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幼女、一ヶ月ぶりに国に戻る

「おお……貴き方、元にお戻りになられたとは喜ばしい事です」

「ふむ」


 誰だコイツ。


 ユキ達に迎えに来いと連絡した途端に現れた謎の美女。

 全く記憶にないので理性が無かった時に何かしらあったのだろうか。


「私、貴き方に新たな道を授けて頂いた元災厄でございます」

「マジか」

「はい。何でこの様な姿になったかは不明ですけど」


 不明ではないだろう。

 あの時、私は災厄を全て反転させたのだ。誰もが認める不細工男のユキオの容姿が反転したんだから誰もが認める美女になっても不思議ではない。

 まぁ実際は容姿の反転なんざ考えてなかったからこれも奇跡ぱわーの余計な効果なんだろうけど。


「なるほど、理解致しました。元々意識体だった私がこうして元に戻らない肉体になっているのもそれが原因でしたか」

「そういう事ね。で、何でその元災厄がここに居んのよ」

「何を仰いますか。私の生は貴き方に従う為にあるようなモノです。あのまま消滅なされていればそのまま貴き方のお願いを聞き届けておりましたが、生きておられるとなれば話は別です。今後は誠心誠意お仕えさせて頂きます」


 我が国に災厄が二匹に増えると申したか。もはや過剰戦力って話じゃねぇ。

 でも良く考えなくても悪い話じゃないな。

 何かしらんが服従してるし。それにニボシと違って何でも命令を遂行してくれそうだ。


「まぁいいわ、最近はホイホイ新たな仲間が増えてる状態だし、災厄一匹くらい増えても問題ないわ」

「有難き幸せでございます」


 それにしても謎の忠誠心である。


「ユキちゃん達が迎えに来たわよー?」

「わかったわ」


 皆で来たのか?


 と思ったが、どうやら迎えに来たのはユキとマオだけらしい。どうしてそんな人選になったのか不明だがまぁいいや。

 さて、気分的にはそうでもないが久しぶりの我が国に戻るとしようか。



★★★★★★★★★★



「外が騒がしい」


 神殿に戻っての第一声がコレである。

 窓から外を見れば以前は考えられなかった人の多さが目に映る。


「アルカディアに庇護を求めてやってきたペド教の信者達です」

「ついに来おったか」

「ほぅ、貴き方を信仰する者共ですか。良い事です」


 良くねぇよ。

 ペド野郎の集まりだぞ?要は性犯罪者の集団じゃないか。

 国が穢れる。


 ニボシの居る広間とか信者で埋まってんじゃないかと思ったが、予想に反して静かそうだった。

 まだ中には入れてないらしいな。よろしい。


 扉を開いて中に入ると飽きもせず同じ場所にニボシが鎮座している。

 久しぶりな筈だが、何とも意外な事に飛び掛って来なかった。


 ふと前が暗くなったと思ったら元災厄が私を庇う様に前に出てきた。

 そういや同じ災厄同士か。


「……」

「ですー」

「災・厄・消・滅!!」

「ふしゃああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!」

「お前等だまれ」


 人外中の人外がこんな所で暴れんな。


「はっ!?……申し訳ございません。貴き方の願いを聞き届ける為に思わず排除しようとしてしまいました」

「我がお前程度にやられる訳がないのですっ!」

「そういえば災厄同士でしたね。災厄を二体も人型にしてしまったお母さんとしてはどう思いますか?」

「敵じゃなけりゃいいじゃない」


 元災厄から興味が逸れたニボシは今度は私を胡散臭そうに見てくる。

 何だその目は、私は偽者のペドちゃんではないぞ?


「お前という奴は……どこまで人の身をやめていくつもりなのです?」

「何だと」

「もうお前の加護は加護なんてもんじゃないのです。溺愛を通り越して病んでいるのです」

「なんと、知らぬ間に加護が強化されたと申したか」


 この世界の加護……でも考えたらあろうがなかろうが日常生活に支障はないしどうでもいいな。


「よくないのですっ!ひょっとしたら今後お前が怪我したり泣いたりする度に共鳴した世界によって大災害に見舞われてもおかしくないのです」

「お姉ちゃんが歩く災害にっ!」

「それを私に言われてもなー」

「まぁそうなのですが……って、何で我がこの世界の事を案じなければならないのですっ!」


 ふむぅ、やはり今回の災厄の件のせいで強化されたのだろうか。

 でも別に倒しちゃいないんだけどなぁ。


「倒してないからこそなのです。星々の為にただただ湧き出る悪意を掃除する為だけに存在するソイツをこの世界、いえあらゆる星々は感謝と懺悔を捧げ続けていたのです。それを消滅させずに救済しやがったのですからお前に対する星々の評価は鰻登りなのですよ」

「星々とかスケールでかいわね」

「私はそんなにも星々に気にかけられていたのですか……有難い事です」


 他人、今回の場合は星らしいが、知らん奴の評価なんざアテにならんからやっぱどうでもいいな。

 そんなもん気にするくらいならヒノモトの美味い飯が食えない事を気にするっちゅーに。


「ニボシとの再会に時間かけてる場合じゃないの、私の食事事情が関わってるんだから急いで愉快な仲間達を招集しないと」

「帰って早々忙しない奴なのです」


 招集するより居間に行った方が早いんじゃね?

 と思い立ったのでこっちから移動する事にした。


 後ろからニボシもついて来ているようだ。やはり久しぶりなので構って欲しいのか、愛い奴よ。


「事情は聞いているのですが、平行世界の自分に助けられたとかどんな展開なのです」

「ふ、それほどまでにこの私が必要だって事よ」

「平行世界と異世界って別物なんですか?」

「ほぅ、マオも良い質問する様になったわね」

「言葉どおりです。この世界から枝分かれした未来や過去が平行世界。異なる世界が異世界と呼べるのではないでしょうか」


 と、元災厄は申しているが、ヨーコ達が居た異世界とやらは私達が住む世界と星自体は一緒だと思われる。

 果たしてそれは異世界と呼べるのだろうか。


 それはともかく全く理解してなさそうな悪魔が一人。アホだもんな。


「簡単に言ってやるのです。お前等が同じ様に存在していて、違う形でそれぞれ生きているのが平行世界なのです。異世界とは言葉通り世界そのものが違うのです。例え同じ星であろうが、世界が違うのですからそこに住む塵芥だって違うのです」

「んぁー?」

「ダメだわ。この悪魔は理解する事を放棄している」

「世界そのものが違う。つまりお母さんが世界とするなら容姿が違っていようが魔法が使えたりしようが性格が同じくゲスであればそれは平行世界という事、しかしお母さんが真面目で人に優しく慈愛に満ちた存在、要するに中身が全く違う別人だったとしたらそれは異世界という事でしょう」


 なぜ私を例えに出したのだと。

 なぜニボシは今の説明にウンウンと頷くのだと。


「おや、マオさんはまだ良く分かってないご様子。そうですね……私が考えるに平行世界とは今と違う可能性に満ちた世界だと思うのです。もしかしたら大人の姿になったお母さんが居るかもしれません。大人の姿のお母さん……それならば交配だって可能!!そうなると私だって奇跡ぱわーではなく、人と同じく生れ落ちていた可能性もあります!」

「はぁ」

「つまり、お母さんは私のお母さんになってくれたかもしれないという事です!」

「ちょっと何言ってるかわからないです」

「この変態は説明するほどややこしくなるのですっ!」


 全くだ。

 まぁ異世界だの平行世界だのの話は後で頭の良い連中に説明してもらうといい。今回は人選がダメだったのだ。


「まぁ私を助けた別世界の私が居た場所が平行世界で、ヨーコ達が居た世界が異世界って事よ」

「ふむ、同じ星だと言うのにややこしい事です」


 私としてはお前の説明の方がややこしいと思う。


「では皆様がダラけつつも心待ちにしていますしリビングに行きましょう」

「ダラけてんのかよ」

「はい。マオさんなんか3キロも太りました」

「い、言わなくてもいいじゃないですかっ!?」


 デブったのか……しかし太ももに座る身としてはふかふかになってる方が有難い。

 デブった事は不問にしてやろう。


「デブってません!」

「確かに太りましたがマオさんはまだ標準の範疇に入ってます」

「さよか」


 そうこうグダってる内にリビングの前に到着した。

 さてさて、どれだけダラけてるか見させてもらうとしよう。




「おお、お帰り酔っ払い」

「マジでダラけてやがるわねこのマリアは」


 以外にもダラけてるのはマリアだけだった。

 他の奴等は本を読んだりとダラけてると言うよりは休んでいた。


 しかしマリアの事だから冒険者してくる!とか叫びながら依頼受けまくってると思ったが……


「リーダーが正気に戻るまで派手な行動はしない様にしてたのよ。という訳で褒めなさいよ」

「地味な依頼でも受けてろよ」

「そんなつまんない事してどうすんのよ」


 金でも稼げよ。ウチが現在貧乏だって事知ってるだろうに。


「ダラけてるのは許しましょう。これからヒノモトに行って働いてもらうしね」

「帰って早々気がお早いですねフィーリア様は。意識が無かったここ一ヶ月で様々な動きがありましたのでご報告くらいは聞いて下さいませ」

「ほぅ、面白そうなのだけ聞かせてちょーだい」


 というかキキョウもアンも何リビングで寛いでるんだろう。仕事しろ。


「ではまず大きな出来事から」

「世界規模の食料難とか省いていいから」

「かしこまりました。ではまず一つ目、フォース王国が滅亡しました」


 なんと。

 大国の一つが私の生きてる時代で滅びたと申したか。


「災厄の影響で凶暴化した実験体達によって城は崩壊、恐らく王族、研究員は全て殺された事でしょう」

「私達は実験体達が反旗を翻したのは見てましたが、こんなに面白い事になるとは思いませんでしたね」

「で、今は実験体共が支配していると?」

「いえ、厄介な事にやる事を済ました実験体達は散り散りになって何処ぞへと向かいました。フォース王国は誰かしらが王座につき新たな国になるんじゃないでしょうか」


 クソ女ことニーナみたいな奴がそこらじゅうに居んのかよ……大人しくフォース王国でも支配してりゃいいのに。


「では次の報告です。トゥース王国がサード帝国に勝つという衝撃の事態が起こりました」

「ああそう……ライチ達が加勢した筈だしね、まぁ当然でしょう」

「事情を知ってる私達はともかく、他国からしたら有り得ないって感じでしょう」

「この件でトゥース王国は大国としての発言権はかなり上がったでしょうね」


 なるほど、他所の国はライチ達の事を知らないのか。

 トゥース王国となると間諜の必要も無さそうだしそのお陰で評価が上がったって事だ。

 まぁ知られたら知られたでサード帝国と繋がりあるとか疑われそうだし結果オーライだな。


「後は……どうでもいい情報として、とある国の貴族が処女を対価に食べ物と交換するとか抜かす事案が出てきましたね」

「セックス王国の事か」

「言っちゃったよ!というかシックス王国よリーダー」

「まぁ合ってるんですがね。ただこのご時勢ですからそれなりの数の乙女達が処女を散らせてるみたいですよ」

「疑問なのはシックス王国が何故にそんなに食料を溜め込んでるのかって事ですね」


 私達と一緒の事をしたんだろ。

 亜空間魔法を使えなくとも収納出来る魔道具ぐらい出回ってるだろう。


「ちなみに買い手が大満足する程の美少女の処女を捧げると幻の生物を貰えるとか何とか」

「幻の生物?」

「その名もコケトリシュ。卵一つだけで数十万、下手したら百万ポッケを超える値で取引されるまさに高額商品です」

「へぇ、コカトリスとか聞いた事ある名前ね」

「いえコケトリシュです。ちなみに名付け親が発表時に名前を噛んでしまったらしいのですが、本人がそれをかたくなに否定したのでコケトリシュで最終的に決定されたとか」


 本来ならコケトリスだったそうな。結局パクりじゃねぇか。


「コケと言うくらいだしニワトリなのね」

「はい」


 ふむ……幻か。

 卵一つがそこまでお高いのなら味にかなり期待出来るのかもしれない。


「サヨ」

「嫌です」


 まだ何も言ってない。

 まぁ話の流れで何を言われるかは分かるわな。


「まぁ聞きなさい、サヨ」

「はぁ」

「貴女の股間は腐ってる」

「腐ってませんよ失礼な」

「そうね、腐ってはいないわね。けど待ってちょーだい、私の考えなんだけど、処女の価値が高いと言えるのは十代から二十代前半まで、対して貴女は数百年を超える年代モノ。あえて断言しましょう……貴女の股間は期限が切れている」

「何もしてないのに何でそこまで言われなきゃならんのでしょうか」

「と言いますか、相手が大満足するのが前提ですからね。姉さんのババシャツに萎えて望みの食材は貰えない可能性があるかと」


 相手が大満足なんてあっちの匙加減だしな。

 仮に大満足させてもあっちが満足してないと言えばそれまでだ。


「絶対に文句を言わせない者と言えば……ヒメかな」

「ふぅむ……たかがニワトリにヒメは勿体無い様な」

「言ってみただけよ。10億の価値があるヒメの一度限りの処女ではそもそも釣り合ってないわ」

「……つまり姉さんの処女の価値は」

「お黙りなさいな」


 というかシックス王国なんぞに関わる気はない。

 本当に欲しくなったら奇跡ぱわーにでも願えばいいしな。


「で、報告ってのはそれくらい?」

「ではお姉様に私からも一つ。現在の食糧難に伴って奴隷の値段が割りと暴落しております。新たに補充するつもりならば今がチャンスかもしれませんよ」

「奴隷か。維持費がかかるものね……」

「いえ、そもそも食料がほとんど売られていないので維持費云々以前の問題です」


 おやまぁ……


 ちなみに何でここまで出回ってないかと言うと、野菜に関しては農家が傷がついた野菜は売りに出す気はないというプライド……を体のいい理由にして自分達の分に回してる奴等が多いから。

 肉に関してはランクの高い魔物が食料を求めて各国の近くまで降りてきているので狩りにも行けないのだと。


「てな訳で今冒険者ギルドに行くと面倒な依頼を受けさせられるかもしれません」

「あんたらなら楽勝だから受けりゃいいじゃない」

「一度受けたらあれもこれもと押し付けられるじゃないですか」


 そりゃ面倒だ。

 ドラゴン一匹でも結構な食料になると思うが、流石に国の住民の数の分を考えるとかなり量が必要となる。


「こりゃ妖精と共に暮らすと評判の我が国は妙な期待されそうね」

「実際にウチをあてにしようと考えてる国がゴロゴロとありますよ。女王の体調不良を理由に全て拒否の返事を返していますがね」

「今後も全て拒否しときなさい。妖精をあてにしたいならまず自分の国に隠れ住んでる妖精とでも仲良くなってろ。あと奴隷については……まぁ金もないし保留ね」


 これで聞くべき事は聞いたな。

 残りは別に聞く必要もない情報だろう。ならば――


「ヒノモトに行くわよ。正確にはヒノモトの城に直接出向くわ」

「またそんな非常識な……アポも取ってませんのに」

「小国相手なんだし必要ないわよ」

「有るでしょう、普通に」


 私的にアポが必要なのは格上の相手だけだ。

 この私が治める国より格上な国など存在しない。つまり突撃訪問で何も問題なし。


「そもそも向こうにだけメリットのある提案をしに行くのよ?感謝はされても文句を言われる筋合いはないわ」

「流石は暴君じゃの」

「門前払いされるのが目に見えてますが」

「安心しなさい。城門前じゃなく、謁見の間に直接転移すればいい」

「攻撃されなきゃいいですね」


 そうなったら頼もしい君達が蹴散らしてくれるのだろう?

 相手がビビった所で交渉に持ち込む。うむ、完璧だ。


「やはり酔っ払いの後遺症で脳が」

「うむ」


 聞こえてるぞ馬鹿共。

 何を言われようと私の決定は絶対だ。


 今の私は、冒険と未知の食事に飢えている!

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