「目的なんてあったんですか?」

「一応幽霊を探すための廃虚巡りだったかと」

「あー……言ってましたね」

「その通りよ、でもここは無理ね。幽霊なんて居なさそうだもの」


 そもそも初めての廃虚で気に入る幽霊を見つけられるとは思ってない

 とりあえずホラースポットの雰囲気を味わえただけで今回は満足だ




「あそこにある建物、生きてる生物の気配が有りますよ。人間ではありませんが」


 サヨが指差す先にある建物、よく分からないが大きい。何なんだろう


「あの建物ってなに?」

「大きさからして冒険者用の訓練場では?もしくは闘技場と思います」


 ほほぅ……闘技場だった場合、廃虚になってなければ賭けが出来たかもしれないのか、ちょっと残念


「行ってみるかな、もしかしたら冒険者達を全滅させた奴かもしれないし」

「どうですかね……仮にそうだったら少し危険ですよ?」

「少しなら大丈夫でしょ。頼りにしてるわ」




 例の建物に警戒しながら突入する

 通路を進むと階段があったが、無視して先の扉の方へ向かった


 扉を何故かサヨが蹴り壊して中に入る。中はかなり広く、地面は砂地だ。二階に観客席がある所をみると、どうやら闘技場で間違いない


「何かいる」

「ちょっと暗いですね、明るくしましょう」


 ユキの光魔法?によって中が明るくなると、ここにいた生物がハッキリ見えた


 高さは5メートルはあるんじゃないかという結構な大きさ。ピンク色のちくわみたいな胴体からウネウネした手らしき物が多数生えている。きめぇ……


「ローパーっぽいですね、妙に大きいしピンク色ですが」


 この何か卑猥な生き物はローパーというようだ。何でこんなのが此処にいるのか


「この魔物の相手は姉さんにお任せします」

「何故?」

「ふと姉さんが着ている巫女服には触手が似合いそうと思いましたので」

「…何で貴女はお姉様の娘なのに変態になったのでしょう」

「いえ、ユキの言葉は一理あるわ。着物もだけど、巫女服ってはだけるとエロそうじゃない?襟のトコやその変なズボンから触手が侵入してきてサヨが悶える姿は見てみたい」

「お姉様までおかしくなってる!?」


 嫌だ嫌だと愚図るサヨの背中をユキが押し、強引にローパーの元へ向かわせる


「いい?私が満足するまで抵抗しちゃ駄目よ?」

「酷すぎますっ!?」


 渋るサヨを何とかローパーの近くまで連れていったら伸びてきた触手にあっけなく捕まった

 言い付け通り無抵抗で我慢している。


 アホな命令まで律儀に守るとは良い忠誠心だ。


「きゃー、触手がサヨの身体をまさぐってるわよ」

「一本服の中に侵入しようと……あ、入りましたね」

「うわぁ…可哀想です……」

「殺されたりしないだすか?」

「女性なら卵を産みつけるくらいで済みますよ」

「十分悲惨だすよ……」


 魔物って捕まえた女に子供産ませるタイプ多くないか?そんな奴等がいるから女性冒険者が少ないのかも


「あ……ズボンのポケットから触手が」

「おー卑猥卑猥」


 必死な形相で身体を這いずる触手を我慢していたサヨだが、ポケットから侵入した触手を見るや否や


「ぬぅううううッッ!!我慢出来るわけないでしょうがあああぁぁぁ!!!!」

「あ、触手が引きちぎられた」


 ポケットの触手を掴むと思いっきり引っ張りブチッと胴体から千切り取った

 ローパーも痛覚はあるのか激しくウネって痛がってる様子。


「この腐れエロ魔物がっ!!ソコを触っていいのはお姉様だけです!!!」


……


「中々の問題発言が出ましたが?」

「あの娘とはしばらく距離を置こうと思うの」

「サヨさんも不憫だすなぁ」

「わたし、何だかサヨさんともっと仲良くなれる気がします」


 現在、サヨは怒りに身を任せながら符を投げて触手を片っ端から切り落としている最中だ

 しかし切断された面からウニョンと新たな触手が生えてきた。再生力はかなりあるらしい


「ぶっ飛べエローパーッッ!!」


 触手を相手にしてはキリがないと判断したのか、符をローパーの胴体に突き刺し内部から爆破させた


「うお!汚なっ!?」

「まったく……爆破何かしたら肉片とドロドロした液体が飛んでくるじゃないですか。お母さんにかかったらどうするんです姉さんは」


 その話題のサヨはローパーを爆破したからかスッキリした顔をして戻ってきた


「ご苦労様でした。やはり巫女服と触手の組み合わせは良かったですね」

「黙りなさい愚妹。貴女の余計な発言のせいでお姉様がご乱心なさったのです」


 ユキとサヨが口論を始めたが無視だ

 こんな所に移動が困難そうな魔物が居たんだ。何者かが連れてきた可能性もある


 という事で


「……見られるのって嫌いなのよね、さっさと出てきなさい」


 先ほどギルドで言ったセリフをここでも言ってみる。何者かがまだ居るなら釣れるかもしれない




「……よく気付いたな。なかなか優秀なお嬢ちゃんだ」


 二階の方から聞こえてきた声にユキとサヨが私を庇うように立ち警戒する。

 もしかしてこの二人も気付いてなかったのか?だとしたら厄介な相手かもしれない


 声の主は二階から私達の前まで飛び降りてきた

 目の前まできた事で相手の容姿が分かる……二メートル近い背丈に青い皮膚と白い髪、何故か紳士服を着ているこの男……背中にある黒い翼から判断するに悪魔だ


「ここに未だ人間が訪れるとは思わなかった」

「……一つ聞いて良い?」

「なんだね?」




「何で前屈みなの?」

「男の事情だ。気にするな」


 つまりさっきのサヨが受けた触手攻めに興奮したと。何だ、ただの変態か

 まあ初の男悪魔だ、せいぜい観察させてもらおうか

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