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幼女、再び天の裁きを受ける

 さてさて、こんなお偉い連中がうじゃうじゃ居る目の前でこんな目立つ様な真似をしてきた馬鹿をどうしてくれようか……

 ちょっと話した感じ証拠と言う証拠は無さそうだが。

 というか私は何もしちゃいないんだから証拠とかある訳ないだろ。


「ふむ、こんな暴挙に出るほど世界から貰える力が欲しいのか……あるいはみみみか」

「何か凄そうな力っぽいから欲しいのは分かるよ」

「私は別に要らん」


 だが世界から貰える力って言っても個人じゃなくて国自体に与えられるのだろう?

 だったら貰った所でナイン皇国が得するだけじゃん。

 お馬鹿勇者はそこまでナイン皇国に恩を感じているのだろうか。自分を拉致った国なのに。


 どうしたもんかと周りをチラッと見回すと、ダイゴロウの野郎が心なしかヤッベ、と言った感じの表情をしていた。

 ジーっと見てやると慌てて顔をそらす。クソ怪しい。


「おいダイゴロウ、やましい事があるなら今の内に白状しといた方がいいわよ」

「何の事やら……とトボけたい所だけど君相手だとどうせすぐバレるから言うよ……彼がこんな事しでかしたのは半分は俺のせいかもしれない」

「ほう、詳しく聞こう」

「ああ、それは俺とコウキ君が出会った時まで遡るんだけど」

「遡らんでいい」

「じゃあ端折って言おう」


 話は短いに限る。

 要点だけ言ってくれれば私は把握してやるんだからそうしろ。


「彼は聖剣の使い手な事で有名になってるけど、本当の能力は違うんだ……彼の本当のスキルは『口説き落とし』。異性を口説き高確率で惚れさせる地球に居た頃は羨ましすぎて血反吐を吐くレベルのスキルだ」

「勇者要素ないな」

「しかし……彼はこのスキルを使うことを許されていないんだ。可哀想に、勇者だからと勇者らしからぬ行動はしない様に厳命されて強制的にスキルを封印されたんだ。いや封印と言っても使うなってだけだけど」

「ここまで暴挙に出る理由無しなんだけどどういうこと?」

「ここからが本題なんだ。俺は、愚かにも彼に言ってしまった。冒険者になって毎晩2人相手に3Pしていると」


 何かお見苦しいならぬ聞き苦しい話になってきた。

 何でダイゴロウの性事情なんぞ聞かせられなければならんのだ。


 まだ内容で推測出来る域に達してねぇぞ。


「男同士コソコソと腹を割って話した結果、彼は俺に言った……ダイゴロウ先輩、エッチがしたいです。と」

「お前お姫様でもあるミラ達の前でよく言えるな」

「ムッツリよりオープンスケベの方がモテるからいいんだ。それはともかく続きだけど、彼は勇者って割りに何と言うか、顔が普通じゃん?異世界きてもあんまりモテないらしい。だから勇者アピールしまくって異性の気を引こうとしてるけど、効果ないそうだ」


 あの勇者を名乗るアピールってモテる為だったのか……


「そして、俺は言ってしまった。レアで特別な力持ってたら女性とかホイホイ近付いて来る、と」

「理解した。全てお前のせいか、右腕だけで勘弁してやろう」

「やめて……右手も恋人の一人なの……」

「つまり何なのだ?フィーリアが絡まれてるのはコヤツのせいか?」

「みたいね。どうやら世界から力を貰って女性にモテたいみたい」


 俗っぽい理由だった。

 そんなクソみたいな理由で難癖付けられた私が可哀想すぎやしないか。


「だがおかしいんだ。少し話した程度の仲だが、彼は性欲は高いが基本素直で無闇に人を陥れる事はしない純情な童貞ボーイの筈なんだ」

「童貞は許してやれよ」

「だから、君の国が選ばれて本来なら普通に祝福してくれる様な奴なんだけど……今回は何故かいちゃもんを付けてきた。だから俺が思うに誰かが童貞の彼をそそのかしてるんだと思う」


 何で童貞を強調したがる。

 実は勇者の事を馬鹿にしてるだろコイツ。


 にしても誰かがそそのかしてるねぇ……確かに単純そうで扱いやすそうな奴だ。

 ちょっとつつけばボロを出してくれるかもしれないな。


「さっきから何をコソコソと。ダイゴロウ先輩、その幼女は悪だ。とっ捕まえて下さい」

「いやー、この人は俺の依頼主だから無理だわ」

「さっきも言ったけど、私が今回の件を仕組んだという証拠はあんのかって聞いてんの」

「証拠か……証拠なら無い!」


 何で自信満々に言い切った。

 周りを見ろ、王族貴族が何言ってんだコイツって感じで見てるぞ。


「だが根拠はある。アルカディア国についての情報は聞いた。どうやら奴隷主体の国みたいだね、しかも手練れが多い。今回の件、君は奴隷を使いこの場を襲わせ、自分と戦う者には自害する様に命令した」

「どうすりゃ頭部が破裂すんのよ」

「頭の中に爆弾があった」

「無茶言うな」

「まだ納得しないつもりか。いいか、君みたいな幼女があんな簡単に賊共を殺しまわれる訳ないだろ!」

「今日イチの説得力だよドンちゃん!」


 世の中には私くらいに派手にやれる幼女が居るだろ。

 最近また一人増えたみたいだし。


「ここは俺に説得させてくれ。それっぽい事を言えば素直な彼なら納得してくれる」

「まるで期待出来ない」


 期待出来ないがダイゴロウが招いた事態でもあるし尻拭いはしてもらおう。

 説得失敗だったら報酬は無しという処分を下そう。帰ったらハーレムメンバーに袋叩きにされるがいい。


「ダイゴロウ先輩、貴方だろうが俺に説得は無意味です。俺は悪である幼女を必ず裁く」

「まだ説得してないが、そこまで言われちゃ仕方ない。だがこれだけは言わせてもらう、何故証拠もないのに集めた情報だけで彼女を悪と断定できる」

「あれだけの情報があれば十分です。何より、金城さんがその幼女は悪い奴と判断したんだ、間違いないです」


 カネシロ?誰だそれ。


 という疑問はすぐに解決した。

 何故なら後ろでお仲間らしき女勇者がギョッとした顔をしてるからだ。


 ふむ、つまり童貞をそそのかしたのはコイツか。

 私の標的がわざわざ私に対して挑んできてくれるとは天晴れ。


「へぇ、つまり君はそこの金城嬢の言葉だけを鵜呑みにしてこんな目出度い場を乱したって訳だ」

「……そう言えば金城さんに自分の事は話すなと言われてました。今のは無かった事に」

「ならんわ」

「そうですか。まあ構いません、何故なら金城さんの言葉に嘘偽りは――」


 童貞のセリフが途中で止まった。


 というか会場が一気に静まり返り、時間が止まったかの様になっている。

 当然ダイゴロウもミラ達も、誰も彼もが止まっている。


 流れに乗って私も止まった。


「あれほど私の事は喋るなって言ったのにあっさり喋るとか本当に役立たずの馬鹿なんだから!」


 その時間が止まってる中で唯一動いている者。

 これが女勇者の時を止める力って奴か。


『この様な状態でも貴き方は普通に活動できるのですね。流石でございます。と言っても格下の愚か者が貴き方をどうこう出来る筈もありませんが』


 脳内に直接話しかけてくるのはみみみか。

 テレパシー的な力も使えるとか元災厄は多才だなあ。


『私も動けますが、貴き方が止まったフリをしていらっしゃるので邪魔をしない様に私も大人しくしておきます』


 理解力があってよろしい。空気を読める奴は好きだぞ。


 どうやらカネシロとやらは自分で何もかも暴露してくれるタイプみたいなのでベラベラ喋ってくれるまでは止まったフリをしておこう。


「ち、こんなジャリにフミオ君が殺されたっての……許さない。絶対に苦しませてやる」


 ほう、予想通りと言えば予想通りだが、女勇者はフミオに並々ならぬ想いがある様だ。

 となると、この時間が止まってる状態で私に対して何か仕掛けてくる可能性が高い。というかすでにナイフをバッチリと握っている。

 いざとなればみみみが守ってくれるだろうが……別に命の危険はないか。


 恐らく、この時間が止まってる状態では直接的な被害は与えられないと思われる。

 何故なら、私に復讐したいなら童貞をそそのかす前に自分で時を止めて殺した方が早いから。

 そうしなかったのは単純に時を止めた状態では攻撃が出来ないか、代償があり迂闊に使えないか、だ。


 なので、女勇者がナイフ片手に私を刺そうとしていても止まったフリを続けるべきだな。

 万が一刺されたら回復すりゃいいし。


 果たして、ナイフは私のお腹スレスレでピタッと止まった。セーフ。


「やっぱ無理か。何で時間が止まってる間は殺せないのよ、ホント使えない力……まあいいや、私の手で直接やれなくても手はあるし」


 女勇者は手にしていたナイフを私に握らせると、あろう事か私を持ち上げて投げ飛ば……さなかった。

 正確には投げたのかもしれないが、私は投げられましたな体勢で空中に浮いている。

 これが空中浮遊というものか……


 そして空中浮遊な状態のまま童貞の腹辺りにナイフが当たる様に移動させられた。


「こんなものか。時をまた動かせば、コイツが持ってるナイフがコウキを貫くはず。誰もが目撃すれば言い逃れは出来ないでしょ。どうやらこの宴会場は参加者同士の流血沙汰は即処刑ってくらい重いみたいだし、これでコイツも終わりよね」


 そういう企みか。

 しかし大精霊共め、処罰が重過ぎるぞ。後で文句言ってやる。


 そんな事より、何でフミオを始末したのがバレてんだ。

 ダイゴロウの野郎め、あれ程言ったのに勘付かれやがったな。


「ぐっ!?……ぅああぁっ」

「おお、考え事してたら刺してたわ。ま、いっか」

「な、何してんのドンちゃん!?」

「お前……いくらなんでもついカッとなって殺しちゃいかんだろ」


 おいおい、私が急に居なくなって童貞を刺してるとかおかしいだろ?

 いつから私は誰にも見えない速度で動ける様になったと言うんだ。


 童貞に刺さったナイフから手を離しストンと降りる。

 そして童貞はガクガク後ずさったりフラついたりとやけに演技臭を感じさせる動きをした後バタリと倒れた。

 これも勇者内で決められてた行為かと勘繰ったが、何か素で演技っぽい動きしてた気がするから気のせいだろう。


「コウキ君!?」

「誰か回復魔法を!」

「アルカディア女王!この神聖な場での狼藉、タダでは済まされんぞ!」

「これは、私を勇者殺しに仕立て上げようとした何者かの策略に違いない」

「ものっそい自分で刺しといて苦しい言い訳はよせ!」

「所詮は成り上がり風情の蛮族だったか!」


 まあ刺したけど。

 投げられて空中で止まるとか無理じゃん?

 というか我関せずだった外野が急に喧しくなったな。


「黙れカス共。無関係な外野が喚くでないわ。そもそもだ、フィーリアがコウキとか言う勇者を殺す動機などないわ、そうであろう?」

「ある」

「そうか、妾にはもうお前の弁護は出来ぬわ」


 もっと頑張れよ。


「私の勘だけど、コウキとやらを殺そうとしたのはお仲間であるカネシロとか言う女勇者だと思うわ」

「ふざけないでっ!どうして私が同じ地球出身の仲間であるコウキ君を殺さなきゃいけないの!」

「さあ?……私を罠に嵌める為じゃない?」

「こんな事しでかしといて、他人に罪を被せる気!?」

「ただの幼女である私が誰にも気付かれない速度で勇者を刺すとか無理でしょ」

「さっき物凄い速さで賊連中を殺しまわってたじゃない!」


 そういやそうだった。

 何という事だ。犯人は私である可能性が高くなってきた。


 外野からも幼女断罪コールが響いてくる始末。一部の国は我関せずを貫いてだんまりだけど。

 あの辺はこんな状況でも私を敵に回さないべきだと判断した賢い連中か。


「静まりなさい。我々が用意した宴の席での狼藉は許されません」

「そうです!大精霊様……アルカディア女王に処罰を!」

「この様な国に世界からの力を与える事などありませぬぞ!」

「ですから……黙れ。後の始末は我々がします」


 ババアの大精霊の威圧の篭った一声で喧しかった会場が静かになった。

 流石はババア、年季が違う。


「さて、勇者側はアルカディア女王がコウキという勇者の殺害を実行した。アルカディア女王側は逆にカネシロという勇者が仲間を殺そうとした。という言い分で宜しいですか?」

「はい」

「うーん、まあそれでいいや」

「分かりました。結論を出すのは簡単な事です。お互いが嘘を言ってないか我等が母たる世界に判断して貰えばよいのですから」


 ああ、ヒノモトの連中が使う天の裁きとやらの事か。

 なるほど、あれなら私が無実だと判明される。


「あの、嘘だったらどうなるんですか?」

「消滅します」

「消滅……分かりました。是非ともお願いします」

「アルカディア女王もそれで宜しいですね?」

「いいよー」

「軽いよドンちゃん!……ああ、数少ない私の友達が死んじゃった……」


 死んでねーよ。

 そもそも私は無罪だと主張してるだろ。ミラの野郎、絶対に私が犯人だと決め付けてやがるな。


 さて、女勇者は何か企みでもあるのだろう。

 ま、こっちは嘘さえ言わなきゃ死なないだろうけど。


「では……そうですね、今のところアルカディア女王の方が疑われていますから、先にそちらから天の采配に身を委ねて頂きましょう」

「構わないわ」

「結構。ではナイン皇国の勇者さん、貴女の主張をどうぞ」


 コウキという勇者を殺そうとした。などと馬鹿な質問はしてこないはず。

 コイツが聞きたいのは別の事だ。

 きっとフミオを殺したのは私かどうか聞いてくるに違いない。


「……あなたは、異世界からきた勇者を殺しましたね?」


 ほーらな、コウキという勇者を殺そうとしたとは聞いてこない。

 この場に居る連中はコウキの事だと思うだろうが。


 ま、想定内だしちゃっちゃと答えてやるとするか。


「いいえ、殺してないわ」

「嘘、ばっかり!!……大精霊様っ、早く裁きを!」

「分かってます。では我等が母たる世界よ、この者に天の裁きを」


 ババアの大精霊の一言と共に、ヒノモトで見たのと同じ光が頭上より降ってきた。

 うーん、相変わらずあったかい。


『久しぶり』

「なんてフレンドリー」

『世界はペドちゃんに言わないといけない事があります』

「うむ」

『ふぃりあ先生……桃女郎の第3巻の発売はよ』


 なんと、私の作品は世界にまで読まれていたのか。

 人ですらない相手とはいえファンの要望には応えねばなるまい。


「旅の合間の暇な時間でなるべく早く書き上げると約束しましょう」

『おお……ペドちゃんに素敵な祝福を』


 またか。


 私は天の裁きを受ける度に祝福が増えるのか。


『前回の祝福が不満そうだったから今回は奮発した。内容はみみみちゃんに聞いて』

「みみみの事をちゃん付けしてんのか。それはいいけど、裁き自体はどうなったんじゃい」

『忘れてた。……うん、確かに嘘は言ってないから無罪。割とグレーだけど』

「ふ、当然ね」


 私はフミオ相手に暴行してない。

 やったのはメルフィだし。


 やがて光が収まり、私が無傷で平然としてるとまた場がザワつきだした。

 私を犯人扱いして罵倒した奴等、今どんな気持ち?


「い、生きてるじゃない!どういう事よ!!」

「どういう事も何も、彼女は嘘をついてない、という事です」

「そんな訳ないじゃない!」


 アホだなぁ……素直に童貞を刺したのは私。と言っておいた方が裁かれる確率高かったのに。まあ正しくは刺したではなく刺さった、だからどの道助かっただろうが。

 フミオに御執心すぎるからこうなるのだ馬鹿め。


「次は私がやればいいの?」

「そうなりますね」

「ち、いいわ。さっさと言いなさいよ、コウキ君を殺そうとしたのは私だって。どうせ無駄だけど」


 馬鹿正直にそんな質問する訳ねぇだろ。アホかコイツ。

 だがこの自信から察するに童貞を殺すつもりは無かったらしい……まあ頭悪いとはいえ勇者という手駒だし。殺すには惜しかったか。


 では、私を犯人に仕立て上げようとした愚か者を罰するか。


「やっぱ無理か。何で時間が止まってる間は殺せないのよ、ホント使えない力……まあいいや、私の手で直接やれなくても手はあるし」

「は?」

「こんなものか。時をまた動かせば、コイツが持ってるナイフがコウキを貫くはず。誰もが目撃すれば言い逃れは出来ないでしょ。どうやらこの宴会場は参加者同士の流血沙汰は即処刑ってくらい重いみたいだし、これでコイツも終わりよね」

「あれ……え?何で?」

「と、言った後私にナイフを持たせてコウキを刺すように仕向けた。それは貴女ね?」

「っ!?」


 ふ、止まったフリをしといて良かったわ。

 違うと言っても消滅。素直に白状しても流血沙汰を起こした張本人として処刑。

 どっちにせよお終いだな。


「ほれ、早く答えなさいよ」

「そうですね。どうしました?……沈黙は肯定と言ってる様なものですよ?」

「わ、私は……!?」


 ――で、また時が止まった。

 時間止めて逃げるつもりか?ちょっと卑怯すぎやしませんかねぇ。


「今回は動く」

「何で動けるのよ!」

「貴様の様な格下の能力が私に通用するか馬鹿め」

「この、理不尽めっ……」


 逃げるのかと思ったが、そうではないのかこちらに近付いて来る。

 ひょっとして……私も連れ去って会場の外で私を殺すつもりか。


「一つ聞きたい。フミオ君とやらをどうして私が殺したと思ったの?」

「どうしてって、あのタメゴロウって人と話した時、フミオ君が貴女の手で元の世界へちゃんと帰ったって彼は言った。けど、彼は嘘をついていた……生きて帰ったのが嘘なら、きっと殺されたに違いないっ!……って」


 嘘をついていた、とな。

 ひょっとしたら、コイツは時を止める能力以外に嘘を見破れる能力もあるのかもしれない。


 にしてもタメゴロウとな。次から私もそう呼ぼう。


「とんだ勘違いだわ。私はフミオを殺してないし、ちゃんと生きたまま元の世界に帰したわよ」

「……嘘、ついてない!?じゃ、じゃああのタメゴロウって人は何の嘘を……いえ、そもそもどうしてフミオ君は元の世界に?……帰った所で居場所なんてないのにっ」


 その居場所云々はウチにいる天使のせいだが、黙っておこう。

 ともあれ言動から判断するにやはり嘘を見破れる力を持ってたか。


 時を止める力ってだけでもチート野郎だってのに贅沢な。

 それにしてもフミオの野郎も酷い言われ様である。


「そこまで想うほどの相手なの?フミオってのは」

「はぁ?……何で私がフミオ君何かを好きって話になるのよ。フミオ君なんてどうでもいいわ、けど……彼の持っていた叡智の書、あの能力だけは手放したくなかった……!」


 おや、どうやらフミオが好きだったから復讐を考えた訳では無かったらしい。

 お目当ては奴の持ってた能力か。


「エッチの書ってなに?」

『エロ本です』

「何だエロ本か。そんなのにご執心とはビッチめ」

「エロ本じゃないわよっ!!」


 そういや時間が止まってるってのも割かしエロ方面で活躍しそうな能力だよなぁ。


 後ろを振り向くと動かないミラ達……ほう。

 不安そうな顔でこちらを見ているミラのスカートをピラっと捲った。


「ウヒョー。ミラの奴、純白と思わせといて水色のおぱんつ穿いてるわ」

『貴き方が楽しそうで何よりです』

「犯行を見られていた、だと?」


 みみみに見られてるのは如何ともしがたいが、自由にパンツ見れるのは今だけだし……せめてナタリーちゃんのぱんつぐらいは見よう。

 ぱんつと言えばナタリーちゃんだからな。


「いやなに変態行為に走ってんのよ!」

「だって、ナタリーちゃんと言えばぱんつ事件だし……」

「だってって何よ!?意味わかんないからっ!」


 よし、ナタリーちゃんは純白だった。流石はぱんつの使徒ナタリーちゃんだ、分かってやがる。

 気が済んだ所で女勇者の処遇を決めるとしよう。


「みみみ、時間が止まってる状態を解除って出来る?」

『私は次元を自在に行き来していた元災厄ですよ?この程度の事象、解除するなど造作もありません』

「よろしい。私が合図したら解除する様に」

『御意に』


 なら後は女勇者を誘導するだけか。

 厄介そうな相手だと思ってたが、案外大した事無い奴だったな。

 そもそも私が時間停止中に動ける時点で脅威は無くなっていたのだが。


「カネシロとやら、貴女も一緒にどう?」

「やる訳ないでしょ……」

「けど、この場に居るのは王族貴族と言った滅多に会えない奴等よ?……チャンスは今だけなのに」

「何のチャンス……もう頭痛いわ」

「そんな興味ありませんってフリして……異世界人の能力って自分が求めてる能力が付与される確率が高いそうよ。って事は、貴女も時間止めてエロい事してたんでしょ?」


 今だ。


 みみみに合図して時間停止を解除してもらう。


『解除』


「そんな事するはずないでしょ!!」

「……それが貴女の答えですね。分かりました、我等が母たる世界よ、この者に天の裁きを――」

「え」


 そして私の時と同じく降ってくる光。

 ふーむ、こんな感じで降ってくんのか。正に光の柱だ。


 その光の柱の中で呆然としていた女勇者だが、世界からの言葉を聞いたのか天に向かって何事か叫ぼうとしてそのまま粒になっていきながら消え去った。

 消滅と言っていた。もはや魂すら消え去ったのだろう。

 終わってみれば雑魚だったな。


「ナイン皇国の勇者、カネシロサツキさんは天によって裁かれました。よって、今回の騒動の元凶はカネシロサツキと断定致します。所属国家であるナイン皇国の方々、身内の犯行です。あなた方はお咎めなし、とは行きませんよ」

「良かったねドンちゃん!」

「私達もホッとしました」

「ペドちゃんは相変わらず波乱万丈な人生歩んでるんだね……」


 無罪放免となったので悠々とミラ達の所へ戻る。

 帰る際に私に対してギャーギャー喚いていた奴等を睨むのも忘れない。

 案の定報復を恐れたのか青い顔になっていた。ざまぁ。


 特にナイン皇国の奴等はガックリと崩れ落ちている。もしかしたら食料の援助も無しかもしれん。

 だが知った事か。


 そして……もう一人の勇者である男。

 マリアが言うに「ったくしょーがねーなー」系勇者だが、奴はこちらを怪しむかの様に睨んでいる。

 タクショーの分際で睨んでんじゃねー。

 あの様子じゃ、あん畜生も何かしらちょっかい出してくるかもしれんな。


「みみみ。そういや、私って新たに祝福もらってたわよね?」

「はい」

「どんなの?世界が言うには素敵な能力らしいけど」

「召喚ですね。対象はランダムだそうで貴き方より格が同格までなら召喚可能みたいです」

「ほう」

「しかもこの星以外からの呼び寄せも可能だとか。個人で異世界召喚できるとは流石は貴き方」


 む、ランダムなら異世界人が来る可能性もあるのか。

 アルカディアをナイン皇国と同じ拉致国家にはしたくないしなぁ。


「ちなみに人間は召喚出来ないみたいです」


 じゃあ使ってもいいな。

 何が来るか分からんとか普通なら恐怖するが、みみみという生物兵器が居る以上ためらう必要はない。

 しかし召喚するにしても魔力とか代償とかあるのだろうか。


「どうしたのドンちゃん?」

「ミラのぱんつが水色なのってルリの分体が関係してるのかなって」

「何で知ってるの!?」


 顔を赤くしてスカートをぎゅっと抑えるミラは大変可愛らしいと思いました。

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