幼女、戦況を解説する
世界はこんなにも広い。
だってのにあんのチビ達と遭遇する確立高すぎじゃね?
もはや呪われているんじゃないかと疑うわ。
そもそも何でこんな小さい国を攻めなきゃならんのだ。それもこれもシリアナが亡き後に偉そうにしゃしゃり出てきた自称海を渡ってきた者のせいだ。
この国を興した切欠になった人物でもあるが、未だに私は信用ならん。
前はシリアナにビビッて大人しくしていたが、フォース王国の一件以降やたらと偉そうになっている。
確かに奴の作った意味不明の薬のおかげでフォース王国に完全敗北はしなかったのだが……お父様はマッチョになってしまったじゃないか。
しかも何か馬鹿になってた。どう見ても副作用だった。
何故か奴をやたらと信用しているお父様は今回の戦にあっさりと承諾をした。
もともと心許なかった食料を進軍中に掻っ攫われても問題無いとズンズン進む。
生きているから食わなきゃならんのだと奴は兵士をわざと敵に殺させ死者という駒に変えると言い出した。
「貴様は仲間を何だと思っているんだ!」
「奴等は今やただの賊でしょうが。中継都市の所業を見たでしょう?」
確かに食料を奪い、男女問わず襲い掛かる兵士達はどう見ても賊そのものだった。あいつ等もコイツに洗脳されてるんじゃないかと疑ったな。
その疑わしいコイツの作戦とやらは死した兵士はその場で即時に死者として復活する。
戦力を保持したまま食料の問題を解決する良い案だと言っていたが……いかに賊の様になった兵とは言えこれまで共にやってきた仲間に違いはない。
しかし私がどれだけ異論を唱えようとお父様が許可を出したのならどうしもうない……奴の案は実行された。
のだが……
「おい、あんだけいた大軍が一瞬で消えちまったじゃないか」
「自分はここの出身ではないので魔法とやらには詳しくないのだが、まさかあんな魔法があるとはね。いやー驚いた……だが安心するがいい。まだ第一陣が破られただけだ。そして大地を見る限り仕込まれていた罠だったようだ、もう大規模な魔法の罠はあるまいさ」
たかが小国を攻める為に第五陣まで用意しているそうだ。第一陣がすでに全力っぽかったが大丈夫か?
しかしあんなのを見せつけられては小国と侮る事は出来ない……
続いて送り込んだのは奴の薬によって強化されたマッチョ共だ。ただ数は最低限を投入するらしい。
奴等の目的は門を破壊する事。
結界のせいで転移で行くのは不可能、隣接する山から侵入して奇襲も考えたがどうせ妖精に見つかって奇襲にならないので却下。
門にも結界が張られていたらお手上げだったがそれは無かった。
という訳でマッチョ達が破壊しに向かった訳だ。
対するアルカディアから出た迎撃はたったの二人であった。
だが、私は片方に物凄く見覚えがあった。
小さくなったシリアナにそっくりな少女。あのシリアナを返り討ちにしたチビの仲間じゃないかっ。
その瞬間私は諦めて退却するべきだと思ったね。
あんのチビはウチにとって死神であり疫病神だ。
フォース王国の一件以来こいつらには絶対に関わらないと心に誓ったのだが、まさか小国に滞在していたとは……
「あの国には関わってはいけない奴等がついている。今すぐ撤退すべきだ」
「確かにあの金髪の娘は脅威だ。私の作品達が次々にやられていく……だがそれだけだ。もう片方の少女は捕らえられた様だね」
「いいか、一番恐ろしいのはあの場にまだ出てきていない幼女だっ!」
「あなたが何を言ってるのか全く分からない」
分かれよ!
何の為にフォース王国で可愛い可愛い可愛いシリアナを殺した奴等を見逃したと思ってんだ、奴等を相手にしちゃいけないと分かったからだ!
ほとんどシリアナが築きあげたこの国を残す為には奴等を敵にしちゃいけないんだよ!
そしてその通りであると言う様に戦場で動きがあった。
またしてもちんまい少女が現れ、シリアナ似の少女を救ったかと思えばマッチョ達を惨殺していく。
たったの一撃で頭が吹っ飛ぶ様は異様だ。
新顔だがやはりチビの仲間は化け物ばっかだ。
「あれを見て分かるだろう?……奴等は私達では倒せない相手だ」
「確かに新手の少女は脅威だが、どうやら長く戦う事は出来ないと見える」
確かにたったの数分で新手の少女は辛そうにその場に蹲った。
「恐らく自分達の様に強化する薬を使っているか、魔法とやらで一時的に強化しているのだろう。たったの数分しかもたないのなら問題無い」
「私はお前が物凄く勘違いしている様な気がする」
本当に数分しか戦えないのだろうか?
めっちゃお腹を手で押さえて痛そうじゃん。あれ絶対ただの腹痛だって!
「第三陣は本体で攻める。我々が全力で攻め込むと思わせるのだ」
「ならば私も行こう」
「お父様……!」
「王である私が出向けばこれが全力で攻めたと思うであろう」
思うだろうか?
あの幼女は妙に頭が良いというか、千里眼があるというか……とにかくそう易々と騙されるチビじゃない。
私の姿が見えないってだけで警戒する可能性が高い。
「私は今からでも撤退すべきだと思う……というか妖精の為にここまで被害出すことないだろ?」
「妖精目当てだと自分は言ったかね……自分の目的はただ一つ、あそこにユニクスが匿われているからだ」
「神獣があの国に?」
それは驚きだが、神獣なんかどうするつもりだ。
「サード帝国の者に頼んでユニクスを狩って来て貰う予定だったが、ある時ユニクスは神域から姿を消していた。だが姿を消す少し前に一頭のユニクスがアルカディアに向かう姿が目撃されたらしい」
「だからそこに居ると」
「あれだけの数が一気に消えたのだ。恐らく転移魔法とやらを使える者が手を貸しているはず、そして転移を弾く結界を張りあれだけの兵士を一気に殲滅する魔法を使える者が居るとなるとアルカディアの者が手を貸したと見て間違いない」
何時の間にサード帝国なんかと繋がっていたんだと突っ込みたいが、もはや何でも有りだなチビの周りは。その内ドラゴンでも飼いそうだ。
もはやコイツは止まる気は無いのだろう。そしてお父様も……ならば逃げるか?
私だけ逃げてどうするんだっての。
一応コイツにはあと二つほど手がある様だし精々足掻いてみるか。
私は私だけであのチビに報いてやろう。
「ああそうだ、明日は兵達には大仕事になるから豪勢な晩餐にしてやってくれ」
★★★★★★★★★★
およそ1300人のマッチョが行進してくる様は中々にキモい。
アレを今から相手にするんだから皆のモチベーションも下がる事だろう。
「リーダーはサボりなんだっけ?」
「むしろ私が戦場に向かおうものなら怒るくせに」
「当然です」
「指揮官は安全な場所で指示を出せばよいのです」
「リーダーが来たならキキョウっちは戦ってもいいんだね」
「……え?」
キキョウは代理だったしな、確かに私がここに居るなら戦ってもいいと思う。
当の本人は物凄く嫌そうな顔をしているが。
「私はほら、ここでフィーリア様を護衛しておりますので」
「護衛にはメルフィに残ってもらうわ」
「一人より二人です」
「素直に戦いたくないと言えばいいでしょう」
「まぁキキョウさんは置いておいて、出陣前にお母さんから有り難い言葉を頂きましょう」
私がか?
あれだろ、戦前に大将が鼓舞するみたいな。
「昨日はキキョウさんに任せましたが、今日はお姉様がいらっしゃいますしね」
「ふむ」
ではここは一つ士気を上げてやろうと奴隷兵を含む皆の前に立ったが、どいつもこいつも私の背が低いせいで見下してきやがる。ぐぬぬ。
「まず最初にあなた達は異世界からもたらされた言葉は物の姿形から文字に変えたものだと知っている?」
「象形文字ですね」
「そう。人って文字があるでしょ、これは人と人がエビ反りで支え合っている姿を現したものらしいわ」
「気色悪っ」
本来は一人の人間の姿を現してるらしいが、この際こう言っておく。
「だがしかし、今の奴等は支えあうどころか攻め入っている。つまり奴等は人に非ずただの獣である。ならば同族と気に病む必要はないわ、狩って狩って狩り尽すのよ!」
……はて?
「同族?お前等は人外ばっかじゃねぇか!」
「理不尽に怒られた!?」
「ごほん……私としても守ってもらう身だから褒美を考えているわ」
「おぉ……」
「例えばニボシなら20マッチョ毎にデザートを一個贈呈する。ただし1日1個よ。100マッチョ狩れば5日分ね」
「単位をどうにかして下さい」
「デザートとはなんです?」
「プリンにケーキ、ゼリーだろうがパフェだろうがメニューは自由よ!」
ニボシの目に炎が宿った。これで奴は嬉々としてマッチョを狩るだろう。
ニボシはデザートでいいが、他の奴等の要望は後で考えるとしよう。
「戦う前にニボシ、奴等は魔法を無効化する装備をしてるみたいだから無効化を無効化する様にしといて」
「難しい注文すんなです!」
とか言いながらもやってくれるそうだ。ツンデレどころかデレデレじゃないか。愛い奴よ。
魔法が使えるならフィーリア一家の面々もマッチョ如き楽勝だろう。
「さぁ、行くがいいわ!ペロ帝国なんぞ今日で滅亡させてやるのよ!」
私の号令と共にそれぞれ防壁から飛び降りて行った。門を開けて出陣はしないスタイルらしい。
昨日は奴隷兵は見学だったらしいが今日は参加させている。戦に使わないで何の為の兵なんだと。
5人セットで戦えばマッチョ相手でも何とかなるだろう。
「さてメルフィ、私達は私達で楽しむとしましょう」
「何?」
「新しい戦争をしてみましょうか」
殺伐としているから見ててあんまり楽しくないのだ。
だったら面白くすればいいじゃない。
☆☆☆☆☆☆
「さあ、両軍相見えました。アルカディア国とペロ帝国の世紀の対決、間も無く開戦です。実況は私、精霊ニュースでお馴染みのメル・フィーリア、そして解説にはワンス王国五丁目が生んだ成育不良児であるペド・フィーリアさん、腰巾着のキキョウでお送りします」
「幼女が蔓延ればコストも安く済む、この私こそがペドちゃんよ」
「……キキョウです」
「もっと熱くなれよ!」
という事でただ見てるだけでは暇なので解説とかやってみる事にした。
これで殺伐とした戦場がスポーツマンシップに溢れる場へと変わるに違いない。
「あの娘達には言ってないけど、ボテ腹を見事討ち取った者には特別ボーナスを与える予定よ」
「ほぅ……選手の面々を見ますとニボシ選手が一歩有利と言ったところでしょうか」
「いいえ、魔法が通用する以上フィーリア一家は正に必殺の亜空間落としを使用してくるわ。狩る速度も考えて数が多いフィーリア一家の方が有利と言えるでしょう」
「なるほど、という事は奴隷兵達のみが厳しいと言ったところですね」
「そうね……ニボシの後ろに引っ付いてボテ腹が現れたら掻っ攫うって手もあるでしょうけど、それでも難しいわ」
まぁ奴隷兵達はコツコツとマッチョを倒していってもらおう。
ボテ腹は無理だと思うので3マッチョ毎に報酬を出すという破格の条件にしてるし。
フィーリア一家は15マッチョだ。
「魔法が使えるという事はフィーリア一家がいきなりボテ腹の方へ転移する可能性も有りますね」
「無いでしょう。抜かれたら私達に危害が及ぶ可能性があるし、私に甘い連中は誰一人として抜かさない戦いをすると思うわ」
「愛ですねぇ……さて、ペロ帝国の者達が迫ってきました。いよいよ死合開始です」
マッチョ達が射程圏内に入ったのか、ユキとサヨが広範囲の魔法を放った。属性としては風だろうか、周りをあまり荒らさない様に配慮したのだろう。
それを合図にアルカディア側が一気にマッチョ達に詰め寄る。
「先手を取ったのはユキ姉とサヨ姉ですね」
「狙いは砂埃による目くらましと言ったところね。味方には一切無害の良い手と言えるわ」
「元気なニボシ様は見てて爽快です。あれだけの速度で走り周りながらも出会うマッチョ全て屠っていますよ」
「スピードではニボシが有利か、フィーリア一家は予想通り亜空間を多用してるわね。時間効率を考えたら当然と言えるけど」
と言っても使えるのはユキとサヨだけだ。残りの皆はそれぞれ武器や精霊魔法で対処している。マリアだけは物理で殴っていくが……亜空間以外は大してダメージを与えられないというのにマリアだけは確実に沈めていっている。
ニボシに比べると劣るがやはり馬鹿力だ。だてに年を取ってない。
「フィーリア一家は二手に別れましたね。一部の者は待機して迎え撃つ様です」
「打ち漏らし対策ね。殺生が不慣れなマオは当然ながら待機組か」
「しかしマッチョにはワイヤーがあまり効果ないようで」
カッチカチだな。どこぞのドラゴンに匹敵する硬さだ。
マッチョの腕や足目掛けて飛んでいくワイヤーは総じて弾かれていた。
「攻撃を諦めたマオ選手はどうやら巻き付けに変えた模様です」
「でもダメね、あっさり引き千切られるわ。もっと強化して作るべきだったか」
まぁあんまり強すぎる武器よりあのくらいの方がいいか。様は攻撃する箇所が悪いんだ、急所を狙え急所をっ!
マオは劣勢だがルリがそれをフォローしているので問題ないだろう。
問題の奴隷兵達だが、ちょうど数少ない男奴隷が身体を張ってマッチョの動きを止め、後ろからディーセットが頭を凍らせて動きを鈍らせる。
その隙に何時の間に参戦したのか妖精達が顔面に水をぶっかけて再びディーセットが穴という穴を塞ぐように凍らせた。
「ほほぅ、中々のプレーが出ましたね」
「如何にマッチョだろうと呼吸出来なきゃ死ぬのみ。自分達で考えた手としては良い手だと言えるわ、ただ妖精が居なかったら他のマッチョに邪魔されて失敗してた可能性が高い」
「何時の間に妖精が来たのでしょうね」
「見えないだけでその辺にいるじゃない」
この解説席にだっているだろう。ウチの者なら手伝ってと言えば姿を現して普通に手伝ってくれる便利な存在である。きっと現在戦をしてるとすら分かってないだろう。
妖精達のお陰で奴隷兵達も何とか頑張って撃破していってるしこっちも大丈夫か。
他の奴隷兵達は言われた通り5人セットで戦っており、二人が囮として動いている内に残りが鍛えられない急所を狙っていく。奴隷兵達の相手をしたマッチョは例外なく目に刃物を突き入れられていた。教えてもいないのに中々にえぐい戦いをする。
破竹の勢いで進んでいたニボシだが、何時まで経っても元気な姿にこれはアカンと思ったのかマッチョ達が集団で攻めだした。
死体マッチョで防御しだした事でニボシの勢いも落ちる。ただ流石はホシオトシというかサヨみたいに捕まる事は無さそうだ。
にしても死体防御とかとてもフォース王国で仲間が死ぬたびに盛大なお見送りをしていた奴等と同じとは思えんな。改造されて思考まで変わったのか。
そう言えばペロペロやかましい連中だったが今日は雄叫びを上げる以外は静かだ……やっぱ何か盛られてるわ。
まぁ昨日サヨを始末出来るチャンスだったのに猥褻行為に夢中になって結局ニボシに邪魔されたもんな、そりゃ私でも何やってんだと怒るわ。
しばらく観戦していたが、大体同じ様な戦いしか見られないので解説する必要がなくなってきた。
メルフィは元気に実況しているが、私とキキョウは話す事もなく飽きてきた。
「そうだ、ハーフタイムだ」
「おっと、確実に飽きていた姉さんがここで動いた!」
「私の実況は要らん」
もう数十分は戦っている。
スポーツならここいらで休憩するのが常識ってもんだ。人外組は未だに元気だが奴隷達が滅法辛そうだし丁度いいだろう。
ニボシへの嫌がらせの時に使った縦笛があるしこれで合図を出そうか。
「メルフィ、皆に笛の音が届くようにして」
「……笛?」
素に戻ったメルフィが疑問を浮かべるが風の精霊魔法で届くようにしてくれたので思いっきり笛を吹く。
「ぷぃーーーーーーーーーーーー!!」
「……ああ、スポーツ試合で言う所のホイッスルですか」
「なるほど、真面目にふざけている姉さんらしい所業です。しかし、今の笛が何の合図か分からないのか味方が混乱しだしました!これはピンチです」
「マジかよ」
私達の身に何かあったと勘違いしたのか。確かに優勢だった人外達がこっちを気にするあまりに動きが止まってしまった。
サヨが居るせいかユキも一緒に捕まってエロい目に遭うかってところで転移でマオ達の居る場所まで下がり逃れる。
その後は奴隷兵達に纏わり付いていたマッチョ共を片付けてから撤退する様に指示をしているようだ。
「姉さん……怒られそうだから言い訳を考えておくべき」
「すでに考えてあるわ」
「流石姉さん」
まず奴隷兵達が帰還してきた。その後でフィーリア一家の面々が順次戻ってくる。
ニボシは最後まで意味が分かってないのか戦っていたが、マリアが出向き説得でもしたのか二人して戻ってきた。
「で、急に謎の笛を吹いたのは何故でしょう?……特にここが攻められた訳でも無さそうですし」
「ハーフタイムよ。30分は休憩する様に」
「何遊んでるんですか」
「あんたらはともかく奴隷兵はキツそうじゃない」
「そりゃ、まあ……」
何時間も戦い続ける戦争なんて現実では難しい。交代で休憩するのが普通なんだろうがウチは人材が少ないし。
「実はただ休憩させた訳じゃないの、監督兼解説として言わせて貰うわ」
「監督?」
「あちらさんは本気で攻めてなかったわ。ユキの話では率先して前に出てきそうなボテ腹も後ろに下がったままだし……あんたらが現れたら戦う前から徐々に後退してたわ」
「誘い込まれていたと?」
「かもね。ちょうど死体と挟まれる形になったらゾンビとマッチョで挟み撃ち、その間にここを別働隊が攻めるってのが相手の考えかもしれないわ。というかゾンビには注意しときなさいよ。これまで見た限りではゾンビほど有効な駒はいないじゃない」
「確かに死兵の事を考えるべきでしたね。しかし数的に別働隊は無さそうですが……」
頭の固い奴よの……何もペロ帝国だけで攻めてきたとは限らないというのに。
クソな国とはいえ他国が手を貸さないという可能性はゼロではない。ウチみたいに人外が手を貸してくるって事もある。
「とりあえず休みながら相手の出方をゆるりと見ましょうか」
「えらい暢気ですね」
裏でマッチョ共を操っている奴が小物そうだから負ける気はしないもん。
私達がマリオネットを倒してからしゃしゃり出てきたみたいだし恐らくマリオネットには逆らえず大人しくしてた口だろう。
つまりマリオネットよりも格下。如何に海を越えてきた猛者だろうがその時点で大した事無い相手を分かる。ドーピング以外に何を恐れろと言うのか。
「ほふぅ、ルリに出してもらう紅茶って同じ味だから飽きるっちゃ飽きるわね。美味しいけど」
「贅沢な奴じゃの。マオ殿なんか毎日オレンジジュースを文句を言わずに飲んでおるわ」
「ジュースばっか飲んでんじゃねぇ」
「だ、だって美味しいから……」
無料で何時でも飲めるんだから美味いものを飲みたい気持ちも分からなくもないが……
奴隷兵なんかは水ばっか頼むから逆に良い物を飲めと言いたい。
「ですー」
「ニボシは牛乳だろ」
「誰もそんな事聞いてないのです。何か来るのです」
何か来るのですって事は別働隊か?
そういや1日経ったしひょっとしたらドラゴン達かもしれんな。
しかし上を見ても何も見えなかった。て事は下か……じーっと見てたら門より数百メートル手前で何処かで見た事がある黒い全身鎧を来た集団が現れた。
「お母さんの言う通り別働隊の様ですね。あの姿はもしかしなくとも自称魔族な方達でしょう」
「そう言えばライチが離反を考えている部下達が怪しい連中と会ってるとか言ってたわね」
その連中ってのがペロ帝国だったって事か。よりにもよってめんどくせー奴等と手を結びやがったな……異世界人みたいに妙な力を全員が持ってるんだろ?……ありえねー。マジ卑怯くせー。
来てしまったものは仕方ない。とりあえず二杯目の紅茶でも飲みながら考えよう。




