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幼女、賠償として奴隷達を貰う

 後の事を考えると必ず始末しておかなければならない奴がいる。

 例えばこの目の前にいる伯爵の娘と母親とかな。


「あなたの手にかかるくらいならわたしは自害いたします」


 こいつが自害するだけならまだ良かった。


 問題は逃げ惑うだけであった使用人共がこの母娘を守る為に私達に牙を剥いた事。

 身を挺して二人を庇う者、武器を持ち私達に刃向かう者。

 後者は当然殺しておいた。


「ルリ、この町って未だに逃げてない住民が居たわよね?」

「うむ?……ああ、おるぞ」

「そういう事……こんなまともに生活出来なくなった町を未だに逃げ出さずにいる理由ってのはお前達か」


 あの伯爵と馬鹿息子を慕ってこの町に残ろうと思う民はいまい。

 ただ行く宛が無いのかと思った、けど違った。


 もはや民すら見逃す訳にはいかない。

 ここまで慕われる者を殺されたのならどんな手を使ってでも私達の元へ報復に来るかもしれない。

 クソ弱いくせにそこまでするのが人間だ。例えそれが他人の為のであっても。


 勿論慕う云々で残った訳ではない住民も居るのだろうが、疑わしきは始末するに限る。


 そして私にそう思わせた人たらしがコイツ等か。

 金で雇われてるだけの使用人達は同僚を殺されようがそれでも二人を守る。

 果たして私が金で雇われただけの使用人にここまで忠誠を誓わせられるのやら……無理だろう。


「メルフィ、この町に残っている住民を一人残さず殺してきなさい」

「……わかった」

「なぜ、民にまで手を出すのですかっ!!」

「お前のせいだ小娘。嫌われ者は臆病なの、特に人間が一番怖い……慕われるお前達を見てわかった。お前達を殺した後、この町に残る民は私の敵になると」

「……ならばお二方を見逃しては頂けませんか?」

「すでに父は殺した。逃した所で追放だってされる。だから同じ事よ……コイツ等と、二人を失った民が報復を考えない保証はない」

「私達が、説得します」

「私が信用出来るのは己とこの娘達だけよ」


 使用人共に守られてから死ぬ気配が見られない。

 自害するなら早くしろってんだ。

 すでにメルフィは外へ向かった。あの娘はあれで甘くない娘なので言われた通りにするだろう。


「この二人って悪いことしてないんじゃないですか?」

「お馬鹿ねマオ。復讐したりされたり、止めるにはどちらかを根絶やしにしなきゃいけないものよ」

「そもそもお二方がこの馬鹿息子の凶行を止めておけば良かったのです。ま、隠れてコソコソとやっていた様なので分からなかったのでしょうが……それでも謝罪の一つも無かったので許す価値はありませんね」


 抵抗する意思が見られる以上こちらから仕掛けてぶち殺した方がいいのだろうか。

 それとも……もっと遊んでやろうか。


「いいでしょう。一人だけ見逃してあげる。ただし、自害せず自分の手で身内と使用人共の命を奪った場合に限るけど」

「わたしに、母を殺せと?」

「くふふふ……一人だけと言ったけど、別に貴女でなくてもいいのよ?すでに自分が助かる気でいた様だけど、所詮は我が身が可愛い貴族様なのかねぇ」


 その事に気付いた小娘が悔しそうに顔を歪めた。

 ユキに途中で殺した兵士が持っていた剣を母娘の前に置く様に指示した。そのまま殺すのかと勘違いした使用人連中が邪魔してきたが風魔法で吹き飛ばす。


「どうぞ?」

「……幼い割に非道な子ですね。この様な方に妖精は従っている訳ですか」

「へぇ、あの書状からそこまで判断出来たのね。奥様は結構優秀みたい」


 コイツらが人を従える能力が高いとすれば、私は人外を従えるのが上手いって訳だ。

 頭は悪くなさそうなのに息子の方はどうしてこうなったのやら。


「この場を妖精達に見せて目を覚まさせてあげたいです」

「おめでたい事。なら聞きましょう、お前達は優しいからとか、優秀だからと悪魔に従ったりするの?しないでしょう。妖精だって同じ事よ、どっちかと言えば人間嫌いだしねぇ」


 もはや言い合う気もないのか貴族の妻は無言で剣を拾う。

 そしてそれを娘に渡した。最終決定は小娘がするという事だろう。


「アイリーン、貴女が決めなさい」

「……」

「私も、使用人達も、誰もが貴女を恨んだりしないわ」

「……わたしは、誰も選びません。一人生き残るくらいなら、皆で共に果てる方がマシです」


 おやまぁ、そうなったか。

 一番くだらなくつまらない展開じゃないか。素直に自分には母親や使用人を殺す事は出来ないと言えばいいものを。

 アイリーンとかいうのは小娘の名前だ。どうせすぐ死ぬし覚えなくて良し。


「お勉強よマオ。これが周りを見ていない上に自分に浸っている馬鹿がする判断の一つよ」

「はぁ、どういう事です?」

「見てれば分かるわ」


 小娘の決意に母親も使用人達も涙を浮かべながらも微笑んでいる。

 実に美しい光景じゃないか。

 悪人に討たれる事なく、他人の手を汚す事もなく自害で幕を降ろすのだろう。


 それはもう、叶わなかったのだがね。

 母親の腹からは剣が生えていた。

 そのまま強引に剣を振りぬき身体を切り裂くと今度は小娘に剣が振り下ろされる。肩から胸の辺りまで刃が到達しているのですぐに死ぬだろう。


「……に、いさま?」

「ふざけるなよ、父上が居なくなった以上俺が領主だっ!妹の分際で勝手に決めるなっ!……お前達が死ぬつもりなら俺だけが生き残る、俺さえ生きていればグリューネル家は復興出来る」


 この屋敷の者を全て自分の手で殺せば一人だけ逃がす。

 そう言ったばかりなのによもや頭に残ってなかったのか馬鹿母娘は。結局はこの貴族一家は馬鹿ばっかだ。


「くふ、馬鹿な息子は優秀な妹に劣等感を抱いてたのかもね」

「命乞いをする屑ですしね、全員を殺してでも助かりたいと考えるのも不思議ではないです」

「家族だろうが牙を剥くって事が分かって良かったわ」

「私はそんな事しませんが」


 始めの内からこの展開に持っていってたのなら馬鹿息子がご乱心しなかったかもしれないが、目の前で王族の首を落とされ、父親をあっさり燃やされたのだから恐怖でまともに思考出来てないはず。

 我に返った後で自責の念にかられて死ねばいいが。


 哀れにも実の兄であり息子である男に剣を向けられた母娘は死んだ。

 この男が眼中に無かったせいだし自業自得だわ。普段からお互い無関心で暮らしてたのかもな。


 私のアリスを見習え。

 私の為に未来から来るとかアリスちゃんマジ天使。ウチの妹こそ至高である。


 おっと、今はそんな事考えてる場合じゃなかった。

 この場にいる使用人達もすでに斬られている。死ぬ間際の憎悪の目は私ではなく馬鹿息子に向けられていた。

 発端もコイツで慕っていた母娘を殺したのもコイツ自身だってんだから恨みは相当なものだろう。


 この様子では伯爵と馬鹿はあまり評判がよろしくなかったと見える。


「1階にまだまだ生き残りはいるわよ、父親の様に燃やされたくなかったらとっとと片付けてきなさい」

「……っ!」


 怯えながら部屋を飛び出していった。

 私達はのんびりと下に向かうとするか。


「フルートとやら、父を目の前で殺された馬鹿息子が死の恐怖からおかしくなって一族と使用人を殺して回ったとちゃんと報告しといてね」

「……その様に」

「後は勝手に町の住民を殺したのも馬鹿息子だと勘違いしてくれれば万々歳だけど」


 それは難しいだろうな。メルフィは魔法で殺す訳だし……でも貴族である以上馬鹿息子も魔法は使えると思う。

 奴が魔法を使えるという事実さえあれば何とか罪をなすりつける事が出来るかも。


「無抵抗の民を殺害した罪も奴に背負ってもらいましょうか」

「主殿でなければ反吐が出ると言っておった所じゃ」

「言ってるじゃない」

「わたしは何も聞いてません」


 私を殺そうとした罪は重いのだ。死してなお人から恨まれる存在になってくれたまえ。


 下に降りると虐殺の真っ最中だった様であちこちで悲鳴があがっている。

 逃げ足の速い使用人に対しては魔法を使って殺していた。何て私達にとって都合の良い働きをする貴族なんだろう。

 これで奴が魔法を使えると分かった。


「ユキ、ちゃんと生き残りが隠れてないか探っておいて」

「わかっております」


 隠れている奴に対しては馬鹿息子に教えてやって殺しに向かわせた。

 しばらく待っていると馬鹿息子が肩で息をしながら戻ってきた。

 ユキにちゃんと全員死んだか確認してから奴を見逃してやる事にする。


「大丈夫みたいです」

「よろしい。じゃあ結界を解いておくから無様に逃げるといいわ」


 こちらを見る事無く走って外へと飛び出していく。

 従妹の敵討ちとか言ってた奴が我が身可愛さに母と妹を殺すとは醜い事だ。

 使用人達が反旗を翻して逆に殺されると思っていたけど、貴族に逆らわないって負け犬根性は思った以上に染み付いているみたい。


 私達もここに用はなくなったので外へ出てメルフィを探す。

 魔法が発動された場所を探って出向いたのですんなり見つかった。


「ご苦労様。全部始末した?」

「ん。何か貴族の息子が逃げてたからついでに燃やした」

「くふふ、そうね。メルフィはあの場に居なかったから見逃すなんて話知らないものね」

「仕方ないですね。不幸な事故です」

「嘘付け、予定通りじゃろうが」


 残るは後始末だ。

 メルフィの精霊魔法でユキの姿をこの町に残っていた民の一人に変え、近くの町か村に貴族の息子が民を殺しまくったと情報を流す様に指示を出す。

 私達は見逃した事になってるし、どこかへ逃走したとでも言っておこう。

 ちょうど燃えて誰の死体か分からない状態だし。


 馬鹿息子がどうなったかはしばらく経てば追放された後に魔物に食われたとでも思うだろう。


「終わったわ。銀竜と白竜にはアルカディアに向かう様に言っておこうかな」

「ならワシが伝えておくのじゃ」


 あと賠償金がどうたらってあったっけ?

 いくらぐらい貰えるんだろうか……いや、金とか要らんな。


「賠償金の代わりに奴隷を10人くらい貰う事にするわ」

「それは構いませんが……」

「根こそぎ貰うつもりだったけど、奴隷商館が無くなったら新しい見所のある奴隷が入荷されないししゃーない」


 一番高い奴から順に貰ってやるとしよう。

 でも一番高い奴っていくらなんだろうか?数千万くらいにはなると思うが……




 銀竜と白竜達は暴れたりないのか魔物を狩ってくると飛び立っていった。銀竜が白竜を無理やり付き合わせた形だったけど。

 奴等の事だから雑魚は狩るまい。


「後始末も良し。あっけないもんよ」

「ただの面倒事じゃったの」

「いいえ、収穫は色々あったでしょ。妖精達の力に優秀らしいエルフ、ついでに優秀かもしれないタダの奴隷が10人ほど」

「交渉が成立しないのであれば貰えないのじゃろ?」

「呑むでしょ。賠償金の代わりだし、そもそも私達に逆らえないみたいだし」


 どうせ奴隷商館に行くんだ。私達も王都で待つ事にしよう。

 飛竜なんぞより早いしフルートを送るついでに転移で行くか。マリアが旅を進めんなと言ってたし馬車での旅はあっちが終わってから再開しよう。

 とりあえずユキが戻ってくるまで待つ。






 という事で転移してから王都で一泊してた。

 久しぶりにお高い宿屋に泊まってみたが、馬車の内装が高級すぎて真新しさが無かったな。

 たまに宿に泊まるなら普通の宿か安い宿の方がいいかも。

 ご飯はまあまあだった。久しぶりにスパゲティを食べたけど、魚介パスタが無性に食べたくなったので今度作ってもらおう。


「で、話はついた?」

「大丈夫です。あと、あの町の事も言われた通りにお伝えしておきました」

「ご苦労様。元城仕えな割に虚偽の報告をあっさりするもんね」

「……こちらとしましても思う所はありますが、これ以上貴女様達にちょっかいを出す者が出ては困るのです」


 なぁるほどねぇ、外道相手に下手に出なきゃならないなんて可哀想だこと。

 私としても妖精と精霊を使われたら困るなんてもんじゃないから仕方ない対応だとは思うが。

 恐れられる方としては気分はいいけどなっ!


 場所は変わって奴隷商館の中である。

 賠償の代わりだし高い順に20人ほど連れて来いと言っておいた。高かろうが使えないのは不要なので20人ほど頼んだ訳だが……


 今回は珍しく商館のオーナーが対応してくれた。

 まぁ王族からの書状を渡されたら上が対応しても不思議じゃないが。というか大事な客扱いされるし普通はそうする。


「……国王様からの謝罪との事で、私個人としても手放すのが惜しいと言える奴隷達をご用意致しました」

「お、期待できる響き」


 ぞろぞろと案内された部屋に現れた奴隷達は言うだけの事はあって見目麗しい者が多い。

 しかし私としては物申したい。


「女ばっかじゃない。こう女ばかり増やしても非生産的だわ」

「はぁ、と言われましても高い方からと申されますと女性ばかりになるのは必然と言いますか」


 男の奴隷ってのは安いのしかいないのか。

 そりゃいいや、ちょっと金を貯めたらゴッソリ買えそう。


「いざとなったらお母さんに生やすという手も」

「そんな事したら縁切るけど」

「縁を切られたらもはや他人、という事で堂々と襲えます」


 もう何を言ってもダメだろうな。

 言うだけだからいいけど。


「ところで凄い方がいらっしゃいますね。お母さんが居なければ同性であっても惚れてしまったかもしれません」

「あれな……」


 妙に目がいってしまうメルフィとは違ったタイプの美人が居た。

 腰まで伸びたほんの僅かに水色が混ざった様な銀の髪に白い肌、伏し目がちな表情はどこか儚さが感じられる。憂いを帯びた目ってこんな奴か。

 何か不幸な人生送ってそう……薄幸美人って感じ。

 サヨが銀だと言い張る髪と違ってこちらは銀だと最初から判断出来る。こいつを見せたらサヨの悔しがる姿を見れるだろう。


 ふと周りを見渡せばマオやルリまでほぅ……っとうっとりしながら見つめている。うぎぎ。


「あれいくらよ」

「10億になります」

「たっかっ!?」

「御覧の通り誰もが魅了される程の娘なので。買い取った時も莫大なお金を支払いましたし……お恥ずかしながら私も彼女にひどく惹かれてしまいまして、手放したくないと思ってしまう程です」

「でも売るのか」

「商人ですからね。商品として入荷した以上はお売りせねばなりません」


 商人としての矜持って奴か。でも値段的に売るつもりないだろ。金持ってそうな貴族とか買いそうだけど何で売れ残っているのか。オーナーが貴族には隠してたりしたのか?

 私達はタダで頂けるので貰えるんだけど……


「そいつ使えるの?」

「彼女は吸血鬼です。永遠にあの美貌を楽しめるかと」

「いや、強さとか聞いてんだけど」

「……吸血鬼ではあるのですが、彼女は普通の人間の女性と変わらない身体能力でして」

「教養は」

「ある程度の作法と読み書きでしたら」


 使えない奴じゃないか。

 見た目だけで高いとか要らないんですけど。


「使えないなら別の使えそうな奴を頂きましょうか……とは言っても天狐族が多いわね」

「彼女達は最近入荷した者達でして、天狐族の中でも選りすぐりの者を選んで売りにきた様です。天狐族としては高めの3000万ですね。皆同額でございます」

「天狐族もいよいよやばいみたいね。なら彼女達は全員もらっていきましょうか、まだ活きが良さそうだし」

「では8名は彼女達とします。残りは2名ですが、お決まりになられて?」


 決まってない。エルフでも居ないかと期待したが居ない様だし、残りの12人の内9人は人間じゃねぇか。人間は要らんな、うん。

 となると薄幸美人の他の2人って事になるのだが……


「残りの2人の種族は?」

「角のある方が龍人と人間のハーフです。もう片方は見てお分かりだと思いますが兎の獣人です」

「龍人の方は使えそうね。兎は……個人的に思い入れがあるわ」

「見た目の可愛さから愛玩用になりますので力はそこまで強くありませんが、素早い動きが出来ます。後は……彼女は料理が物凄く上手という事でしょうか」

「いいじゃない。店のコックにでもしましょう。なら残りはその2人で」


 よしよし、タダで良い人材が手に入ったじゃないか。

 馬鹿な貴族に暗殺されそうになった甲斐があったってもんだ。

 天狐族に関しては戦闘ではそんなに活躍しないだろうが見た目が良いし頭も良いらしいのでメイド兼キキョウの元で働く文官にでもしよう。


 気分良く帰ろうと思ったら例の薄幸美人がしずしずと歩み寄り、正座をすると深々とお辞儀をした。というか土下座や。

 お買い上げありがとうございますと言ってるかの如く。


 いや選んでないんだけど。


「意味分からんけど別に貴女を選んでないから」

「……」


 顔を上げはしたが何も言わなかった。喋れよ。


「彼女はその、喋れない訳ではないようですがあまり言葉を発しません」

「躾がなってないわね」

「……わたくしめを、連れていってくださいませ」


 やぁん……良い声。

 鈴を転がすような声とはこういう声の事だろうか?

 ユキ達も見惚れるならぬ聞き惚れている様で……ハッ!


「う、ウチのメルフィだって良い声してるわよっ!」

「何故私で対抗する」

「容姿と声が良いからって調子に乗るんじゃないわよっ」

「負け犬っぽいからやめるのじゃ主殿……」


 しかし何だって自分を売り込みに来るのだ。他の金持ちに飼われればいいじゃないか。


「お母さんの人外キラーの能力が働きましたね」

「そんなの持っとらん」

「この者が自分から連れていけと言うんだし連れていけばいいのじゃ」

「目の保養にしかならない娘が何の役に立つっていうの、せいぜいその良い声を生かして私の作品を朗読するとか歌うとかそんなもの……それはいいな」

「流石姉さん良い考えをする。私には食欲が失せるくらい荷が重過ぎると思っていた。是非ともそうするべき」

「何だとてめぇ」


 宿屋でばくばく食べてただろうが。

 しかし、うーむ……タダで10億を頂けると考えると大きい。でも過ぎたる美人は争いの種になりかねん。

 こういう時は最終手段としてリンに任せよう。

 肩に乗ってたリンをポイっと薄幸美人に投げてやると驚いた事に腕に着地したあとジャンプして頭の上に乗った。けどすぐにこちらに戻ってきた。


「判断しにくい」

「頭に乗るくらい気に入ってはいますが、恐れ多くてすぐに戻ってきたとか」

「まあそこまでリンが気を許すならいいか。じゃあ天狐族を一人却下してコイツを選びましょう。却下した天狐族はお金を払うから一緒にちょーだい」

「かしこまりました。すぐに手続きをして参ります」

「……ありがとうございます」


 オーナーと奴隷達は退出していった。


 むぅ……結局役立たずを頂いてしまった。

 吸血鬼と言っていたが、良い声以外に何か使い道はないもんだろうか。


「主殿、あ奴は加護も持ってないのに精霊がやたら懐いておったぞ」

「ふーん、何でも惹きつける魅力の持ち主って事か。なら誰かを裏切らせたい時とかに使えるかも」

「ゲスな使い方はすぐに思いつく主殿じゃの」

「私はお母さんが一番なので特に惹かれる事はありませんでしたが」

「わたしもです」


 魅力チートも私には敵わなかったか。マオはうっとりしてたくせに良く言う。

 しかしリディアの側に居た吸血鬼は強かった筈だが、本当に人間並に弱いままなのか?

 後で色々と強化しないか試してみよう。


「支払う予定だった賠償金よりかなり高くつきましたね。何と言いますか、ご愁傷様です」

「そうだフルート、この国の王ってのはお馬鹿な王子と違って優秀みたいね」

「勿論です。現在の王と第一王子は私が教育致しましたので」

「自画自賛ね。それならキキョウを上手い事教育してくれそうで宜しい」


 ただそうなると見た目は若いフルートだが中身は割とババアという事になる。

 ウチにまた見た目詐欺のババアが入ったか。


 こっちはこれで後は暇するだけだが、向こうはどうなってるやら……まだ戦い始めてはいないだろうけどサヨの事だから罠を張ってる最中だろう。

 始まったらこっそり観戦しに行こうか?

 何か心配性のおかんみたいでやだわ。


 たまには冒険者として活動してみよう。魔物をぶっ倒す以外の事で。


「そうだ、宝探しをしよう」

「急にどうされました?」

「冒険者、いえ冒険家と言えば宝探しよ。この国にだってダンジョンの一つくらいあるでしょ」

「ある事はありますが」


 あるなら行こうじゃないか、奴隷達の訓練がてら潜るとしよう。

 いきなりの実戦がダンジョンだが、まあ私達も行くしきっと大丈夫だろう。

 前回は骨に会って太古の植物の苗や種を頂いたが、今度は金目の物を探すとしよう。伝説のと名が付く類のものを発見してみたい。

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