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幼女と復讐

「うわあああぁぁぁんっ!」

「うっさいわ、一般人なんぞに邪魔されるお馬鹿め」

「ふぇぇ……ごめんなさい」


 まあいい、終わりよければ何とやらだ。

 まだ終わっちゃいないと思うが。


 未だに魔方陣からは光が昇ってる状態なのだがいつまで光るんだろ。

 ユキオの魂がしぶといのかもしれない。


「メルフィ」

「姉さん……」

「やったか!?」

「何故その台詞を言った」


 私だって人生で一度くらいは言ってみたい台詞だもの。


 そんな私の台詞がダメだったのか、天に昇っていた光が急速に弱まった。

 いや、よく分からんが逆に大地の方に戻っているのか?

 疑問に思っていたが、魔方陣の中に居た人影に光が吸い込まれているのを見てすぐに察せた。


「浄化される側が浄化の力を吸収してるわよ」

「見てリーダー、黒くなくなってるわ」

「あらホント」


 夜になったら絶対に分からない様な黒い人影だったくせに今は人間とほぼ似た姿になっている。

 俯いているので顔はよく分からないが髪の色が黒なのでまぁユキオだろう。


「メルフィの術が通用しなかったか」

「謎」


 確かに謎である。マオのビンタであれだけ痛がってたから魂ではあったと思う。

 もしや魔物と違って浄化じゃ消滅させる事が出来ないってオチじゃなかろうな……もしくは災厄なんてよく分からんものと融合してるせいだ。


「終わったと思ったのに……大体リーダーのせいよね」

「私ほど頑張った奴はおらんだろ」

「逆に考えるとまだボコボコにする機会は残されている」

「メルフィさんが男前です」


 男前発言はいいが、どう見ても相手は肉体を持ってるようだしそう簡単にいくかね。


 俯いてジッとしていたユキオだが、ふいに手を動かして握ったり開いたりしている。まるで身体の調子を確かめているみたいだ、というか確かめているのだろう。


 やがて確かめ終わったのか顔を上げ、こちらを見据える。

 その上げた顔を見て、私は一度ある人物を見た。そして再びユキオを見る。


 うむ、ユキオとユキノジョウの顔が同じに見える。


「またドッペルがおる」

「ほぼ同じに見えるほど似た顔、双子だったのでしょうか」

「それならメルフィがユキノジョウを見た時に驚いたりすると思うけど」

「2000年も経ってるしまともに見てなかったユキオの顔なんか覚えてる訳ない」


 好きな相手でもないしそんなものか。

 それはさておき、何かおかしい。メルフィが言ってたユキオの情報だけで考えてた人物像と大分違う。


 まず目だ。今までは黒かったから表情が分からなかったが、根っからの悪人の目じゃない。

 と言っても善人という訳でもないが、あの憎悪を感じさせる目は復讐を願っている者がよくする目だ。


 ただ、若干歓喜が見えるのが不思議である。

 素直に封印が解除されたのが嬉しいのか……


「どうします?」

「……やーめた」

「はい?」

「何かねぇ、やる気なくしたのよねー。だからと言ってメルフィの復讐もやめろとは言わないけど」


 2000年もメルフィの魂を縛り続けたのは事実だし。

 しかし私がどうこうって気分は吹っ飛んでしまったのだ。


「くらえっ!」


 ウチの面子が私の様子に戸惑っている間にナキリ達はユキオとの戦闘を再開していた。


 魔法剣なのか不明だが淡く光を放つ剣でユキオを攻撃するが、あっちは武器も無しに素手で剣を弾く有様だ。

 あれでユキよりは強いであろうナキリが簡単にいなされるとは……マリアより強いだけはあるというか。


 対するユキオはナキリの事は全く眼中にないのか、薄っすら笑いながらこっちを見ている。

 まるで復讐相手がこっちにいるかの様に、だ。

 まさか復讐の相手はメルフィなのか?……んな訳ないか。


 そうこう考えていると相変わらずナキリをガン無視していたユキオがゆっくりと歩きだした。


「貴様の相手は俺だ!」

「……へぇ、そんなにアイツが大事かい?」

「はっ、喋る事も出来たんだなっ!」


 ようやくナキリの方に目を向けたユキオに技名は叫ばなかったが皇竜列斬波を放つと、流石にダメージを受けると判断したのか横に飛んで避けた。

 皇竜列斬波の飛んでいった方を見れば木々が巻き添えくらって一本の道が出来上がってしまっている。何という環境破壊。


 にしてもやっと喋ったな。


「ちょっとリーダー、やめたとか言ってる場合じゃないわよ!ボスの顔が不細工だと萎える気持ちは分かるけどさ」

「んな理由じゃないわ」


 とはいえナキリ達だけでは誰かが死ぬ可能性が高い。下手すりゃ全滅もありえる。


 しょうがねぇなーって感じでマオから借りた手袋をユキオに向けた。

 それを見て私がやる気を出したのかと思った面々が武器を構えるなり魔力を練るなりして合図を待つ。こいつら、相手は攻撃が効かないって事を忘れてんじゃね?


「ちょ、危険ですよ!逃げましょうよマオさん!?」

「うるさいです」


 おぉ……マオも言うようになったな。逃走を提案するユキノジョウに対して顔すら向けない。


「マオさんの場合、お母さんを危ない目に遭わせた事を後悔してるのかと」

「一般人に邪魔された不甲斐なさを痛感したって訳ね」


 さて、改めてユキオに意識を集中するとしよう。

 攻撃は効かない、となるとどうするか……


『てめぇ!姉御の邪魔すんじゃねぇよ!』

「見てて分からないのですか!勝てない相手に挑むのはただの無謀です!」


 外野がうるさいがナキリがユキオを引き付けてる今はチャンスと言える。

 攻撃は効かないが邪魔は出来る。もしかしたら亜空間落としは通用するかもしれないのでユキが接近する事を第一に考えよう。

 効かなかったら効かなかったでまた考えればいい。


『かーっ!ここにきて情けなさが鬱陶しくなってきやがったな、そんなだから世界に嫌われるんだよ!お前のお守りをする身にもなれってんだ!』


 腕を狙ってワイヤーを飛ばす。

 狙い通りに巻き付いて一先ずホッとした。相手も気付いた様で何事かと目を向けるが、すでに私は次の行動を起こしていた。


 すなわちワイヤーを操り腕を切断する。


「え、ぎゃあああああぁぁぁぁぁぁっ!?」

『うおっ!?……姉御かっ!?』

「ちょっとリーダー!相手が違うって!」


 そう、マリアの言う通り私が攻撃したのはユキオではなくユキノジョウだ。

 別に外野がうるさくなってきたからやった訳ではない。


 流石に予想外だったのかナキリ達とユキオまで驚いた表情でこっちを見ていた。


「何か不思議だったのよね……何故世界はユキノジョウを嫌うのか。ユキオは別に嫌われちゃいないのに」

「……言われてみれば」

「別にユキオが善人とは言わないわ。前にメルフィが言った様に誰彼構わず殺すような殺人鬼だったんでしょう、じゃあ何故ユキオがそうなったのか……私の勘ではソイツのせいだと考えてる」


 アイツが大事なのかとユキオはナキリに問いかけた。

 アイツとはユキノジョウを指していたのだろう。

 この中でユキオの知り合いなんて弟であるユキノジョウかメルフィしかいない。だがメルフィの今の姿は人間だ。ユキオが気付く筈が無い。


 ユキオの復讐相手は間違いなくユキノジョウだ。


「分かったわ、心の醜さが顔に出てるって話ね!」

「全然違うじゃないですか」

「心が醜いのは正しいんじゃない?マオの心配はしても実の兄の心配なんて全くしちゃいなかったし」


 兄と呼んだのは命乞いをしたあの時だけだ。

 まるで家族と思っちゃいない。コイツにとって兄など居ても居なくても同じなのだ。


『なぁるほどなー、この世界にとっちゃ自分の子供と言える住民を虐殺した元凶を生み出した奴となりゃあ嫌われて当然だな』

「ぎひぃぃ、た、たすけ」

『うっせ、ばぁか。お前はそのまま死ぬのがお似合いだ』


 無様に顔の穴という穴から液体をこぼし命乞いをするカス。


 自分は兄に何もしていない。

 自分に罪なんてない。


 そう痛みに耐えながら訴えてくる。


 コイツの言ってる事は嘘には聞こえない。

 では無罪なのかと言われれば違うと答えよう。


「自覚の無い悪意、私としてはこれほど性質の悪い悪意はないと思うわ」

「どういう意味?」

「他人からみれば悪だけど、コイツ自身は悪と思っての行動じゃなかったのね。まぁ実際ユキオに対して何をしたのか知らないけど」

『いや、どうでもいいけど姉御の察しの良さは大陸に響き渡ってもおかしくねぇな』


 世界が嫌うなんて大きいヒントあったのに気付いたの今だけどな。

 ユキオ悪人説を鵜呑みにしていた弊害だ。


「で、あってんのユキオ?」


 いつの間にか近くまで来ていたユキオにそう尋ねた。

 すでに敵意は感じられない事から推測は大体合ってるとは思う。


「……君達は、コイツの仲間じゃなかったのか」

「断じて違うわね」

「そうか、てっきりこっちが苦しんでるってのにハーレムでも作ったかと思ったよ。一人ずつ殺してアイツを絶望させようとか思ってたけど未然に知れて良かった」

「ちょっとー、こんな顔の奴のハーレム要員に思われるとか心外なんですけどー」

「コイツがこの場所にいるのはユキオがコイツの身体を乗っ取りたいと予想してたからよ……すでに肉体は滅んでただろうし」


 憎きユキノジョウの身体を乗っ取った事を想像したのか思いっきりしかめっ面された。

 こっちだってすでに肉体持ってるとは思わなかったんだから仕方ないだろ。


「どうでもいいけど、災厄と同化して平気なの?」

「災厄?……ああ、あの良く分からない意識集合体か。大丈夫、逆に吸収して取り込んでやったから。まぁさっき吸収し終わるほど時間かかった手強い相手だったけど」

「へぇ……一部とはいえ災厄をねぇ」

「俺の能力だよ。吸収、契約、レベルの3つだ。尤も、契約とレベルについては誰だか分からない何者かに奪われたけど」


 存外にペラペラと手の内を喋ってくれたな。

 しかしレベルか、かなり前だがユキと話題になったな。労せずして強くなる夢の様なシステムだ。まさか実在したとは……


「あたしもレベルのある世界に生まれたかった」

「そんだけ強けりゃ十分でしょ」

「いや、ゲームみたいに……て言っても分かんないか、何というかそんな便利な能力じゃないよ。レベルが上がるのは持ってる能力だけ……つまり吸収と契約だけさ」

「レベル上がるとどうなんの?」

「そのまま効果が上がるってだけだよ」


 吸収は初めの頃は生きる為に必要な酸素や食事を瞬時に吸収するだけで、レベルが上がると相手の能力や強さまでも吸収出来る様になるらしい。

 なにそれ酷い。悪食みたいなもんだろうけどチートだな妬ましい。

 ただし、生きていた頃は吸収するには相手を殺すしかなかったそうだが。今はとりあえず吸収したいと思えば出来るらしい。メルフィの術もそれで吸収したのだろう。


 契約に関しても強制力の低い契約から絶対契約にまで成長したそうだ。

 絶対契約、果たされるまで永遠に縛られる契約だ。メルフィが転生し続ける羽目になったのはこれのせいだろう。

 奇跡ぱわーに抵抗出来るのも頷ける。


 もしかしたら、奇跡ぱわーでも解除出来なかったって事も有りえる。消し去る事が出来なかったから、逆にユキオにかけられた封印を解いてメルフィを自由にした、こっちの方が可能性として高い気がするな。


「何にせよ、とんでもない能力よね」

「こっちの世界の人々を虐殺してでもレベル上げ続けたからね……俺は、何としてでも復讐を果たしたかった」

「理由を聞いても?」

「……なに、大した話じゃないよ。コイツのついたくだらない嘘で俺と、彼女の人生が滅茶苦茶になった。それだけのくだらない話さ」

「え、その顔で彼女いたの?」

『おめえさん、さっきから酷い奴だよな……』


 全くだ。どこまでこの顔が嫌いなのだと。


 にしてもおかしな展開になった。

 第三者としてはどうすればいいんだって感じになっている。

 それはナキリ達も同様なようで、困惑した表情で尋ねて来た。


「えーっと……雇い主が護衛対象を殺そうとしてる場合どうすればいいんだ?」

「元々ここに来た時点で護衛対象じゃなくなってたでしょ」

「う、うーん……」


 素直に目の前の復讐劇を楽しめないもんかねぇ。

 今もなお無様に喚き続けるユキノジョウの元へと向かうユキオ。どう殺すのか見ものだ。


「2000年か……永かったな。それだけの時間となると記憶だって磨耗するさ。もはや親の顔だって覚えちゃいない。だが、お前への恨みだけは一時も忘れた事はなかった」

「いぎ……な、なんで」

「何で、か。知らないだろうな……俺と夏美はお前の知らない所で死んだんだろうし。正確には、俺はこうして異世界行きだったけどな」


 殺す前に罪状を突きつけるらしく、さっきは曖昧だったユキノジョウを恨む内容を語っている。

 急に知らん名前が出てきたが、復讐において重要な人物なんだろう。


 ふむー?

 あっちの世界の用語はよく分からんが、今つらつらとユキオが語っている事を要約すると、ユキノジョウが賊とかならず者の所有するお宝にちょっかいだして怒らせた。

 脅されて名前を聞かれ、咄嗟に自分ではなく兄であるユキオの名前を出したらしい。そしてその場では隙を見て逃げ出したと。


 相変わらず逃げてんなコイツ。死ねばいいのに。


 で、しばらくは何もなく過ごしていたがある日ユキオは知らない者に呼び出され指定された場所に向かう。

 よばれた建物に向かうと彼女が知らない男達とギシギシアンアンしてたそうだ。

 結末としてはその後二人して酷い目にあった後に海に捨てられたと。


 異世界も案外バイオレンスである。


「エロ本で見かけそうな設定を現実でやっているとは……異世界も侮れません」

「人殺しするほど怒らせるとかあの不細工なにやったのかしら」

「偉い人の私物を壊したみたいですよ。ウチで言うならお母さんのリュックを壊したって感じです」

「……なんて恐ろしいことを!怒られても仕方ないですっ!」


 怒られるどころか殺されてるがな。

 身内どころか関係者ってだけの彼女まで標的にするくらいだ。相当怒ってたんだろうな。

 ほっといてもユキノジョウはその賊共に殺されてた気がするわ。


「俺はな……色々な人を殺してきたよ。ただ力が欲しいって理由でな……お前と俺、どっちの罪が重いかと言えば間違いなく俺だ」


 まず私が切断した腕とは逆の腕を足で潰した。


「だけど、そうさせたのはお前だ。最初は途方に暮れたさ、自分一人だけ異世界に来てどうしろってな。だけど、自分に与えられた能力を確認して思った。これなら、もしかしたらお前に復讐できるかもしれないと」


 次に右足の脛を同じく潰し、左足は膝を粉砕した。


「結果はご覧の通りだ。きっと夏美からの贈り物だよ、この力は。まぁ……途中やりすぎて封印されて焦ったけどな。咄嗟に使い魔にしてた悪魔に俺を必ず解放させる様に契約してなけりゃやばかった。肉体は無理だが、幸いにして海に面している場所だ。近くを泳ぐ魚から細々と生命力を奪い続けて意識だけでも生き続けた」


 ぎゃあぎゃあ叫んでうるさいのか今度は顔を踏みつけた。


「本当にやばかった……だが奇跡が起きた。その悪魔にした契約のおかげかレベルが上がったんだよ……そして辿り着いたんだ、絶対契約に」


 そのまま窒息死されても困るのか踏んでいた足をどける。


「俺が求めていた力だ。俺と交わした契約は絶対に破る事は出来ない、てな。意味が分かるか?……ガキの頃の口約束だろうが絶対に破られない契約だ。こうしてお前を呼んだ約束ってのはな、遊ぼう……たったこれだけの約束がお前に絶望を与える結果になったんだよ。本当はもっと早くこうしたかった……残念だが俺の契約は一度契約がなされたら達成されるまでは解除されない、つまり俺が解放されるまではお預けだ。だが、お前をこうして殺す日を考えていれば耐えられた」


 なるほど、それでユキノジョウはこの世界に来れた訳だ。

 一緒に遊ぼう、とかその程度でも絶対に守らなければならない……相手にするとなると厄介な能力だこと。


 不可解なのはユキノジョウがこちらに来たのは結構前って事だな。

 すぐにその場に呼んで殺しそうなものだが……


『世界が姉御に会わせる為にそうしたんじゃないか?……世界に愛される者と嫌われる者は反発しちまうが不思議と惹かれあって出会っちまうのさ』

「こんなのに会ってどうしろってんのよ」

『知らねぇ……まぁ、少なくとも真相は分かっただろ』

「俺に復讐を果たす為じゃないかな?……そこの緑髪の女の子、俺を攻撃する時に俺と同じく復讐を果たしたいって目が訴えてたよ。君は……俺が2000年も縛り続けた悪魔なんじゃないか?」


 へー……伊達に長年生きてるせいか中々に良い頭をしている。

 だが本当にそうなのかは疑問である。真実は世界のみが知るって奴だ。


「少し待ってくれ、コイツを殺し、復讐を果たしたなら甘んじて殺されよう」

「……そう」


 メルフィから視線をずらし、ユキノジョウへと戻す。

 いよいよ最後か。

 私がドン引きするくらいえげつない殺し方をして欲しいところだ。


 そういや主人が死んだらアザレアも解放されるな、元々契約してなかったみたいだけど。


「に、にいざん、たずけ」

「消えたくないか?ま、そうだろうな……ではお望み通りそうしてやる。最後の契約だ、死して魂だけとなっても永遠に苦しみ続けろ」


 お、中々良い罰だ。

 アイツが永遠に苦しむと考えるだけでテンション上がるわ。わっしょいわっしょい。


「お姉ちゃん……」

「何で私が引かれんのよ」

「人の不幸をキラキラした目で見てるからじゃない?」


 そんな事よりユキノジョウの死に様見ようぜ!

 って事で見物に戻る。


 と言ってもあっけないもので死ぬまで身体の至る所を踏み潰してそれで終わりだった。

 あっさりで何か呆気ない。ユニクスの血でも与えてやれば良かったわ。


 ドロドロだった大地には赤い血溜まりと肉片が飛び散っている。くさそう。


「派手さが足らん」

「うわぁ……人の復讐にケチつけるとかないわー」

「終わったとなると……残るはメルフィさんの復讐になりますが」

「……」

「メルフィ、殺したいってんなら殺せばいいわ」

「……どうなんだろう。姉さん達と一緒になった今、私は楽しい毎日を送ってる。幸せと言ってもいい」


 なにこれ告白?

 モテる幼女はツラいな……


「2000年も生き続けなければ今の私は居ない。……それに、すでに散々殴ってる。もう気は済んだ、それでいい……後は姉さんに任せる」

「ここで私に丸投げはないわぁ……」

「いいじゃない。カッコ良く終わらせちゃいなさいよ」


 無駄にハードルを上げられた。

 カッコ良く終わらせるってどうすりゃいいんだ馬鹿野郎め。


 復讐を果たしたユキオは弟の死骸の側でまるで抜け殻のようにボケっとしている。

 さて、どう処理しようかね。

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