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幼女、故郷に降りた災厄を放置してカニを食べる

「うーん、やっぱりボクの影響を受けてないね。この町一帯だけ何らかの力で弾かれてる」


 気になる場所は他にもあるけど、順番に回っていくことにした。

 最初の場所ってのがここだ。


 災厄であるボクが近付くだけで負の感情を増幅させる影響がある筈なのだが、おかしな事に一部の箇所で力を反射されてるのを感じた。それがここだ。

 ハッキリ言って何の変哲もない町だと思う。こんな町がボクの影響を弾くとは不思議でならない。


 他所じゃ嵐だ戦争だなんだと騒いでるってのに暢気で平和な町だな。

 負の感情を餌にするボクにとっては居心地が悪いことこの上ないね。


「妙な気配を放ってる場所に行くのが一番手っ取り早いかな」


 て事でこのおかしな現象を起こしている元凶が近くにいる筈の場所にやってきている訳なんだけど……


「おかしいな……あの塵芥が一番怪しい筈なんだけど」


 どう見てもただの塵芥だ。その辺の塵芥と同じ様に何の脅威も感じない。

 ただ気になる点もある。


 ボクが降り立った場所、あそこに居た薄気味悪い小さな塵芥にどこなく似ている。

 髪の色、顔だけでの判断だが……仮にアレの血縁者ならば元凶であってもおかしくない。


「アレの母親か何かかな」


 だとしたら迷うな。無関係ならば手っ取り早く殺して他の町と同じく負の感情を増幅させてそれで終わりなんだけど……

 仮に、仮にだが手を出した瞬間にアレが来てしまったのなら今のボクでは消されてしまうだろう。


「いくら今のボクが弱小な存在だからと言って塵芥一匹を警戒するなんてね、ホント面白い星だね龍の神よ」


 だがどの道この星に住む塵芥共を根絶やしにするのならばアレとの衝突は必須。

 だったら別に殺ってしまっても構わないか……別にこの身が滅びようとボク自体が滅ぶ訳でもないし。

 いや、他にも気になる場所があるしやっぱダメだ。


「母親か、アレにとっても大事な存在だろうね。散々犯してアレの目の前に転がすのも一興か」


 そうすればアレもボクに対してかなりの怒りを向けてくると思う。

 その時はその怒りを食ってやればいい。


 だがそんな時間がないんだよねぇ。

 魔法なんて神気取りの力を持つ奴等だ。すぐにやってくるに違いない。


 となればだ、負の感情をぶつけて狂わせるのが良いかな。そうだ、そうしよう。

 本体と合流した後に怒り狂ったアレを食ってしまえばいい。


「待ちな、そこのアンタ」

「ん?」

「……おぉう、正面から見るとえらい不細工だな」


 塵芥に声を掛けられたから振り向いたら何か暴言が返ってきたんだけど?

 何?殺していいの?


「おっと、すまんな。俺は正直でな……それはともかくだ、アンタあのセティさんを狙っていただろう?」

「……それで?」

「ふ、やっぱりな……遠めから見てても分かる熱い視線だったぜ」


 確かに狙ってはいたが、ボクとこの塵芥と認識が違う気がする。

 この塵芥は何か酷い勘違いをしている。


「確かにセティさんは五丁目で人妻ナンバーワンだ。同じ人妻スキーとしては応援してやりたい……だが、だがな!手を出そうものならもれなくペドちゃんに殺されちまうだろう」

「……そのペドって塵芥、じゃなくて人間はあの女に似た小さい子供かな?」

「ふ、よそ者にまで名を知られるとはな、ペドちゃんもビッグになっちまったぜ」


 アレはペドとか言うのか。何か変な名前だな。

 しかしこの塵芥の発言でアレの母親だってのは確認出来た。


 なら尚更見逃す手はないね。


 横に居る塵芥がやかましくて邪魔だが、アレに勘付かれる前にやってしまうとしよう。

 実の母親が無残な姿になったのを見た子供の感情は腐るほど食らってきた。アレも同じ様に反応するかと思うと面白くて仕方ない。


 はは、そーれ狂ってしまえ――


「?」


 アレの母親に向かって負の感情をぶつけた筈なのだが、当たる直前で霧散した気がする。

 気のせいだろうか?

 弱体化している姿だし失敗したのかと思いもう一度試してみるが。


「……はぁ?」


 やっぱりだ。二度も防がれた。

 何だ?やはりアレの母親も普通の塵芥とは違う――


 いや、なんだ?

 こちらを冷めた目で見据えるあの……


「あの……チビ」

「チビ?……あぁ、アリスちゃんか。17歳くらい年の離れたペドちゃんの妹だな。あの娘も将来期待大だな!」


 全くマークしてなかったが、アレの母親の手に抱かれているチビ!

 あれだ。アイツがボクの力を無効化したんだ。


 あれは赤ん坊とか言う生まれて間もない存在だろう?

 そんなのが……ボクに抵抗したってのか?


 有り得ない。だが事実だ。

 うーん、アレの一族は揃って厄介な存在だね。これはこの星を蹂躙するのは骨が折れそうだ。


「ふ、その険しい表情。お前さんの言いたい事は分かるぜ」

「へー、なら聞かせてもらおうか」

「ペドちゃんとアリスちゃんの年を考えれば分かる。まだ青い果実だったセティさん、熟れた果実のセティさん。旦那は少なくとも二度は美味しく頂いたんだ……くそっ、羨ましいっ!!……って事だろ?」

「何を言ってるんだ君は」


 ボクが聞きたかった情報と全く違う。

 何だろうか、ただの邪魔な存在だし殺してしまうか?……だが、この場で暴れてあのチビの明確な敵となって戦う羽目になると不味い。

 今は特にボクに対して何らかのアクションはしてこないが、アレもまた化け物。やはり手を出すのは後だ。


「まぁ気を落とすな兄弟!なぁに、女なんて腐るほど居るさ!……居るだけだがなっ!」

「やかましいなぁ、何でそんな元気なんだい?」

「はっはっは!元気と逃げ足だけが取り柄だからな」


 仲間を紹介してやると強引に誘われて何処かへ連れて行かれる事になった。

 当然だが付き合ってやる訳がない。


 あのチビの目の届かない場所になったら殺してやろうかと考えていてふと気付いた。


「君、いやボクもだけど妙に不快な視線を受けてない?」

「ん?……あぁ、俺、と仲間も五丁目じゃあ有名な穀潰しだかんな。一応冒険者をやっちゃあいるが……まぁ冒険者だしなぁ。わりぃな、アンタも俺等の仲間だと思われちまったかもしれねぇ」

「……ここまで嫌われてよくこの町に住めるもんだね」

「他の町じゃあ追い出されちまってもおかしくねぇしな。住めるだけマシさ」


 分からないなぁ……何でこの塵芥は負の感情を湧かせないのか。

 蔑む視線を受ければ悲しみなり怒りなり生み出す筈なんだけど……うーん、あの一族じゃなくてこの町の塵芥共がおかしいのかもしれない。


「というかさ、冒険者やってて嫌われるなら冒険者やめればいいんじゃない?」

「……ま、普通に働けば飯抜きの日も無けりゃ不快な視線を受ける事もないだろうさ」


 じゃあそうすりゃいい。

 塵芥の考える事は分かんないなぁ。


「アンタ、笑ってるか?」

「意味が分からない」

「俺等は毎日大笑いしてるぜ。俺の親父はこの町の領主だ、ガキの頃から見てたが来客相手に愛想笑いする以外はほとんど見た事がねぇ……親父だけじゃない。普通に働いてる奴等も同じさ、何処か疲れた顔をしながら毎日を過ごしてる、俺はそんな生き方はしたくなかった。だから冒険者やってるのさ」

「……冒険者か、ボクが知ってる冒険者と同じなら凶悪な獣を狩ったりする生業だ。そんな死が身近な職業でよく笑えるもんだね」


 もはや神経が分からない。

 塵芥と言っても頭のおかしい奴も居るもんだ。


「俺等はそんな凶暴な魔物は相手にしねぇがな……それにだ、たまに、本当にたまになんだが感謝だってされる」

「そんな形のないものを貰っても何の足しにもならないよ」

「ま、腹の足しにはなんねぇな。時にアンタ、よそ者って事はアンタも冒険者なのか?」

「さぁ、何だろうね」


 馬鹿正直に災厄などと言う訳がない。

 よそ者はあまり来ないみたいだし話を合わせて冒険者だと名乗っておくのが無難だったかな。


「何で隠すか知らんが、アンタも冒険者だとしたらこのアイン様が一つ有難い言葉を贈ってやろう」

「うわぁ……雑魚いのに偉そう」

「アンタも言うよな、まぁいい。俺から贈る言葉はこれだ、とりあえず笑っとけ」


 何とも有難くない言葉だった。

 適当にも程があるんじゃないかな?


「俺ら冒険者が笑って過ごしてるって事はだ、この町が平和だって証なんだ。俺等が危機感抱いたような真剣な顔をしてみろ、一般人な住民は暗い顔になっちまう。この町は大丈夫なのかってな」

「へぇ……」

「だから俺等は毎日大笑いしながら楽しく過ごすのさ。馬鹿にされるぐらいどうって事ないね」


 ただの馬鹿かと思ったが、違ったようだ。

 馬鹿のフリをする事によって町を守る。それもまた、負の感情を沸かさせない手の一つか……


「どうだ?今のカッコよくね?いやー、誰かに聞かせる為に2年ぐらい前に考えて暖めておいたんだ」

「やっぱ馬鹿だよ君は」


 ボクに対する手としては割と有効だな、とか考えていたボクが馬鹿みたいだ。


「実は俺はそこまで馬鹿じゃなかったりする」

「いいや馬鹿だね、少なくとも……ボクの興が削がれるくらい」

「え……そんな冷めたの?うわぁ、ショック」


 全く落ち込んでないくせに良く言う。

 あぁ、本当に興が削がれた。


 最後にふざけた様だが、あれは紛れも無い本心だ。

 負の感情とは真逆の感情、ボクにとっての天敵。


 いいさ、この町は最後の獲物にしてやるさ。それまで笑って過ごせるか見せてもらおう。


「君の名前は?」

「俺か?……そういや言ってなかったな。俺はアインだ。一部の猛者からはモブオとして恐れられている」

「そうかいアイン。ボクからも一つ君に言っておこう、君はたった今化け物に気まぐれを起こさせこの町を救った英雄になれただろう。戦う事無く言葉だけでね、誇りに思うといいよ」

「お、おう……あの、さっきの最後のくだりは無しにしといて下さい」


 は、龍の神を見習って塵芥の巣を見て回るのも悪くはないな。

 ボクが降り立つ星はほとんどが絶望に溢れているが、中には嵐が来ようが塵芥同士で争おうが変わらず笑ってる奴等も居るのか。


 おかしすぎて反吐が出る。コイツらは死の間際、どんな感情を食わせてくれるのかなぁ。

 せいぜい来る時まで笑っているといい。


「あ、あれ?行っちまうのか?……これじゃあ歓迎会と称してヨーコさんの店で奢らせる計画がっ!?」


 ……何か聞こえたね。

 折角楽しい気分でいるんだ。聞かなかった事にしよう。


 しかし、初めて塵芥に害を為さずに去る事になった。訪れた町を例外なく滅ぼしてきたボクには考えられない行動だ。


 そして、楽しい、か。負の感情しか知らない筈のボクが楽しいなどと思うとはね。


 やはり、この星はボクを変えてくれるのだろうか。



★★★★★★★★★★



「カニ鍋」

「ですー」

「カニクリームコロッケ」

「ですー」

「異世界の本に載ってたカニ玉」

「ですー」

「カニぷりん」

「……」


 なぜ……

 なぜだニボシ!なぜ大好きなプリンに反応しない!!


「お前は馬鹿ですか?何で魚介類とデザートを混ぜるのです」

「最近人間社会に出入りしたばかりのホシオトシに正論を言われた」


 コイツ……マオより学があるんじゃないか?

 ち、かなり馴染んでやがる!


「そうなるとキャロットに作ってもらったカニぷりんをどうするか」

「自分で食えなのです!」

「こんな口の中で反発し合いそうなモノ食う訳ないじゃない」

「ふしゃーっ!そんなものを我に食わせようとしたのですか!!」

「プリンなら何でも食べると思った。嬉々として食べた後のリアクションが見たかった。後でキャロットに反省させる」

「反省するのはお前なのですっ!」


 食材を捨てるという選択肢は私にはないので、そうだな……マオにでも食わせるか。あの娘ならこれでも美味しそうに食してくれるだろう。


「というかさぁ、やっぱ巨大カニはダメだわ。ハサミ掴んで引っ張って身を出して食べたかったのに。こんなカマボコみたいなカニの身は微妙」

「味は良いではないですか」

「料理は味覚だけで味わうもんじゃないわ」


 何だこのブロック状のカニの身は……まるでカニって感じがしない。いや食感はカニなのかもしれんが。

 更に味が割といいのがまた腹立つ。カニうめぇ。


「やったぜリーダー!刺身の盛り合わせが来たわ!」

「おや見事な盛り合わせ」

「何か普通の店で食べてるみたいですね」

「普通どころか高級じゃろ」


 確かに何かの作品と言われても納得の出来。何で刺身って等間隔に重ねて盛り付けるのか知らんが見た目が大変よろしい。

 一皿だけ魚の頭まで乗ってる皿があるが、あれが噂の尾頭付きってやつか。


「住んでる神殿でこの夕食。これはテンション上がる」

「何でこんな腕いいのにキャロットは奴隷になったわけ?」

「確かに。この腕を手放すのは惜しいですよね」

「それがー、とある貴族様に料理を出した際に怒りを買ってしまいましてー」


 キャロットの料理で怒る要素が果たしてあるのだろうか。

 人参嫌いな子供に人参を使った料理を出したとか……そんなんで怒る訳ないよなぁ、って思うけど貴族は馬鹿だから有り得る。


「以前はある貴族様に仕えていたんですけどー、家格が上の貴族様がお客様でいらした際に出した料理がご不満だったみたいですー」

「不満だったのはどっち?」

「お客様の方ですねー」


 自分のトコの料理人より腕が良くてムカついたとかそんな理由じゃないかと思う。

 詳しく聞いても良さげだったので聞く事にしたが、腕云々は全く関係無かった。


 話すより実際に見た方が早いという謎の理由によってキャロットに実際にその時出した料理、ではないが似た料理を出してもらう事になった。


「ちょっと早いですがカニ雑炊です」

「相変わらず料理が関わると喋り方変わるわね」


 雑炊。カニ鍋に米を突っ込んで卵を投入したお手軽料理。

 怒る要素は分からんが貴族には残飯処理にでも見えたか。


「それも違います」

「あ、リーダーばっかおこげ入っててズルイ!」

「ふ、これも一番偉い者の特権よの」

「はいそれです」


 何が?

 とりあえず食おうぜ。


「お相手の貴族様はヒノモトの料理をあまり詳しく知らなかったらしく、焦げた料理を出すとは何事だと」

「あー、ありそう」

「でも説明すれば良かったのでは?」

「しましたが、格下の貴族の料理人に謝罪するのはプライドが許さなかったみたいで」

「何その貴族、許すまじ」


 別にそのおかげで腕の良い料理人が手に入ったんだからいいじゃないか。

 貴族がアホなのはソイツだけに限った話ではない。


「雇い主様も格上の貴族様には逆らえなかったらしく、せめてもと奴隷の扱いの良い店に売ってくださいました」

「まともな貴族の屋敷に雇われてて良かったわね」

「小国ですが王族に仕える事になったんですから出世したとでも思えばいいのですよ」

「火力だけならえげつない小国だけどね」

「何せホシオトシが住んでますからね」


 軍事力に関してはもうニボシだけでいいんじゃね?という言葉が通用するからな。

 山にペットとして魔物やドラゴンまで居るし普通の国ではもう落とせまい。


「鶏じゃなくてドラゴンの咆哮で一日が始まるのはこの国だけ」

「あれ五月蝿いんですよねぇ……」

「ウチには鶏が居ないんだから我慢しなさい」

「亜空間に仕舞ってる卵もいいけど、産みたての新鮮な卵も食べたい!」

「それならその辺を飛んでる魔王ニワトリを適当に捕獲すれば?」

「何で捕獲するのが魔物前提なのですか」


 だってこの国ってそういう流れになってるんだもの。もはや普通の家畜ではペット共にビビッてまともに生きてはいけまい。


「さて、ここから真面目な話に移りますが、嵐が過ぎ去ったら次は何だと思いますか?」

「食料難になった事により起こる住民の暴動とかその辺でしょ」

「食料を大量に頂いてるウチには関係ないですが、災厄の影響でカッとなりやすくなってるでしょうし有りそうですね」

「後は国同士の戦ですね。嵐が去ったらトゥース王国での戦も始まる事でしょう」


 ミラの国での戦か。同盟してる訳でもないので助ける義理はない。

 ルリの分体がいるから殺される前に逃げるくらいは出来よう。ミラさえ生きてればそれでいい。他の王族が死んでたら晴れてミラが女王である。


「そういえばフルートさんから報告はありませんが五丁目に現れた災厄の動きはどうなったのですか?」

「理由は不明ですが何もせずに去りました。次の目的地があるのか現在は移動中です」

「お姉様の言った通り無事でしたね」


 は、私の勘は今回も冴え渡っておるわ。

 にしても良い知らせだ。


「そうですね。セティ様達が無事で何よりです」

「そうね」


 そっちもだがそうじゃない。

 アレは災厄だ。この地に住まう生物を塵芥と称しただひたすらに狩る存在。


 ただの生きた餌にすぎない人間を誰一人殺さずに去るなど災厄の在り方としては笑えるほど歪だ。

 奴が何を考えての行動かは知らんが、些細な行動一つが付け入る隙を与え自分の身を滅ぼす事になるかもしれない。

 今後も逐一報告してもらうとしよう。


「災厄のおかげでしばらく旅はおあずけですね」

「ふん、今度こそあたしが倒してやるわ!」

「まずは有効な攻撃手段を探さないとですねぇ」

「私達だけでは心もとないのでナイン皇国で召喚された勇者達と腕の良い冒険者達も利用するに限りますね」


 勇者、異世界から召喚された奴等か。

 そんな奴等、何の役に立つのか。

 ニボシに初めてあった時を思い出せ、人外チートなこの娘達ですらまともに動けなかったじゃないか。ニボシが力を抑えていたにも関わらずだ。


 となるとだ――


「嫌になるわね、何があろうが最後には私が災厄とやり合う予感がビシビシしてるわ」


 この勘はきっと外れない。

 あっちもそう思っている事だろう。だから警戒していたんだ。

 今の世界を旅したい私とこの世界を蹂躙したい奴が出会った時点で分かっていた事かもしれない。


 今のままでは私は災厄とやりあった時点で勝とうが負けようが死ぬ確率の方が高い。

 勝てば死にはしないが、一生気絶したままなど死と変わりない。


 私はまだ満足するまで旅をしていない。

 サヨの修行したヒノモトにだって行きたい。マオの生まれた悪魔の里だって行きたい。

 戦力的に厳しいかもしれないが未開の地にも足を入れたい。


 だから必ず生き残る手段を考えてやる。

 せいぜい油断してろ災厄よ。


 ……いよいよ策が思いつかなかったらニボシにどうにかしてくれと土下座でお願いしてみよう。

 ふ、プライドなんかより生き残る方が大事だ。


「ま、災厄の話は置いといて今はキャロットの料理を堪能しましょう」

「そうですね」

「ふ、腹がパンパンになっちまうぜ……」

「何のキャラですか」


 何というか、コイツらも災厄が来ようがお気楽だな。

 それが私としては精神的に助かる訳だが。


 にしてもコロッケうめぇな。

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