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幼女、殴り込みを決意する

「何だってぺけぴーの頭で寝てんのかねぇ」


 今度の妖精は緑色の長い髪と緑色のワンピースと緑を強調している。もしかすると属性とかあるのかも


「とりあえず捕獲して部屋に持ち帰りましょう」

「誘拐ですよそれ」

「大丈夫、大丈夫。私を持ち上げて近づけてちょうだい」

「わかりましたよ…」


 一度地面に降ろされ、両脇に手を入れる方法で再び持ち上げられた


 近くで見ると妖精は結構大きい…40cmくらいあるみたいだ。先ほど見た妖精より大きい


「片手じゃ無理ね」


 なので両手で持ち上げようとした時

 妖精はパチッと目を開きこちらの顔をジッと見詰めてきた


 寝ている猫を捕まえようとする時に割とある光景だ…動かない内は大丈夫だが、少しでも動くと逃げる

 果たしてこの妖精はどうか…


「…」


 ゆっくり近づいて妖精を両手で出来る限り優しく持ち上げる

 妖精はこちらを凝視してるが、特に抵抗なく捕まった


「あっけなく捕まったわね。私はともかく、世の中ろくでもない人間も多いから注意なさい」

「…」


 妖精は未だ何も語らず

 喋れないって事はないだろう…さっきの妖精は大声で喋ってたし


「何にせよ宿に入りましょう、話はそれからよ」


 妖精は私が両手で持ったまま運ぶ事にする

 無言な上に身動きもしないから人形みたいだな


☆☆☆☆☆☆



「なぁんにも喋らないわねぇ…」

「…」


 テーブルの上にタオルを敷き、そこに妖精を座らせている

 相変わらずこちらを見るばかりで反応が何もない


 余りにつまらないので妖精の顔を指でつついて遊んでみる

 指を近づける際、ビクリとして両目を閉じたのは可愛かった


「おー…ほっぺプニプニー」

「…」


 てか妖精の分際でやたら乳がデカイなこいつ…妖精は子供の姿をしてると思ってたが、この子は成人手前の女性の様な容姿だ


「おっぱいフニフニ…これはクセになる感触だわ」

「…」


 胸をつつかれても無反応とは…反応するまで胸を弄るのも面白そうだが…

 それよりも気になる事があったので再び持ち上げて立たせる


「…ぱんつはいてる」

「……」


 ワンピースの裾をたくしあげて中身を見たらちゃんと穿いていた

 可愛らしい容姿にピッタリな花柄の可愛らしい下着だった


「あのね、そんな小さな女の子に猥褻行為を働くのはどうかと思うよ」

「人聞き悪いわね…本人は気にして無さそうだし大丈夫」

「その子の顔を見ようか…大分真っ赤よ、物凄く恥ずかしそうじゃん」

「あら…嫌なら嫌って言った方がいいわよ?」

「その前に嫌がる事しなきゃいいんじゃないかな?」


 それは嫌がらせ大好き人間の私には無理な注文ってヤツだ


「でも妖精に嫌われるのはヤダし、この子には控える様に善処しようかな」

「その子の胸を弄りながら言うセリフじゃないよ」

「いつの間に…気付かぬ内に触ってしまうとは何という魔乳…」

「今のお姉ちゃんはすごく変態っぽいですよ」


 何だと…

 この私がユキみたいに変態と申したか

 ぬぬぬ…だが否定出来ない



「悪いのはこの乳よ!」

「うわぁ…」

「うわぁ…とか言うな!あなたも触ってみれば分かる!」

「む…そこまでお姉ちゃんを虜にする胸は確かに触ってみたい気も…」


 むむむ…と悩みだした

 多分良心と葛藤してるんだろう

 どうせ好奇心が勝るのに無駄な事を……


「じ、じゃあ…ほんのちょっとだけ…ホントに少しだけですよ?先っちょだけ…」

「余計ヤらしいわ」


 恐る恐る人差し指を妖精の胸めがけて突き出すアホの娘

 やってる事が私より変態っぽいじゃないか


「…!…あれ?」


 まさにマオの指が胸に触れようとした寸前で妖精が消えた

 同時に私の頭に何か乗ってきた。間違いなく消えた妖精だな


「あわわわわ!き、消えちゃいました!?お姉ちゃんに殺されちゃうっ?!」

「落ち着きなさい、妖精ならここに居るわ」


 私が自分の頭の上を指差すと、マオは目線をその場所に向けホッと安堵の息をもらした


「びっくりしました…」

「そうね、妖精がテレポート的な魔法を使えるとは思わなかったわ。精霊魔法ってやつかもね」


 しかし逃げた先が私の頭とはいただけない

 頭に居る妖精を引っ捕まえて顔の前に持ってくる

 相変わらず逃げる素振りを見せなかったな


「悪いけど、私の頭の上は親友の特等席になってるの。だから…そうね、あなたは肩の上で我慢してちょうだい」

「…」


 これまた変わらず無言だったが、コクリと妖精は頷いた

 こちらの言ってる事は理解出来てる様だ。


 ずっと掴んでるのも何なので、座るかな…と思いつつ肩に持ってきたら素直に腰かけた


「肩に乗ってる妖精って何か良いよね、おとぎ話みたい」

「何でお姉ちゃんばっかり好かれるんです?」

「ほら、妖精と仲良くなれるのは子供だけって言うでしょ?」

「…なるほど」


 聞こえとるわい

 しかし子供と間違われてるならちゃんと教えておかねば…

 ひょっとしたら妖精が離れてしまう可能性もあるが、その時はその時だ


「言っておくけど、私はこう見えて16歳の立派な女性だから。女子じゃなくて女性よ?」

「…」


 再びコクリと頷いた

 離れる気配はないので子供だろうと子供じゃなかろうと関係ないっぽい


「でもホントに喋らないよねぇ…その子」

「喋らないんじゃなくて、喋れないのかもです」

「ああ…それもあるね」


 んー…そんな風には見えないが…

 この子は無口なだけだと思う。慣れればそれなりの会話はしてくれるかも


「あのー…妖精さんの名前はなんですか?」

「…」


 マオが仲良くなりたいのか妖精に話しかけ始めた。

 当の妖精はガン無視してるが…


「こほん…あなた様の名前をお伺いしても?」

「下手に出ればいいってもんじゃないでしょう」

「はぅー」


 てかマオがそんな言葉遣い出来る事に驚きだ

 会った当初は子供みたいな話し方してたのに、何か短い期間で成長してるなー。はぅーは健在だけど


「いきなり名前を聞くからダメなのよ、初対面の奴にそうそう教えるわけないでしょ」

「じゃあ何を聞けば?」


 そうだなぁ…要するに答えやすい質問すればいいんだ


「身体で一番敏感な部分は?」

「ただのセクハラじゃない」


 同姓なんだし良いじゃないか…

 当然妖精は無言のままだ。答えた所でどうせ胸だと思うが…


「うむ…あなたの好きな食べ物は?」

「肉」

「力強い返事ありがとう、お前はマイちゃんかと」


 初めて聞いた言葉が肉である

 精霊って実は肉食なんじゃなかろうか


「喋りました…」

「喋ったねぇ…」


 短い言葉だったので気のせいかもしれないが、とても可愛らしい声だった

 これは是非とももう一度聞きたい


「妖精って精霊魔法使えたりする?」

「…」

「…好きな食べ物は?」

「肉」


 肉しか喋らないんかい

 まだ信頼度が足りない様だ。会ったばかりだしなぁ


「そうね…ユキ達が帰ってきたら夕飯にするけど、あなたも食べる?肉は用意してあげるわ」

「たべゆ」

「……くっはーっ!なにこのナマモノ!ちょー可愛い!」

「ナマモノはやめてあげましょうよ…」


 舌足らず可愛いです

 よし、私の持つ人外に好かれやすい体質を生かして仲良くなりまくってやろうか!



★★★★★★★★★★



「ただいま戻りました」

「おかえり、大丈夫とは思うけどランクアップ出来た?」

「もちろんです。私も姉さんも無事合格です。ついでに茸も大量に入手してきました」


 あの美味い茸が生えてる場所が試験場だったっけか

 あの茸は良い…亜空間なら永久保存出来るし大量に入手出来たのは幸いだ




「ところでお姉様、テーブルの上に何やら可愛い生物がいますが…」

「見た目通り妖精よ」


 妖精は今は私の肩から降りてテーブルの上に座っている

 ぼけーっとこちらを見てるのは変わらない


「…何故妖精がここに?」

「捕まえて持ってきた」

「またまたご冗談を」


 事実なんだけど…

 やっぱり勝手に捕まえたらいけなかったか?


「捕まえたらマズかった?」

「マズいと言えばマズいですが、まあ檻に入ってる訳じゃないし大丈夫でしょう。私が言いたいのは妖精を捕まえるのは中々難しいという事です」

「そうなの?」

「はい。妖精は好奇心旺盛で人に寄ってくる事はありますが、同時に人嫌いな生物ですので人間が触れようとすればすぐ逃げます。捕まえるにはそれなりの実力と魔力を遮断する網と籠か檻が必要かと」


 へー…この妖精はあっさり捕まったけどなぁ

 でもマオが触ろうとしたら逃げたっけか


 しかし網と籠とか虫みたいな捕まえ方するな

 とりあえず私が普通に捕まえたのを証明する為に妖精を持ち上げて肩に座らせる


「ご覧の通りなんだけど」

「…えー?お姉様って何なんですか?」

「その言い方はダメよ、私が変みたいだから」

「これは失礼を…しかし、まさか妖精を肩に乗せられるとは…しかも会ったばかりで」

「普通は乗せられないの?」

「はい、さっき人嫌いと言いましたが…妖精が一番苦手な種族はズバリ人間です。物語で出てくる妖精を肩に乗せて旅をするなんて夢物語です。

 現在は妖精に害をなせば国から裁かれますので友好的に接して会話程度は可能になってますが…昔妖精を乱獲した馬鹿が多数居ましたので妖精の中で人間は悪という認識が強まっているのですよ」


 過去の人間達のせいで未だに妖精と和解出来てないのか

 国もよく妖精なんて法で守ろうと思ったな…


「何故妖精を国が守るの?」

「仲良くしておけば恩恵を受けられるからです。妖精は自然の精霊ですからね…髪の毛の色で属性が違うのですが、属性事に得られる加護が違います」

「青なら水の恵み、黄色なら土地を豊かに…そんな感じ?農家が喜びそうね」

「そうですね、ですが作物が豊富になれば人口も国力も高まり強化されます。結局農家の為というより国の為です」


 そういう事か…だったら妖精と仲良くしとけと言うわな

 流石人間、何か得られる物が無ければ人外に優しくない。可愛らしいだけで保護する価値はあるだろうに…可愛いは正義だ




「そういえば他の妖精が助けてください!とか言って騒いでたわね」

「そうなのですか?」

「ええ…確か、何だっけな……そう!前に会った事あるジェイコブに泣きついてたわ」

「だからファルクスさんですって」

「どのみち私は知らない方です。しかし、人間に助けを求めるとは珍しいですね…結構マズい状況なんでしょうか?どうなのです?」

「…」


 サヨの問いにも妖精は答えず

 この子は私以外には見向きもしないな…


「私に任せなさい、この短時間で如何に親睦を深めたか見せてあげるわ」

「はあ…そう言うのならどうぞ」

「信用してないわね…いいわ、私達の仲良さ度を見てなさい。……可愛いは?」

「せいぎ」

「どうよ?」

「何してたんですか…いや確かに妖精にそんな事を言わせるのは凄い事ですが」


 くだらない事の方が反応するんだもの

 だが今は妖精達がピンチなのかを聞かなきゃな


「妖精達の状況の前に聞くけど、妖精の住処って案外近いの?」

「では、姉さんに代わりまして今度は私が」

「サヨが来てから影薄いもんね、しゃしゃり出る気持ちは分かるわ」

「……では、妖精の住処…というか集落について」


 ユキは何か言いたげな表情で見てきたが、説明を続ける事にしたらしい

 似た者が二人いるとどちらかが存在感無くなるんだもんな…キャラ被りの宿命だな


「妖精の集落ですが、実は結構点在しています」

「ふーん。それって何処にでもあるって事?」

「人間が治める国には在りませんが…そうですね、例え話ですが各山に一つは集落があると考えてください」

「そんなに?」

「妖精は自然さえあれば生まれます。つまり世界中に存在するのですよ」

「ふむふむ、世界各地に居るなら一つの場所に纏まるのは無理ってわけね…生まれたら近場の集落に住むと」

「そういう事です」


 て事は…ギルドで助けを求めていた妖精とこの妖精は違う集落の妖精という可能性もあるか…

 あっちは焦っていたけど、この子はぼけーっとしてるもんなぁ


「あなたは何でこの町に来たの?」

「…助けを求めに無理矢理連れて来られた」

「やっぱりあの妖精は仲間か…」


 そりゃ別の集落の妖精が同じタイミングで来るなんて偶然はそうはないよなー

 それにしても助けを求めにとは…やはり何か面倒な事が起こってる気配


 むううぅぅぅ…スルーしたい…したい、が…この妖精の集落なら助けてやりたい気も…だが面倒くさい




「…他の冒険者達が助けに行ったし、今回はスルーでいいかな」

「首を突っ込んでばかりじゃ旅が進みませんからね」


 その通りだ。いい加減他国に渡りたい

 私達は人助けやる為に旅してるんじゃない、この妖精には悪いが途中で別れて他を当たってもらおう


「悪いわね…他の冒険者を当たってちょうだい。明日適当な場所まで送るわ」

「…人間はきらい」

「私も人間よ」

「あなたは別。あなたは自然に愛されてる…だから近くにいて安心する」


 自然に愛されてる?この私が?

 ないない…いやいや、自然の精霊である妖精が言うんだから間違いないかも


「それって本当?」

「本当…中身は外道寄りなのに自然の加護を得られてる…ふしぎ」

「悪かったわね」


 自覚してるわ

 でも自然の加護って何か役に立つんだろうか?


「今はどうでもいいか…でもやっぱり妖精はまだ人間が嫌いなのね…」

「…自然を壊すのはいつだって人間」

「耳に痛い言葉ね…」


 人間と妖精は今くらいの距離が限界かもしれない…

 この嫌悪ぶりでは自然破壊だけでなく、未だに妖精を狙う人間もいそうだな


 もしかすると、今起こってる妖精の危機とやらが集落を襲われてるとかだった場合、敵は人間なのかもしれない…

 でもそれだと人間に助けを求めるわけないか…その辺は聞いてみないとわからないな


「あなたの集落が襲われてたりする?」

「…たぶん」

「そう…相手は、人間?」




「おに」




 ……おに?鬼と言ったか

 チラリと横目でマオを見るが、若干顔をしかめる程度で取り乱した感じはない、だが…


「気が変わった、助けてあげる」

「?」


 過去の事とはいえ私の家族をいたぶってくれたのは事実

 妖精を助ける為と言う大義名分も得た事だし、遠慮なく葬る事が出来る


「悪魔の次は妖精ですか…やれやれです」

「やっぱり魔力狙いでしょうか?」

「だと思いますよ…奴等の事ですから」

「何にせよ、お母さんがお決めになられたなら私は異存はありません」

「当然私もです」


 二人からは賛同を得られた。これは予想通りだ

 問題は残った一人だな…


「マオ、あなたはどう?散々虐められた相手に怯む事なく拳を振るう事が出来る?」

「……っ!当然です!誰の妹分だと思ってるんですか!!」

「よし!良く言ったわ」


 ならば行くか…!

 いや流石に今すぐ向かいはしないけど…夕飯もまだだし


「とりあえず明日から行動ね。まずはお姉さんを王都に送りましょう」

「ではソープ様を送りましたら、その次の行き先は妖精の集落で宜しいですか?」

「は?」

「はい?」


 妖精の集落ならきっと他の冒険者達が守ってくれてるハズだ

 だったら行ってもしょうがないし、私達の狙いは一つだけ


「私達は鬼の里に殴り込みよ」

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