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幼女は集中力がない

 当初の予定通り私好みの依頼がないかを探す事にした。自分で探すのは面倒だから普通嬢に聞いてみる。


「高収入でランクアップしなくて良くて楽な仕事をお願い」

「ないです」

「でしょうね。じゃ、ランクアップ無しで私でも出来そうな仕事ない?」

「ありますよ。五丁目学園の演習場周辺の草取りです。これならペド様一人でも大丈夫ですよ」

「一人でどうやってするのよ。誰が私を抱っこして移動するわけ?」

「実は働く気ないですよね?」


 ないです。数日前まであったやる気が、初めての資金稼ぎ失敗で底まで落ちている状態なのだ。


「何て言えばいいかな、きっかけさえ有れば私の内に眠る仕事魂が活性化されるというか……」

「そういうセリフ言い出したら末期が目前ですね」

「やる気はあったんです。私に合う仕事が無かったんです」

「同じ様な事を無職歴2年の従兄弟が言ってました。今は強制的に冒険者やらされて依頼で他国までとばされました」


なんと、普通嬢の身内に先輩がいたのか


「ノーマルの身内みたいになるのは何か嫌ね」

「ノエルです。でしたら尚更依頼を受けるべきです。草取りですよ草取り、楽じゃないですか。まぁ依頼料は2000ポッケと安いですが」

「…そうね。考えておくわ」

「こりゃダメですね…私にはお手上げです」


 見捨てられたか。このままギルドでグダグダやってても仕方ない、一度宿で対策を練ろう。


「それじゃあね、ノーマル。相談料として上司へのクレームは止めといてあげる。あと、ノーマルって言いやすいから今後そう呼ぶわね」

「それは……どうも…!」


 また薬草採りにでも行くかなー…余計なイベント起きなきゃいいが……



☆☆☆☆☆



「どうしよ?」

「どうしましょう?」

パタパタ


 宿に直行するのも何なので定食屋で昼食をとりつつ会議中。メニューはお蕎麦だ。


「白露花採りにまた行こうかと思ったけど、流石にあんな遠いトコに昨日の今日で行くわけにもねぇ…。ユキにまた長距離走らせるの悪いし」

「いえ、南の森の先にある山から昨日の山までは繋がってますので、私は最短距離を走ってます。」

「それ距離が短くなろうと登り下りあるし体力消費量は圧倒的に増えると思う」


 ユキだからこそ出来る荒業だろう。一般人なら中盤あたりで後悔して、下山するかそのまま進むか悩んでるはず



「労働が嫌でしたら、もう奇跡ぱわーでお金を創るとか?」

「良いところに目を付けたわね。でも無理、お金は創れなかったわ」

「そうなんですか?」

「試しはしたけど発動する気配がなかったわ…後は宝石、貴金属ね。これも無理」

「…なるほど、条件があるのですか」


 うーん、と思考に耽るユキ。私の力の事で悩ませるのも何か悪いので、一応私も考えてみる。

 …邪念に満ちていたら発動しないとか?そんな訳ないか。



「…食べ物とか出せますか?」

「試した事はないわね、でも何となく無理そうな感じ」


ふむふむと頷くユキ。そして何か思い付いたのか真剣な眼で私を見つめる。


「では…私を殺す事は」

「それ以上は喋るな」


 ふざけた事を言ってきた。ユキが私にこんな事を言うとは思ってなかった。だが落ち着け、きっと何か意味があるはず…


「私の失言でした。申し訳ありません」

「…いい。何か気になる事があったんでしょ?」

「ありがとうございます。私の推測なのですが…お金を創れないのは必要と思わないからではないでしょうか?」

「んー?お金は必要と思うけど……」

「それは本心でしょうか?私がこれまで稼いだお金も有りますし、今後も稼ぐだけなら私が居れば奇跡ぱわーに頼らずとも宜しいじゃないですか」

「…言いたい事が分かってきた。つまり奇跡ぱわーって想いの強さで発動するって事?何というか、本当に願った事しか発動しないみたいな」

「そうではないかと」


 とりあえず過去を思いだしてみる。マイちゃんは確かに助けたかったし、お世話係のユキも必要と思った。

 最近だと…キャンプセットはバーベキューやりたかったから、猿はついカッとなってやった。地竜に隕石落としたのもついカッとなってやった。キングヒドラは助けたかった。


……無理があるだろう


 いや、想い説に信憑性がない訳じゃないが。合ってた場合、私はカッとなったら惨事を引き起こす危険人物と化す。決め台詞が「私を怒らせてはいけない」に固定されてしまう…勘弁して下さい。……奇跡ぱわー使わなきゃ良いだけの話だけど…

 うん、認めたくないが、自分で気付かない内に心の奥底で思った事が、願った事があるに違いない。奇跡ぱわー使用時に口に出している言葉がそうなんだろう。


「つまり、私はあの時全裸で迫るユキが心底嫌で気絶させた」

「何故その例えをお出しになるのです?」


 だって嫌だったし。母娘喧嘩の時は心底怒ったのは覚えてる。だが魔法は?


「魔法もどきは?学園の授業中は自慢したいとか思ったけど、家でやってる時も出来たわよ?」

「小さい頃に読んだ本で憧れていたのでは?平民なら大多数が思う事です」

「むぅ…想い説も有りかも。納得いかないけど」

「あくまで推測の一つです。難しく考えずとも宜しいですよ」


 いや、ユキが考えたのだ。きっと想い説が正しい。違っていても恐らく当たらずとも遠からず、といった所だ。だが何かが足りない…何でお金は出ない?なぜ必要としない?あれ?何でこんな事を考えてるんだっけ?…私は何を考えて……



「ご主人様、気晴らしに海へ行ってみませんか?」

「海?まだ泳ぐには寒いわよ?」

「見るだけでも気分転換にはなります」

「…そうね。実はまだ見た事なかったし、行ってみましょう」

「はい」


 海は北へ真っ直ぐ行けばあるらしい。結構遠い様なのでまた高速移動になる。つまりまた寝とけばいい。お休みなさい……



★★★★★★★★★★




 という事でご主人様の忠実な従者である私ことユキは、現在海の側にある村…八番地の漁村に向かっている。例によってご主人様は熟睡中。


「頭の良い御方ですし…ご自身の力がどういったものかすでに理解なさっているでしょう」

パタパタ


 悩んでおられるのはもっと大切な事。自身がこの先どう生きるか…ご主人様は矛盾を抱えておられる。それが夢に向かって前に進む為のあと一歩を塞き止めているのかもしれない…


「奇跡ぱわーについて余計な事を言って惑わせてしまいました」


 …ご主人様の数少ない欠点の一つである、当初の目的を忘れて別の事によく気を取られるという性格を知ってて言ってしまった私の不注意だ。

 何というか…その……小さい子供みたいに集中力が無いと…


「…こんな事考えてはダメですよね?」

パタパタ


 マイさんもダメと言ってるに違いない。主の聞いてない所で陰口など従者失格だ。それにしても…


『私を殺す事が出来ますか?』


 馬鹿な事を言おうとした私をご主人様は遮ってくれた。1日土下座で過ごしたいくらい後悔したが、それよりご主人様がお怒りになってくれた喜びの方が上回った。まるで親が子を叱る時の様な目をしておられたから…


「願わくは…本当に、その……か、家族として怒って頂けてたら……」

パタパタ


 …なんだろう、マイさんからニヤニヤしてる雰囲気がする。話せないのでからかわれる事はないけど…言わなきゃ良かった…


 ふと、高速で移動していた足を止める。周りは一面緑が映える草原だった。魔物の姿はない


「…近い内に五丁目から旅立つ事になりそうですね」

パタパタ


 今は夢の中にいるご主人様だが…次に町を出る時は、きっとその眼で世界を御覧になる旅になり、様々な景色、生き物、人と触れ合う事になると思う


 良い事もあれば悪い事もあるだろうが、今から心配したって無駄だ。


「今後、行く先々でご主人様の力を利用しようと近寄る輩がいるかもしれませんね。その時は私達で排除してやりましょう」

パタパタ!


 マイさんと結束を固めてから、今は漁村に居るらしい…久しぶりに会うだろう人物の元へ歩を進める

 急に会いに行ったらびっくりするだろうか

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