幼女、鬼の過去を見る
『私が在学中にいた先生ってまだ居るのねぇ…あの先生うざったいよね』
『…皆うざったい』
『ねえねえ!今回はどんな嫌がらせしたの?ペドちゃんの事だからきっと誰にも考えつかない様な凄い事やったんでしょ?』
『どうでもいいでしょ』
『あ、うん…そうね…あ、夕飯どうしよう…あの先生説教が長いからこんな時間になっちゃったし、外で食べよっか?ダナン抜きで』
『ふん…二人で行けばいいでしょ?馬鹿な娘なんかほっといて…』
『ペドちゃんが馬鹿なら皆馬鹿になっちゃうよ?』
『…あぁもう!さっきから鬱陶しいのよ!私のご機嫌でもとってるつもり?くだらない…別に良い母親なんか演じなくていいのよ!どうせ他の連中みたいに面倒くさいガキとでも思ってんでしょ?いっそ家から追い出して捨てればいい!私は一人でも生きていける!!』
『…わぁ、ペドちゃんの心の内を聞けるなんて思ってなかった…私もなかなか出来る女だね』
『はぁ?』
『にしても良い母親かぁ…私は演じてるつもり無いし、私の思うままにペドちゃんに接してるだけだよ?それで良い母親って言ってくれたなら、私の子育ても捨てたもんじゃないね!きゃーっ!ペドちゃんに良い母親って言われちゃった!』
『…馬鹿らし』
『そ、私は馬鹿だから…何があっても娘を信じる、愛し続ける事しか出来ないの…だから私がペドちゃんを本当に大好きなんだって信じてほしいなぁ』
『…目を見れば分かるわ、お母さんは嘘を言ってないって…でも分からない……何でお母さんは一度も私を蔑む目で見ないの?思い出さなくても分かるわ…だってお母さんがそんな目をした事ないもの…だから不思議…
どんなに好きでも、絆が深くても…たとえ親子でも…嫌悪を抱いたり煩わしく思う時が必ずある…そして亀裂が入り縁が切れる事だってある。それが人って生き物でしょう?…私の生き方は決して人に好かれるものじゃない…なのに…』
『む、難しい話するのね…そんな事言われても愛しい娘なんだから何をやっても愛しく感じるものよ…例え世間では嫌悪される行為でもね…ん?そこで叱れない私ってダメな母親?あれー?』
『ダメダメね…でも、ありがとう…叱られるよりも心にきた…反省させられたわ…ごめんなさい』
『そ、そう…?なら良かった…のかな?』
『でも…もし今後、私のせいでお母さんまで敵を作る様になったら容赦なく見捨てて…これはお願いよ』
『やだ。聞かない。仮にそうなったら一緒に嫌われよっか?』
『…なんで』
『家族である私まで見捨てちゃったらペドちゃん独りぼっちになっちゃうじゃない…ペドちゃんは愛されなきゃダメ、許さない!独りは絶対ダメ!……だから、そうだなぁ…ペドちゃんにも信じられる家族が出来たなら、子離れしてもいいかもね…いい?見捨てはしないの、子離れだからね?』
★★★★★★★★★★
「サヨ、私って凄い腹立つガキだったわ」
「起きて早々何ですかいきなり…」
「…思い出って美化されるわよね」
「だから何なんです?」
どんな育ち方したらあんなガキになるんだ…いや、自分の事なんだけど
それよりも昔の母と今の母が同一人物かも怪しい…どうしてクズになった……確かユキが生まれてからしばらく経ったらあんなだったなぁ
つまり私に家族が出来たから子離れして自己中に生きる事にした…って解釈でいいのか?
「んな事考えてる場合じゃないわよね…何分寝てた?」
「七分くらいですね」
二分過ぎてるな…夢を見てたって事は寝てたって事か…五分気絶して二分寝てたんだろう
「何か問題あった?」
「気絶したお姉様を見たマオさんがお姉様にすがり付いて号泣したあと死のうとしたくらいです」
「死んだと思われたのね…息してるんだから分かるハズでしょ」
ま、そこまでされて嬉しくない事もない
よし、起きたからには早速行動しよう。気になる事ってのはマオを追い出したって言う鬼達の事だ
悪魔の力を利用したいってんなら追い出す必要がない…舞王が暴れすぎて身の危険を感じたって可能性もあるけど、あの長の様子じゃ手元に置いておくハズだったに違いない
「サヨ、マオが住んでたって言う小屋にいくわよ」
「里の隅でしたっけ…方角はどちらでしょう?」
「とりあえず里の隅を見て回りましょう。一番ボロっちぃ小屋が恐らく目的の小屋よ」
「わかりました」
再びサヨにおんぶしてもらい里を疾走する。ユキと同様に振動はあまりない
小さい里だろうから大して時間はかかるまい
☆☆☆☆☆☆
里を駆け回っておよそ十分と少し、お目当ての小屋と呼ぶのも難しいほどボロく小さい建物を見つけた
「…ちょっと蹴ったら倒壊しそうね」
「扱い悪すぎでしょう…流石に不憫です」
念のためそーっとドアを開けて中に入る
室内を見渡せば、マオが寝ていたと思われる藁の束の寝床…それ以外には皿が一つあるだけで他には何もない
「…皿に水が入ってるけど」
「雨水…っぽいですね」
「まさかこれを飲んでたりして」
「いやいや、変な虫が湧いてますし…飲むのはちょっと…」
「だよね!」
「「あっははは!」」
「後でマオの身体を念入りに調べてちょうだい、もし変な虫やら細菌が見つかったら必ず消し去りなさい」
「お任せ下さい!」
特に何も無さそうだし早く出よう…ここは精神的によろしくない
次に目指す目的地は鬼達が処刑されたという場所だ。小さい里だし無いかもしれないが…
「この里に処刑場ってあるか知ってる?」
「はい、ありますよ。昔来た時に見ました」
「じゃあ今度はそこに連れていって」
本当に処刑場があるとか、こんな小さい里で一体どんな奴を処刑してたのやら
サヨが向かった先は長の屋敷がある方向だ。その屋敷を通り越した先、里の端になる場所に処刑場らしき建物があった
サヨは建物から少し離れた所で立ち止まり何やら符を取り出した
「何やってんの?」
「あの場所は衛生上よろしくない様なので、結界で細菌から守ろうかと」
「ああ…変な病気に感染したくないもんね」
結界を張ってから中に踏み込む
異臭がするかと思ったが、どうやらサヨの結界は防臭の効果もあるようだ
奥に進むと、どうみても一人で開けるのは難しいであろう石で出来た扉があった。
だがサヨは片手で楽々と扉を開く…体格的に違和感しかない
「あらまぁ…鬼の死体がそのまま放置されてるわ」
「四体もいますね…ところで何を調べにきたのです?」
「何か遺書とか残ってないかって」
「うーん…流石にここにはその様な物は残って無さげですねぇ」
やっぱりそうだよなぁ
この鬼達の家ならもしかしたら何かしら残ってたかもしれないが、爆撃で多分壊れてしまっている
「過去を覗ける魔法とかない?」
「それは無理です…映像に残して後で見る事は可能ですが」
「え?そんな事出来るんだ…」
そりゃいいな…今の自分達を老いた将来に見るのも楽しそうだ
ん?何か手に…
「………奇跡すてっき?」
「どうかしました?」
「何か勝手に奇跡すてっきが出てきた」
「…本当に意志があるんですね」
私に何か言いたい…言うのは無理か、やらせたい事でもあるのか…?
いや、このタイミングで出てきたって事は…
「奇跡ぱわーで過去を見れって事か」
「それなら可能でしょうが…また気絶してしまいますよ?怪我も治したばかりですし…お身体が心配です」
「数年に一回くらいはやる気出してもいいわ、やりましょう」
奇跡すてっきが使えと言ってきた…ではなく出てきたんだから大丈夫ってことだ…恐らく
「じゃ、戻りましょうか」
「はい」
建物から出ると、ぺけぴーとお姉さんにバッタリ出くわした。ぺけぴーの頭の上にはクルルも乗っている
転移したとき置いてきたんだな…存在をすっかり忘れてた
「こんな所で何やってるの?」
「いやいや、お姉さん達こそ何してるのよ」
「暇だから鬼の里を散歩」
「敵の本拠地だってのに暢気ね」
「だってこの子、馬のくせに強いもん。一緒に居れば大丈夫っぽかったから」
お姉さんのお守りなんかさせて悪かったな…ついでにクルルも
「大丈夫でしょうけど、一応気をつけてよ…」
「はーい」
何て緊張感の無さだ…お姉さんは一度エロい目にでもあわないと警戒心を持てそうにない
ぺけぴーとお姉さんは再び散歩に行った。というかぺけぴーは無理矢理付き合わされた…可哀想に
クルルは私達に同行するつもりみたいで私の肩に翔んできて座った
「…どうかした?」
「ん…つかれただけ」
「お姉さんの相手が?そりゃ災難ね」
クルルの事だから話かけられても無視一択だろうけど。一方的に話かけて疲れさせたのだとしたらお姉さんのウザさ恐るべし
☆☆☆☆☆☆
ユキ達の元へ戻ってくると、そこは屍タワーが築かれていた。だがよく見るとピクピクしているから死んではいない
「何やってんの?」
「おかえりなさいませ。何となく高く積んでみようと思いまして」
「上に積んでるのは子供みたいね」
「はい、お母さんなら子供だろうが容赦しないと思いまして平等に痛めつけました」
「どうせマオを虐めてた口でしょうからそれでいいわ」
その話題のマオなんだが、何か少し離れた位置に立ってまごまごしている
「あなたはあなたで何やってんのよ」
「お、お姉ちゃん…」
「なに?私が怪我した事をまだ気にしてるの?もう治ってんだから気にする必要ないわよ」
「あ…愛してくれるって…きゃー!」
「え?そっちなの!?」
今更気にするんかい…しかも間違いなく変な方向で受け取っている
「確かに愛してるかと聞かれて当たり前とは言ったけど、私の愛は家族愛よ家族愛」
「わかってますよぉ…この際第二夫人でも第三夫人でもいいです」
「あんたは何もわかっとらん」
マオの中では家族=結婚になっている模様…名称だけの家族という選択はないらしい…後で矯正しておこう
「おい、イチャイチャしとらんで俺を自由にせんか無礼者どもめ」
「そんだけやられて何で態度デカいの?馬鹿なの?」
こいつだけは縄でぐるぐる巻きにされている
過去を覗いたらお望み通り自由にしてやろう…自由になるのはあの世でだが
「マオ、今からこいつの頭ん中覗くけど、あなたも見なさい。てかあなたが見なきゃ意味ない」
「…かち割るんです?」
「まあ…それも面白そう」
「おい馬鹿やめろ」
「さっきからお母さんに対して言葉遣いがなってません」
「げぶぁっ?!」
顔面に鞭を食らう長、ざまぁ
多少はスッキリしたな
「さて、覗かせてもらおうじゃない…お前の過去の記憶を」
鼻血を出して倒れてる長に奇跡すてっきを向ける
「じゃ、マオを追い出した鬼達が処刑される少し前の記憶を見せてちょうだい…奇跡ぱわー!」
★★★★★★★★★★
急に先ほどまでいた処刑場の中に移動していた。周りには皆いる…過去に行った時と違ってモヤモヤじゃなく、はっきりとした姿だった
皆急に場所を移動したためか、やたらとキョロキョロしている
そして前を見て視線が固定された。目の前には処刑台に鎖で繋がれた四体の鬼がいた
「…凄いです、まさか他人の記憶をこうも鮮明に覗けるなんて」
「お姉様にしか出来ない芸当ですがね」
「…」
「どう?マオ、あなたを追い出した鬼達で間違いない?」
「はい…こ、この人達です…棒を持って、追いかけてきて…」
む、嫌な事を思い出させたか…でもこの娘は見なきゃダメなんだ
「…やっぱり、外道になりきれなかったって顔してるわ」
「そうですか?悪そうな面してますが」
「サヨは人を見る目がまだまだね」
「う…」
「顔は確かに悪人っぽいですが、目は違いますよ」
「ユキは流石に私の娘だわ」
「うぅ…」
まあじっくり見ようじゃないか…あの鬼達のマオへの気持ちを
『…何故、あいつを逃がした…散々飼ってきて、さぁ目的を果たそうと思っていた今になってだ』
『…長よぉ、俺は思うんだけどよ…結局あの娘を利用したってそりゃ悪魔の力で、俺ら鬼の力じゃないんじゃねぇか?』
『おう!俺もそう思うぜ!』
『なにを、今更…今更すぎるぞ貴様ら!奴に子を生ませ、心臓を喰らい力を得る!…そのために十年以上も里に置いていたのではないかっ!』
…うわぁ、ほぼサヨの予想通りだ…おぉゲスいゲスい
あ、マオの目が死んできた
『まさか…鬼である貴様らが命令を破るとは…』
『おいおい、命令通りに娘を痛めつけたら逃げたってだけだぞ』
『そうそう』
『黙れ!…他の者が見ておる…貴様らが里の外にまで追い出す所をな!』
『やっぱりあそこまでやったら誤魔化せないよな?』
『だが、徹底的にやらねばあの娘は逃げんからなぁ…』
ほら…やっぱりだ。奴等はマオを追い出したんじゃなく、逃がしたんだ…
『なぜ…何故だ!命令を反故にすれば死罪と知っているだろう…?なのに…!』
『長…命令するだけで手を汚さずにいたアンタにゃ分かんないさ』
『全くだな…』
『アンタは知らないだろうがな、あの娘はそりゃあ良い子でな…いや夜になると人が変わったかの様におっかなくなるけど』
『…だな、初めの内なんて小さいのに俺らボロボロにされたもんな』
それ舞王です…ボロボロにするくせに殺しはしなかったのは…マオを鍛える為かも
だが殴り返す強さは得ず、痛みを知りすぎて他人を傷付けるのを躊躇する娘になってしまったわけか…娘があんなに優しい悪魔だとは思わなかっただろう
『最初の内は悪魔相手だから殴った所で何の罪悪感も感じなかったさ』
『でもなぁ…殴っても殴っても…棒で叩いても、石をぶつけても…何をやってもあの娘は俺達を避けることはなかった…』
『怯えちゃいたさ…ブルブル震えてたからな…なのによ、近寄ってくんだよ…笑いながら…』
『…だんだん、俺達の方が変わったよな』
『ああ…いつしか殴った後に手が震える様になっちまった』
『夜になって…あの娘に殴られるのを抵抗しなくなった』
『あの娘の居ない所で涙を流すようになった』
…聞いておけよ、マオ
敵だらけじゃなかったんだ…お世辞にも褒められる様なやり方じゃないけど、鬼達は不器用なりにマオを想っていたのだ
『あの娘が…頭に小さな骨を突き刺して現れた時…これで家族になれますか?………そう言ってきたんだ…俺はその場で泣きそうになったさ、俺は一体何をやってんだ!って思ったよ』
『花飾りを持ってきた事もあったよな…ぐちゃぐちゃにして…あの娘が泣きながら去ったあと、俺達も泣きながら拾い集めて直したっけ…』
『いつしか俺達は自分を恥じた!…こんな健気な少女をいたぶるのが鬼なのか?』
『あの娘を見てるとな、鬼なんて悪魔に比べりゃくだらない存在だって思い知らされるんだよ』
目の前にいる…映っている鬼達は皆涙している
…どうせなら、生きてマオに伝えて欲しかった
『俺達には無理だったんだ…あの娘をアンタの思惑通りに利用させるのが』
『好きになっちまったんだな…』
『幸せになって欲しいって思った』
『この牢獄から出してやりたいと思った…だから逃がした!』
『愚かな…里から出した所でどうなる?今頃魔物にでも喰われてるだろうよ』
『ばぁか!あんな良い子が死ぬわけねぇだろ!』
『おうよ!あの娘はな!これから先ずっと笑顔で過ごすんだよ!』
『俺達にゃ無理だったけど…きっとあの娘が欲しいと願ってた家族を手に入れんだよ』
『案外もう出会ってたりしてな!あの娘を好きになってくれる奴に』
『『『『わははははは!!』』』』
『黙れ黙れっ!…もうよい!…命令違反につき、貴様らを処刑する』
『おう!やれやれ!』
『俺達に悔いはない!』
…今から死ぬってのに晴れやかな顔をしている
死ねば償いになると思ってるなら大間違いだ…
『最期に何か言う事はあるか?』
『『『『あの娘に幸福を!』』』』
『『『『ハモった!?わははは!』』』』
『…馬鹿な奴等め、逝け!!』
長の号令で鬼達の心臓に剣が振りおろされる瞬間、視界が暗転した
★★★★★★★★★★
「…?気絶してない…?」
奇跡すてっきがサービスでもしてくれたのか?しないに越した事はないが
「マオ」
「あ…ふぁい…?」
「良かったわね…ちゃんとあなたを好きになってくれた奴等が居たじゃない…この育った里に…もう死んじゃってるけどね」
「…ぁい」
「あなたの在り方はとても尊い…報われると証明もされた、だから…頑張りなさい」
「ぅん…うんっ…」
『お前は危険だ』
マオが追い出された際に言われた事…言葉通りマオの身が危険だったのだ
私はマオに近寄り手を引き、ある物を渡す。渡したのはもちろんさっき直したネックレスだ
「ぁ…これ……」
「直しておいた、今度は大事にしなさい。…遠い未来、信じる事に挫けそうになったら…それを見て、あの鬼達の事を思い出せばいい…」
「ぉ、ねえちゃ…う、うえええええええぇぇぇぇぇん!!!」
「げふぅっ!?」
い、いいタックルじゃないか…怪我を治したばかりの私にはちとツラいぞ…
幼女にすがり付いて泣く悪魔の少女。絵的に微妙だけど、まあこのまま泣かせといてやるか
「姉さん、この悪党をどう処分します?」
「マオさんが受けた分殴りますか…死にそうになったら回復すればいいでしょう」
「生き地獄ですね、妥当な所です」
おいおい…私にもやらせろよ?
だが何をしてやろうかなぁ?うけけけけけ…
☆☆☆☆☆☆
マオが落ち着いた所で天誅を与える事にする
「ユキ、スライム飛散くん1号を出しなさい」
「なるほど…口に突っ込むのですね」
「貴様らふざけるな!」
「大真面目よ、でも安心なさい…口には突っ込まないわ」
ニヤニヤしながら縛られてる長に近寄る
「ユキ、こいつを大の字になるようにして。もちろん動けない様にもね」
「はい」
「ぬううぅぅぅ!?何を企んでおる!」
「お前の股間を吹っ飛ばそうかなって」
「馬鹿言え!俺の股間は鬼達の宝なんだぞ!」
なんて嫌な宝なんだ…
まあどんなに騒ごうが無駄なんだけど
「お前に助かる道を教えましょう」
「なに…?」
「漏らせばいい、そしたら導火線の火も消えるわ…ただし、映像として残す」
「なっ!?」
私の言葉を聞いたサヨが嬉々として符を用意し始めた。映像を残す為の符と思われる
「ど…どちらも御免被るわ小娘!」
「点火」
「ファイア」
「うおおおおおぉぉぉぉ?!!」
わくわく…果たしてどちらを選択するかなー
爆発した場合、汚い肉片が飛んでくるかもしれないのでユキに結界を張ってもらう
………
「…!………ふぅ」
「うけけけけっ!こいつ漏らしたわよっ!この里の一番偉い奴が女性陣の前で情けなくもお漏らししたわ!あっははははははは!」
「小娘ぇ!貴様許さぬぞ!原型が分からぬほど殴り殺してやるっっ!!」
「はい次ー。スライム飛散くん2号」
「んなっ!?」
「誰が一発で終わりだなんて言った?あ、もう漏らせない?ざんねーん…あははははは!」
「…外道め!貴様の方がよほど悪魔だ!」
そうだよ、私は外道だ
運が無かったな鬼よ…私がマオと出会ってさえいなければ私に会う事も無かったろうに
「罰はまだまだあるから、ちゃっちゃと行くわね。点火」
生意気な表情だった奴だが、導火線に火がつくとついに絶望したような顔になった
☆☆☆☆☆☆
「あら?何かあっちの山燃えてない?」
「確かに燃えてますね」
長で遊んでいたら、辺りはすでに真っ暗だ
長の股間はちゃんと爆破した。そのままだと死ぬので傷口だけ塞いでいる…治す時に尻から尿が出るように改造した
角を根本で折ったりと他にも色々やってるが特に面白くなかった
飽きた鬼はほっといて、何で山火事になってるのか考える
「…妖精は自然から生まれる…なら、生まれた自然が無くなったら…?」
燃えている山から生まれた妖精は消滅するかもしれない…
「クルル…正直に言いなさい、あなた今ツラいでしょう?」
「…うん」
「やっぱり…あの山があなた達の生まれた場所なのね…」
冒険者達は何をやっているんだ…数だけ揃って何の役にもたってないじゃないか
「縁あってか知り合っちゃったしね…仕方ない、私達も向かうわよ」
「鬼達はよろしいので?」
「ほっときなさい…どうせ動けないんだし」
イベント終わってまたイベント…私はそんな頑張る子じゃないってのに…
「次の相手がどんな奴等か知らないけど、種族は予想出来るわ」
「鬼ではないのですか?」
「違うわよ…クルルが言ってたじゃない」
「自然を壊すのはいつだって人間…ってね」
黒幕は間違いなく人間だ…鬼共だけで魔法を防いだり結界を張るなど出来るハズがない
魔法に長けた種族の可能性もあるが、自然に嫌われてまで妖精を襲う馬鹿は人間以外考えられん
「じゃ、行きましょ。マオ!ボケっとしない」
「うひゃうっ!?」
「どうやら、お姉様の残虐行為に怯えてたみたいです」
「だらしない…あ、そうだ…クルル達の事が終わったら戻ってきましょう。処刑場に放置されてる鬼達を埋葬しなきゃね」
「は、はいっ!ありがとうお姉ちゃん!」
人選はどうするかな…お姉さんとぺけぴーには残ってもらうか
という旨をお姉さんに伝えたらあっさり承認を得た。鬼が見たかっただけみたいだ…お荷物がなくなって何より
ユキに抱っこしてもらい、またしても時間が無さげなので、急ぎめに燃え盛る山へと私達は向かった




