幼女とおでぶちゃん
「あー…昨日のメロンがいけなかったのか、朝っぱらからお腹の調子が悪くて下「はっくゅんっ!」酷いわ…」
「…下「ふぇっくしゅ!」
「……水状のウン「デラックスんっ!」…流石に最後はおかしい」
どうしても汚い単語を言わせたくないらしい
「朝からお下品な言葉はやめて下さい」
「そうです。お姉様は排泄物など出しません」
「どこのお姫様よ」
さて……まだ二、三日はこの家に住めるし、何も急いで出発する必要はない
この数日で必要な物を揃えるとしよう
「世界中のダンジョンが載ってる本とかあるの?」
「有りますけど…ダンジョンなんて行っても魔物しか居ないですよ?」
「載ってるダンジョンはほぼ制覇されてますしね」
つまり未知なるダンジョンを自力で見つけなきゃいけないのか
「まあ一応買っておきましょう。後は世界の廃虚特集とかホラースポットの本も買っとこうかな」
「そういうのは無いかもしれませんよ」
「わざわざ本にする人なんてそうそう居ませんからね」
それもそうか…本にしたって売れそうにないし…情報を集めるだけでかなりの時間が必要だ
「まあいいわ、入手出来たらラッキー程度に思っておきましょう」
「外に出るのでしたらついでに良さそうな依頼も受けるのをお勧めします」
「依頼ー?」
「そろそろ収入がないとヤバいです」
たかが一ヶ月程度で家計がピンチになったと申したか。まさかメロンのせいではあるまいな?
「疑いの目で見ておられますが、私のメロンのせいではないですよ?あれは私が前に入手したのを亜空間に仕舞っておいたものです」
「じゃあ何でよ」
「せっかく隣国まで行くなら依頼をついでに受けた方が得策だからです。商人の護衛はお母さんが嫌がりそうなので、何か物資の輸送等の依頼があれば受けましょう」
そういう事か。他国に行くとなると時間もかかるし、危険度も高くなる
たかが物を運ぶ依頼でもさぞかし良い金額になるだろう。私達には亜空間があるからもってこいの仕事だ
「ついでに新しい人材でも発掘しますか?私の占いによれば今日のお姉様は一期一会の出会いがあるとかないとか」
「どっちよ」
「所詮占いですから、お姉様の行動次第でどうにでも変わります。
例えばこのまま家に引きこもって誰にも会わなければそりゃあ一期一会の出会いなんてありませんよ」
なるほど、仮に外で一期一会の出会いがあったとしても気付かなけりゃ意味ないが
「つまり今日は幽霊に会うチャンスなのね」
「幽霊かどうかはわかりませんが……」
「じゃあ今日はサヨの占いに過度に、大いに期待して出掛けましょう」
「言わなきゃよかったです」
☆☆☆☆☆☆
という事でまずはギルドにやってきた。流石は王都というか、かなり大きな建物なのにやたら人が密集している
「ここで爆薬使ったら楽しそう…」
「思うだけにして下さい」
とりあえず依頼書が貼ってある掲示板まで行き、良さそうな依頼を予定通り探す
次の目的地であるトゥース王国への輸送系のみに絞りこみ…
「宝石類の依頼が一番高いですね」
「ダメよ、そういうのは複数のパーティで行うハメになりそうだから」
「ふむ、確かにそうですね」
「ならこの家具類とかどうでしょう?重い商品だけあってまだ受けた者は居ないみたいですし」
私達だけで出来るならいいかも。報酬を分ける事もないので丸儲けだ
「それでいいわ、もちろん私達だけでやるようにしましょう」
「では受付でそのように伝えましょう」
これでそれなりの収入は得られるだろう。たかが移動のついでに輸送するだけで80万ポッケだ
もちろん運ぶ家具はかなりの量になってるが、当然私達なら手ぶらで行ける
受付も人の多さに比例して混んでいる。仕方なく私達も列に並ぶ……パーティ組んだから全員で並ぶ必要ないのに何故か皆で並んでいる
しばらく待ってやっと私達の順番が回ってきた
「すいません、この依頼を受けようと思います。ギルドカードはこちらです」
「お預かりします……えーと、抱っこちゃん様がリーダーの頑張らないフィーリア一家様ですね」
「抱っこちゃんとは私のことか」
「そうです……かね?最近ついた称号ですね、おめでとうございます」
嬉しくねー……こんな称号を勝手に付ける奴は五丁目の冒険者の誰かで間違いない
「それって勝手につけられるの?」
「つけられる方が実績があるなら…」
「じゃあこの二人にも私が付けてあげる」
私とユキだけが変な称号で呼ばれるとか不公平だ
「ではお二方がちゃんと実績があるか確認しますが、何がありますか?」
「この娘は龍人を倒したわ、サヨは何かある?」
「まぁ私も龍人は張り倒した事あるので同じでいいです」
「お二方とも凄いですね……ではこの水晶に触れて下さい。嘘か本当か分かりますので」
と言われたので私は水晶に触る。サヨは自薦なので自分で水晶に触れてもらう、てか自薦でいいんかい。見た感じ何も変わらないが…ダメなのだろうか
「はい、結構です。二人とも大丈夫ですね。ではどんな称号にしますか?」
大丈夫だった。嘘な場合は色が変わるとかそんな感じだろう
二人の称号は私が決める。抱っこちゃんと薬草狩りに並ぶ恥ずかしい称号にしてやろう
「マオはアホの娘、サヨは白銀のペタン子」
「何と意味不明で恥ずかしい称号でしょう…やめて下さいよ……」
「黙らっしゃい。マオは不満そうじゃないのに文句言わない」
「マオさんはアホの娘でいいんですか!?」
「言われ慣れてるので大丈夫です」
「あ、そう……」
流石はアホの娘、行く先々のギルドでアホの娘呼ばわりされると分かってないと見える
抱っこちゃんに薬草狩りにアホの娘と白銀のペタン子、どうみても雑魚パーティです。他所では嘗められても仕方ない
「その称号でいいんですか…?そう簡単には変えられませんよ?」
「簡単に変えられないのに他人が決めるとかどうなのよ」
「他の方はほとんどまともな称号を付けられますので。あからさまに変な称号を付けようとする悪質な場合はこちらで判断して却下します。
今回はご本人様がいらっしゃるので了承を頂けたらそれで受理します」
「じゃあそれで」
え?…とサヨがこちらをガン見してくるがそんなもん無視だ
「ではアホの娘と白銀のペタン子ですね、かしこまりました……可哀想に」
「ボソッと何か言いましたね?聞こえてますよチクショー」
これで晴れて変な称号を持つフィーリア一家へランクダウンした
「じゃあ次はさっきの依頼をお願い」
「家具輸送の依頼ですね」
「私達だけで受けるから」
「…家具の量は結構有りますよ?」
「大丈夫」
「期限は半年以内と余裕がありますが、失敗した場合は損害分のお支払いが」
「問題ない」
やれやれと言われた通り受理をする受付嬢。私達の事を知らないギルドでは大体こんな感じの対応をされるんだろうなぁ
「言われた通り頑張らないフィーリア一家様のみで受理しました。後は依頼主の方に説明を聞いておいて下さいね」
「わかったわ。ありがとう」
「いえ、では頑張って下さい。ご利用ありがとうございました」
よし、用は済んだ。後は必要物資の買物にでも行こう。長旅になるならもう少し着替えの類いを買っておくか
ギルドから出ようとすると、何やらガヤガヤと騒々しい一角が…冒険者達がある者に絡んでいるようだ
「ずいぶん肥えた奴ね、さぞかし裕福な家庭で育ったんでしょう」
「あそこまで太った方は貴族以外では珍しいですね」
「元貴族じゃないですか?」
その場合は没落貴族だな。あんな貧乏そうだし…でも貴族にしちゃプライド無さそうだが
太った奴は緑色の長い髪をしている事から多分女だと思われる。その体型を冒険者達にからかわれてるみたいだ
「よし、サヨの占いの事もあるし行ってみましょう」
「お母さんが人助けとはお珍しい…」
聞かなかった事にしてあの集団の元へ向かうように指示した。果たして面白い奴なのやら
☆☆☆☆☆☆
「おらぁ!このメス豚がっ!一人で幅取ってんじゃねぇ!」
「ひぃぃっ!?ん、んなことわたすに言われても…」
「口答えすんじゃねぇ!だらしない肉しやがって…何だこのブヨブヨした腹はぁっ!」
「や、やめてぇ…!?こ、こんな小さな子まで怖いなんて…都会は恐ろしいとこだぁ…うぅ」
「はっ!ようやく分かったか田舎の家畜がぁ!」
「…嬢ちゃん、絡んでた俺達が言うのもなんだけど、その辺でやめてやっても……」
「この子、妖精の時に活躍した降りたら本気出す抱っこちゃんじゃないか?…確かに本気出して絡んでるな」
そう、何を隠そう現在絡んでいるのは私だったりする。それにしても変なしゃべり方をする奴だ
「苛める側に回ってどうするんですか…」
「私達も予想外の展開ですよ」
「お姉ちゃん…」
アウェイ感がひどくなってきたのでそろそろ止めるか
おでぶちゃんも涙目になってるし…
「苛め甲斐のありそうな奴だったからついつい張り切っちゃったわ、悪かったわね」
「だ、だすか…いいだ、わたすは慣れてるで」
「何言ってんのか分かんないのよ!」
「ひいぃぃ!?ごめんだよ、ごめんだよー!」
「はいはい、どうどう…」
ヒョイっとユキに持ち上げられた。私は馬じゃねー
「ち…こんな変なしゃべり方するメス豚はどこの…出身……?」
「しゅ、出身?」
「……ちょっと立って」
「わ、わかっただ」
……おおぅ、身長は案外低いな…150cmあるかないかだ。身長的には可愛らしいな
「…ちょームカつくー」
「うぅ…何なのこの子……」
「どうしたんですかお姉様?」
「べぇっつにぃー?はーあ、帰りましょうか」
急にやる気を無くした私に家族達は不思議そうだ。だが言われた通りにおでぶちゃんに一言謝りを入れてからギルドを後にした
「結局どうしたんですか?」
「気にしないで、もう過ぎた事よ」
「いや、気になりますよ」
「そうね…圧倒的敗北を味わった、それだけよ」
「「「?」」」
あのおでぶちゃん……今は肥えてあんな容姿だが、元はかなりの美少女だ…間違いない。この王都の女達と比べても別格だろう
面白そうかと思ったらちょー面白くない。一期一会なんてなかった。私は不貞腐れた顔のまま買物をして帰る事にした
★★★★★★★★★★
次の日である。必要な事は昨日の内にやったので今日は一日お休みだ。旅に備えてゆっくりするとしよう
居間でゴロゴロしていると、サヨが講師になってマオに何やら勉強を教え始めた
「今日は思春期真っ盛りなマオさんの為に性教育です。本来ならユキさんが教えるハズだったのですが、お姉様以外の方に性教育は嫌などとぬかしたので代わりに私がやります」
「はい」
性教育かよ……と思うが、年齢的にマオには必要かも。
「しかしマオさんがどれくらいまで知識を持っているかがわかりません」
「全くないですっ!」
「なるほど…まあ本能の赴くままにやってれば大丈夫です」
「?」
おい、もっと真面目に教えてやれ。
「丁度いい事につい最近オッサンに変化したお姉様に胸を揉まれたじゃないですか、あの時どんな感じでしたか?」
「怖くて気持ち悪かったです」
「それだけですか?」
「はい」
「ほんとですかぁ?口ではそう言っても体は正直だったんじゃないですかぁ?」
「何の勉強ですかコレ」
どこのエロ親父だこのペタン子は。まあまともな勉強にはならないとは思ってたが…
「まあいいです。次は性欲の有無ですが…あります?」
「どんな感じになるか教えて下さい」
「何というか…マオさんはお姉様が一番お好きでしたね?いや私やユキさんもそうでしょうけど。
そんなお姉様の事を…ああっ!今日も何て可愛らしいのでしょう!綺麗な髪も輝く瞳も小さな手もおみ足も全てがいとおしいのぉっ!…はい、こんな時どう思いますか?」
「バカみたいだと思います」
「……」
「いたっ!?いたい!痛いですっ!?ペン投げちゃダメであぶっ!?うわーーん!お姉ちゃーーん!」
「私の妹になにをするだあぁぁっ!!」
「へぶしっ!?」
マオに投擲を続けるサヨに向かって飛び蹴りをかました。我ながらなかなか綺麗にきまった
私は行儀悪いがテーブルの上に乗って手を上に掲げ決めポーズをとった
「ぐぬぅ…まさかお姉様がマオさんに味方するとは……」
「物を投げつけられるのはマオにとってトラウマだからね」
「な、なるほど…」
「まあ私は妹に甘い姉だから」
「…私も妹の部類じゃないですか?」
サヨが?確かにお姉様って呼ばれちゃいるが…
マオを見る。今はテーブルに乗ってる私の方が高い位置にいるため上目遣いで見られていた。
うむ、妹だ。可愛いから撫でてやろう
次にサヨを見る。ただのサヨだった
「どうやら私はサヨの事を家族とは思ってなかったようね」
「ぐふぅぅぅっ!?」
「冗談よ」
妹というか、姉だな。いや、オカンだ…年増的に考えて…まあ家族に違いない
……
「気を取り直して続けます。まあムラムラしたらそれが性欲ですよ、間違ってもその辺の男で発散させないように」
「はぁい」
「体が火照ってしょうがない時はユキさんに言いなさい。あの変態なら詳しく教えてくれるでしょう」
「わかりました!」
やめてくれ……ユキなんかに頼んだらマオが汚されてしまう!……我が娘ながら信用ならん奴だなユキも
「中身がお姉様のオッサン相手にしっかり拒絶反応を見せていたので、知識が無くとも知らない奴にされる嫌な行為というのは分かっているのでしょうね、なら大丈夫ですか」
「はい」
「次は…生理なんてものが女性にはあるそうです。ですが私は経験無いのでわかりません。なので本で調べて下さい」
「はい」
なんか習った気がするな…私にも無縁だったから忘れてた。あれ?この年で無いとかヤバくね?
ま、いっか。しんどいらしいし、無いなら無いでいいや
「私が教えられるのはこの程度です。後は本を読んでちゃんと勉強して下さいね」
「わかりました!ありがとうございました」
今の授業は役に立ったのやら…特に内容が無かった気がするが。結局マオは本で知識を得る事になりそうだ
「さて…いよいよマオさんの好きな楽しい算数の時間です」
「おー…」
「今回は引き算です。まあ簡単ですよ、足し算とは逆に減らすだけですから」
サヨは巨大化した符を壁に貼り付け、そこに問題を書いていく。
なになに……ゴン爺さんの頭には80本の毛がありました。ゴン爺さんが寝ている隙に孫がイタズラをして毛を50本抜きました。残りは何本でしょう…可哀想すぎんだろ、せめて10本くらいにしてやろうよ
「わかりましたか?」
「やっぱり孫は怒られました?」
「そこはどうでもいいです」
「えーと…残りは30本です!」
「正解です…では次は足し算も複合しますよ」
ゴン爺さんは毛が30本しかなくなった頭に100本植毛しました。ですがまた寝ている隙に孫に65本抜かれました。残りは何本でしょう…と
「あなたゴン爺さんとやらに恨みでもあるの?」
「無いですよ?ただの例題です」
「ひゃく足して…ろくじゅうごを引いて……65!です、か?」
「お見事」
「わーい」
…マオは例題が毛だというのに気にならない様子。マオが気にしてないならいいか……ゴン爺さんは犠牲になったのだ
「では今度は買物した事を想定して計算してみましょう」
「はい!」
次の問題が始まりそうになった時、ガチャっと玄関の開く音が聞こえた
「ユキって出掛けてたの?」
「みたいですね」
「あ、昨日の依頼の件で依頼者の所に行くって言ってました」
ああ、受付嬢に言われてたっけ…昨日の今日なのにすでに忘れてた
「ただいま戻りました」
「おかえり、一人で行かせて悪かったわ…ね?」
「お客様をお連れしました」
「お、お邪魔しますぅ」
帰ってきたユキの背後に隠れきれない影。
ユキが連れてきた客とは昨日の太った奴だった……何で連れてきたし




