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幼女と仲間たちの夜

 割と苦労して手に入れた馬車で五丁目に向かっている。ぺけぴーにはちゃんと歩くように指示はした。それでも最初の馬よりは早く進む。御者は予定通りユキだ


「結構いいクッションになるわね、この子」


 今、母がクッションにしてるのはパラサイトゴーストだ。平気な顔で魔物をクッションにするとは…

 モブオに譲ってやろうとパラサイトゴーストを連れてきたが、変な所で役に立ったみたいだ。


「ところで、私達が不在だった10日間何してたの?」

「大体マオちゃんの踊りの練習を見てたわね」


 マオはちゃんと舞いの練習をしているみたいで結構。だが一度見ただけでほとんど我流になってそうだが。


「ユニクスさん達は皆さんぺけぴーちゃんみたいな感じだったです?」

「ぺけぴー以外は喋れたけど馬鹿っぽかったわ…ぺけぴーは喋れないけど可愛く鳴く」

「可愛く…?」


 馬が可愛く鳴くとかワケわからないだろう…だが実際そうなんだから他に言い様がない。


「ぺけぴー」

『くるっくー』

「「か、可愛い…!」」


 歩きながらでも返事をしてくれるぺけぴー。マオと母はぺけぴーの可愛さにやられたらしい


「ギョボエェェ…」

「可愛くない」


 ぺけぴーと二人の様子を見ていたのか、パラサイトゴーストが可愛く鳴いて許しを得ようとしたが、母にバッサリ切られた。確かに可愛くない、大人しく尻に敷かれてろ


 それにしてもこの魔物に限らず世の魔物は分かりやすい名前をしている…こいつなら寄生するからパラサイトゴースト…


「魔物の名前って大体分かりやすくなってるのね」

「物語に出てくる様なメジャーな魔物はともかく、他のマイナーな魔物はギルドが名前だけで情報を得られる様にと名付けたみたいです」

「ふーん…ホワイトキャットは失敗例って事ね」

「いえ、危険度を見ればそれなりに強い魔物と判断出来ます。名前だけで雑魚と決めつけるのは依頼を受けた者のミスです」


 御者をやりながらユキが疑問に答えてくれる。言われてみれば確かにとは思う…


「確かにそうね、危険度で判断出来ない方が悪いわ。それに、マイナーな魔物に判別しやすい名前を付けるのも納得。こいつがバケマルガリータとかいう名前だったら寄生するとか分からないものね」

「そう………です、ね」


 ユキが返事を言い淀んだ。私の名付けセンスに何か文句でも?と、言いたい所だが…気を使ってか触れて来なかったので私もスルーする





「変な名前、ペドちゃんネーミングセンス無いから名前を考えるのやめた方が良いわよ?」

「何でユキが触れないでおいた事をあっさり触れてくるかな?このおばさんは」


 本当に空気の読めない奴だ…誰がおばさんよ!ってぎゃーぎゃー喚いて煩い。母は無視しておこう


「ギルドが分かりやすい名前を付けたのは評価出来るわね、ドラゴンで言うなら地上に居るから地竜、飛んでるから飛竜…火を吹いたら火吹き竜ってとこ?」

「飛竜には種類別に名称があります…あと、ドラゴンは火を吹いたりはしません。ファイヤーブレスとか本でよく使われるので誤解されがちですが」

「そうなの?」

「火を吹く竜は実在しますが、それらは実際は口から火属性の魔法を撃ってるだけです」


 そうなんだ…何でわざわざ口から撃ってるのか知らないが…たぶん、照準が定まりやすいとかそんな感じだろ


「ありがとう、ユキは物知りだからタメになる話が多くて助かるわ」

「いえ…」


 駄弁りながら移動するのも悪くない。移動している間、風景が代わり映えしない時はこうして会話しながらなら退屈せずに済むだろう

 村で貰った大福を食べながら五丁目へ向かう。食べながら思ったが、行く先々で名物である食べ物を食べ歩きするのもいいかも…


「ほのぼのしてて何よりね…後頭部に何か乗っかってるけど」


 普通なら魔物に警戒しながら旅をするのだろうが、私達はまったり旅が出来る…結界を使えるユキ様々だ。


 マオは静かだと思ったら私を乗せたまま寝てる…私の後頭部に顔面を乗っけているが、涎は垂らさないでと願おう

 マイちゃんはユキの肩に止まっている。馬車の中より外の方がいいのだろう


「平和ねぇ…」






「僕の妻はどぉこだあああぁぁぁぁぁっ!!」


……


 …何か逆方向、四番地の村の方へ見覚えのある人物が走って行ったが、気にしなくていいか


「ん?何か夫っぽい叫び声が聞こえたような?」

「気のせいよ」


 私の父は今頃漁に出ているのだ…銛を装備して四番地にカチ込みに行ってるワケがない

 アグラダ達がこれから修羅場を迎えようと私達には関係ない


「平和ねぇ…」


 大福を食べていたら、中継都市の宿で飲んだお茶が恋しくなった…大福には紅茶より合う気がする。茶葉をどこかで仕入れとこう



☆☆☆☆☆☆



 五丁目に到着した。パラサイトゴーストを紐で縛って母に渡す。ギルドに持っていってモブオにあげる様に頼んだ。


「私がサンドバッグ代わりに持ってちゃダメ?」

「そいつが逃げた場合、責任はお母さん持ちよ」

「それは嫌ね…分かったわよ、アイン君に渡せばいいんでしょ」

「えぇ、お願い」


 母とモブオは面識あるらしいので問題なく譲渡出来るハズだ。出発するには遅い時間なので母に家に泊まるか聞かれたが断った。

 家に居たら修羅場を終えた父が帰って来そうだし…たまには夫婦二人きりで過ごして貰おう、今までは常に私が居たし


「じゃ、行ってきます」

「気が向いたら里帰りしなさいよ、お土産無かったら家に入れないけど」


 一言余計な事を言って見送る母に、適当に手を振りながら町を出た。


「行きましょうか、王都へ」

「「はい」」


 マオは今は起きていて、代わりにマイちゃんが就寝中。動かないので寝てると判断したが…


「一丁目には寄らないのですか?」

「マオの着替えは欲しいから、一丁目で買う事にしましょう。今の服は戦闘に向いてなさそうだし」

「マオウさんはともかく、マオさんにはその服ですと難しいかもしれませんね」

「や、安いのでいいですよ?」


 安い服か…自ら安物で構わないと言うのは良い心がけだ。


「一番安いなら葉っぱかな?タダだし、決まり」

「せめて恥ずかしがらずに人前にでれるくらいでお願いです。ほんとにお願いです…いじめないでください」

「わかってるわよ…いつもの冗談じゃない」


 半泣きになる事ないじゃないか…流石に一緒に行動する私達も恥ずかしいから葉っぱにする事はない。一緒じゃなかったら…まぁ……面白そう


「いやな事を考えてる気配をお姉ちゃんから感じます」

「馬鹿ね、私は家族には優しいのよ…そんな、マオに葉っぱなんて…プッ」

「…わたしだって怒る時は怒ります、いいです?今、お姉ちゃんはわたしに座ってる…わたしに捕まってる状態です。お姉ちゃん何てどうにでも出来るですよ?」


 むふふー、と妖しく笑うマオ。淫魔の分際で言ってくれる。その挑戦受けて立とうじゃないか…


「面白い…やってみなさいよ…私も貴女を家族ではなく敵として相手をしてあげる…」


 後ろを振り返り無感情の目でマオを見やる。私に挑発をした以上、全力で相手をしてやらねば


「………ご」

「カウントダウン?私がしてあげる、よんさんにーいちぜ…」


「ごめんなさああぁぁぁぁい!うええぇぇぇぇぇぇんっ!!!」


 早口でカウントダウンし終わる前にマオが泣きながら謝罪してきた。私は寛大だから許してやろう


「泣き止みなさい…マオがまだ私の家族であるなら、今回の事は水に流しましょう…以後、この様な事は無いようになさい」

「お、お姉ちゃん…!……はいっ!二度とこんな事はしないですっ!」


 何だかマオの忠誠心が上がった気がする。良い事だけど


「…謝るべき立場から泣きながら謝罪させた上に服従までさせるとは…流石はご主人様、お見事です」


 黙って進んでろ…いや、もう暗くなりかけてるなぁ…夜に一丁目に行った所で店も閉まってそうだし、適当な場所で野宿でもするか


「ユキ、野宿出来そうな場所が合ったらそこで一夜を明かしましょう」

「野宿で宜しいのですか?」

「今は急ぐ旅ではないもの。のんびりでいいわ」

「かしこまりました」


 風呂に入れないのは嫌だが、野宿する事に何も不満がないのは女子としていかがなものか…

 ま、私が一般人から大分ズレた性格をしているのはわかってる事だし今更か。宿でのんびりするのも好きだが、外で仲間と過ごすのも良い…




「良い世界に産まれたわ…こうして旅が出来るんだから……魔物も見知らぬ土地も見た事ない人種も興味深い。冒険のついでに薬草とか集めればお金に困る事もない」

「そうですねぇ」


 一人旅ならばつまらなかったかもしれないが、今や人外ばっかりだが旅の供は4人だ。賑やかに過ごせる事だろう


「飽きるまでこの世界を楽しませてもらいましょうか」



☆☆☆☆☆☆



 野宿出来そうな場所を見つけて夕飯の準備をしている…ユキが。私はする事ないので、同じくする事がないマオの舞いを見ている


「…旋回する時に多少フラついてるわね、腕の動きもぎこちないわ」

「うー、がんばります…」


 舞王みたいに思わず見とれてしまう域にはほど遠い…が、始めて間もないしこんなものか


「ユキさんを手伝わなくていいんですか?」

「マオも料理してたら私の暇つぶしが無くなるでしょ」

「…」


 黙った。別に私も手伝えばいいだけの話だが…出来る事あんまり無いからなー

 焼くくらいなら出来る。本当に焼くだけなら絶妙な焼き加減にする事が可能だろう…肉も野菜も茸も


 今回は油がはねる音が聞こえるので揚げ物料理なんだろう…揚げ加減はわからん、なのでユキ任せ


「そしてバチバチと聞こえる音…またコウモリか」

「結界って便利です。安全に野宿できます」


 全くだ。諦めて別の獲物を探せばいいのに…


「マイちゃん、あいつら蹴散らせる?」

パタパタッ!


 返事は行動で示してくれる。少し経てば静かになるだろう…何か皆、私の言う事を聞いてくれて助かる。




 しばらくしてコウモリが結界にぶつかる音が無くなった。マイちゃん無双は無事に成功したようだ

 それとほぼ同時にユキに夕飯が出来た伝えられた



……



 揚げ物とはわかっていたが出来上がりのメニューまでは分からないのでそれなりに楽しみにしていた。

 メインはミンチにパン粉をつけて揚げたものにソースをかけたもの

 冷める前にいただく、揚げたてなのでサクサク…


「…これって豚と牛の合い挽き?」

「半分は合い挽きですが、半分はこんにゃくをミンチ状にしたのです」

「そうなの…ヘルシーだこと」


 不味くないからいいけど…こんにゃく自体に味付けもしてあるみたいだし。ユキが作ったからか違和感はさほどない


「美味しいです!」

パタパタッ!

『くるっくー!』

「ありがとうございます」


 他のメンバーにも好評な様子。野宿だというのにまともな夕飯が取れるとか…


「ユキが夕飯、マオが舞ってるのを見て時間潰し、マイちゃんが煩い魔物を討伐…ぺけぴーはずっと馬車を引いてくれてたし」


 なんとも良い仲間に恵まれたものだ…和気あいあいとする仲間達を見て、私は思わず口に笑みを浮かべ夕飯の続きに楽しむ事にした

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