幼女と道具屋
「私、復活」
「おめでとうございます」
短い様で長かった療養生活がようやく終わった
私の冒険は今より再開されるっ!
「この療養中に私は考えた事があるのよ」
「なんでしょう?」
「私達が冒険を始めて結構経つけど、割と何の準備も無しに旅してるじゃない?」
「そうですね」
「だから初心に戻って…いや初心すら無かったけど…旅に必要な物資を調達しましょう。私達は旅立つ時のお約束である武器屋と道具屋にすら行ってないし」
行ったのは宿屋と飯屋と服屋だけだ。ただの旅行になってるじゃん
「私とユキさんが居れば大抵の道具は不要と思いますが…」
「本音は道具屋の中を見てみたい」
「なるほど、ならば行かないと行けませんね」
私が行きたいだけで行くんだ…
この私優先っぷりときたら…相変わらず甘やかされてる私。皆して私に甘いんだからしゃあない
「ちなみに道具屋って何が置いてあるの?」
「傷薬、調理道具とかじゃないですか?」
「そんなの見たってつまんないじゃない」
「お母さんは道具屋に何を求めていらっしゃるのですか?」
何かこう…曰く付きの指輪だったり、夜になると動く人形だったり…呪いの商品が見たい
そう言ってみた
「そういうのは普通の道具屋には無いかと」
「じゃあ普通じゃない道具屋に行きましょう」
「なかなか無茶を仰いますね」
だが五丁目で変わった道具屋を見つけるのはまず無理か…まあ一般的な道具屋も一応見ておくか 本日の予定も決まった事だし、早めに出かけるかな、と思っていた時
「うわあああぁぁんっ!」
一人ぐーすか寝てた悪魔っ娘が絶叫しながら飛び起きた
「……はっ!…現実世界です…」
「おはよう、寝起きから飛ばしてるわね」
「恐ろしい夢をみました…」
あるある。普通の夢は起きたら大体忘れてるもんだけど、怖い夢とか衝撃的な夢は何か記憶に残るんだよなぁ
「まあ夢は夢、気にする事ないでしょ。恐かったかもしれないけど、しょせん夢よ」
「初戦無念…」
「そう…負けちゃったのね。しかも初戦…一度も勝てないとかそりゃ無念でしょうね。ひっぱたくわよ」
「「おー…」」
パチパチと私のノリツッコミに拍手が起こる。やめんか馬鹿ども、というかどんな聞き間違えだよ
「マオさん、悲鳴というか…泣きながら起きるとかどんな夢を見たのですか?」
「…物語に出てくるゾンビみたいな集団に囲まれる夢です」
…ほう、皆には言ってないが私の次なる目的はまさにアンデッドを見る事だ。まるで予知夢を見たかの様だな
「喜びなさいマオ、その夢は現実となるでしょう」
「…はい?」
「おや…お姉様、ゾンビなどに興味がおありで?」
「ええ…誰かさんによるすてっきさんの儀式以降、アンデッドに興味がわいたの。次に仲間にするなら幽霊が良いなぁ」
人外パーティなんだから開き直って次の仲間も人外でいいや…って考えたのだ
「…私の時にあれほど渋ってましたのに……もう新しいお仲間を加えるおつもりで?」
「面白そうな幽霊が居ればね、障害物をすり抜けられるなら遺跡辺りで役に立ちそうだし」
「探知ぐらい私とユキさんでも出来ますよ」
「いいじゃない幽霊、きっと暑い日には涼しくなるわよ」
「わたしは反対です!」
マオはアンデッド系が苦手なんだっけか、前にお化けがどうとか子供みたいな事言ってたもんな
「でもマオに拒否権は無かったりする」
「…せめて怖くない幽霊さんにしてください……」
「どんな幽霊よ」
「…可愛らしい子とか?」
「座敷わらしみたいな奴ですかね」
「座敷荒らし?ウチのお母さんみたいな奴?」
「違います、座敷わらしです。何でも家に居着けばその家庭は幸福になるとか」
貧乏神の天敵みたいな奴か。だが家に居られても意味ないなぁ
しかし、サヨは解説ポジションに定着しそうになってきた…伊達に長生きしてないな、物知りで良し
「座敷わらしは却下ね」
「まあ実在してる可能性はほぼありませんけど」
「なぁんだ…私としては髪が長くて顔が見えない血塗れの少女が良いわね。いかにもって感じで」
「定番ですね」
そんな定番な幽霊が仲間になった暁には、就寝中のポジションはもれなくマオの枕元になる
きっと毎朝マオの叫び声で目を覚ます事になるだろう。でも昼まで寝ていたいから悩む
「で?アンデッドがうじゃうじゃいる場所とかあるの?」
「ありますよ…元はなかなか栄えていた国でした。滅亡後、アンデッドが大量に沸いて今やアンデッドの国と化しています」
「良いわね、ぜひとも行きましょう」
「危険ですよ?詳しくは知りませんが、恐らく数万どころか数十万はアンデッドがうろついているかと」
大量なんてもんじゃない…正に一国の住民全てがアンデッドになったんじゃないかって規模だ
「てかそんなに居たら近くの国はヤバいじゃない」
「そこはご安心を。周りに高度な結界が張られており、奴等はそこからは出られません」
「ふーん…殲滅は無理だったの?」
「お姉様、アンデッドは中々に厄介な魔物なのです。例えばゾンビですが、のろのろ動くと思われがちですが実際は違います。生前とほぼ変わらぬ身体能力で動き回るのです」
なんだと…てことは、仮に今で言う高ランク冒険者のゾンビがいたらソイツだけでかなり苦戦するかもしれないって事か?
「そこには強いアンデッドがいっぱいいるの?」
「もちろんです。過去に腕利きの兵や冒険者が討伐に向かいましたが全滅、それどころかアンデッドの仲間入りして戦力を強化させてしまう結果に…なので魔法使いをかなり集めて高度な結界を張り、外に出さない様にするのが精一杯だったみたいです」
そりゃ危険だわな…見渡す限りゾンビな景色も見てみたいが、万が一という事もあるしそこは止めておこう
遠目から見るという手段もあるが、やはり見るなら間近に限る。というかゾンビより幽霊だよ幽霊
「もっとお手軽な場所はないの?」
「探せばあるでしょうが、私は存じませんね…山の中を適当に歩いてればゾンビになった冒険者に会えるかもしれません」
「ゾンビじゃなくて幽霊が良いわ。どっかに地縛霊が居るような良さげな廃墟はないかしらねぇ…」
ちなみに五丁目周辺にそんな都合のいい場所はない。まあ旅してればそんな場所が見つかるかもしれないな
「とりあえず久しぶりに外に出たいわ、町の復興の様子でも見て回りましょう」
すっかり着なれたパジャマからゴスロリ服に着替える。これも何だか久しぶりだ。そして移動する時のポジションと言えば
「おおっ…完治するまで移動はお姫様抱っこだったから何か抱っこちゃん状態が懐かしい!」
「私もお母さんを抱っこするのは久しぶりに感じますね…」
「普段はその格好なんですか?」
「ええ、なるべく動きたくないもの。亜人の時は特別よ特別」
何もかもが久しぶりだ…何だか冒険初日の時ぐらいワクワクしている。
何もせずダラダラしていた時と比べると、私もかなり成長してるんじゃないかと思う。
「あらペドちゃん…もう大丈夫なの?」
「見れば分かるでしょ」
「自分の格好を見てから言いなさい。見て分かんないから訊いてるの」
ああ…抱っこちゃん状態じゃ分からないか…でもゴスロリ服に着替えてるんだから分かるだろ
そんな事より何かフローラルな香り、というかまんま花の香りが充満してる
「何でこんなに花があんのよ」
「なんかねー、私って一応大怪我してたし、赤ちゃん出来たって事でお見舞いとお祝いで花がこんなに」
…こんな状況なのに
母に花を買うより自分達の家の方にお金を使うべきじゃなかろうか、母の人気に嫉妬…しないな
「ちなみにペドちゃんのお見舞いには誰も来てないわ、友達いないの?」
「ふ……私の嫌がらせに耐えられる猛者は居なかったからね。ま、ユキが居たからいいんだけど」
「自業自得だけど寂しい学生生活ねぇ…今はご覧の通り賑やかだから良いんだけど」
反省も後悔もしていない
当時は嫌がらせに全てを費やしていたのだ。何しに学園に通っていたかと聞かれれば、嫌がらせの為と即座に答えられる
「お姉ちゃんがやった一番酷い嫌がらせって何ですか?」
「一番ね…善意からの行動が結果的に最高の嫌がらせになっちゃった奴かな」
「お姉ちゃんに…善意……?」
疑問に思うのはそこか?
いやまぁ善意なんてほぼ無いに等しいけどさ
「そこまで聞かされたなら最後まで聞かせて頂きましょう」
「別に大した事じゃないわよ?…そうねー、確かユキが生まれる少し前の事だっけ……当時の生徒会長が同じ学年の女子…ナタリーちゃんに恋をしているとの情報を入手した私は、何とか面白可笑しく生徒会長とナタリーちゃんの恋を応援しようと色々考えたわ」
「悪意しかないじゃないですか」
まだ話の途中だアホめ
大体この私が他人の恋路を応援するわけあるかっ……おお、確かに悪意しかないな
「でまぁ…丁度良く林間学校何ていう面倒なイベントがあったから、それを利用したの。事前に生徒会長を喜ばす為の作戦は練ったわ、その為に何としても入手しなければならない物があった」
「なんでしょう?」
「ナタリーちゃんのぱんつ」
「我が娘ながらろくでもないわね」
無視だ無視
「ナタリーちゃんの班が入浴中にぱんつを余裕で入手した私は、次は会長にぱんつをこっそりプレゼントすべく夜中に行動を開始したわ。何か下着が盗まれた!とか騒ぎがあったけど無視」
「何かぱんつの話多い気がします」
「うるさい。夜中に会長の制服にこっそり忍ばせたまでは良かったわ…だけど、次の日の朝礼で悲劇が起こった…なんと、会長のポケットからぱんつがはみ出ていたの。そう、奴は気が付いてなかった
なので私は教えてあげる事にした。『会長!ポケットからぱんつみたいなのがはみ出てますよっ!ひょっとして昨日騒ぎがあった件ですかっ!』って」
「よりによって全生徒が集まる朝礼でやったのね、きっと苛めが始まったわ…母として謝りに行かなきゃいけないかしら?」
「苛めは無かったわよ、何故なら生徒会長はその日泣きながら去って以来学園には来なくなったから…ぱんつはしっかり持って帰ったみたい」
「可哀想すぎる」
念願のナタリーちゃんのぱんつを入手出来たんだから奴も本望だったろう…
「昔のお姉様はなかなかアクティブな御方だったのですね、良い行いをやられたかと」
「件の方はお母さんのお陰で素敵なアイテムを入手出来て何よりです。きっと大いに感謝している事でしょう」
「ダメだわマオちゃん…ペド教信者はこの有り様よ」
「わたしも洗脳されるんでしょうか……」
洗脳なんかするか、というかペド教なんて宗教を始めた覚えはない。何だかサヨのせいで五丁目中に広まってそうだ
「その生徒会長とやらのその後が気になりますね」
「きっと別の町に引越して、ぱんつ片手に再出発してますよ。めでたしめでたし」
「その内お姉ちゃんに復讐しに来そうです」
来た所で返り討ちだな
復讐を達成する前に人外コンビに叩きのめされる事だろう
「さて…無駄話で時間くったけど、そろそろ道具屋にでも行きましょう」
「「はい」」
…この二人は何だか本当に姉妹みたいになってきたな
ちょっと遊んでみよう
「うむ、私について参れ」
「「御意」」
「…ぎょ?」
お偉いさん言葉したら見事に対応した。マオは何の事かわかってない様だが
満足したので今度こそ久しぶりの外出に向かった。どんな荒れ具合か見てやろうか
☆☆☆☆☆☆
「どうしたのかしらね?マイちゃんは」
「元気ありませんでしたね」
外に出るのに珍しくマイちゃんが着いてこなかった。元気なさげに羽根をパタパタして見送るだけに終わったのだ
「ふむぅ…もしかして、巨大化しすぎて邪魔だから頭には乗らない様に言ったのが不味かったか…」
「精神的ダメージですか…好物の肉も食べてませんでしたから、そうかもしれません」
あれは完治目前の時だっけ…頭に乗ってきたマイちゃんに思わず言ってしまった一言だ
悪い事したと思うが…流石に80cmの蝶を頭に乗っけてたら変すぎる。前の大きさでも不自然だったし
まあマイちゃんの事は後で考えるとしよう。今は外出を満喫するべきだ
全壊してたお隣さんも、多少は修復されている。壁が半分ほど出来上がった程度だが…レンガの調達が間に合わないんだろう
「結構復旧してないわね」
「王都や一丁目など大きな町が優先されますからね…ましてや五丁目は外聞も悪いですし、大工の派遣はかなり後回しにされてるのでしょう」
つまり住民はほぼ自力で復旧作業をしているわけか…冒険者達のせいで一般人まで被害を受けてるんだなぁ
そりゃ嫌われても仕方がないと思う
町を見つつ道具屋を目指し、およそ1時間で目的の道具屋に着いた。何か道具屋というより雑貨屋に見えるが…
ま、中を見ないと何とも言えないし…早速入ってみるとしよう
「いらっしゃいませー」
店内に入るとノエル並に普通の女性店員が出迎えてくれた。私達以外のお客の姿は見当たらない…
「…ふむ、何が何やらさっぱり分かんないわ、解説宜しく」
「かしこまりました。では、何か気になる物はございますか?」
「この傷薬とやらは瓶に入っているけど…飲むの?それとも塗るの?」
「おっ…お客様、それは良い質問ですね」
ユキに解説を頼んでいたが、暇そうな店員が割り込んできた。実際暇なんだろう
「この傷薬は塗り薬となります。液体は白色でサラサラしており、何となく牛乳っぽいので間違えて誤飲する冒険者が多いです。ただし、五丁目の冒険者に限ります」
「五丁目ダメすぎるでしょ」
「そうですね…お客様の様に最初に確認する事はまず無いですし、液体は飲めば大丈夫と思ってそうです。傷薬なんですから傷につけると分かりそうなものですが…」
紛らわしい瓶に容れなきゃ良いと思う。原因はそれだろう…しかし瓶以外に容れる容器がないか
「ところで、あまり繁盛してなさそうね」
「ご覧の有り様です。基本的に五丁目の冒険者は準備を万全にするという概念が無いようでして」
それに関しては反論出来ない。私も旅立ちの時に準備したのは着替えぐらいだし
「よく潰れないわね」
「ええ、あまりに道具が売れないので、五丁目の冒険者に需要ありそうなアダルトコーナーを設置したら見事に繁盛しました。夜になれば冒険者がわんさか来ますよ」
「もはや道具屋じゃないわね」
亜人襲撃の時にエロ本云々言ってた奴はここで購入したんだろ、知ってどうするって情報が得られた
「何か爆発するグッズない?」
「筒に火薬を詰めた物ならありますよ?主に邪魔な岩を破壊するのに使います」
「ふーん…買ってみようかな」
「…お母さん、何に使うつもりですか?」
「スライムにぶっ刺して破裂させてみようと」
「何と惨い事をなさるお客様でしょう…面白そうなので特別に割引いて販売致しますよ」
この店員も中々おかしいな…彼女もまた、五丁目の住民なのです。
「じゃあ在庫分全て買うわ」
「えぇっ!こ、この店始まって以来の売り上げに…少々お待ち下さい!!」
…もしかして、結構高い商品だったり?残金は大丈夫だろうか…でも役に立ちそうだから欲しいんだよなぁ…
「お金足りる?」
「さあ?…火薬を使ってる商品ですから、結構高いとは思いますが…在庫の数次第ですね」
現在の資金がどれくらいあるか不明だが、私が動けない間稼ぎに行ってたし結構あるとは思う…
それでも在庫数次第という事は高いんだな。もしもの時は値切りまくろう
「あの店員も私達がお金持ってるか確認してから用意すれば良かったのに」
☆☆☆☆☆☆
目の前に長さ40cm程の細長い筒状の物体が山の様に積まれている
多すぎだろ…どんだけ在庫あったんだ
「もっと考えて仕入れするべきね」
「ごもっともです…ですが仕入れたのは先代の父ですから私は悪くないです」
「あっそ…で、全部でいくら?」
「そうですねー…割引して150万ポッケですかね」
高っ!0が一つ多いだろう…と言いたいが数が数だからなぁ
「ユキ、どうなの?」
「この数ですからね、かなり安い方でしょう」
安いのか……でも資金が不安になるからな~
もうちょい値切ってみるか…50万ぐらいに
「…お姉様、お姉様」
「なにサヨ?私はいかにして100万ポッケ値切るか考えてるんだけど」
「いえ…恐らくこれが役に立つかと」
…おおっ…これは確かに何とかなるだろう。私達はともかく、一般人には入手困難な物だし
「ここにユニクスの血があるんだけど?」
☆☆☆☆☆☆
「今まで考え無しにバシャバシャ使ってたけど、流石に馬車が買えるだけの事はあったわね」
「ユニクス達の神域に辿り着けるものは少ないですし、仮に着いてもユニクス達から血を入手するのは難しいですから」
ぺけぴーも謎の魔法を使えるからな…それに群れだからより困難だろう。
そんなユニクス達は現在五丁目で気軽に見られるんだが…いつ帰るんだろ
「爆薬とやらと調理器具に調味料ありったけをタダで入手出来たわね」
「どちらが得をしたかと言えば店側ですが」
店にある有り金全てで売ってくれと言われたが、私達にはそこまでの価値は無いから店の商品で譲ってあげた
あれを売るだけで真面目に商売する必要はなくなるらしい。つまり私達は今後お金に困る事はない
「でも売らないけど」
「そうですね、お金の使い道はあんまり無いですし、お母さんが万が一怪我した時の為にとっておきましょう」
私よりマオとかの方が使う機会多そうだけど
そういえば…お金の使い道について考えていた事がある
「お金と言えば、あなた達って給金ゼロじゃない?稼いできても私の懐に入っちゃうし」
「はい」
「です」
「そうなのですか?まあ特に必要ありませんけど」
だがある程度は持っておいても良いだろう、ぶっちゃけ私も大金あってもそんなに使わない事に気付いた
「そこで私は考えた、家族と言えばお小遣いと…あなた達にも自由に使うお金は有った方が良いでしょ?ユキとか絵を描くし」
「私は画材くらいしか使い道無いですし、今までも購入させて貰ってますから…」
「わたしは何を買えばいいかすら分かりません」
「私は必要な物が無ければ貯金かお姉様に返却ですね」
欲が無いなんてもんじゃない。お金ですよお金、皆大好きお金を不要とおっしゃるか
「一応持ってなさい。その内必要になるでしょ…とりあえず月に2万くらいでいいか」
「そんなに…」
「何に使えばいいか分かんないです」
「そりゃ…ほら、あそこにある屋台を見てたら小腹が空いて串焼きでも食べようとか…」
「お姉ちゃんが食べる時に一緒してるから特には…」
……
「黙って貰っとけ」
「「「はい」」」
それでよし
「5人分で10万か…キリが良いわね」
「ぺけぴーとマイさんの分も含まれてるのですね」
「そりゃそうよ」
「お姉様のそういう所は素晴らしいと思います」
どんな所だ?マイちゃん達の事かな?普通は蝶と馬に小遣いとか頭おかしいと思われそうだけど
「じゃ、明日には出発したいし…今日は早めに帰って休む事にしましょうか」
「わかりました」
そういやマイちゃんはどうなっただろうか…少しは良くなったかな
★★★★★★★★★★
「うーむ…調子悪そうね…病気か?」
家に戻れば変わらず元気なさげなマイちゃんの姿。仮に大きくて邪魔発言が影響しているとしたら…
「マイちゃん、食事もしてないんだっけ?」
「はい。昨日から何も…」
なるほど…マイちゃんはダイエットしているに違いない。体はともかく、羽根は縮むんだろうか…
「ふむ…どうでしょうユキさん…一度私達で診察してみますか?」
「そう…ですね……」
まるで病人…じゃなくて病蝶扱いだな…ただのダイエットなのに
「私の考えではただのダイエットだから気にしなくていいんじゃない?」
「……念のためですよ、念のため」
念のためねぇ……
居間のタンスの横にまさに置物になってるマイちゃんを見る
「……大丈夫」
ここに居ても仕方がないので、今度はマオに連れられて部屋に戻る
「……何事も無ければいいのですが」
部屋に入る前にサヨのそんな声が聞こえた……




