幼女と黒い軍隊
「最近のお姫様というのは妙にアグレッシブなのですね」
「あいつらが特別なんでしょうよ」
「あの、ここに向かってる方達ってお姫様、なんですか?」
「そうですよ。ワンス王国の姫にトゥース王国の姫、オマケにエルフの姫です」
「……エルフの、姫」
ふむ、黒エルフにとってはエルフの姫が来たって事は良い気分じゃないだろう。
表情に憎しみではなく困惑の表情が浮かんでいるのがあの姫さんにとっては救いだな。後で二人きりにして殴り合いでもさせれば仲直りするハズだ。
「お姫様とお知り合いなのですか?」
「この場に居れば皆お知り合いになれるから大したもんじゃないわよ」
「いや凄いでしょ」
「そう言えば皆さんの名前とか聞いてませんでしたね」
「え、今そんな事してる場合なのかなっ!?」
「アトロノモスはナキリが何とかしてくれるでしょ」
「今まさに何とか出来なかったんですけど……」
ぐは……とナキリは地面に両手をついて倒れこんだ。きっとアトロノモスとの戦いでダメージを負っていたに違いない。そういう事にしといてやろう。
ナキリの取り巻き達は髪の色が赤とピンクと青と分かれている。赤が二人にピンクが一人、そして青が二人だ。赤色の戦士な双子がステラとラクス、ピンクの回復使いそうな奴がパステル、青い片方の戦士がマージュ、そして残る青い魔法使いっぽいのが
「ペペロッテ」
「この中では一番良い名前ね」
「……馬鹿にしないで」
「え?素直な感想だけど」
「え?」
え?
「……そっか。貴女も変な名前だった」
「なんだと」
「失言。謝る」
「うむ。メルフィに似てるわね」
主に口数の少なさが。似たような奴も居るもんだ。髪の色は違うけど。
「魔法使いみたいですし、貴族の方ですか?そっちの桃色の方も含めて」
「没落したからもう貴族じゃない」
「へー、家名は?」
「私も没落した身ですので捨てました」
「同じく捨てた」
ふーん、詳しくは聞かないけどな。
しかし没落した貴族なんてそうそう居ないってのにナキリの奴は良く二人も取り込んだもんだ。
「んんっ……あー、ちなみに言っておくが引き抜きは無しだ」
「お前が言うな」
「……ごめんなさいっ!もうフラグ立てようとか思いませんから引き抜きは勘弁して下さいっ!」
「別にそんな事するつもり無いわよ。てか簡単に勧誘される訳ないでしょ」
「……何故かは分からないけど、君ならあっさり引き抜いてしまう気がしたんだ。済まない、取り乱した」
「ふーん、ペペロッテなら来てもいいわよ?」
「行く」
「ふぉおおおおおおおおおおおおおっ!!」
私もペペロッテも冗談なんだけど……よほど自信が無いのか。魔法使いは間に合ってるからもう要らないっての。
あの大きい魔物を倒したら無かった事にするとペペロッテに乗せられてナキリは再びやる気になった。扱いやすい奴よ……
「ドンちゃんっ!無事だろうけど無事だったっ!?」
「こんな場所まで何で来たのよ」
「だって幻獣達って私がお願いしなきゃ動いてくれないもん」
「ミラは分かったけど、そっちのは?」
「これでも姫騎士なんて呼ばれるくらいには戦えるわよ」
「それよりも誘拐された人たちは?」
ああ、そっち目的で来たのか。すでにジェイコブ達が避難させたから今何処に居るかは不明なんだけど。
その事を告げると幻獣何体かと兵士十数人で避難した方向へ向かわせた。保護しに行ったのだろう。
「はぁ……ちゃんと誘拐された人達が無事で良かったぁ」
「男達は殺されたみたいだけど」
「……犯人は?」
「そこのアトロノモスって化け物を召喚したは良いけど食われたわ」
「ちっ……制御出来ない奴なんか召喚するから。しょっ引けなかったのは悔しいわね」
私がぶち殺しましたと言うのは黙っておく。言った所で手柄にもなりゃしない、せいぜい時間取られて長々と経緯を喋らされるだけだ。
「あの大きいのはどうしよう……あんなのウチの国まできたら潰されちゃうよ」
「そうねぇ、ちょうど倒れてるみたいだし総攻撃で一気に仕留めるか」
「無駄よ。奴にダメージを与えられるのはこのナキリくらいなもんでしょ」
「は?」
「そうなの?」
「ええ、すでにユキ達で攻撃して無傷だったのは確認したわ」
おぉ、と皆に注目されて更にやる気になったのかナキリは闘士を漲らせている。見ているのがお姫様という効果もあるのだろう。
「ドンちゃんドンちゃん」
「何よコソコソと……」
「あれ、ドンちゃんなら何とか出来るんでしょ?」
「そうね、やろうと思えばね。私じゃなくても仲間二人が何とかしてくれるでしょうよ」
「やってよ……」
「やぁよ。あの怪しいワンス王国の兵士達まで居るじゃない」
今はナキリを標的にしてるので私達の事は観察されてないが、アトロノモスを倒そうものならどういう事になるやら。
「ナキリという生贄がいて助かったわ」
「あはは……リーベちゃんにこっそり聞いたんだけど、あの人達ってリーベちゃんの妹さんの息がかかった兵士さんみたい」
「その様子じゃリーベも気付いているみたいね」
「うん、あまり仲が良くないみたいだからリーベちゃんに強力な味方がつかない様に見張ってるのかも」
簡潔に言うと、リーベは身分とか気にせず能力重視で部下を登用してしまうタイプ、それに対して妹は身分重視で固めるタイプと別れているそうだ。
そうなると能力重視な姉の勢力が強くなるのは当然なので妹はそんな姉を見て色々と焦っているらしい。
「民の中では妹さんが人気だけど、城内ではリーベちゃんの評価が高いみたい。それが気に入らないんだろうって」
「偉い身分の奴等はくだらない事を気にするわね」
同じく偉い身分なミラは困った様に笑った。心配しなくてもミラは除くというのに。だが民に好かれるってのは真の悪人には難しい話だ。どっちも悪い奴じゃないんだろう、ウチの国の姫だし。
でも身分を気にせず勧誘しまくるならリーベの方が注意すべき存在じゃなかろうか。
「フィーリア様、この前頂いたあのボウガンでもあれを倒すのは無理でしょうか」
「無理でしょうよ」
ミラが居るという事はもちろんメイド二人と護衛の騎士達もいる。今話しかけてきたのはアリエだが、もうすっかり治ったようだ。
私渾身の作品であるあのボウガンもどきだが、あの矢に込められているのは所詮は魔法、アトロノモスに魔法が効かない以上あのボウガンでは無理だ。
が、今の私ならこの世で一番凶悪な矢を作る事も出来るのではなかろうか?
懸念だったリーベの妹の息のかかった兵士も冒険者に興味無いならスルーして大丈夫そうだし。
「リーベの妹とやらも悪い奴ではないと思うけど、何で監視なんかつけてるのかねぇ」
「そうだね、妹さんはアプリちゃんって言うの。イモとか言われたのはムッとしたけど割と良い子そうだったよ」
「ふーん」
「違うわ。あの子の本名はアッチョンプリケットよ。その名が嫌で自分でアプリなんて渾名を付けたの」
「名付け親の顔が見たくなるくらい素晴らしい名前ね。物凄く気に入ったわ」
どれ、後顧の憂いも無くなった事だしアトロノモスをどうこう出来る矢でも作ってやるか。
私は殺す気は無いから、そうだなぁ……地中に送り返す矢でも作るか。
ただ何処の地中に居たんじゃいって話だが。
「そうだマリア、上空からずっと覗き見してたんならアトロノモスが居そうな場所とか知らない?」
「さぁ?……でもあれくらい大きい魔物が居るのは私がいた大陸だけかも」
「大陸ね、まさか海の向こうって事?」
「そうだよ。空間に引きこもってる内にこっちの大陸に来てたみたい。こっちは向こうと違って自然が豊かだね、大きいのはドラゴンくらいだから自然破壊されないからかな」
「海ですら巨大生物がおりますのに、渡った先の大陸も巨大生物の宝庫なのですか。これは行きたくないですね」
「何にせよ送り返す場所が分かったのならいいわ。と言っても行った事ないから詳しい場所は知らないけど」
そこはサービス満点の奇跡ぱわーにお任せするとしよう。
そう、地底に戻すのではない。元々居た場所そのものに送り返せばいいのだ。
矢先に触れたものを例外なくアトロノモスの住処へと転送する矢。
はい出来た。何の変哲もない矢にそう念じただけだから本当に効果があるかは使わないと分からないが。
地底に強制ご招待か……腹立つ奴にも使える気がするわ。
「こいつムカつくわぁ、って思う奴がいたら矢を放って地底に送るのよ」
「なんて酷い武器っ!」
「はいはい、ちゃんとあの大きいのに当てて帰してやるのよー」
後はミラが何とかするだろう。連れてきた兵士達はまごまごしていて何の役にも立っちゃいない。普通の魔物ならともかくアトロノモス相手じゃ仕方ないとは思うが。
ちなみに幻獣も何もしちゃいない。というかアトロノモスに興味なさげで私達の周りをうろちょろしている。敵意が向けられてないから気にしてないのか。アトロノモスの標的は今の所ナキリだけみたいだし。
奴は今お姫様が居るという事で気力が回復したのか、勇猛果敢にアトロノモスに斬りかかってはイチイチこちらを気にしてドヤ顔している。
ミラはスルーというか気付いちゃいないが、リーベにはロックオンされたのかガン見されている……これは後で私の騎士になれってパターンか。
「そろそろ私も喋って良いでしょうか?」
「怪しい占い師さん……最初は皆して頭大丈夫なのかとか、信用していいのかとか、的外れの占いだったら後で賠償請求しようとか言ってたけどあなたを信じて良かったです」
「ありがとうございますミラ姫様。そういう事はご自信の胸の中にでも秘めておいて下さい」
ミラは正直だった。
お前はさっさとメイド達と一緒にアトロノモスを何とかして来い。
エルフの姫が用事がある人物はもちろんあの黒エルフだろう。アトロノモスが近くに居るってのに談笑してる私達が言う事ではないが、まさかこのタイミングで感動の再会と和解をするつもりなのだろうか?
「お祭りの時ぶりです」
「あっそ」
「私の占いはお役に立てましたか?」
「馬鹿達のせいで喜劇にはなってるわね」
もっとも悲劇ってのが何だったかはともかくだが。
「礼を言っておくわ。個人的に大事な娘とお別れ出来たからね」
「?……詳しくは分かりませんが、どなたかを看取られたのですね。何と言うべきか、ご愁傷様です」
「あ、別に死んだ訳ではないけど」
「あら、それは良かったです」
「それはそうとエルフのお姫様、言うだけじゃなくてちゃんとここまで来たのね」
「当然です。それに救出されていた方達がこのまま北の方に避難するとそれはもう悲惨な事になりますよ?なので手遅れにならない内に援軍をお連れしたのです。ただ、間に合う為にはどうしようかと思いましたが、幻獣を手懐けていらっしゃったので助かりました」
北の方……シックス王国側か。救出されたのは女性ばかり、つまりそういう事。
兵士達がすぐに保護に向かったのも事前にこのエルフから話を聞いていたからか……シックス王国ってのは賊の集まった国なんだろうか。
しかし良く考えてみればかなり距離があるだろうシックス王国までジェイコブ達が避難するとは思えない。貴族だが一般人だかの女性連中を連れているなら尚更だ。
魔物だって向かってきている、ならば馬鹿ではないジェイコブならそう遠くまで避難はしてないだろう。
じゃあ女性達がシックス王国の奴等に狙われるとしたら……
「つまりシックス王国の奴等もここに来る可能性が高いって事か」
「高いというか来ますね。余程の無能者の集まりでなければあの大きい魔物の事は感知できる筈ですから」
「ドンちゃん。あの邪魔な人ってどうにかならない?当たりそうなんだけど」
「まだ居たのか。当たったら当たったでいいじゃない」
「ダメじゃない?」
邪魔ならいいんだよ、奴は考えなしに突っ込む馬鹿野郎なんだから。このままナキリがアトロノモスを怒らせ続けると再びあの攻撃が来るかもしれない。私達はともかく、幻獣や兵士達はひとたまりもないはず。その辺全く考えてないんだろう
「ここは女神様の出番よ。貴女が制すれば信者であるあの馬鹿は言う事聞くでしょう」
「あー、うん」
転移したのか、一瞬でナキリの傍まで行くと何事かを告げる。するとあれだけ好戦的だったナキリが大人しくなった。何を言ったのかは不明だが、やはりマリアの言う事なら素直に聞くようだ。
「さぁ、邪魔者は去った。ミラの実力を皆に見せ付けてやるといいわっ」
「自分の実力の間違いじゃない?」
ぶつくさ言いながらも私が教えた使い方を覚えていたようでぎこちなくだがボウガンもどきに矢をセットしていく。
恐れる様子もなくアトロノモスに向けて構えるミラに対し、当のアトロノモスは特に動く素振りもしない。ナキリという鬱陶しい存在が大人しくなったので比例して大人しくなった様子。
もしかしたら元の場所に帰るという私達の言葉を何となく理解している可能性もある。
ミラが引き金を引き、矢がアトロノモスにぺしっと当たるとあっけなく一瞬で消え去った。
まさに山が一瞬で消えた風に見えて何か不思議だ。
「お、おおおお……お?」
「ここは歓声をあげる所か?」
「……わからん」
兵士達もいきなりアトロノモスが消えた事にまだ状況が飲み込めない様子。
それはリーベも同様らしく、口をだらしなくあんぐり開けていた。
「流石はミラ姫様。お見事でした」
「うん……大きいから当てやすくて良かったぁ」
「ミラ、あ、あなたもやる様になった、わね?」
「やだなぁリーベちゃんってば。これはドンちゃんのおかげだよ」
そういう事を言うとこっちに矛先が来るじゃないか。何の為にミラにやらせたのかと。
そして予想通りギラギラとした目をこちらに向けてくるリーベ……だがそれだけで特に私に仕えろとか言ってはこないみたいだ。何と言うか意外である。
「ち……ミラに釘を刺されてなきゃ強引に引き込んだんだけど」
「何と言うか、助かったわミラ」
「ドンちゃんが城仕えとか似合わないから」
心なしか監視役の兵士達もホッとしている様子。
これであの奇跡人も始末した。アトロノモスも還した。
残るはここに来る魔物達だけだが、それはもう放置でいいかもしれない。
「お姉様お姉様、もうやる事はやったので帰っていいんじゃないでしょうか?」
「サヨ姉はサボってた建国の続きがやりたいみたい」
「しかしあちらの感動の再会がまだ済んでない様子ですが」
その感動の再会というのはエルフ達の事なのだが……どうにも話がおかしい。
てっきりエルフらしからぬ悪魔的容姿のせいで追い出されたのだと思ったのだが
「今頃になって連れ戻しに来たのですか」
「いいえ、ただ貴女が危ない目に遭ってしまう。だから私はこうして来た、それだけです」
「そうですか、恩を売っても私はもう」
「恩を売るつもりはありません。これはただの、私の自己満足な償いです」
「分かりました」
「……と、言っておいてなんですが、もう里には戻る気はないのですね」
「ありません。今の私はただの冒険者、それに戻った所で忌み嫌われた容姿を持つ私がいれば良い顔をしない者もいるでしょう」
「残念ながら否定は出来ません」
黒い翼をバサッと広げ、忌み人アピールしている黒エルフなのだがエルフの姫の視線がどうにもおかしい。
黒い髪に黒い翼はスルーしてどうも胸に視線が集中している気がする。
エルフは絶壁なのは常識、しかし無駄に大きい乳を持つメルフィの先祖帰りなだけあって黒エルフの胸は普通のエルフより少々大きい。
「まさかとは思うけど、忌み嫌っているのは黒エルフの胸の話じゃないでしょうね?」
「そんなわけないじゃない」
「その通りですよ」
「「……?」」
なるほど、黒エルフは自分のエルフらしからぬ悪魔っぽい容姿が原因で迫害されていたと思っていたが、実際は胸の大きさで迫害されていたという事か。何たる不運、実はしょうもない理由でしたパターンとは……
「む、胸?」
「はい。貴女のそのエルフにしては母性溢れる胸です。人間の女性の胸に憧れを持つエルフとしては貴女のその胸は憧れと同時に忌むべき存在なのです」
「と言ってもせいぜいBぐらいしかないでしょうに」
「む、胸くらいで私はあんな迫害されていたっていうの!?もっとあるでしょ、この、黒い姿とかっ!?」
「その姿が原因なら子供の内に追い出してますよ。間違いなく貴女が成長すると同時に膨らんできた脂肪が原因です」
「こ、混血だとか馬鹿にされたのにっ!」
「ですからエルフにあるまじき胸なのでそう言われてもおかしくないかと」
言われてみればそうだわ。祭りで会った時も見た目とは言っていたが黒い羽や黒い髪の事とは言ってなかったもんなー
「そうだっ、暴力だって振るわれた!」
「それは申し訳ないと思いますが、その胸を見て我慢出来なかったんだと思います」
「……そういえば殴られたのって胸ばっかだった」
それで余計に大きくなってたりして。
「苛めてこなかった子達だって皆余所余所しかったじゃない!」
「それは貴女の容姿が過去のエルフの英雄と同じだからです。姫である私と一緒ですよ、凄い人には近寄りがたい、みたいな」
英雄……?
メルフィの方をみれば何のこっちゃと首を傾げている。メルフィの事ではなくその後の先祖帰りした誰かの事なのだろうか。
「私は、その、てっきりこの容姿でエルフとして認められてないんだと……」
「精霊と意思疎通が出来、精霊魔法を使えるのですからエルフと認めるには十分だと思いますけど?」
「そうですか……あは、はは」
つまりコンプレックスである容姿のせいでエルフとして認められておらず迫害を受けていると思い込んでいたって話か。
でもまぁエルフの中で自分だけ羽持ってたらそりゃ気にするわな。
「私の、勘違い……」
「その様ですね。しかし迫害があったのは事実です、胸の事ですけど……勘違いだった、という事で里に戻るつもりはありませんか?」
「……いえ、私は帰りません。少なくとも彼女達と別れるまでは」
「分かりました。私達は長寿ですからね、数十年くらい待ちましょう」
あっさり引くエルフの姫。黒エルフが里でのお偉いさんって訳じゃないから簡単に引き下がったのかもしれない。それか長寿だから数十年くらい待つに値しないかだ。
私達と共に行く決意をした黒エルフが目の前まで歩いてきた。
「もう、名前言ってもいいよね?」
「ええ」
「うん。私はアンジェリア、改めて宜しくね」
「アンね、宜しく」
とりあえずジェイコブ達が戻ってきたらアンが結局ウチに加入する事になったのを教えないとな。
でもシックス王国の奴等が来るなら早いとこ退散しときたい。
しかしそう上手くいかないのが世の中というか。
「今度は人型の新手が来ました。しかし……」
「どこの国の者か、そもそも人間かも分かりません」
転移だろうか急に現れた黒一色の鎧を装備した集団が現れた。急所を晒さない為か顔全体を覆った兜を付けている為種族は不明。種族についてはマリアに鑑定させればいいとして……
心なしか人外の二人が割と厳しいって顔をしている。今日は奇跡人よりえげつない奴が出て来すぎじゃないだろうか。
「すげぇな、ありゃ黒竜の鱗で作った鎧じゃねぇか」
「モブオのくせにそういうの分かるわけ?」
「ああ、皇竜の兄ちゃんが小声でそう言ってた」
ナキリ情報だったらしい。
しかし黒竜の装備を全員が装備してるとかどこの金持ち国家だよ。敵に回すにはかなり面倒な奴等だな。
そして更に面倒な事にそいつらは剣を鞘から抜いてこちらに歩いてきた。




