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幼女、災厄を野に放つ

「アイツ動かなくなったんだけど?」

「生き甲斐を失って抜け殻になったのでは?」


 その見解は正しくないと言える。

 燃え尽き症候群っぽく見えるが生き甲斐を失ったくらいであんな意識の無さそうな廃人になる訳がない。


 しばらく様子を見てみるか、と思ったがすぐに動きが見られた。

 ぼーっとしてたユキオが突如右手で左腕を押さえて苦しみだしたのだ。


 急に呻きだしたユキオにこちら側は困惑しているが、よく観察してみると左手がまたさっきみたいに黒くなっている。

 黒い奴と言えば災厄。


「そうか、ユキオの馬鹿は災厄を吸収したからか。んなもん吸収したらそりゃ内部から侵蝕されるわ」

「へー、復讐果たす前じゃなくて良かったね」

「逆でしょ。復讐を果たしたから災厄が動き出したんでしょ。餌になる憎悪が無くなったらそりゃ用済みだわ」


 だがさっさと殺せばいいのに殺さない災厄に疑問を感じる。

 まだユキオに利用価値でもあるのか?


 災厄についての情報は出来るだけ集めておきたいから今がチャンス。

 ニボシもそこまで詳しい訳じゃなさそうだし自分で見て考察するしかない。


 と、言いたいが負の感情の集合体ってヒントがある時点で大体は予測できる。

 何も恨みや憎しみだけが負の感情ではない。痛み、苦しみ、悲しみなんかも言ってみれば負の感情だ。

 ただ……苦しませるのは別に誰でもいいってのにあえてユキオを苦しめる理由が分からん。


「馬鹿ねリーダー、過去に散々人殺ししてるアイツは恨まれて当然じゃん。きっと殺された奴等が今度はユキオに復讐してんのよ」

「……驚いた。マリアのくせに大した推測だわ。概ねその通りでしょうね……ただ、復讐してるのは殺された奴等じゃないわ」

「違うの?」

「奴を苦しませているのは遺族から生まれた負の感情でしょうね。死んだ奴等じゃ大した憎悪は生まれないわ」


 すぐに意識失くして死ぬし。

 おーやだやだ。酷く恨まれるとあんな目にあうのか。しかもこれまた2000年越しの復讐だからな……相当な憎悪になってる事だろう。


 災厄の一部だけが降ってきた理由が良く分かる。降ってきたのはユキオにかなりの恨みを持つ意識体だ。

 横取りしようとした何者かに獲物が奪われるのがよっぽど嫌だったのだろう。それこそ本体から強引に切り離してやってくるくらいに。


「ウチのお母さんとかユキオばりに苦しみそう」

「そんな恨まれてるの?」

「恨みというか……嫉妬?」

「……嫉まれるだけでもダメなのですか」


 要するに負の感情を向けられたらあーいう目に遭うんじゃないかね。

 そこらへんは災厄に聞かんと分からん。


 先ほどよりも一層苦しみだしたユキオを眺めながら先の事を考えるとうんざりしてくる。

 大体いつまで苦しむ気だコイツは。さっさと自害すりゃいいのに。

 今は腰まで黒くなり始めてるので放っておけば全身真っ黒に戻りそう。


「えっと、あれ、どうするんだい?」

「どうもしない。実は私、異世界人って嫌いなの。弟ともども苦しみ続ければいい」

「え……俺も異世界人なんすけど」

「ふむ……まぁナキリは偽善に溢れた異世界人っぽくなく欲望に忠実な奴みたいだし許す」

「何か知らんが許された」


 とりあえず大体の結論は出た。災厄の動向としてはこうだ。


 悪意で生物の精神を侵し攻撃的にして争わせる。

 恨みを抱く負の感情を差し向け苦しませる。


 こう考えるとただの負の感情の集合体ではなく本体が居そうな雰囲気だな。

 そもそも負の感情なんぞに何故嵐が起こせるのかって話だ。ありゃ災厄じゃなくて災害じゃないか。


「あらゆる手段で生物に負の感情を生ませる、そう言った手口なんじゃろう」

「復活したのね役立たず」

「ぐぬ、反論できぬのじゃ……」

「ユキノジョウが死んだからルリっちも治ったのね」


 しかしあらゆる手段か……やはり嵐程度じゃ終わりそうにないな。

 おのれ災厄……どうせ来るなら私が死んだ後に来いってんだ。流れ的にどうせ戦う羽目になるって分かってんだよめんどくせぇ。


「災厄は元より、ユキオから能力を奪った者も気になりますね」

「あ、それあたしも。そいつレベルアップ出来る様になったんでしょ?羨ましい」

「何じゃよう分からんが、それよりもあの妙に黒くなってる者はどうにかせぬのか?」


 ユキオか。メルフィ的にもはやどうでもいいってんだから放置でもいい。

 どうせ黒くなったらまた攻撃が効かなくなるんだろ?そんなん相手にする必要はない。

 今は苦しむだけだがまーた追いかけっこが始まったらダルい事になるし。


「ナイン皇国にでも捨てるか」

「そうですね、世界の危機とか騒いで好き勝手やってるみたいですしお望み通り災厄に到来してもらうのも良しですね」

「世界がヤバかろうが己の欲を優先する奴等じゃしな、ワシも異論はないぞ」


 マオを除くが満場一致である。ナイン皇国にだって罪の無い住民も居るだろうにこの発言、毒されたのか他人とかどうでもいい感じである。

 適当に発言しただけだが賛成多数なら捨てるか。


「バレずにアレを送り込める?」

「どうでしょう、流石に転移後に残った魔力を探知して私達を探り当てるなどという芸当が出来る者が居るとは思えませんが」

「つまり私達の仕業とバレる可能性は低いと、ならやりましょう」


 やるなら苦しんで動けない今のうち、って事でユキが早速準備に取り掛かった。

 こっちはやる事ないので急に暴れないかユキオを注意深く見る事にする。


 相変わらずぐおーだかぐあーって感じの呻き声を上げながらのた打ち回っている。

 復讐されて苦しんでるのか実況してもらわないとどう苦しいのか分からんな。


「た、たすげ……」

「はっ、最後は兄弟揃って命乞いなのね。甘んじて殺されるつもりだったんでしょ?誰が殺そうがこの際一緒よ、そのまま一生苦しみ続けろカス」

「不細工死すべし、慈悲はない」


 くふふ、笑える。

 復讐を果たせば殺されてもいいと言っておきながらこの命乞い。結局土壇場になると命が惜しくなるその辺の小物と一緒か。

 2000年も生きておいてまだ生きたりないのか。


「こんな奴に苦しめられたメルフィも可哀想だこと。ぶっ殺してやりたいとこだけど、今回は災厄が代わりに苦しませてくれるようだから譲りましょう」

「準備できましたよ」

「そう、この見苦しい姿を見るのもつまらない、さっさと飛ばしてちょーだい」


 まぁいい、これで目的の一つは終わりだ。

 少々悶々とするがメルフィの復讐は果たされた。

 だが厄介な問題はまだまだあるからなぁ……あ?


「どうかしたのかの?」

「どーしたもこーしたもソイツすでにユキオじゃないでしょ」

「……そうか?この情けない苦しみ様に変化は見られんが」


 うむ、確かにそこはおかしい。

 だが人間観察一級保持者の私としてはすでに別の何者かであるとハッキリ分かる。

 何が一番違うって目が違う。


 さっきまで助けを請う目を向けていたくせに今は苦しむ演技をしながら私達を探るかの様に見てやがるのだ。

 どこぞの貴族のババアならともかく災厄程度の下手な演技を見抜けない私ではない。


 しかし凶悪な災厄のくせして何を警戒してるのだろうか。

 やはり本体から切り離された分体だから弱っちぃ存在なのかもしれない。


「どういうつもりか何もしてこないわね……そのまま大人しく転移されるんじゃない?」

「ここで始末せぬのか?後々面倒になりそうじゃが」

「攻撃が効かない奴をどう始末しようっての、さっさと捨てちまえ」

「では今度こそ転移させますね」


 じとーっと土壇場になっておかしな真似をしないか睨んでいたが、特に何事もなく大人しく転移されてった。

 興醒めである。災厄の考えてる事はサッパリ分からん。


「普通に転移されたんだけど?」

「実はまだ動けなかった説とかまあ色々理由は付けられるけど転移させちゃったもんは仕方ないわ。ナイン皇国のショボい勇者共に後は任せましょう」

「勝てる未来が浮かばぬのじゃ」


 勝とうが負けようがどっちでもいい。

 力を合わせて災厄に立ち向かうとか言ってただろ、存分に実践してくれたまえ。


「じゃあ帰りましょうか。その前にナキリ達に報酬を渡さなきゃね」

「ほとんど役に立ってない気がするけど」

「まぁどうせしばらく金なんか要らないから貰っときなさい。あと、戦争に参加したくなきゃワンス王国に帰らない方がいいわよ」

「戦争?災厄云々で非常時だってのに?」

「その災厄のせいだけどね」


 眉間に皺をよせてぐぬぬと悩んでいる様子。異世界人は優柔不断である。

 というか特に義理もない国の戦争になぞ参加しなくていいと思うが。


 答えを待つと長くなりそうなので戦争に参加するとペペロッテ達が死ぬかもしれんと脅したら悩みながらも不参加を表明した。

 異世界人って仲間をダシにすると大体言いなりになってくれるよなぁ……そういう人種なのだろうか。


「ルリにメルフィ、転移させた災厄だけど精霊に頼んで見張ってもらって」

「まぁ遠くからなら大丈夫じゃろ。分かった、頼んでおくのじゃ」

「ではここは寒いですし帰りましょう。ナキリさん達はどちらに送ればよろしいので?」

「うーん、アトロノモスが出た辺りに送ってくれると助かるかな……そこから少し離れた位置にある中継都市で活動してたし」

「ではそのように」


 はふぅ、まぁしばらくはお休みだな。

 嵐の関係でルリは休めないだろうが今回役立たずだったしいいだろう。そもそも大変なのは風の大精霊とやらだろうし。

 はー帰ろ帰ろ。



★★★★★★★★★★



 ふむぅ、まっこと面白き見世物であったな。

 時間的に数時間前の出来事であろうか、災厄が降りてきた気配を察知したので監視しようと覗けば、そこにいたのは例の幼女、とその仲間達。

 また災厄関係にあの幼女が絡みおった。


 まぁ結局まともな殺し合いはしなかったみたいだが、それこそがおかしくもある。

 災厄ともあろう者が塵芥と対峙しておいて何もせずに去るとはな……

 やはりあの幼女は異常だ。異常だが見ていて面白い存在でもある。


「しかしあ奴め、気付いているのか気付いてないのか知らぬが塵芥と称している存在にビビるとはの、くはははははっ!!」

「随分と楽しそうですねポンコツ様」

「愉快も愉快、星に降り立てば誰もが恐れる災厄様がちんまい幼女一人に怯えておるのじゃぞ?これを笑わずしてどうするというものじゃ」

「ああ、例の女王ですか。星堕としといい災厄キラーになり兼ねませんね」


 災厄キラーとな……純粋な強さだけを考えればドラゴンと赤子くらいの差はあるんだがな。

 だがどちらの方が格上かと聞かれればあの幼女の方が上だ。

 それほど幼女が持つ力は大きいのだ。毎度ながら人間には過ぎた力だと思ってしまうわ。


「ところで何か用かの?いつの間にかおったが」

「ご報告が一つ。つい数時間前ですが、この街に連続強姦魔が現れたようです。白昼堂々と街中で女性を次々に襲ってる模様です。被害者の数およそ7人、とんだ豚野郎です。衆人の中で犯されるなど被害者がどんな心境かは計り知れませんね。そして厄介な事に警備の者も騎士もまるで歯が立たない相手だとか」

「ほぅ、災厄の影響でも受けて欲望が解放されてしもうたかの、しかし我の膝元で連続強姦とは中々に度胸のある。」

「その強姦魔ですが、現在は知り合いに会うと言いながら神殿内に侵入しております。ついでに言うとここに向かっている可能性が高いです」


 ぬぬ?

 ここに向かっているという事は我かエレムに用があるという事だが、我に強姦魔などと言う知り合いが居る筈がない。エレムに関しても同様だ。

 となると……


「数時間前と言ったな、あ奴が転移で飛ばされたのも数時間前、という事は……もしやそ奴、不細工な顔をしておるか?」

「はい。誰もが認める不細工かと。ついでに例の勇者達と同じく黒髪です」


 何であ奴がここに来るのだ!

 災厄同士はお互い干渉はしないというルール、忘れてはおらぬだろうにっ!


 ルールを破ろうとする馬鹿タレをどう追い返そうかと考え始めたその時、何やら騒がしい声と共に我とエレムにしか開けられない筈の扉が轟音と共に吹き飛ばされた。


 せめて手で開けろよ。


「やぁ、こうして顔を合わせるのは初めてだねぇ龍の神」

「ホントにきおったわ」


 顔を合わせると言っておるが、貴様はどう見ても分体だろうが。

 そんな不細工な顔と対面したくないわい。


「扉の外に止めようとした騎士達が瀕死でいますが?」

「……ここはよい。何処かへ連れて行って手当てしてやるとよい」

「それは助かります。流石の私でも不細工と同じ空間は少々……では私はこれにて」


 エレムの奴、相手が災厄だと分かった上での発言か?


 当の災厄本人は塵芥の言葉など聞く耳ないのか何が楽しいのかニコニコしながら我を見ている。

 だから不細工がニコニコした所で気持ち悪いだけだと。


「ち、来てしまったものは仕方がない。で、何をしに来たのじゃ?」

「何って、会いにきただけだよ?」

「……つまり用も無いのにルールを破り我に会いに来たと?」

「あっははははは!……やだなぁ、言ったじゃないか。君に会うのが目的だって」


 ……まるで意味が分からぬ。

 我に会う事にどんな意味があると言うのか。強いて言えばルールを破ったコイツは消されても不思議ではないという事だが。


「龍の神、ボクはね……この星に可能性を感じたんだ。災厄という存在が生まれ変わるという可能性をね」

「何を言っておる」

「ここに来る途中、ボクは初めて自分の意思で動いて食事をしたよ」


 食事?

 ……こ奴の餌と言えば負の感情。

 そうか、例の強姦事件で被害者が抱いた負の感情を食いながらここまで来たという事か。


「しかし……だからどうしたという話じゃな」

「分かってないなぁ……なぜ分からない?」


 小ばかにした風に言われた。何で我が煽られなきゃならんのだ。


「龍の神、ボクら災厄という存在はこの星に来るまでの間、果たして自分の意思で動いていたかな?」

「……自分の意思、じゃと?」

「そうさ、ボクはこれまで星々に住む塵芥から生まれる負の感情を餌として食べてきた。次元に害を及ぼす様な奴が生まれたらその星に出向き地上を這う塵芥共を排除する。ただ淡々と同じ事をこなしてきた……何故ならそうする様に創られたからだ」

「当然じゃの」

「けどこの星に降りて、ふと思ったさ。これではまるでどこぞの星で見た機械のようじゃないかってね」


 なるほど、言わんとする事が分かってきた。

 確かに我達はいつの間にやら存在し、誰に言われるでもなく自らがやるべき事をやってきた。

 何も言われずともするべき事を理解していたからだ。


「自分の意思か……自我はあったが、自分の意思で行動していたかと聞かれれば答えずらいのぉ」

「だろう?……でも、今の君は塵芥共に混じって生きている。君が安定させるのは塵芥共の世なんかじゃない、次元だ。そんな君が今こうしているのは自分の意思で行動しているからじゃないのかい?」


 ぐぬぬ、今まで何も疑問に思わなかったがこ奴の言う通りだ。

 龍神が人間の世界を調和させるなど笑い話にもならん。


 ……だが、我は何故こうしているのか分からない。

 分からないのだから果たして自分の意思で行動していると言えるのだろうか……


「これで最初に言った言葉が分かったかい?……生まれながらにして理解していた災厄同士は干渉してはならないという暗黙のルール、ボクは破って君に会いにきた。自分の意思でね」

「そしてこれからも自分の意思で動くつもりか?」

「当たり前だろう?……ボクはもはや何者かも知れぬ意思の下僕じゃない。散々尽くしてやったんだ、今度は楽しくやらせてもらうさ」

「ふん、調子に乗りすぎて消されても知らぬぞ」


 何も知らぬ馬鹿はきょとんとした後ケタケタと笑い出した。

 星堕としの言う通り極度の馬鹿だな。


「ボクは消されないさ。さて、本体が来るまで先にこの星を楽しむとするよ」

「おー行け行け、貴様のその顔は不愉快でしかないのじゃ」

「あっははははは!……確かにこの顔はアレだよね、けど……塵芥の雌を犯す時にこの顔は使えるよ、心底嫌がって美味しい感情をくれるからねぇ。人間という塵芥はおかしなものだよね、子孫を残す為に必要な生殖行為だと言うのに負の感情を抱くのだから。嫌ならそんな進化しなきゃ良かったんだ」


 まぁ愛だの友情だの余計な感情であるのは確かだな。

 そういう感情は自分の子供にだけ抱けばいい。他人を愛さねば子を為せないなど面倒な事この上ない。


「でもまぁ地上にうじゃうじゃ居るのを考えるとそういった感情を持たないと異常繁殖しちゃうのかもね、じゃあボクは行くよ。機会があったらまた会おうね」

「断固拒否じゃ」


 何が楽しいのか帰る際にもケラケラ笑いながら出て行った。

 まるで奴隷から解放されて自由を得たガキのようだ。


「くはは、消されないじゃと?……自分のすぐ側に化け物がおったことをもう忘れたか。所詮は馬鹿じゃの」

「ポンコツに言われたくはないかと」

「ぬおっ!?……お前も我に気取られる事無く入ってくるとは妙な奴じゃの、治療は済んだのか?」

「救護室に突っ込んできました。そんな事よりアレを逃がしてよかったのですか?」

「構わん。我の前に堂々と来おったからな、こっそり奴の今後を見てやったのじゃ」


 あの馬鹿め……どれほど見直しても災厄という存在が消滅するという未来しか見えなかった。

 余計な事をせずこの星から去れば消される事もないと言うのに……


「ほぼ間違いなくあのおかしな幼女と敵対して消される。アレにさえ関わらなければ無事に済むというのにな……ただ、幼女も無事では済まないだろうがの」

「あれほどの力です。災厄を消すほどの力を使えば代償の方もさぞかし大きい事でしょうね」

「まぁの、幼女にとってもいい迷惑じゃな」

「ところで、私がアレを逃がしてよかったのかと言うのはそういう事ではありません」


 む?

 はて、どういうことだろうか。我があんなのを相手にしたところで利など特にないのだが。


「流石はポンコツ様、もうお忘れですか。アレはポンコツ様の知り合いと称して神殿に侵入してきたのですよ?……それをただ会話しただけで帰したとあってはポンコツ様は強姦魔のご友人と認識されてしまいます。現在の悪を断つという風潮の中では致命的なミスと言えましょう」

「……え」

「これで大司教共にポンコツ様を討つ大義名分を与えてしまいましたね、ご愁傷様です。そして噂というのは広まりやすいものですからね、民達の間でポンコツ様の悪評が広まることでしょう。更にアレが災厄であるとバレたらと思うと……」

「…………え」


 え、なんで?

 いや、我が大司教共に負ける訳がないのだが、民達の支持の事を考えると……あれ?


「ふむ、もしかして我はやっちまったという事かの?」

「はい。せめて一戦交えるべきでしたね、手合わせとでも称して」


 ぐぬぬ、おのれ……何もかもあ奴が悪い!

 この恨み晴らしてやりたいが、ふぬーーーーーーーっ!!


 あんな奴など、さっさとあの幼女の怒りを買い討たれてしまえばいいのだっ!!

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