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幼女、悪魔を見守る

 戦いをおっぱじめたのはいいが、やはりマオが気になる…

 ショタロウの素手による攻撃を捌きながらちょっと観戦しようと思った


「ちょっとタンマ」

「へぶぅっ!?…な、殴りながら言うない!」


 ショタロウの顔面をぶん殴りながらタイムをかける。


「少しあの子達の観戦をしようと思うの」

「どうせあの娘じゃ勝てないっでぶぁ?!」


 戯けた事をぬかすので、とりあえずショタロウを再び殴る


「タイムかけといて何殴ってんの!?」

「ただのツッコミよ」

「グーで殴るかっ!」


 喧しいのでショタロウの足を狙って奇跡すてっきで殴り、倒れた所で背中を動けない程度の力で踏んづけてマオの戦いっぷりを見る

 どけ!怪力幼女!と罵声がとんできたので少し力を込めて踏む


「あだだだだ!わ、分かった!大人しく観戦するってば!!」


 最初からそうしてればいいんだ馬鹿め





 マオと龍人の戦いはどうなってるかと言えば、逃げるマオと追う龍人の図が延々と続いている


「逃げるのやめたんじゃなかったの?はよ殴りあえ!」

「あ、あれはその場のノリで言ったんですっ!!うひゃっ!?し、喋ってる余裕ないです!」


 ノリだったのか…なら仕方ない、と言うとでも思ったか?


「見てるギャラリーの気持ちも考えなさい!つまんないわよ!」

「…君って人は実にひどい人だね」


 何か褒められたが無視。体力が落ちぎみのマオは何かもう限界に近そうだ…こりゃ捕まるな




「ひぐっ!」

「ぐえっ!?」


 案の定攻撃を受けてしまった。マオは何とか腕で防御はしたが、龍人の一撃を受けて痛みに顔を歪めている。


「何で踏む!」

「可愛い妹分が痛い目にあうのを見て我慢出来なかったの。だからショタロウを踏んづけて気を紛らわせようと」

「ふざけんな!」


 ふざけてないから大丈夫だな



 一度龍人の攻撃を受けたせいか、動きが鈍くなってしまったマオ。うーむ、これは厳しいかもしれない


「…ふぐっ!?」


 そして思いっきりボディにパンチを食らって吹っ飛ぶ、やれやれ


「しょっと…大丈夫?」

「…!……っ…!」


 吹っ飛ぶマオの落下点に移動して何とか受けとめて様子を見るが、かなり痛そうだな…喋るのも辛そうだ

 この丈夫なマオを一発でこんな状態にするとは龍人も侮れないな…


「このクソ龍人!誇り高い種族のくせに女を殴るとはどういう事だ!クズ野郎めっ!」

「ぬぅっ!?」

「いやいや!戦わせたの君だしね!?」


 喧しいわ!そんな事は忘れた!


「しかもマオの胸を狙って攻撃するとはこの不埒者っ!」

「おいまて!ワシはそんな事しとらんぞ!」

「うるさい!どうせ不慮の事故でうっかり触っちゃうハプニングを期待してたんだろう!」


 とりあえずマオがある程度回復するまで龍人をおちょくる事にする


「ええいっ!では次から背中を狙ってやるわい!」

「背後を狙うとは卑怯者め!」

「な、なら…!腕にしておいてやるわ…両腕さえ使えなければ戦えないだろう」

「貴様っ!二の腕の柔らかさは胸の柔らかさに比例すると知っての判断か!スケベ龍人め!」


 私達の後方にいた冒険者達と、ギルド内で観戦していた冒険者達が窓を開けて身を乗り出してきた


「…今の話って本当か?」

「ちょっとお前の二の腕と胸を触らせろよ」

「やめれ」

「折角だからノエルちゃんで試そうぜ」

「死んで下さい」


 五丁目の冒険者のくせに完全に他人事になってるな…一部の奴らは酒飲んで観戦してるし


「ならば足しか残ってないではないか!」

「下半身を狙うとは本性を現したな変態!聞いてたわねっ?ろくでなし共!」

「バッチリ聞いてたぜペドちゃん!龍人ってなぁとんだ変態だ!」

「新たな五丁目アイドルの卵の下半身を狙うだと!?」

「てめぇ!そんな事したら『龍人は下半身がお好き』ってエロ本を出版して世界に広めてやるからなっ!」


「ならどうしろと言うのだっ!?」


 五丁目の冒険者は相手をおちょくるのは優秀だな…咄嗟の援護も完璧だ


「ばっか!敵の口車に乗せられてるよ!」

「…おおっ!危ない所だったわい…女だろうと一人の戦士なら容赦する必要などなしっ!腕だろうが足だろうが腹だろうが関係ないわ!」


 ふむ…正気に戻ってしまったか、マオは未だに蹲っている状態だし…


「…どう?いける?」


 返事は無く、フルフルと頭を横に振って返事をするマオ

 こりゃ参った…こんな調子では困るんだが…


「ふむ…まだ動けないとは期待はずれだな」


 龍人がこちらの時間稼ぎに気付いたが…じっとその場で待っている所を見るとマオが回復するのを待っているようだ

 龍人としての誇りからか、動けない相手に追い討ちはしないらしい。甘いというか何というか…


「…?」


 龍人の遥か頭上に小さくて見えづらいが、丸に六芒星、いわゆる魔方陣が見える

 というか高速で降ってきてる…こりゃ当たるな


「待ちくたびれたわっ!来ないのなら別の」


 龍人のセリフは途中で強制的に遮られた。降って来た魔方陣は中々の威力だったらしく、轟音と共に龍人は地面にめり込んだ


「これがマオの実力よ!」

「違うよねっ!?」



 粉塵で良く見えないが、龍人が立っていた場所には私より頭一つ分くらい高い身長の何者かのシルエットが見えた。




「ちょ…!な、何やってんのさ!」


 どうやらショタロウの仲間みたいだ。様子はおかしいが


「仲間割れでしょうか?」

「知らない…マオの修行相手を潰すとか余計な事をしてくれたわ。でも丁度いいからマオの回復をお願い」

「わかりました」


 魔方陣でライトアップしてるが、未だに粉塵で見えない。まさか演出でもしてるのか?


「てい」


 演出だとしても待つ義理はないので、シルエットに向かって割と強く奇跡すてっきを投げつけた


「がふっ!?」


 うむ、手応えしかない

 謎の人物が吹っ飛び、やはり演出だったのか粉塵も無くなってきた。そして見えてきたのは…



「ふ、ふふふ…登場演出中には攻撃してはいけないというお約束をあっさり無視するとは…流石はペド・フィーリア様…」

「そんなの知らん」


 よろよろと立ち上がり、やっと容姿が明らかになった。

 マオが着てた着物の様で全く違う服…上は白で着物と同タイプ、下は青いスカートと思わせといてズボンみたいになっている


 だが何より変なのは顔にしてるお面だ。真っ赤な顔に太い眉に厳つい目、への字口に髭があり妙に長い鼻


「なんて卑猥…!」

「え!?何でですか!」

「その鼻は卑猥以外言い様がないわ」


 変態卑猥野郎はがっくりと落ち込んでしまった

 ユニクスが言ってた変な奴はまずコイツに違いない…私を恨んでると言っていたが…


「ユニクスに聞いてたけど、その格好から察するにお前が私を恨んでるらしい変態ね?」

「へ、変態って…駄馬がその様な事を言いやがりましたか?」

「ええ」


 ん?言ってなかったっけ?まあ似たような事は言ってたハズだ


「こほん…えっと、私がペド様を恨んでるという話でしたか?…確かに会った瞬間殺したい、そんな風に思ってた時期が私にもありました」

「今は?」

「愛しすぎて早く殺したいです」

「変わってないじゃない」


 この忙しい時に病んでる変態なんかに構ってられない

 さっさと殺るか?と考えてたらめり込んでた龍人が復活した。頑丈な様でほぼ無傷だ



「油断したわい…」

「落ちてきたの味方だしね、そりゃ油断するよ」

「やったわね、マオ。修行が再開出来るわ」

「出来ればもっとレベルをさげて欲しいです…」


 今はユキの治療のお陰で元気になったマオだが、痛い目に合わされたので大分弱気だ


「大丈夫、どんだけ殴られようが死ななければ回復出来るわ、行ってこい!」

「そこは励ましの言葉が欲しかったです」


 ぶつくさ言いながらも龍人の元へ向かう、だが見る限り腰が引けてる





「ペド様は悪魔にすら偏見を持たないのですね。何て慈悲深い方なのでしょう!」


 ビクリとマオの動きが止まった。おのれ卑猥仮面…余計な事を言いおって!


「いま…なんと?」

「悪魔にすら慈悲深いとは素晴らしい…と。あなた悪魔でしょう?」

「おふ…」


 黙ってた事をあっさりとギャラリーの前でバラされて膝から崩れるマオ。

 別にそこまで落ち込むことはないんだけど



「私…何か変な事を言いましたでしょうか?」

「余計な事は言ったわね」


 お陰で五丁目の穀潰し達もざわめきだした。その様子に気付いてマオが僅かにだが震えだした

 多分、また虐められるとでも思ってるんだろう



「何やってんの?」

「…悪魔って知られちゃいました」

「別に今まで隠してた訳じゃないじゃない。気付かれなかっただけで」

「わ、わたし…追い出されちゃいますか?」


 大分テンパってるな…会話もままならない状態だ


「安心なさい、五丁目の冒険者達は人として終わってるクズだから」

「…はい?」


 少なくとも五丁目の冒険者は悪魔だろうがマオを迫害したりしない…何故なら





「あ、悪魔っ娘きたああぁぁぁぁっ!」

「女性悪魔は可愛かったんだ!エロ本は正しかったんだよ!」

「馬鹿か!エロ本何だから可愛く書いてあるだろ普通…後で見せてくれ」


 …五丁目の男性冒険者はクズすぎてモテない。絶望的に結婚率が低いのだ。

 五丁目の独身女性との恋愛はまず無理なので、女性なら種族は関係ないという結論が出て今に至る。結局結婚率低いけど



「別に悪魔の討伐依頼とかないですし、ペド様の仲間なら問題ないですね。少なくともこの町の冒険者達より良い人みたいですし」


 ノエルが取って付けた様にフォローした。お陰で良い話の方向に持っていけそうだ


「…僕にとっても予想外の展開だよ、これ…何なのこの町」

「五丁目の冒険者を甘くみない事ね、こいつらは可愛ければ種族問わず受け入れる」

「理由がひどすぎる!」


 全くだ。だが、少なくともマオは五丁目においては普通に生活出来る

 クズ達の標的になってると知ったら町の女性達にも優しくされるだろう…同情心で



「…お姉ちゃん、あの人誰です?」

「ノエルね」

「やってやるですよ…お姉ちゃんの故郷と、わたしを受け入れてくれたノエルさんの為に…!」


 冒険者達はなかった事にされた

 やる気出したならいいか


「いきますっ!」

「来るがよいっ!」


 繰り出された蹴りを片手で弾き、逆にローキックをぶちかまし、バランスが崩れた所で鳩尾を思いっきり殴りぶっ飛ばす




「凄いわ、あれだけ大口叩いておいて一瞬でこの有り様だなんて」

「あぐぐ…おかしいです…ここはわたしが覚醒してカッコよく倒す展開だったはずなのに…」


 龍人がやられたと見せかけて、ぶっ飛ばされたのはマオだった。

 ユキにパパっと回復してもらって再び対峙する二人


「妄想だけで勝てるワケないでしょ?戦わなきゃ、現実で」

「うぐぐぐぐ」


 普通に戦ってもダメだろうなぁ…会った時はもう少し根性ありそうだったけど


「ふむ…ひょっとしたらマオは追い込まれたら強くなるタイプかもね」

「なるほど…では回復を控えてみますか?」

「いえ…そうね」


 相変わらず一撃でダウンするマオを見ながら考える


「マオがやられる度に服を脱がしてみましょう」

「そういう追い込みですか…靴下から徐々にという事ですね」

「最初はぱんつでしょ」



「うわああああっ!!」

「ぬ!凄まじい気迫っ!?急にどうしたと言うのだ!」


 どうやらちゃんと聞こえてたみたいだ。やはり身の危険が迫ると力を発揮するらしい


 今まで全て食らっていた龍人の拳を受け止め、背負い投げの要領で地面に叩きつけ、更に反対方向へ再び叩きつけた


「うりゃああっ!」

「たわけ!」


 倒れた龍人に向けて拳を降り下ろすが、上半身だけ起き上がった龍人の手にあっさりと掴まれた


「はなしてください!変態!」

「誰が変態だ!」


 だが変態と言われたからか案外すんなりと掴んでた手を離した。馬鹿じゃなかろうか


「隙ありゃああああ!」

「がふっ!?…こ、この卑怯者め!」

「悪魔には褒め言葉です!」


 手が自由になった瞬間に龍人の顔面を殴るマオ、だんだんと私の仲間らしい戦い方になってきたぞ



「…良い人そうに見えましたが、やはりペド様の仲間というワケですか」

「マオがこうなるとは私としても予想外だけど、まあ勝てばいいのよ」


 ついこの間までまともに攻撃出来なかったマオだが、こうも攻撃というか暴力を振るえるとは…


「私の教育能力も中々のものね」

「ただの脅迫じゃないですか」

「いちいち喧しいわね…一応戦闘中なんだから大人しくギルド内に引っ込んでなさいよ」

「はいはい」


 冒険者はともかく、ノエルも大概ゆるい奴だと思う


 マオと龍人の戦いは現在マオが卑怯な手を使って一方的に殴る展開になっている。この調子のままなら私も心配する事なくショタロウをブチのめす事が出来るな




「ええええええいっ!鬱陶しいわっ!!!」

「わひゃっ!?あ、あぶなっ!」


 おっと、ショタロウに不意討ちでもしようと思ってたら龍人がキレたようだ。どうやら尻尾を振り回してマオに距離をとらせたみたいだ


「こちらが真面目に戦ってると言うのに、顔は殴らないで~だの触らないで痴漢だのくだらぬ事ばかりぬかしおってからにっ!」

「言われて攻撃止める方がどうかと思うよ僕は…その上殴られっぱなしだし」

「もう容赦はせんっ!龍人の本気を見せてやるわい!」


 天に向かって咆哮する龍人。喧しいので耳を塞いでおく

 この雄叫びにマオが怯えてるんじゃなかろうかと思ったが、表情を変えずに不敵な笑みを浮かべている。眠たそうな目には似合わないな



「夜は悪魔の時間です…いいですよ?わたしもそろそろ本気を出しちゃいます」


 また妄想が始まってしまったか…と思ったが様子がおかしい

 いつもの少し垂れぎみの眠そうな目がつり上がり、紅く染まって爛々と輝いている。だれてめぇ


「あああああああっ!!」


 マオも吼えたと思ったら、背中からワンピースを突き破って黒い悪魔らしい羽が現れた


「「うそぉ…」」


 思わずショタロウとセリフが被る、それぐらいの衝撃的な光景だ


 普段と大違いの何とも頼もしいマオが龍人の前にたたずむ…

 今度はおふざけ無しの真剣勝負が始まると思い、私もまたしばらく見守る事にした




「貴様も本気を出したか…その翼はまさに悪魔と言える。面白い、かかって来いっ!」

「…」


 あれ?マオが下を向いたまま動かなくなってしまった



「…なんですかぁ?このはねー…」


 顔を上げたマオは泣きべそをかいていた


「ふ、服がやぶれて…お姉ちゃんに怒られます…うぅ…」


 あかん、いつものマオだ


 えぐえぐ泣くマオの姿に龍人はどうしたらいいのか分からずチラチラ私を見る。

 残念ながら私もどうしたらいいか分からんからこっち見るな


 何かもうこの二人の戦闘は色々と残念な戦いになる予感しかしなかった

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