幼女は冒険者である
頭上から光が舞い降りるという無駄な演出が微妙な時間続く中、徐々にだが大精霊共の姿が見えてくる。
まあ姿と言うかシルエットなのだが……他の国の連中は拍手したり大声で声援を送ったりと割と盛り上がっているのだが、私は派手な演出をする奴はサヨ臭を感じるので何か白けている。
何もかもサヨが悪い。
それはともかく、ルリが分体で来てたからもしやと思ったが……影を見るにどいつもこいつも分体でやってきたみたいだ。
本来の姿を見せないのはこんなに人間が集まってる場で晒したくないからか。
「だ、大精霊様がこんなに集まるなんてドキドキだよね」
「別に」
「なあ、大精霊とやらと戦ってはいかんのか?」
「いかんでしょ」
ミラやナタリーちゃんはこんなイベントでも盛り上がれる派らしいが、ライチはいつも通りただのバトルジャンキーだった。
というか入場する時に争いはいかんとか言われなかったっけ?
聞き流してたけど確か言ってた気がする。
無駄な演出から1分ほど経つと大分光が薄れてきた。
そしてようやっと各大精霊共が姿を現す。
ルリはいつもの水の身体。
何か風っぽく浮いてて姿がぼやけてるのが多分風の大精霊。
土人が土で燃えてるのが火か……分かりやすいぞ大精霊。
後は……何か光ってていけ好かないのが光の大精霊。
根暗そうで何か仲良く出来そうなのが闇の大精霊ってとこか。
メジャーそうな奴ばっかだな……もっと珍しいタイプの大精霊はおらんのか。
「女性型が多いわね」
「相手を油断させるにはもってこいの性別だからだろ」
「ほう、戦闘狂が言うなら間違いないか」
「宴の席で油断させるとかどういう事なの……」
「宴のフリして人間の偉い連中を集めて始末する可能性もあるわ」
「ないよ」
まあルリや風の大精霊が私を誘ったぐらいだから無いだろうな。
逆に言えば加護持ちを誰一人呼ばなかったら怪しいという事になる。
「新顔で興味あるのは仲良くなれそうな闇の大精霊だけかね」
「平然とイロモノを選ぶのだなお前は」
「イロモノ呼ばわりはマズイですよっ」
「逆に光の奴はダメだ、ありゃいけ好かない」
「えぇ……凄く良い方そうだけど」
大精霊が良い奴そうとかアホな事をぬかしおる。
奴等の目を見ろ、どう見ても人間どもを歓迎してるとは言ってないぞ。
頭がお花畑なミラには分からんだろうが。
同じく何も分かってないアホな観客達を尻目に、中央に現れた一際偉そうな大精霊が一歩前に出た。
一人だけちゃんと人っぽい姿をしているから一番偉い奴なんだろうが、何の大精霊だろうか。
髪の色は緑、色だけで判断するなら風とかだろうが、すでに風の大精霊は居るし。
「各国の代表の皆様、この度は我等世界の僕たる大精霊達が開く宴にようこそお越しくださいました。私は始まりの大樹の大精霊……つまりこの世界で一番初めに生を受けた樹の精霊です。精霊側の代表としてご挨拶させて頂きます」
樹の精霊か。
他の属性と比べると雑魚っぽい感じがするが、始まりという言葉がつくと凄そうに聞こえる不思議。
エルフが守ってるらしい世界樹とは別物なのかね……
しかし自分でこの世界で一番のババアであると告白するとは恐れ入った。
「最初に生まれた樹か、一体何年生きておるのだろうな」
「何億か、下手すりゃ何兆歳じゃない?」
「ふむ、何兆歳とは何歳だろうか」
「何兆歳だろ馬鹿」
「ラ、ライチ様相手に平然と馬鹿とか言わないっ!」
「皆様、大精霊様のご挨拶の最中です。まずは静観致しましょう」
セシリアの言う通りだ。馬鹿に構ってないで3分くらいは静かにしといてやろうじゃないか。
ただし話を聞くとは言ってない。
私は目の前の食事を頂く。
この何の野菜だか分からない白い葉っぱが何とも美味だ。
歯応えはレタスようであり大根のようでもある。うむ、持ってかえってアルカディアでも生産しよう。
種があるのか知らんけど。
「さて、我々大精霊が開く宴の趣旨ですが……この場には知らない方もいらっしゃるかと思います。ですのでそれを先にご説明致しましょう」
「説明に関してはワシ達もするのじゃ。知っておるじゃろうが、宴を開くのは大体数百年に一度じゃ」
「何でその周期なのか、それは貴方達人間から精霊への有り難さが薄れる時期が大体その年月だから」
「現に妖精を乱獲しようと考えた人間も現れていた」
「妖精とてこの世界の子です。我等が母たる世界が悲しむ行為は許されない」
「勿論その様な方ばかりとは言いません。我等と同義である自然を愛している方々がいらっしゃるのも知っております」
「大まかに言いますと、宴の目的は人間の皆様に自然を愛し、精霊を敬う気持ちを忘れないで欲しいという事を各国の偉い立場の者に伝える為でしょうか」
妙に上から目線に感じる説明だこと。
要は精霊は偉いんだからテメェら平伏せよって言いたいんだろ?
残念なのはここに来てるお偉い連中が神妙に頷いている事だな。
自分達から立場が下だと認めるとかアホすぎる。
まあ生きている以上飢えからは逃げられんから仕方ないっちゃ仕方ないか。
「食べ物を必要としない生物に進化しないと人間は未来永劫精霊共より格下のままね」
「食事の楽しみが無くなるくらいなら妾は進化したくないぞ」
「私もよ」
他のアホ共と違って私は格上だろうからどうでもいい。
精霊側が私を敬うのだ。
後でルリの野郎に平伏させてやる。
「さて、此度は我々が皆様をもてなす機会です。堅苦しい挨拶はお終いにして、宴を楽しむと致しましょう」
「すでにお召し上がりになってる方々も多数いらっしゃる御様子……料理は十分な量をご用意してます。存分にご堪能ください」
「それでは様式美として僭越ながら私が乾杯の音頭を取らせて頂きます」
すでに散々食ってるのに乾杯すんのか。
いや待てよ、ばかすか食ってるのってひょっとして私達だけ?
違うか、多数って言ってたし。
「それでは皆様、殺戮の宴へようこそ」
という乾杯の音頭と同時に会場を囲む様に降り立つ者達がいる。
配置的に誰も逃がさんって事だろう。
というかやっぱり殺戮の宴じゃないか。
ちなみに今の声は大精霊達ではない。
邪魔された大精霊共は表情を変え、険しい目で周囲を見渡している。
ふむ、この様子では完全に招かれざる客みたいだ。
「折角災厄が荒らしてくれた世界、精霊の力であっさり元通りとはつまらないでしょう?」
「……よその大陸の人間ですか」
「ご明察。私達は海を越え別の大陸よりやってきた天使……ま、私達の事などどうでもいいですね」
何かヒラヒラした説明しにくい格好をした変な女が言うには天使だそうだ。
という事は、全部で何人いるか知らんがこの会場に現れた数十人は天使のチート集団という事か。
「ち、私とした事が失念していたわ。こんな偉い連中ばっか集まる場に悪党が襲撃をかけるのはお約束じゃない」
「妙に自信満々の連中だが、何だアイツ等は」
「異世界人みたいに妙な能力持った連中よ」
「ほう、それは面白そうな奴等だ」
そう思うのは戦闘馬鹿のライチだけだ。
しかし……この状況についていけない思考回路の鈍い奴等がちらほらと。
これが国の偉い立場の人間と言うから笑える。
「わぁ、何か殺伐としたイベントだねドンちゃん」
「お前もかよ」
「え?」
やはりミラはお花畑だった。
大精霊共のあの様子を見てなぜイベントだと思ったし。
うーむ、この様子では誰か犠牲になってもらわんと話にならん。
「そこの下賎な者達、各国にとって大事な場での狼藉は許しません。即刻出て行きなさい」
「あらあら」
あれは……ケバいおばはん!略してケバはんじゃないか!
自ら死地へ行ってくれるとは、意外と良い奴じゃないか!
いや待って欲しい。アイツは私の獲物筆頭じゃなかったっけか。
いかん、このままでは天使のクソ共に獲物が取られてしまう。
「聞こえているでしょう、さっさと――」
「聞く耳持ちませんので死んでくださいね」
天使の女がスッと手を横にふると同時にケバはんの首がすっ飛んだ。
遅かったか……まあいいや。ケバはんだし。
ケバはんの犠牲のお陰でやっとこさ状況が飲み込めたアホ共が騒ぎだして喧しいことこの上ない。
「ひいいぃぃぃぃっ!?これイベントじゃないよっ、殺戮の宴だよドンちゃん!?」
「路傍の石のフリしてればへーきへーき」
「そんな、カリーナ様……」
別にケバはんが死んだってどうでもいいじゃん、とは言わない。
セシリアは良い奴だから何だかんだケバはんの事は嫌いではなかったんだろう。
「犠牲が出て初めて事態を把握する……そんな体たらくでは私達に蹂躙されるだけで終わりですよ?」
「良い度胸です。いいでしょう、我々大精霊が相手に……?」
「流石にこの世界の僕が多数相手ですと厄介ですので、封じさせて頂きます。なに、殺しはしませんよ。私達の目的はこの場にいる王族、並びに貴族連中の首のみ」
ステージで固まってた大精霊共は揃って結界っぽい何かに包まれた。
苦しげな様子を見る限りでは力を奪われているらしい。
でもアイツ等って分体ばっかだろ?本体で反撃すりゃいいんじゃないかと私は思う。
てかあっさりやられるとか大精霊だらしねぇな。
まあ天使の奴等が何の対策も無しに来るとは思わんけど。
にしても王族や貴族連中の首を狙って何になるのか。
世の中が混乱するのは分かるが……
「ちなみに、サード帝国の皇帝様は生かして帰させて頂きます。今回殺戮を凶行した首謀者として、ですが」
そういう事か。
この場で起きた殺戮をライチの罪にするつもりか。
すでに大陸全てに宣戦布告してるライチだ、誰もがライチの仕業と思っても仕方なかろう。
て事はだ、大精霊共に真相を証言されても困るのでそのまま帰らせる気はないと。
ただ大精霊なだけあって消滅させたらマズイ事になるので殺す気はない……ならばどうするか。答えは封印し続けるか操るか。
あの様子では封印し続けるのが本命だが、大精霊を操ることが出来る方法があるとも思える。
とまあ分析が済んだ所で自分の事を考えるか。
ライチ以外は殺すってんだから私も標的に入ってるっぽいし。
「そこまでだ!それ以上の狼藉、この俺が許さない!」
「また身の程知らずが来ましたか」
誰だアイツ。
知っているかとライチやミラに尋ねてみたが、やっぱり知らないらしい。
「俺はナイン皇国の勇者コウキ!この聖剣で殺されたくなければ大人しく去れ!」
「はあ」
ああ、あれが勇者の一人か。
黒髪じゃないから気付かなかったわ。皆が皆黒い髪してる訳じゃないんだな。
ちなみに茶髪である。
マリアの情報通りに都合よく扱われてこの世界の為に命を捨ててくれるらしい。
何であんなに強気になれるのか……
てかケバはんが殺されたってのに大人しく見逃すとか馬鹿決定である。
「いいか、俺はこの手で災厄を倒した。貴様達が勝てる相手ではない」
「それはそれは」
…………。
おお、災厄を倒したのか。
そんな英雄が出てきたなら安心だ。ふ、勝ったな。
「おい、フィーリア。あいつ堂々と嘘ついたぞ」
「事実かもしれない」
「いや妾は見ておったからな?……というか上空からの怒気の方がヤバイな」
災厄本人であるみみみとしては、雑魚っぽい奴に自分を倒したと豪語されたのが屈辱なのだろう。
本当に災厄を倒す実力があるのなら天使の連中くらいあっさりやってくれる筈だ。生暖かい目で見守ろうじゃないか。
「ふー、危うく馬鹿な熱血漢に巻き込まれる所だった」
「よく逃げて来られたわね」
「誰だそやつは」
「この男はダイゴロウ。皇竜に認められ、その身に皇竜の力を宿した唯一の男。ダイゴロウの剣から放たれる皇竜列斬波はあのアトロノモスにかすり傷を負わせる程よ」
「何か大した事ない奴だな」
「変な設定付けるのやめて!?」
実際の所は黒竜を一撃必殺できるのであの勇者よりかは遥かに上だ。
残念ながらあの勇者はかませ犬臭がハンパないので間違いなくあっけなくやられる。
「やれやれ、馬鹿と遊んでいる暇はありません。ゼム、片付けといて下さい」
「け、こんな雑魚が相手かよ。まーいいや、了解っと」
「一番厄介なのはサード帝国の皇帝でしょう。情報通りなら手強い相手、私もそちらに回ります」
ライチのせいで一番偉そうなのがこっちに来るそうだ。
馬鹿じゃないのか一人で戦うなんて真似はしないようで、何人かこちらに向かってくる。
……天使ってのは手を組んで行動する様な奴等だっけか。
向こうじゃ戦ってばっかってイメージがあるからこんな数の天使が手を組むとは考えられん。
もしかしたら、向こうの大陸で天使共を統一した奴が現れたのかもしれない。
そんな事を考えていたら不意に身体が浮き、誰かに抱きかかえられる。
この場でそんな事をするのは一人だけ。
ちらっと顔を見れば案の定ミラである。
自分は恐怖しているくせに私を守るつもりらしい。
「相変わらず危険な時だけ私を幼女扱いするわねミラは」
「ひ、ひいぃぃぃ……」
聞いちゃいない。
無意識の内に私を守ろうとしたのか、天使共が近付く度に強く抱きしめられてちと苦しい。
「流石に苦しいわアホ」
「へ、ご、ごめんね」
「ま、この私がどんな奴か知ってて守ろうとする姿勢は嫌いじゃないわ」
みみみに任せればどうとでもなるのだが……こうして身を挺して私を守ろうとするお馬鹿さんが居る事だし、ここは一つカッコいい所を見せてやるか。
どうにも……奴等を見てるとまるで負ける気がしないし。
「ミラは今いくら持ってんの?」
「なに急に……えっと、帰りにお菓子買って帰ろうと思ってたから3000ポッケかな?」
「相変わらず庶民的だな王族」
「でも無理だよ、3000ポッケ程度じゃ見逃してくれそうにない相手だよ……」
「当たり前だろ」
そんなはした金で命を助けてくれる殺人鬼がいたら見てみたいわ。
「ところでミラ、私はアルカディア女王である前に冒険者なんだけど」
「え、だから?」
「察しが悪いわね。その3000ポッケというみみっちい額で依頼を受けてもいいわよ。この場に居る天使共を皆殺しにしてあげる」
破格の依頼額だと言うのにミラは難しい顔だ。
別に裏とかないんだけど。
「あのねドンちゃん。相手は頭おかしい人達だよ?いくらドンちゃんも頭おかしいからってそんなお願い出来ないよ」
「何で間に毒を吐く。安心なさい、奴等程度なら余裕で倒せるわ」
「……本当に?ドンちゃんだから本当に倒せそうだけど、絶対に勝てる?」
「むしろ敗北を知りたい」
「大口叩いてる場合じゃないんだよっ!」
ミラの心配など無用である。
別に奇跡ぱわーを使わずとも、奴等を皆殺しにする事など容易い。
自分の小さい手を見つめる。
こんな手で天使を殺せるなど不可能に思えるだろう、普通なら。
だってのに頭に浮かぶのは楽々と天使をぶち殺していく自分の姿。
ま、察しの良い私は大体想像がついている。
『そして、天使殺しなんて呼ばれてるの』
『肉体を失いつつある貴女を元に戻すにはきっと私か先代のどちらかの身体を犠牲すると思うの』
『まぁ待ちなさい。何も悪い話じゃないわ。別に人間から魔物になるって話じゃない……ただ、妙なパワーアップするかもって話よ。勘だけど』
天使に対して妙に強気になれる心当たりなど、あれしか思い浮かばない。
奇跡ぱわーが無駄な強化をもたらしていたのならば、きっとこれなのだろう。
別になんて事はない。奇跡ぱわーを継承した二代目だけではなく、天使殺しとしても二代目になった。ただそれだけだ。
マリア相手にはそんな風になった事はないのだが、それは味方だからか。
その辺はどうでもいいか。
「この場で私に依頼出来るのはミラだけよ。というかミラ以外の頼みなど聞かん。貴女が私に頼まないのなら、私はさっさと帰る」
「う、うー、本当に大丈夫?絶対に勝てる?命賭ける?」
「子供か。というか私が死んだらミラ達も死ぬわ」
「そ、そうだった。じゃ、じゃあ……ごめんね、お願いするよ」
ここでダメだ、友達だけを戦わせられないなどと馬鹿な事は言わないのがミラだ。
そんな偽善で語る馬鹿を友にした覚えはない。
やはりミラの事は嫌いではない。
「依頼成立ね。後は任せなさい」
「うん……」
「ところでライチはどうすんの?」
「む、お前が出るのなら妾は大人しく見物しておくぞ」
珍しい……戦闘狂のくせに。
だがそれなら有り難い。ここの護衛はライチとダイゴロウに任せるとしよう。
ナタリーちゃんとセシリアの二人はもう事態についていけないのかただだんまりである。
静かでよろしい。
さてどいつから始末するか、雑魚から狩る必要もないしやっぱあの一番偉そうな女からやるか。
丁度こっちに向かってきたし。
ミラから降りてとことこと近寄る。
偉そうな奴が眉を顰めるが特に何か勘付いた様子はない。どうやら敵にはただの幼女にしか見えないようだ。
「可愛らしいお嬢さん。頭の悪い行動は子供の特権ですが、こわぁい大人に近付くなと両親に教わらなかったのですか」
「怖くない大人ならいいんでしょ」
「ふふふ、そうですね。怖くありませんからこっちに」
お望み通り行ってやった。
いつぞやの先代の力を借りた時ぐらいか、それ以上の速さで動けた。
ちょっと勢いよすぎて右足を吹き飛ばしてしまったが、殺す相手だしいいか。
予想外の事態に偉そうな女は体勢を崩して倒れこむ。
幼女の目線で丁度良い高さに顔が来たところでぶん殴った。
予定では顔面を吹き飛ばす筈だったが、流石は天使のボス、かろうじて避けて右腕が吹き飛ぶだけに終わる。
「ぃ、あぁ……な、何、こいつ」
「二代目天使殺し」
「天使、殺し……なぜその忌み名を貴女が」
「そっちの大陸では未だに有名みたいね。けどどうでもいいでしょ、死ぬんだから」
「ぎぃ、私の、力が通用しないなど!……続いてたのですか、あの忌まわしい存在の血筋、が。海を越えた大陸で……!」
力が通用しないとか言ってるけど、何かされたっけか。
分からん。
分からんなら大した力じゃないんだろうな。うむ、気にしない。
「指揮官から殺す。よし、セオリー通りだわ」
私を前にして天使殺しに対して考えてる馬鹿の顔面をぶん殴って吹き飛ばした。
というか顔面だけ飛んでった。いや飛んでったというか……なんか顔面が飛び散った。グロい。
ここまでパワーアップするのか、すげぇな。ただし天使に対してだけ。
一部始終を見ていた天使共は私がヤバイ奴だと判断した様で集中して攻撃する様に各方面から集合している。
向こうから集まってくれるとは有り難い。
「みみみ」
「お側に。貴き方のご活躍、拝見致しました」
「ヨイショはいい。入り口側の奴等は遠いから貴女に任せるわ」
「一人残らず始末致しましょう」
では、私はその辺の連中を狩るとしよう。
あれ、そういやナイン皇国の勇者ってどうなったんだ?




