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幼女と呪いの単語

 旅立ちを決意した私は早速黒を基調としたフリフリの服、いわゆるゴスロリに着替えた。

 何故黒かと言えば14の時にグレてからは黒を好む様になったからだ


 昔は私も白やピンクといった可愛い色の服を着てたものだ。中等部に上がっても伸びない身長も大人になればきっと…そう信じて疑わなかった純粋だったあの頃


 14歳の時、近所の優しいお姉さんが全てに絶望した様な顔でフラフラ歩いていた

 いつもニコニコ笑顔のお姉さんとは思えない表情に大して親しくないのだが思わず声をかけた


 これが私の人生が大きく狂った瞬間だろう


私は「大丈夫ですか?」と声をかけるが、余程ショックな事があったのか全く私に気付かない。何度も声をかけ続けてようやく気付いたのか、死んだ魚の様な目をしたお姉さんは私をじぃーっと見た


 そしてニヤリと笑った


 とてつもない悪寒がした。早く逃げないと大変な事になる!

 しかしいつの間にか両肩を押さえられてた私は逃げる事は不可能だった


「…フィーリアさん家の子だよね?」

「は、はい…」

「世界って…理不尽だよね?」

「はぁ…」


 なに言ってんだこの人と思った。そんな事より両肩を離して欲しかった。爪がめり込んでちょー痛かったのだ。恐怖も合わさって倍増したあの痛みは忘れられない


「見て…この辞書」


 そう言って肩にかけるタイプのバッグから取り出して見せてきたのは『異世界総辞書』という辞書。そんな事より辞書を取り出した事によって両肩が解放されたというのに痛みが引かないから全く集中出来ない。

 しかし、聞いてあげないとキレそうだから聞いてあげる事にした


 その辞書は嘘か真か、遥か昔に異世界からやってきた人間が作成した辞書らしい

 昔は全て大雑把に名前を呼んでいた為、その異世界人が物から人種に至るまで一つ一つに名前をつけて区別したとか


 例えば昔は耳が長いから『長耳族』と呼んでいた種族を『エルフ』と命名した


 何でエルフという名前になったか分からないが、エルフ=長耳族と定着してるからいいか


 で、その辞書のあるページを開いたお姉さんが私に見せてきた


「ここ見て」


 逃げてもいいが、後で面倒な事になるのもいやなので渋々指された単語をみた


『ソープ』


 お姉さんが頼んでもいないのに勝手に言い出した説明は聞き流してたのであんまり覚えてないが、何というか…娼婦みたいな事を表す単語らしかった


「私の名前知ってるよね?言ってみてよ…というか言え」



「ソ、ソープお姉さん…」


 そう、このお姉さん名前がソープというのだ。てっきり名前のせいで苛められたりしたのかと思ったのだが、事は思いの外深刻だった


「私は娼婦として王都で働かなければいけなくなったの…親の借金で…。いきなり母は私に貴女はソープ嬢になれって!初めはいきなり自分の名前言われて何なの?って思ったけど、どうも名前を言ってる様子じゃなかったからね…ついさっき辞書で調べてわかったわ…そして調べた事に後悔した…」

 ソープお姉さんは鬼の形相で語る。固く握りしめた拳を見れば如何に憤慨してるかは一目瞭然だ。恐らく頭の中は親への怒りの言葉で埋めつくされてるだろう

 とりあえず顔見知り程度の相手の不幸話より友達と遊びに行きたかった当時の私は、さっさと解放されたいので適当に慰めて早く立ち去るべく口を開いた


「ソープのお姉さん」

「"の"って付けるんじゃねぇよクソガキがっ!!」


 めっちゃビビった。普段のお姉さんを知ってる分より恐ろしかった。ぶっちゃけ半泣きだった。


「くはは…これは呪いよ…こんな名前をつけられた日に私の運命は決まってたのよ…」


 呪いときたか。たまたまソープという名前をつけられてたまたま娼婦になっただけだと思うが。被害妄想って凄い。可哀想とは思ったけど…



「ペド・フィーリアちゃん」



 ゾッとした。フルネームで呼ばれた瞬間にこの女から逃げろと本能が訴えてくる。 見ればお姉さん…いや、ソープ嬢は悪魔の笑みを浮かべて新たなページを開いていた


 やめろっ!私にそんなの見せるなっ!



「見て…ペドちゃん…ペド・フィーリアちゃん…確か、もう14才のハズだよね?なのに幼女にしか見えないのって…ひょっとして」



 そして悪魔が私に見せてきた一言。たった一言で私の人生を決めつけられた気がした。



 私の名前に類似した呪いの単語…その意味まで知った時、私は絶望した







「思い出したら鬱になってきた」

「大丈夫ですか?ご主人様」


 このご主人様発言したのが私のメイドのユキだ。やたら心配そうに見つめてくるので「大丈夫。問題ない」と言っておいた

 ユキは私至上主義らしく、私の命令ならほとんど遂行する。何故全てではなくほとんどかと言うと


「ユキ、いつも傍にいられても何だし…たまには離れて」

「嫌です」


 こういう事だ。ユキは私に依存しすぎている。だが好かれる事に悪い気はしないため放っておいてる


「ペドちゃん準備できたー?」


 おっと、母が急かしてきた。そんなに早く追い出したいのか。

 服を着替えて、あと冒険に必要な物は…特に必要なものとか無いなぁ…すでにユキが用意してると思うし


「よし、準備おっけー」

「いやいや、どこらへんがおっけーなのよ」

「え?ちゃんと着替えたけど…」

「着替えるだけで準備よしとか何処に冒険するのよ。町中で買い物するのと一緒にしないでちょーだい」

「大丈夫。きっとユキが私の分までちゃんと準備してくれてるわ」


 そこで何かに気付いた様な顔になる我が母。嫌な予感がする…いや、嫌な予感しかしない



「言い忘れてたけど、冒険しにいくのはペドちゃんだけよ?頑張って一人で稼ぎなさい」

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