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幼女が悪魔の娘にひどいことする話

「ただいまー…」

「お疲れ様でした」

「カッコよかったです!」


 労うサヨとはしゃぐマオ

 長が死んだってのに全く何とも思ってない所を見る限り、マオにとって長は完全に敵になっていたっぽい


「宣言しとくけど、今日頑張りすぎた私は一ヶ月くらいダラダラ過ごすと決めたから」

「ふむ…まぁ宜しいかと。どのみちしばらく安静でしょうし」

「…寝たきりとか拒否るわよ」

「それだけ動けるなら大丈夫ですよ…今回は刃物を抜かずに出血を抑えたのが幸いでしたね」


 ならいいけど…

 私達がほのぼのとしていると、不意に周りが明るくなった…

 何でかと言えば長の家が燃えているからだ。そして放火犯は五丁目の冒険者達


「何故燃やしたし」

「勝利のキャンプファイヤーだ!」

「だって暗いから…」

「安心してくれ、金目の物は運び終えた」


 …つまり空き巣した上に放火したと。最後までろくでもない奴等だな


「…見事だったよ」

「えっと…ファルコブ」

「…それも違う」

「そうよ、コイツはジェイコブでしょ」


 まだ喧嘩してるのか…何があったか知らないけど

 でもこうして一緒に行動してるならすぐに仲直りしそうだな


「妖精達も助け、鬼の親玉も倒した…間違いなく君達が今回の最大の功労者だよ」

「言っておくけど、鬼の長を殺したのはシリウスよ」

「…それでいいのかい?」

「ええ、私が欲しいのはお金でも功績でもないから」

「そうか…わかった。何というか、君は凄い娘だね」


 何が凄いか分からんが、褒められたって事にしとこう

 挨拶が済むと、ジェイコブ達は他の冒険者達の方へ去っていった


「ペドちゃんペドちゃん、お夕飯の続きしていいですか?」

「まだ食べるの?」

「だって食べてる途中でしたし」


 まあ確かに…さっきまで動いてたから小腹が空いた様な…そうでもないような…うーん


「ま、いっか。じゃあ続きにしましょう」

「わーい」

「でもその前にあなたは隔離したお姉さん達を連れて来なさい」

「わかりましたっ!…そろそろ山の猿に種付けされててもおかしくない時間ですからねー」

「…え?」


 何だか聞いてはいけない事を聞いた様な…うん、気のせいか。今日は疲れたからなー


 リディアはいつも通り気付かぬ内に消えていた。すぐに戻ってくるだろ


「種付けってどういう意味ですか?」

「黙ってろアホ、気のせいで済ませなさい」


 アホの子はほっといて再び席に座…ろうとしたらマオが自分の膝に私を乗せて座った

 言われなくても椅子係としてきちんと働いてる様で何より


 リディア達を待っててもいいが、別に焼くだけなら始めてもいいか…すぐに食える様にしといてやろう。でもその前に


「…そこのエルフ、居心地悪そうに立ってないでこっちに来れば?」

「えと…いいの?」

「妖精達も懐いた様だし、まあいいでしょう」

「え、と…その…」

「…その前にあなたの耳を何とかしましょうか…切れた耳があれば治せそうだけど」

「ありますよ?念のため取っておきました」

「……何でユキが持ってんの?あなたが千切った犯人?」

「いえ…まあ気にしないで下さい」


 じゃあ気にしない。冷たくなってる耳を何故か私に渡された

 何となく焼いてみたいと思ってバーベキューセットの金網を見てたらエルフがぐずりだした


「焼かないってば……はい、後は精霊魔法で勝手に治してちょうだい」

「と言われても…今の私には使えないし」

「お母さん、試しに精霊魔法を使っていいよー…って彼女に向かって言ってみては?」

「何それ?」

「あなたは私より…いえ、エルフよりも精霊に好かれてるみたいだから…契約してる私の命令よりあなたの命令を優先しちゃうみたい…だからあなたが使えなくなれ、って言った事で契約が切れてしまったの」


 へー…見えない存在に好かれても困るけど

 てかそんな事言った覚えない…皆の様子から察するに知らぬ間に言ったようだ


「でも命令何かしてるからその程度の信頼関係なのよ、力を貸してもらってんだから次からお願いしなさい」

「…そうだね。言われてみれば確かにって思うよ」

「じゃあ…えっと、あなたは精霊魔法使ってもいいよー」


 言ってて思うが何だこれ…こんなんで使える様になったら世話無いわ


「……!凄い、契約が…また結ばれてる…!」

「うそぉ…」


 何者だよ私は…少し前まで引きこもりだったのが凄い人間になっとるわ

 てか精霊が私の味方なら仮にエルフが敵になろうが恐るるに足らずだな…いやわざわざ敵対しないけど




「えと、お願い、私の耳を元通りにして」


 エルフがそう言うと千切れてた耳が傷口に引っ付き、みるみる治っていく。そしてたった数十秒で完全に治った…普通の回復魔法より治るのが圧倒的に早い。

 精霊すげー…再生は無理みたいだが。やっぱり奇跡ぱわーより使えそうなんですけどー?


 それに特に呪文とかも要らない様子。普通の魔法みたいにイメージも不要だし、精霊にあーしてこーして言うだけで済むとか実に素晴らしい




「良かった…治って……正直ズキンズキンして耐えれなかったの」

「耳が千切れた事無いから痛みは分からないけど、解放されて良かったわね」


 エルフの傷が治ると、黒い翼で遊んでた妖精達が私の方へ飛んできた。また妖精より格上の精霊と契約したから逃げてきたのか


「にゃうっ!?」

「…どうしたの?」

「うー、髪の毛引っ張ろうとしたらバチってきたー」

「いい気味ね、たぶんリディアがくれたペンダントのおかげかな」


 というか恩人である私の髪を引っ張ろうとは不届き者めっ!


「妖精はイタズラ好きですからねー」

「森に入ってきた人間を迷わせる話が一番有名ですね」

「私達もやったことある!ずーっと迷わせてたらたまに死んじゃうのっ!」

「泣いてる姿を見るのが凄く楽しい!」

「私はお腹空かせてる人間に毛虫食べさせてあげたよ!えらいー?」

「なにこのえげつない妖精達」

「別に悪意は無いんです…妖精達はただ遊んでるだけで」


 尚更質が悪い…見た目の可愛さに騙されてはいけないという教訓みたいな存在だ




「ところで私めっちゃ揺れてんだけど」

「揺れてるのはお姉様じゃなくマオさんですが」

「マオさんは規則正しい生活をする良い子ですから…もう眠りにつく時間みたいですね」

「種族的にどうなのよ」


 眠りにつくというかもう寝てるだろ…

 でも今日は色々あったし、仕方ないか…起こすのも何だし、今夜は鬼の里で休むとしよう


「ここにテントでも張って寝かせましょうか」

「わかりました…鬼達の抵抗も無くなった様ですし、もう大丈夫でしょう」


 確かにもう戦闘してる感じはしない。長が死んだ事で抵抗を諦めたのかもな


 って思ってたのに離れた場所から怒鳴り声が聞こえてきた。まだやってんのか




「ペドちゃん、何か虫人が来たみたいだぜ?」

「…ああ、そういえば居たわね。虫だから明かりに寄ってきたのかな」

「虫人を敵と思ってる連中が戦いだしたみたいだけど、どうする?」

「勝手にやらせとけば?」


 ユキとサヨはすでに我関せずとテントを組み立ててるし、私は焼き方にこだわる幼女として肉と茸を最高の焼き加減にするのに忙しい

 椅子が揺れるから金網に触れない様に慎重に焼かないといけない。というかマオが顔面から金網に倒れない様に踏ん張って支えているのだ。虫なんぞに構ってられん


「あの…いいかな?」

「私は今食材を焼くのに忙しいの、そしてこの寝てる娘が金網に触らない様に注意もしないといけない。あなたに構ってる暇は無い」

「うぅ……」


 何か言いたげなエルフを一瞥もせずバッサリ切り捨てた。私は優先順位はきちんとする子なのだ


「こんな美人でもペドちゃんの興味は引けなかったか」

「勿体無いから俺達に任せてもらおう」

「あの男が死んじまって傷心してる所を慰める…そしていずれは嫁に…!って所までは考えた」

「…あんたらは人外でも女なら良いんだっけか」

「なりふり構ってられないんだ」


 切実だな…肝心のエルフが五丁目の冒険者達には全く興味無さげだが

 説得を頑張って私の代わりに引き取ってくれ


「テントが出来ましたので、マオさんを寝かせてあげましょう」

「わかった。じゃあユキが運んであげて」


 起こさない様にゆっくり降りた。うむ、今日の私は妹に優しいじゃないか…


「だがこの私が良い姉で終わるわけない」

「はい?」

「何でもないわ」


 ユキがマオを運んでいったのを見て、私は再び最高の焼き加減にすべくバーベキューの続きに取り掛かる



 リディアがすでに食べていた



「ふざけんじゃねぇぞロリババア…裸にひん剥いて一緒に焼いてやろうかぁ?」

「えっ…あれ?ペドちゃん…?どこのチンピラかと思っちゃった……えと…ご、ごめんね?」

「お姉様、流石にその言葉遣いは不味いです」


 おっと…まだ焼いてる途中で食われたもんだからつい我を忘れてしまった…


「…いいわ、貴女の為に焼いた訳でもあるし…好きに食べなさい」

「う、うん…怒ってない?」

「ええ…世話になったし、逆に感謝してるわ」


 …何か前も邪魔されたな

 具体的には上手く焼けた茸を駄蝶に食われた


「おのれマイちゃんっ…!」

「えっ?何で急にマイさんが?」

「何でもないっ!」


 とりあえず落ち着こう…この場に居ない蝶を気にしたって仕方ない


 ふと何か近付いてくる気配がしたので見てみれば、我らが馬車馬ことぺけぴーだった。リディアが帰ってきてるという事は当然お姉さん達も居るか


「ぺけぴー、ご苦労様」

『くるっくー』

「お姉さん…例え猿との子供でも、生まれてくる命に罪は無いわ」

「ごめん、何の話?」


 なんだ、エロ担当なのに結局何事も無かったんだ。それはそれで面白くない


「というか…その黒い子だれ?」

「堕天使って設定でなりきって遊んでる痛い娘なの、触れないであげて」

「うん…綺麗な娘なのに残念だね」

「違うよっ!違いますからね!?」


 そういやさっき何か言いたげだったっけ…まあ一応聞くだけ聞いてやるか


「私に何か言いたい事あるんでしょ?聞いてあげようじゃない」

「あ、うん…えとね」

「あなたシリウスの事本当はどう思ってたの?」

「うぇ?」

「聞いてあげると言いつつ会話をぶったぎるなんてペドちゃんったら自由人っ!」


 だって気になったから

 エルフの話は長くなりそうだから先に聞きたい事を聞いた方が良いと思って遮ったわけだ


「で?どうなの?…まぁ今の貴女はあまり悲しんでる様子が無いから好意は無かったと分かるけど」

「う、うん…」

「やっぱり利用してただけ?」

「…利用したなんて言ったけど、期待はしてなかったな…シリウスの運はシリウスだけの物だし

 そうだなぁ…成り行きで一緒に行動してたけど、今まで見てた限りでは本当に運だけしか取り柄がない男だって思ってたよ」


 すげー言われよう…今頃草葉の陰で泣いてるな


「でも最後は…ちょっと見直した、かな?……そのくらいで後は特に…」

「……そ、報われない男ね」


 結局本当にシリウスの片想いだったか、一緒に旅してたから少しは好意があったかと思えばそんな事なかった

 恋愛事には幸運は通用しなかったようだ


「じゃ、あなたもどーぞ」

「うん、端的に言うとね?…あなた達に付いていっていい?」


 ……そんな事だろうとは思った。シリウスにも死ぬ前に頼まれたし…




「やだ」

「あ、ありがとっ!?……あれー?」

「シリウスと違って私は利用できると思った?残念だけど、私達はエルフの仲間なんか求めてない」

「ち、違うよ!…そりゃ、高位の精霊と契約出来れば嬉しいけど…それはもういいのっ!」

「……?」

「…ほら、あなたには酷い事されたけどね?それよりもこんな姿の私をエルフとして扱ってくれたのが嬉しかったって言うか…」


 …え?その程度で好感持たれちゃったの?剣で刺されても好意が勝る程の事だったの?ねーよ


「嘘つけ馬鹿女っ!その程度で好意を持つならすでに別の容姿を気にしない男の仲間になってキャッキャッウフフしてるハズでしょうがぁ!!」

「えええぇぇっ!?」


「これにはお姉様を支持しましょう」

「はい。男かどうかはともかく、一人ぐらい容姿を気にしない者に会っててもおかしくないです」


 ほら、私の家族達の賛同も得られた


「失せろ尻軽っ!別の奴を探す事ね!!」

「待って待って!お願いっ!あなた達以外に信用出来る人に出会える自信ないのっ!

 精霊魔法で姿を変えていつバレるかって怯える生活も嫌なの!!

 …何よりも種族を気にしないで接するあなたが、精霊達との間違った付き合い方に気付かせてくれたあなたがいいのっ!!」

「何よその告白染みた台詞はっ!キモいっ!!親の元にでも帰れっ!」

「それはっ!…出来ない……もう、居ないから」

「う…それは悪かったわ」


 すでに親が死んでるとは思わなかった…

 しかしそっか…コイツが旅なんかしてた理由はその辺に有りそうだ


「…両親が居なくなったら、私の居場所は一気に無くなったの…それまで陰口で済んでいた嫌がらせは次第に暴力になっていった…顔はバレるからか胸の辺りをよく殴られてたよ」


「ふぅ…ごちそうさまでした」

「年齢詐欺のくせにピーマン残さないでよ」

「ペドちゃんはピーマンもちゃんと食べるんですね…偉いです」


「家から出ればまだ出ていって無いのか、憎たらしい姿を見せるな、出てけなんて言われるばかり…だから出ていってやったの。もう同族ですら信用出来なくなっちゃった…」


「そもそも野菜を焼きすぎなのよ」

「…そんなに焦がしてませんよ?」

「いい?…野菜なんて生で食えるの、別に焦げ目がつくまで焼かなくても炭火の香りが移るぐらいで十分。これが私の持論。もちろんしっかり火を通した方が美味しい野菜は別」

「へー…」



「流石に真面目に聞いて」

「「はい」」


 見た目と年齢が伴わない幼女が二人揃って怒られた。


 リディアと並んでるとまるで懐かしい初等部の頃のようだ…私達の側にはそれぞれメイド服着た奴が控えてるから貴族幼女のお食事会って感じけど


「…少しは見返してやりたかった…だから高位の精霊と契約したかったの…

 本当はエルフとして認められたかったんじゃなくて、自分を…私と両親を馬鹿にした奴等に見せつけてやりたかっただけなんだ……今はそんな事の為に精霊達を使う気は無いけど」


「やだ…ペドちゃんったらこんな所で……だめっ皆見てる、見られちゃってるっ!」

「いいじゃない…見せつけてやりましょうよ」



「……」

「「ごめんなさい」」


 見せつけ発言でリディアと即興で寸劇したらもの凄く睨まれた

 はいはい…真面目に聞くから続きをやってくれ


「続きをどーぞ?」

「…もう終わったよ」

「そう?…じゃあバイバイ」

「いやいや!それは変だよ!こんな話したのに終始不真面目な態度で終わるとかおかしくない!?」


 勝手に語り始めたくせに何言ってんだ


「どうしても私達の仲間になりたいの?」

「うんっ!」

「じゃあユキとサヨに出来ない事が出来るなら考えるわ」

「…精霊魔法?」

「その精霊魔法は何が出来るの?怪我は治せるみたいだけど」

「ふ、普通の魔法より効果が高いよ!」


 それは見た。見たけど効果が高いだけで結局時間をかければ魔法でも治る


「そもそもユニクスであるぺけぴーが居るから回復魔法なんかほぼ要らん。いざとなったらぺけぴーから血を抜く」

『くるっくー…』

「半分冗談だから悲しそうに鳴かないでちょうだい」


 半分は本気だけど。前に母が大怪我した時とか、一大事な時はぺけぴーに頼ろう


「じゃ、じゃあ…攻撃魔法?」

「攻撃手段は間に合ってる」

「え…と、他には…」


 …なんだ、もうネタ切れか

 もしくは思いつかないか


「何か無いの?変身したり」

「似たようなヤツなら…」

「お、有るんだ。ちなみにサヨは出来る?」

「変化は無理です。他人には違う姿に見える幻術なら出来ますが」


 サヨにも出来ないのか…リディア辺りは出来そうだけど


「どんな魔法?」

「私が使えるのは、身体の周りに魔力で仮初めの肉体を作って別人みたいに見せる魔法かな…

 擬似的な神経を作るからちゃんと身体は動かせるし、五感もあるよ。ただ自分より小さい姿にはなれないけど」

「ふーん。論より証拠、試しに私に使ってみてよ」

「うん、いいけど…どんな姿になりたいの?」


 姿か……良いこと思い付いた



「汚いオッサンにして」



☆☆☆☆☆☆



「…」

「…」

「何か言いなさい」

「そのお母さんは流石に無しです」


 ユキにまで拒絶された今の私の姿はと言えば、ボサボサの髪に無精髭、弛んだ身体に不細工な顔とまさに嫌われ者のオッサン……になってるハズ


「でも目線が抱っこされてる時より高いわ…何か不思議」

「あの、その姿でその口調はやめて欲しいです」


 ああそっか…オッサンだから男なんだっけか


「おうおうユキちゃんよぉ…この姿でだったらキスしてやらんでもないぞ?」

「くっ…何という究極の選択……!相手はお母さんだから喜んでしたい所ですが……その姿は……!!」

「うん、ごめん。冗談だから」


 顔をかなり歪ませるほど悩む事じゃないと思うが


 さて、私がこの醜い姿になったのはもちろん理由がある…それは……


「マオの寝込みを襲う!」

「…可哀想すぎません?」

「むしろ起きたマオさんにお母さんが殴られないか心配です」

「それはペンダントが守ってくれると思うけど…そうだ、サヨがマオを動かない様に拘束しなさい。その方がより恐怖を与えられるでしょう?壊されない強さでお願いね」

「…何かそんな強姦がどこかで起こってそうです」


 確かに…てかエロ本に有りそうシチュエーションだな

 さて、早速マオの幸せそうな寝顔が起きたら恐怖に怯える顔になる様を見に行くとしよう


「…何か、申し訳ない事しちゃったかな…私」

「やってしまった事は仕方ありません…」

「でも早くいつものペドちゃんに戻して下さいね?あの姿はあんまりです」


 不評である。だからこそ良い

 間違いなく好感が持たれない姿でいる証拠だ


 私はワクワクしながらマオが寝ているテントに入る…起きたマオが絶叫する事を考えて防音の結界はすでに張った


「やはりというか…幸せそうに寝てるわねぇ」


 何か毎回口元がニヤついてるんだよな…この娘。とりあえず起こさないと話にならない


 今のマオは仰向けで大の字に寝ており、両手と両足がサヨによって拘束されている。

 何でこんな格好にしたのか…後ろ手に縛るとか他にあったろうに


 一応拘束具として使ってる札が地面から剥がれないのを確認して、いよいよ決行だ


「ほら…起きなさい。あ、オッサンだった……起きろコラ」

「……」


 拘束されても起きない娘がこの程度で起きるわけないか…何か誘拐しやすそうだな、マオは


 とりあえず腹の上に馬乗りになって、マオの両肩を掴み揺らしてみる。乳が揺れた

 いや男なら眼福なんだろうけど


 しかし起きない。やらかい頬を掴んでムニムニしても起きない。

 だが鼻を摘まんで少し経ったら幸せそうだった顔がちょっと不快そうな顔に変化した。このまましばらく待ってみよう




「何で起こすだけで苦労しなきゃいけないの…んんっ……いけないんだ…」

「…うっ…ぅん……うん?」

「おやおや、ようやくお目覚めかよ…」

「……ん?」

「まだ寝ぼけてんの…っと、寝ぼけてやがるのか?」


 こんな寝起き悪いのか…いや、眠りについてすぐに起こされたら完全に起きるには時間かかるか…


 じゃあちゃんと覚醒するまで乳でも揉んで刺激してやろーっと




「これは何とも言えない良い触り心地…おっぱいスキーの気持ちが分かったわ」

「……はひっ!?だだだ誰っ!?何でわたし胸揉まれてるんですっ!?」

「そりゃお前…うぇっへっへっへー!」


 初揉みだから他の乳は分からんが、この娘の乳は何とも良い感触だ。幼女の手だと鷲掴み出来ないし今の内に堪能しよう


 そーれふにふにー


「ひぃぃぃぎゃああああああぁぁぁぁぁ!!?うわあぁっ!うわぁっ!うわああああああぁぁぁぁぁっっ!!!」

「えひゃひゃひゃひゃっっ!!良い声で鳴きやがる!それでこそ私…こほん、俺も楽しめるってもんだゴラアアアアアァァァっ!」

「やだあああああぁぁぁっ!やだやだやだっ!やだよぉっ!ウアーーーーーーン!!お゛ねえぢゃあ゛あ゛あ゛あああああぁ゛ぁぁぁぁぁん!!!!」

「くっはははははははっ!ええ乳してますなあああぁぁぁっ!」




「これはひどい」

「……あれが寝込みを襲われた女性の恐怖の悲鳴ですか」

「そりゃ起きてあんなオッサンが胸揉んでたら絶叫しますよ」

「拘束されてますしね」



「忘れられない夜にしてやるわいっ!ふひひひ、ひゃーっはははははははははっ!次はその形の良い尻の番だオラアアアアァァァァァっ!!」

「やあああああだああああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!?ひっ!?ひぐっ…!うええええぇぇぇぇぇぇん!!」




☆☆☆☆☆☆



「マオが口聞いてくれなくなりました」

「そりゃそうでしょう」

「愛想尽かして去らなかっただけマシですよ」


 たかが乳と尻を揉んだくらいで大袈裟な…


 あの後満足したので精霊魔法を解いてもらい、実は私でしたっ!…って言った後のマオの顔ときたら…ぷぷっ


「にしてもちょー泣き顔で笑ったわ」

「悪魔をあそこまで泣かせる人はそうそう居ませんよ…」


 ちなみに私の顔を認識したあと、何が起こったか把握するのに時間がかかったようだ


 そして私が行ったドッキリと分かったら拗ねて口を聞いてくれなくなったと

 今は少し離れた位置でふてくされた顔で座っている


「あの様子では機嫌を直すのに苦労しますよ」

「ふ…私を誰だと思ってるの?まぁ任せなさい」


 マオの扱い方ぐらい把握してる。私にかかればあの娘をご機嫌にする事など造作もない




「よいしょ」

「…っ」


 まずはふてくされてるマオの膝に座る

 それだけですでに動揺している。マオは基本良い子なので私を振り落とす事はまずない


「まだ怒ってるの?」

「……」

「無視されちゃった…やっぱり怒ってるのね」

「……」


 ふむぅ…このままだと余計な時間を食ってしまうな…押してダメなら引いてみろ、一旦離れて釣ってみよう


「仕方ないわね…ほとぼり冷めるまで待つわ」

「……」

「そこのエルフ、あなたの精霊魔法のせいでも有るんだから代わりに椅子になりなさい」

「あなたがやれって言ったのに……膝に乗せればいいの?」

「ええ」


 割とあっさり承諾された。そしてヒョイっと持ち上げられ膝の上に乗せられる

 うむ、何とも慣れ親しんだ座り心地だ…そりゃそうか


 だって持ち上げたのマオだし

 あっさり釣れるとかチョロい娘だよ


「…あれ?」

「あなたの役目は終わり」

「何なの……」




「マオさんは椅子係に誇りを持つ者として譲れなかった様ですね」

「もうお姉様の術中にハマってますよ、マオさんは」


 仕上げとして膝の上に乗ったまま身体をマオの方に向ける。少し見上げれば至近距離にマオの顔……近っ!


「羨ましい…!ですが流石にあのイタズラは酷いのでこのぐらいのご褒美があってもいいでしょうね」

「私はどんな褒美だろうとあのオッサンの姿は御免です」




 何かマオの顔が赤くなりだした、ついでに口元が若干ニヤけ始めた。なに考えてんだこの娘…


「許してくれた?」

「……ぅ」


「…こういう言葉知ってる?好きな子には意地悪しちゃうって」

「もっ!?も、もうっ!こ、ここここ今回だけですよっ!?」


 ……チョロいです



「…簡単な娘ですね」

「マオさんが一番大好きなのが自分だと知ってるからこそ出来る芸当ですね」

「やらしいのは悪魔さんの事を別に好きとは言ってないトコですねー…ペドちゃんったら悪女!」


 マオの機嫌が直ったので身体の向きを戻して座り直す


 いつの間にか冒険者達と虫人達の戦いは終わっていたのか、戦闘してる様な音はしない

 ジェイコブか五丁目の冒険者達が事情でも話して停戦したのかも


「ちらほらテント建ててる奴等が見えるわね、やっぱり皆ここに泊まっていくんだ」

「みたいですね…まぁこんな時間に急いで帰る必要はありませんから」

「虫人達は?」

「わかりません。調べましょうか?」

「いえ、そこまでしなくていい」


 別にどうなっていようが関係ないし

 …って言ったのに調べに行ったユキ。いや少しは気になったけどね…そんな私に気付いたのか?




「マオはもう眠くないの?」

「寝たらあの顔が夢に出てきそうで…」

「つまり怖くて寝れないって訳ね、一緒に寝てあげよっか?」

「いっ、いいんですか?」

「ええ、私も割と眠いし…でもユキが戻ってからね」


 というかテントで寝るから結局皆一緒で寝る事になるし…マオは気付いてない様だけど






「どうやらお互い妖精の為に戦ってると気付いて和解したそうです」

「なるほどね…」

「あと、シリウスさん…でしたか?遺体を回収してきました」

「…持ってきたんだ。あのまま放置するよりは…?」


 …あれ?

 何というか…ちょっと変と言うか…こりゃアレだ


「どうかなさいましたか?」

「……シリウスが持ってた腕輪は?」

「…確認してみましょう」


 いや、多分持ってないな…長と戦った時に比べて妙に衣服が乱れてるし、シリウスの遺体から拝借した奴が居ると見ていい



「ありませんね……」

「盗まれたのね」

「五丁目の冒険者達でしょうか?」

「いえ…アイツ等だったら今頃自慢してるわ」

「…一人、急に姿が見えなくなった男がいますね」


 確かに…腕輪の事知っていて、盗みを働きそうな奴が居なくなっている…


「ま、ほっときましょ。どうせ幸運にあやかってもすぐに壊れて不幸になるでしょうし」

「わかりました」

「壊れかけを持っていくとか馬鹿ですねー」


 ケラケラ笑うリディア

 リディア達はこの後どうするんだ?テントを張る気配も無いし


「ロナ達は今からどうするの?」

「また旅に出ますよ?」

「…夜中に?」

「夜こそ私達の時間じゃないですか」


 ああ、魔女のリディアはともかく、後ろの二人は吸血鬼だっけ…なら夜型か


「では、ペドちゃんもお休みするみたいだし、私達は行くとしましょう」

「はい……それでは皆様、お嬢様がお世話になりました」

「こっちのが助かったわ、ありがと」

「例の鬼達の遺体は如何します?」

「とりあえずユキの亜空間に仕舞うからこの辺に置いといて」

「かしこまりました」

「もうやり残しは無いですね?……じゃあ行きますか。ペドちゃん、またお会いしましょうね?ではごきげんよう」


 リディア達は深々と礼をすると、そのまま闇に紛れるように姿を消した


 …去り方カッコいいなおい


「…じゃ、もう皆で寝ましょう」

「「「はい」」」

「あの…私の事は…?」

「もう寝るからまた明日」

「……うぅ」


 所在無さげに立っているエルフを放置してテントに入る

 寝る位置は決まってないのだが、私はほぼ強制的に真ん中に寝かされた。別にいいけど…


 やはり疲れが溜まってたのか、横になるとすぐに睡魔に襲われる

 放置したエルフが諦めて朝にはどこか行ってたらいいなー…と思いつつ、私は眠りにつく事にした

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