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幼女とメイドの出会い

 私とユキ以外のギルド内に居た人達が絶句して固まったまま数分がすぎた。

 早く登録してくれと思う。宿の予約に間に合わなかったら普通嬢に賠償金を請求しよう




「あんな幼女が子供産まされるとか世も末だな」

「幼妻とか大好物なんですけど」

「俺あの娘知ってるぞ。フィーリアさん家のペドちゃんだな、確か」

「俺も知ってるわ。割と近所に住んでるからな」

「ペドちゃんとか名前からしてロリコンの救世主っぽいな」

「ここ最近ペドちゃん見なかったけど、こういう訳だったのか…」

「あぁ…セティさんとかたまに会うが、娘が結婚したとか聞いた事ないからな…」

「つまり、自分が望んでない子を産まされて傷心して引きこもってたって訳か…辛かったろうに…」

「幼女はノータッチが鉄則だと言うのに…っ!許せん!」



 なにやら壮大な勘違いが始まった。勝手に私を悲劇のヒロインにするのはやめて欲しい。




「お前ら落ち着け、良く考えろ。あの美女が2歳に見えるか?」

「確かに…良く考えたらありえんな」

「犬とか半年で立派に成長するだろ」

「犬と一緒にすんなよ…」

「お前はこう言いたいんだな?魔獣に襲われて身籠ったと」

「獣姦とか大好物なんですけど」

「…俺は決めたっ…!あの娘は俺が幸せにするっ!!」

「おい、誰かこの性犯罪者を止めろ!俺だって我慢してるんだ!」

「誰が性犯罪者だ!あの娘は16歳だ!何の問題もない!」

「そうだった…!つまり…合法!」


「イエス合法!GO!HO!」

「「「「「GO!HO!GO!HO!!」」」」」




「ユキ、あいつ等を黙らせて」

「かしこまりました」




 頼れる私のメイドが物理的に犯罪者予備軍を黙らせた事でやっと落ち着いた。

 まさにメイド無双であった。その場から一歩も動かずにユキが好んで使っている武器、私が奇跡ぱわーで創った鞭を使ってボッコボコだボッコボコ。

 ボロボロになった犯罪者予備軍達を見て多少は気が晴れた。



 一応言っておくが、ユキはもちろん私がお腹を痛めて産んだ訳じゃない。

 奇跡ぱわーを使って生んだのだ

 まさか生き物まで生み出せるとは思わなかったが…



 ユキを生み出したのは14歳の時、グレてやる気なくしたばかりの頃だったか…





☆☆☆☆☆





 歩くのも億劫になるぐらいやる気がなくなっていた私は世話係が欲しくなったので、いわゆる使い魔でも呼んでみようと思った。


 人に見られたらマズイかも知れないので森の中で行う事にした。

 バレて学園にでも告げ口されて面倒な事態になっても困る。


『私のお世話をしてくれる使い魔よ出でよ!


 要望としてはとりあえず人型ね。移動は全て抱っこ。長距離の移動で疲れても困るから身体能力最高で。むしろ人外で。家事もやって欲しいから…メイドがいいかな?折角だし美女で。魔法も使えた方がいいよね?うん、全魔法使えるようにして。あとは…裏切られたら怖いから…私に絶対の忠誠を誓うこと。こんなものかな?


よし!この条件に当てはまる者よ来いっ!奇跡ぱわー!!』



 いつも使っていた奇跡ぱわーと違い、目の前が眼を開けていられない程のとてつもなく凄まじい光に覆われた。


 だが、確かに奇跡ぱわーが発動した事を感じて私はいつも通りぶっ倒れた。

 気絶した後はまだ顔も知らない私のメイドが何とかしてくれるだろう。




 目を覚ましたのはなんと二ヶ月後だった。森の中でぶっ倒れたが、ちゃんと自分の部屋のベッドで寝ていた。過去最長の気絶期間に父は元よりクズな母も心配したそうだ。

 肝心のメイドだが、ちゃんと傍に居た。どう見ても美女です。要望通りなら今後の私の生活は安泰だ。



『お母様の要望に該当する者はおりませんでした。なので奇跡ぱわーは要望に合う者を創る事にした様です。人の身でありながら生命を創り、かつ二ヶ月程度の気絶で済むとは流石は私のお母様です』


 とはユキの言。何という事でしょう、世話係を呼ぶだけのハズが、私は一児の母になってしまったのです…


 その後は『ユキ』という名前を与え、お母様からご主人様と呼ぶ様に変えさせた。



☆☆☆☆☆



「で、私の代わりに面倒事をして貰う生活をしつつ今に至る…と」

「はい?」

「何でもない、ユキと出会った頃を思い出していただけ。あと、奇跡ぱわーの非常識さについても」

「そうですか…」



 ユキはあっさりとした返事をするが、顔は赤いし、溢れる喜びを我慢出来ないのか無表情を装えずニヤニヤしている。私がユキの事を考えていたと言っただけでこの有り様だ…可愛い奴め!



「さて普通嬢…固まってないで登録の続きをしましょう」

「だから普通嬢じゃ…まぁいいです…しかし、どうしましょうか…」


 どうするも何もさっさと登録して欲しい。



「ご主人様、2歳ですと年齢的に登録が出来ないようです。可能なのは12歳以上みたいですね」

「なるほど…じゃあユキは18歳という事にしよっか」

「かしこまりました」

「目の前で虚偽報告の相談するの止めてくれます?」



 うるさい。こんな受付で私の豪勢な暮らしをするという野望に躓く訳にはいかないのだ。

 普通嬢だって褒賞金欲しいだろうから妥協せざるを得ないだろう



「まぁ、偽名で登録する方も多いので大丈夫なんですけどね」

「なら早く記入しなさいよ」

「はいはい…ペド・フィーリア16歳…ユキ18歳っと」

「ペドは要らない」

「本名じゃないと登録できません」




さっき偽名で登録する人多いって言ったじゃないかっ!仕返しのつもりか…普通嬢のクセに



「次は…えっと、得意武器ですね」


「私は鞭です」

「鞭ですね…先程使ってましたしね…よし、次はペド様ですね」


「私は奇跡すてっき」

「なんですかその妙に語呂がいい武器は」



 きせきすてっき。確かに語呂がいい。私もそう思ってた。

 ピンク色を基調としたすてっきで、先は丸い水晶っぽいものが付いており、その回りにはデフォルメされた天使の羽みたいなのが付いている。


 私はこれ以外の武器を持てない。奇跡すてっき以外を持つと電流が流れた様な痛みが走るのだ。残念、私の武器は限られてしまった。



「見せてもらっていいですか?………武器なんですか?それ…玩具じゃなくて…あなたには似合ってますが」

「ふん、ファンシーな見た目に騙される様じゃ普通の受付嬢と言われてもしょうがないわね」

「…そこまで言うならその武器の性能を教えて頂きましょうか?」

「いいわよ…この奇跡すてっきは何処に捨ててもいつの間にか手元に戻ってくる」

「呪われてますよそれ!?」



 呪いだろうと気にしない。何処に置いてようが必要な時に戻ってくるとか私にはただの便利機能だ。

 それにこの奇跡すてっきを使って奇跡ぱわーを使えば気絶時間が半分に短縮されるという私には有難い武器なのだ






 奇跡すてっきについて語り終わってはや20分。

 その後は特に突っ込まれる様な質問はなく、滞りなく進んだ。ユキに趣味とか好きな食べ物とか必要無さげな事まで聞いていたが、あれは絶対に普通嬢の私情だ。



「さて…これで大丈夫です。ギルドカード発行まで少々かかりますので、その間にギルドの説明をさせて頂きます。ちなみに質問とかありますか?」

「そうそう、何で15歳まで義務教育なんてものがあるのに12歳から登録できる訳?」

「それは他国には義務教育が無い国もありますからね。軍事国家のサード帝国とか」



 めんどくさい義務教育が無い国とか羨ましい…


「他に質問が無いならギルドについて説明を始めますが、宜しいですか?」

「長そうだから重要な事だけお願い」

「…詳しく聞いておかないとあとで後悔しますよ?」

「私にはユキがついてるもの。分からない事があればその都度聞けばいいわ」

「駄目だこの幼女…もう手遅れです…」

「失言には気をつけるべきね。私を怒らせると暴れるわよ?…ユキが」

「ごめんなさい!」



 ふふん、大人しく言われた通りにしてればいいのだ、馬鹿め。



 で、最低限覚えておけば良いらしい重要事項はというと



・ランク…初級者から十段まであり、上級者の次は初段になるというややこしいシステムだ。

・緊急依頼…誰でもなれる冒険者だが、滞在している国が魔物に襲撃されたりした時、滞在中の中級者以上の冒険者は必ず参加しなければならない義務があるらしい。臨時の傭兵みたいなものだ。理由があればともかく、サボって不参加の場合は罰金とギルドカード剥奪だそうだ。

・各ギルド内の依頼…受けるだけならランクに関係なく好きな依頼を受けられる。初心者が危険な依頼を受けて死んでも自業自得という事だ。

 魔物討伐の依頼には危険度があり、危険度はS←A←B←C←D←E←Fとなっている。Sにいくほど強力な魔物になるんだと。



 とりあえずこの三つだけ覚えておけばいいや。



「っと…お二人のギルドカードが出来た様ですね。お確かめ下さい」


どれどれ…



『ペド・フィーリア 16歳


性別:女

ランク:初級者

得意武器:杖

犯罪履歴:なし』



『ユキ 18歳


性別:女

ランク:初級者

得意武器:鞭

犯罪履歴:なし』



「なんだ…あれだけ質問しといて書いてあるのはこれだけなんだ…」


「プライバシー保護のため、その他の情報はギルド内にある特殊な機械を使わないと見れない仕組みです」



 へー…どうでもいいけど。私にとってギルドカードなんてただの身分証明書だ。



「早速依頼をお受けになりますか?こちらの依頼なんてオススメですよ!六番地の近くの森に出没したオーガの討伐です!危険度Dですが、ユキ様の実力なら余裕かと…ランクアップも兼ねていかがですかっ!?」



 登録の次はランクアップを推してきた。どうせランク上がれば褒賞金が貰えるとかだろ。




しかし…




「お断りよ。中級者以上になると緊急依頼に強制参加と聞いた以上私がランクアップすると思う?」

「…はい?」



 普通嬢が何言ってんだコイツ…という目で見てくる。



「私にとってギルドなんて身分証明書を発行する事と薬草を売る為の施設でしかないわ」

「な゛っ…!」



 ふははは!見なさいユキ!この普通嬢のアホ面をっ!愉快…あまりにも愉快っ!



「さて、そろそろ行くわよユキ。もうここに用はないもの」

「わかりました」

「じゃあね、普通嬢。登録してあげただけ有難いと思いなさい!美人受付嬢だったらホイホイ依頼を受けたかもね!だが…残念!あなたは普通でしたー…ププッ」

「…っ!ギルド長!塩をっ!ありったけの塩を持ってきて下さい!つか誰でもいいから塩を持ってこいやぁっ!!」



「あっはははははは♪普通嬢ざまぁ!」

「あぁ…ご主人様がこんなに楽しそうに…」



 久しぶりにからかい甲斐のある人間に会った。またね、名も知らぬ普通の受付嬢…次に薬草を売りに訪れたらまた遊んであげようかな!

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