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幼女、再び戯れる

「薬草狩り、山で採った茸って売れる?」

「もちろんです…それよりも、そろそろお許し頂けませんか?」


 昨夜の尻画の罰で、ユキの事は薬草狩りと呼ぶという私なら恥ずかしくて死ぬ罰を実行中なのだが、ユキにはどうも堪えてない様に見える。


 今朝は9時頃という早起きとは言えない時間に起き、しばらくぼーっとしてた。

 すでに他の仲間は起きていた。この娘達の中には私を起こすという選択肢はないらしい。有難いような…ダメなような……


 起きたのに宿に居てもしょうがないので町を散策する事にした。

 宿を出る際に唐突に罰を思い付いたので実行して今に至る


「あの…重々反省しておりますので…」

「あら?流石に薬草狩りを連呼されたらユキも恥ずかしい?」

「いえ…ご主人様を抱っこ出来ないとか生きてる意味ないのですが…」

「そっちかよ」


 現在私を抱っこしてるのはマオだ。こんなの普通は罰でも何でもないのだが、ユキにとっては薬草狩りと呼ばれる以上の罰だったようだ


「大体何であんなの描くわけ?忠誠心薄れてるんじゃない」

「忠誠心なら常に振り切ってます」

「じゃあ、何で私の嫌がる事をするの?」

「…そうですね。確かにご主人様至上主義な私がご主人様を不快にさせるのも変ですね」

「でしょう?」

「つまりご主人様も何だかんだ言って嫌では無かったのかと」

「貴女バカが酷くなってきてるでしょ?」


 何だかヤバい…奇跡ぱわーでまともな人格にしてと願うべきか…


「マオさんも抱っこし続けるのはお辛いでしょう?」

「んー…お姉ちゃん軽いし、むしろ落ち着くので全然平気でっ…す……う、うそですぅっ…代わりたいです!?」

「…睨まないであげなさいよ、あなた無表情で睨むと結構怖いのよ?」

「睨んではいませんが…ショックを受けたらあの様な表情になるのです」


 本当か?完璧なメイドの様で色々変だ。奇跡ぱわーも妙な効果が付与するな…


「そういえばユキのせいで忘れてたけど、マオの角擬きを結局抜いてないわ」

「すっかり忘れてましたね…忘れない内に今抜いておきましょう」

「い、痛くしないで下さいね…?」

「大丈夫です。ちゃんと優しくしてさしあげますので」


 天下の往来で何を言ってるんだお前らは…角を抜くために密着するから更に誤解を受けるじゃないか!


 見ろ!モブオを筆頭に男共が興奮して見ている…!…まだいたのかモブオ…


「いっ…たぁっ!いたいです…」

「抜けましたね。もう傷口は治しましたのでご安心を」

「見せて」


 受け取ったのは1cm無いかもしれない菱形の骨。何の骨かは解らないが、こんなのぶっ刺したらそりゃ痛いだろうなぁ…

 何となしに自分の掌につき刺してみる


「痛っ」

「いけませんっ!」

「あわわわわわっ!」


 慌ててユキが血の滲んだ傷口を治療する。思ったよりすんなり刺さったな…


「やっぱり痛いわ。…マオは昔から強い娘だったのね」

「うー…お姉ちゃんが怪我するのやですよ?」

「その通りです」

パタパタッ!


 不評だったみたいだ。心配かけたのは悪かったが、のほほんと私が過ごしてる間に妹分がどれだけ痛みに我慢してたか少しでも知りたかったのだ。


「ごめんなさい、もうしないわ」

「当然です」


 やれやれ、怒ってた立場から怒られる立場になってしまったか…


「こんな小さな骨でも、これまでのあなたの想いが詰まってるわ…大事になさい」

「はいっ!」

「後でネックレスにでも加工致しましょう」


 そのままだと無くしそうだし、それがいいだろう…




 その後はギルドに行って良さげな依頼がないか探したが、やっぱりそんな都合の良い依頼は無かった。

 ランクアップなしの依頼で高収入とか普通ないかー…



★★★★★★★★★★



「一攫千金できる様な場所ないの?」

「貴族の屋敷とかならありますが」

「それはどろぼうですよぉ…」


 定食屋で考え中。茸ばっかり食べてたから今日は唐揚げにした。私が唐揚げ定食を頼んだら皆して同じの頼んだ。

 全部唐揚げとか食べ比べが出来ないじゃないか…


「そうだ…マオに稼いでもらいましょう」

「わたし?」

「どの様にしてでしょう?」

「まず…マオを町中に一人で放置してナンパ待ちする。チョロそうなマオならきっと声がかかるわ。ナンパされたらホイホイ付いて行って…人気の無い所に連れ込まれたらボコボコにして金品強奪する」

「なるほど…それを繰り返して稼ぐと」

「いやですよ?絶対いやですよ?」

「冗談よ」


 あまりにも思いつかないから適当に考えて口に出しただけだ…


「無難に薬草でも売るべき?」

「確かに無難ですが…早いペースで採取しても一月はかかるかと」

「…やっぱり一丁目で何か探しましょうか」

「その方が良いかもしれませんね」


 決まったならその方向で動く事にしよう。だが今日の所は気晴らしがしたい…


「明日から一丁目で行動するわ。朝早くに出るから起こしてね」

「今日はどうするのですか?まだ昼間ですが…」

「今日は…ぶらっくうるふと戯れるっ!」



☆☆☆☆☆☆



 ぶらっくうるふと戯れる為に森の入口付近に来た。近付いた途端にぶらっくうるふの群れが寄ってきて思わず笑みがこぼれる。


 寄って来た内の一匹を持ち上げ存分に可愛がる。しかし、足元に構ってオーラを出すわんこ達がいるので一匹だけと戯れる訳にはいかない!


「あぁ…久方ぶりの癒し…」

「うー…」

「ご主人様、スカートに潜り込む不届き者にはご注意下さい」

「うぅー…」

「そんな不届き者にはユキとでも名付けましょう」

「それはあんまりなお言葉かと…」

「うぅーっ!」「さっきからうーうー煩いんだけど」

「ひどいですっ!何でわたしには一匹も寄ってこないですか!」


 マオには何故か一匹も近寄らなかった。マオが近付いてもダッシュで逃げる。急いで走るその姿にまた癒される。


「本能で危険人物と思われてるんじゃない?」

「わたしはいじめたりしないのに…」

「あなたは悪魔の娘だしねぇ…」


 魔物の中で最弱の部類に入るぶらっくうるふにはマオの存在は恐ろしいのだろう。


「いつ見ても小さいこと…これで成獣なんでしょ?」

「そうです」

「私と似た者同士ねー」

「アンッ」


 く…やはり今の私の精神力ではこのわんこ達をスルー出来る自信がない!


「このまま数時間は余裕だわ」

「わたしはその間ひとりぼっちです…」


 それは可哀想に…仕方ないから一匹持ち上げてマオの方に連れていってみる。

 マオに近づくにつれ、私の手から逃れようと激しくもがく…そこまで嫌か…


「…すごく逃げたがってます……」

「きっと早く下りて遊んで欲しいのよ」

「グゥルウゥゥッ!」

「…すごくいかくされてます……」

「それは間違いない」

「ふぇえええぇぇぇぇんっ!」


 おっと…ぶらっくうるふが唸るとは思ってなくて思わず本音が出てしまった。

 しかし、これはダメだな…マオがぶらっくうるふと戯れるのは今日は無理だろう…


 マイちゃんですら、ぶらっくうるふの背に乗って楽しんでるのになー…捕食してるようにしか見えないけど



☆☆☆☆☆☆



 結局日暮れ近くまで遊んでた。ユキに注意されなきゃ夜まで戯れてたかもしれない。


「いつまで膨れっ面してるわけ?」

「…」

「見た目は成人間近な少女の膨れっ面…絵に残しておきましょう」

「…やめて下さい」


 グスグス泣いてるマオを放置してたら機嫌を損ねた様だ。一応ユキに任せておいたのになー


「機嫌直しなさいよ…たかが数時間の放置くらいで」

「ふーん…お姉ちゃんなんか嫌いで…はないですけど、うー…」

「それはどうもありがとう」

「マオさんに姉妹喧嘩は無理そうですね」

「はぅー」


 もうすぐ町の入口につく、という所でまたモブオに会った。多分依頼に行くか、もしくは依頼が終わって五丁目に帰るんだろう


「お、またまた会えたなペドちゃん御一行さん!」

「そうね。貴方は五丁目に帰る所?こんな日暮れに」

「いやいや、今から依頼を果たしに行くんだよ。夜に出る魔物討伐の依頼だし」

「ふーん…まぁ頑張りなさいモブオ」

「おうっ!俺の名前はアインだけどなっ!」


 モブオじゃないと覚えられないと思う。モブオは街道沿いに歩いて行った。しかし、夜に出る魔物か…


「夜に出る魔物ってどんなの?」

「様々ですよ。主にはコウモリ型の魔物やアンデッド型の魔物ですね」

「お、ゾンビとかいるのね」

「はい」

「お、お化けも?」

「もちろんです」

「よ、夜は危険ですっ!」


 幽霊とか合ったら会話してみたい。昔生きてた者の話とか実に有意義な時間となるだろう。



……



 四丁目に戻って食堂がある宿屋に泊まる。今日はもう動くのがダルいので、ご飯食べたらすぐに部屋で休みたかったのだ。ちなみにマオの機嫌はすでに直っている。


「こんなもので宜しいでしょうか?」

「わぁ…ユキさん凄いです!」


 マオの頭に埋まってた骨をユキは器用にネックレスにした。

 菱形の骨に穴を空けてチェーンを通した、他人が見ればゴミだろうが…私達にとっては大事なネックレスだ。


「ユキは稼ぐ手段はたくさん有りそうよねぇ」

「色々身に付けておけば今日の様に役立つ事もありますし…まぁ、仕事にする気はありませんけど」


 つまり、技術は身に付けても私達の為にしか使わないという事…使う対象が限定されすぎて勿体無いが、そう決めてるなら私からは言うことはない。


 それにしても階下がやたら騒々しい。人が大声だしてるのも分かる。酔っ払いか?


「何か煩いわね」

「酔っ払いでしょうか?」


 ユキも同じ事考えてたか、と思った時…ドアの外に人の気配を感じた。

 能力的にも人外な仲間達も気付いた様で、ユキはすでに椅子に座ってる私の横に待機済み、マイちゃんも私の頭に止まっている。

 そしてマオは素早く私の後ろに隠れた…おい……


「護衛がこれじゃあねぇ…」

「ご、ごめんなさい…つい……」


 とか言ってたらドアがノックも無しに開けられた。入ってきたのは見覚えのある男達が数人…


「ここに薬草狩りのユキという腕の良い美しいメイドがいると聞いてきた」


 昨日、町中で見たオークの様な貴族だ。これは中々面白そうな事になる気がする…。

 ずかずかと入って来た貴族を私はニヤリと笑って見つめた。

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