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幼女と大福

「恐ろしい…危うくミラクル少女何て名乗る所だったわ」

「それはバッチリ仰ってました」


 おぅ…記憶にあるだけ死にたくなるっ!奇跡すてっき許すまじ…いや、もう許してるけど。今の私は正常に戻っているはずだ


「何かショックね…フィーリア家の御先祖様がお母さんと違うタイプの世に出したら恥ずかしい存在だったなんて」

「ペドちゃんもでしょ」


 そしたらフィーリア家の女性は変人揃いになってしまう…私はマシだと思うけど。

 それにしても意識改変されていた実感がわかないなぁ、やっぱり恥ずかしいセリフ以外は私と先祖は似ていたのかも


「奇跡すてっき」


 言ったらちゃんと来た。戻って来なかったりして…と、少し心配してたが、宣言通り私専用の武器になってくれたみたいだ。とりあえず…


「ふんっ!」

「痛っ!?何すんのよ!」

「いたいですっ!」


 外野で戯けた事を言っていた二人の脛をぶん殴っておく。打撃武器としても慣れておきたいから丁度いい


「な、なぁ…?」

「なに?」


 この事態にどうしたらいいか分からないのか、恐る恐るユニクスの血をあげた子供が聞いてきた。


「良くわかんないけど…これ、本当にもらっていいのか?」

「…私の意思じゃないとはいえ、すでにあなたにあげた物よ。好きに使いなさい」


 買取手を探せば高値で売れたが、ユニクス自体が仲間にいるし問題ない…。ぺけぴーを傷付けるとかしないけど


「…ありがとう」

「どういたしまして」


 そう言って子供は走って父親が寝てるであろう家に帰っていった。まあ、礼ぐらい言える子供ならあげても良かったと思える。


 無駄に長居したこの村をそろそろ出ようと思ってたら「おーい!」と叫びながら駆け寄る護衛…キールだっけ?


「良かった…まだ居たんだね」

「もうイベントは要らないから、私と奇跡すてっきの和解で綺麗に終わろうと思うの」

「何の事か分からないけど、アラン様の容態が変なんだ…悪いけど、屋敷まで来てくれないかい?」


 と言って返事を待たずに屋敷に去っていくキール…ユニクスの血は効かなかったのか


「やっぱり鼻水が混ざってたのがいけなかったかな…それとも醤油…」

「何て面白いもの飲ませてるの?」

「いやいや、早くいかないと」


 母は面白がり、マオは急かす。正しい反応なのはマオだろうな…フィーリア家のイカれっぷりが良く分かる。


「治してくれないと馬車あげないとか言われそうだから逃げましょう」

「わかりました」

「わからないで下さいユキさんっ!」


 …マオは少し良心がありすぎる…この先もいちいち困ってる人に反応してちゃ旅に支障がある。幸いな事に私が強く言えば諦めるが、毎回注意するのも面倒だ。


「今後旅をしながら、マオに家族以外の生き物は路上の石と変わらないと叩き込みましょう」

「いやな事を聞きました」

「まあ待ちなさいペドちゃん」


 まさかの母が止めに入ってきた。怪しい…目的は何だ?


「人の縁というのは大切にした方がいいのよ?この先ペドちゃんが困った時…それまでにペドちゃんに救われた人達がきっと助けてくれるはずよ」

「私に魔王にでもなれと?」

「どういう人付き合いしてるわけ?」


 地竜、神獣、悪魔…今回の見た目オークな貴族。後は五丁目のろくでなし達か…まともな人間が居ない…ファルなんちゃらは顔見知り程度だし

 私のピンチに現れる人外とろくでなし達…悪役にしか見えない。


「そんな事より本音を言いなさい」

「まだお礼の宝石貰ってないの」


 そんな事だろうと思った。ほとんどタダ飯食ってただけで御礼を貰おうとは図々しい


「ほーら行きましょ行きましょ!ペドちゃんなら余裕で治せるでしょ」

「嫌よ、ユニクスの血で無理な病気に奇跡ぱわー何て使ったらどれだけ気絶するか…」


 もしかしたらあのチャラい馬の血がいけなかったのかも…

 私が渋っていたら傍観していた村人が話しかけてきた。まだ集まってたんだ…解散すればいいのに


「…なあ、どんな事やるかは分かんねぇけど、嬢ちゃん達なら領主の息子を治せるんだろ?だったら治してやってくれねぇか…?」


 村人達の目的は分かる。息子さえ治れば以前の様に善政をするだろうと言ったのは私だ。

 ユニクスの血で治らなかった以上、アグラダは今後も高額な薬を求め続けるはず…資金はもちろん民から巻き上げた税で


「その要望を聞くためには代価が必要ね。この何もない村であなた達は私に何を支払ってくれる?」

「代価だって…?こんな貧しい生活をしてる俺達に代価を払う余裕あるわけないだろっ!」


 そうだそうだと村人達からまた非難が集中した。何て頭の悪い…誰も金を払えとは言ってないのに


「皆、待ってくれ」


 一人の村人が割ってはいってきた。見覚えは無い…が、隣にいる子供を見ればユニクスの血を渡した子だ。つまりは子供の父親か…

 もう体調が良くなったのか…ユニクスの血が高い治癒効果をもつというのは本当だったんだ…


「お嬢さん…息子から高額な薬を私に与えてくれたと聞いたよ。…本当にありがとう」

「気にしなくていいわ」

「それでも御礼は言わせて欲しい」


 律義な事…でも、本命は御礼を言うことではないだろう…


「御礼は受け取ったわ。で?本題を聞きましょうか?」

「…大したお嬢さんだ。先程までのやり取りを聞いていたんだけど…私からもお願いしたい…アグラダ様のご子息様を救って頂きたい」

「あなた、他の村人と違ってアグラダを憎んでないみたいね」

「ああ…ご子息様がご病気になられる前は本当に素晴らしい御方だったんだよ…男爵という一番低い貴族階級でありながら王都から比較的近い位置にあるこの村の領主に抜擢されるくらい…」


 それは良く分かんない。王都に住んでる方が貴族っぽいけど…領主になれるなら凄いって事でいいか


「アグラダの素晴らしさとかどうでもいいわ、さっきの会話を聞いてたなら代価の事も聞いていたでしょう?何を支払ってくれるわけ?言っておくけど、私は安い女じゃないわよ」

「…すまない、この村には本当に何も無いんだよ…。今、渡せる物なんてこれぐらいしかないんだ…食べ物じゃ無理かな?」


 と言って渡されたのは饅頭…じゃなくて大福?代価に大福を出すとはいい度胸だ……とりあえず食べてみる。なかなか美味しい…何か栗っぽいのが入っているのがいい


「いいわ、この大福20個くらいで引き受けましょう」

「いいのかい?!あ、ありがとう!」


 特に欲しいもの無かったし、金品より食べ物の方がいい…大福ならオヤツにもなるし


「…大福っていくらくらいです?」

「大体一つ50ポッケです。20個でも1000ポッケですね」

「安っ!?ペドちゃん安っ!!」

「1000ポッケで奇跡起こしてくれるんですね…」


 誰が安い女だ。この村じゃ大福が精々なんだろうし仕方ないのだ


「そうと決まれば…さっさと治しに行きましょうか」


 ちゃんと帰る頃に大福を用意しとくよう指示し、私達は屋敷へと向かった。


………


……



 という訳でアランの部屋までやってきた。容態がおかしい…との事だが、確かに顔色は悪い


「どうなってるの?」

「うむ…ユニクスの血を与えた直後は顔色も良くなり治ったかに思えた…が、すぐに元の病態に戻りだしたのだ」


 顔色が良くなったという事は一応効いたのかもしれない…ユニクスの血では病原体を消し去る事は出来なかったのか…どんな病原体だろうと私には関係ないが


 アランの部屋を身内だけにして、これから奇跡ぱわーを使用する。アグラダは部屋を出る際に『くれぐれも宜しく』と言って退室した。あっさり私達に任せるとか妙に信用されてる気がするが…


「さて…元気にした後にまた具合悪くなっても困るし…」


 元気になれ!じゃダメだった場合、二度も気絶する事になるし…そうだなぁ


「この子の健康を脅かす元凶よ去れ!奇跡ぱわぁー!」


 これなら大丈夫だろう…何となくだが、気絶時間も少なくて済みそうだ……



☆☆☆☆☆☆



 再び屋敷に住んでる者たちがアランの部屋に集まっている。

 今回の気絶時間は僅か数分という短さだった。難病だったらもっと気絶時間長そうなのだが…


「実に馬鹿らしい話ね」


 現在、私に踏んづけられてジタバタしてる白くて丸い身体に手足と尾みたいな物がある生物。こいつがアランの不調の元凶だった


「散々病気と言っておいて魔物にとり憑かれてましたとか笑えないと思わない?」

「いや、その……うむ」


 このもがいてる魔物、シルエットは丸っこくて可愛げがあるが、目がギョロっとして可愛くない。キモいので容赦なく踏める


「それはパラサイトゴーストです。魔力を持つ者の中に寄生する魔物です。魔物に寄生する事もあります」

「貴族は平民より魔力を持ってるからね…狙われてもおかしくないわ、魔物が魔物に寄生するのは驚いたけど」

「要は魔力が有れば何でもいいみたいですので…昼に寄生した体内で生命力と魔力を吸収し、夜に体内から出て活動するようです」


 ああ…だからアランは夜型の生活だったのか…昼に生命力を吸収されてたら動けないか


「魔物自体はご覧の様に弱いですが、退治する場合別の魔物に寄生して隠れるので見つけるのは困難です」

「…?何か似たような話を聞いた事があるわね」


 なんだったっけ…?ごく最近に…確か…



「そうか、モブオが受けた討伐依頼ってコイツか。パラダイスゴースト何ておめでたい名前で言うから気付かなかったわ」


 夜に活動してる時に目撃者がいたのだろう…危険度Cらしいのでギルドに一応依頼、そしてモブオが受けた訳か


「モブオめ…ちゃんとした名前で覚えておけば病気の正体もすぐ閃いたかもしれないのに…」

「こうして解決したんだし良いじゃないの。そんな事より宝石…ぷぎゃっ!」


 母が喧しいのでゴーストを投げつけて黙らせた。寄生されればいい…。「何すんのよっ!」と言いながらゴーストを踏んづけている所を見ると、寄生先として拒否られたみたいだ。


「雇った治癒士も見つけられ無かったのね」

「ああ…回復魔法をかけただけだったからな」


 それじゃあ無理か…原因不明の病なら今回の寄生魔物や呪いの可能性も考えるべきだったな…五丁目ではパラサイトゴーストとやらの被害は聞いた事ないから珍しい魔物なのかもしれないが




「…感謝する。お陰で息子は助かった…」

「礼なら領民に言いなさい、私は村人に対価を貰って治療したんだから。こんな有り様になった村にもあなたを慕う者が居たわ…長い間アランが存命出来たのも、これまでに使用した薬のお陰でもあるでしょう」


 恐らく効果の高い薬を服用してなければアランは亡くなっていた…民から巻き上げた税は無駄にならずに済んだのだ。…そう考えた方が皆救われるだろう


「じゃ、私達は帰るわ。…失った信頼を取り戻すのはなかなか大変でしょうね」

「仕方あるまい…それだけの事をやってきてしまったのだ…」


 アグラダは今までの所業を悔いている事だろう

 今後この村がどうなるかなど私達には関係ない…のだが、大福は美味しかったから復興を頑張って欲しいと思う。


 護衛も皆揃って見送りしようとしたが、鬱陶しいので遠慮した。アランはまだ寝ていたので挨拶はしなかった。

 屋敷を出て例の父親から大福を貰うのを忘れない


 ちゃっかり母も看病代と称して宝石を頂いてきたらしい…こんな困窮した村から金品を受け取るとはゲスな母だ


「じゃ、お母さんを五丁目に捨てたら王都に向かいましょ」


 やっと王都へと向かう事が出来る。あんだけ広いなら面白い事もあるだろう…マオ達に10日間の出来事を語りながら、ひとまず五丁目に向かった。

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