幼女とうさぎのリュック
でっかー……
外に出てソレを見た最初の感想は大きいの一言に尽きる。ドラゴンもそりゃあ大きいんだけど、ソレはそんなものを超越して更にデカい。
ただ全く身動きしないんだけど、何でだろ?
こんなに大きいのだから一歩進むだけでも相当な体力が必要だったりするのか?
しかしこんなに大きいくせに見事に二本足で立ってるのは驚きだ。この巨体を支えるだけあって足も物凄くぶっといけど。
どうしたもんかと思ってたらソレの足が少しだが浮いて前に動き出した。歩くのおっそ!?
たっぷり数十秒かけて一歩踏み出すとドシンと轟音がして大地が揺れる。そして再び動きが止まった。
これだけ動きが遅いのならどんなに大きくても脅威にはならないかも。とはいえ放っておけば徐々に何処かに向かって行くから国を襲う、というか進む事もある。
「ここは私の出番、って言いたいけど……地上に上がって来るだけで体力使い切ったー……やっぱり無茶はいけないね、うん」
痛みを我慢してたけど、もうダメ。まだ時間はあるんだしまずは回復を優先させよっと。
もう一人は私の姿は見えないみたいだから姿を消しておけばバレずに休めるだろう……はぁ、おやすみ。
★★★★★★★★★★
「主殿は全く興味ないじゃろうけど言ってよいか?」
「言うだけならタダよ」
「ふむ。このエルフは助けたから良かったものの、他に捕まってた奴等はどうなったのじゃ?」
「今頃よろしくやってんじゃない?」
「……忘れてたっ!?」
忘れてたなら仕方ない。いいじゃないか、子は宝って言うし産めや増やせやで行く方向で。
「例えそれが望まれない子であってもなっ!」
「酷いっ!外道っ!ペドうっ!……わかった、私がちゃちゃっと助けに行って来る」
「はいはい。道案内してくれただけ助かったわ。貴様後で覚えとけよ」
エルフは符から飛び降りて元来た通路に進んでいった。別に助ける義理は無いと思うんだけど……あのエルフだってギリギリの場面だったんだから、他の女はもう間に合わないと思うなぁ
さて、こっちはこっちでアリス探しの再開だ。
だが一つ言いたい。すでに穴の向こうに何か大きいのが見えてるので今の私の興味はそっちに向かってる。
「でけえええぇぇぇぇっ!」
スポーンと穴から飛び出て最初に出た一言がこれである。
赤茶色の皮膚をしたナニかがそこに立っていた。足だけですでにドラゴンの大きさを超えてる気がする。
私達が居る側はソイツの背面なので背中しか見えないが、棘というかもう角って感じの突起物がこれでもかってくらい突き出ていた。
尻尾もこれまた太くて長いが、全く動く気配はない。
「こんな生き物いるんですね」
「立ってる事が不思議なサイズです」
「大きさはともかく、コイツが歩いた後を見るとあんまりへこんでないし体重は見た目より軽いかもしれないわ」
「相変わらず観察眼が良いですね」
「しかしまぁ、体重が軽くてもだからどうしたって感じですが」
ぼへーっと各々感想を化け物の間近で述べる余裕があるのは、こちらに全く興味がないのか気付いてないのか、とにかく私達を害する気がなさげだからだ。
「とりあえず攻撃してみますか?」
「せっかく大人しいのに暴れたらどうすんのよ」
「この辺りは無人ですし好き勝手に暴れても問題ないですよ」
つまり戦ってみたいと。素直に言えば良いのにこの戦闘狂め。
肉が美味そうなら是非とも狩ってほしいが、生憎コイツは不味そうだ。だがまぁ、歩くだけで災害級だし殺しても問題ないな……
まずはユキが足に向けて鞭を振るうとペチっと音がして普通に跳ね返された。モードチェンジしたのか再び攻撃したがペシっと音がしてまた跳ね返される。
当たった所は……無傷。まぁこんなもんだわ。
「次は私ですね」
妙にウキウキしながらサヨが符を放つが特に何事もなくペシっと化け物の足に張り付いて終わった。
首を傾げながらこちらも再び符を投げつけるけど結果は同じ。
「はて、発動しませんね。でしたら……」
前に見たことあるビームみたいな魔法を放つが、当たっても特に何もない。当たった箇所がちょっと焦げてる何て事すらない。
物理も魔法も効かないのか……無敵じゃないか。
「相手に気付かれもしないとは……」
「私達は最強には程遠いと分かりましたね」
「じゃ、次はキキョウがやってみなさいな。貴女の力は魔法じゃないんだし」
「あのお二方がダメでしたし……まぁやってみます」
手を向け、少し集中すると青い炎がボッと現れた。ほほぅ、これがキキョウの言ってた炎か。確かに青い……てかあっちっ!
熱いから早く打てという願いが通じたのか化け物に向かっていく炎。
そして当たったらボフっという音がして普通に消えた。
「ですよねー」
「凄いわね。こいつの皮膚で装備作れば無敵じゃない」
「皮膚はそうですね。こういう奴は急所を狙うのがセオリーですよ」
つまり目と口内。顔面という事になるが、流石に見える範囲に飛べば反撃してくるかもしれない。
確実にダメージを与えられるという確証が無いと実行に移すのは難しい。
うーむ、魔法が通用しないとなると必殺の亜空間落としも無理だろうな。転移で海の底に飛ばすのも不可。これは困った。
「こいつは魔力を糧に使ったのなら召喚で呼ばれたんでしょうね。召喚魔法で出てきたなら、送還魔法も出来そうですけど」
「可能性は有りますね……出来れば倒してみたかったですけど」
動きは遅い、進行方向を予測して送還用の魔方陣を用意するという事で決定した。
そして行動に移そうって時に何かが身体に巻きついてきた――
そして身動きが取れなくなりユキの腕からそのまま落下した。
☆☆☆☆☆☆
目の前の巨大生物があまりに衝撃すぎたので忘れていた。というのは言い訳ですが、召喚主……つまり今回の件の主犯の事が頭から抜けていたのは不覚です。
顔すら動かせない状況ですが、目線の先に倒れてるお姉様と愚妹を見る限りこうなった元凶はあのエルフを捕らえていた鎖と同じ。
抜け出そうにも動くことも魔力を使う事も出来ない様です……情けない。
「何かあっさり上手くいったのに驚きだね」
男か女か分からない、まるで声変わり前の子供の様な声が聞こえました。
「あのアドンが居たハズの部屋から飛び出して来たから、アドンを倒せる実力の持ち主は流石にヤバイかなーって思ったけどそうでもなかったね」
誰ですかそれ、あの部屋はすでに戦いが終わった後だったのでそのアドンとやらは見てません。ただ血痕はあったので誰かとアドンとやらが戦ったんだとは思いますが……果たしてそれがアリスさんだったのか。
「やっべ、ちょーやっべぇ!!ま、間近で見るとより輝いてるよこの方っ!……ああ、これが次代のフィーリア様……素晴らしい」
てめぇ、お姉様に近付いたらぶっ殺すぞ、という雰囲気を私よりも愚妹から感じる。動けないくせに殺気だけは一丁前ですね。
だが次代のフィーリア様……あれが創造主が産んだ奇跡人である敵か。全てを封じる鎖を与えるとか厄介な存在を創ってくれたものです。
「ん?……ああ、申し訳ない。喋れないんだったね。貴女だけ喋れる様にするよ……でも動ける様には出来ない。怖いからね」
「……はなせ」
「ふぉおおおぅ、こ、声まで美しい。流石はメル・フィーリア。僕をここまで狂わせるなんてっ!?」
……
………ん?
何かあいつ物凄い勘違いしてませんか?
もしかしてメルフィさんが二代目だと思ってるんでしょうか……アホですか。見た目から判断してもどう見てもお姉様が二代目でしょうが。
あ、さっきまで丸出しだった愚妹の殺気が消えました。とりあえずお姉様に危害が行かなければ良いみたいですね、どんだけマザコンなんですか。
「こほん。メル・フィーリア殿、いや……メル!……さん、ぼ、僕と……死にたくなければ僕と結婚してくださいっ!」
「脅しとかクズ。死んで」
「あ、はい。ま、まずは身体の付き合いからですよね?……ちゃんと国で勉強しました!」
「死ねよ」
どこの国ですか……いや、確か一国だけやけに性欲に溢れた国がありましたね。
シックス王国、奴はそこで暮らしていたのでしょう。これは身動き出来ない以上メルフィさんが危ないですね……
「触るな」
「……僕は、700年だか800年だか、とにかく長い事生きてきた、しかしっ!僕は貴女の為に清い身体のままでいたよ……こ、これが初パイタッチ、です」
「死ねよ」
見えはしないが、メルフィさんの胸でも揉まれてるんでしょう。まぁ揉まれるぐらい我慢して下さい。
メルフィさんのセリフがまるでお姉様の様に汚いので本気で嫌がってるのは分かりますが。
「う、うぅ……ありがとうございますっ!」
「……キモい」
「ハッ!……あまりの感触に我を忘れてた。……つ、次は直で触ったり?」
「何だっけ……身体は汚されても心までは汚されない」
「オマエガイウノカヨ!?」
「む?……どいつか喋ったか?そんな訳ないか」
お姉様の代弁をマイさんがしたらしい。そう言えばマイさんは鎖に捕まっていなかったか……多分お姉様に近付いた瞬間にタックルを食らわせるつもりでしょう。
となるとリンも無事かもしれない。という願いも空しくお姉様の隣にバッチリ鎖に捕まって転がってました。
リンが動ける事を知ってるとなると、結構私達を監視していたのでしょう。マイさんがほぼ飾りに徹していたのが幸いと言うか……
「えーっと、健やかなる時も病める時も」
「勝手に式を始めるな。私はすでに全てを姉さんに捧げてる」
「す、全て……?」
「そう。すでに裸の付き合い」
それはメルフィさんが勝手に全裸で部屋をうろついてるだけでしょうに……何と言うか、物は言い様といいますか。
「……っ!いけないっ!!メル・フィーリア!……君ともあろう者がホモは良いけど百合はダメだって事を知らないのかっ!?」
「知らない」
「な、何と言う事だ……女同士で乳繰り合って何が生まれるというのだ」
男同士でも何も生まれないでしょうに。
「姉さんか……姉と言うからには同じフィーリアの者、つまりペド野郎か」
あ、いけない。矛先がお姉様の方に行ってしまった。
だが近付いた所でマイさんの餌食になるだけ、頼みましたよ……
「いたっ……何だこの蝶、生きてたのか」
最後の砦であったマイさんは吹っ飛ばすどころか顔面にへばり付いただけに終わりあっさり捕まった。そのまま鎖で羽根ごと巻かれて捨てられる。
期待した私が馬鹿でした。
しかしこれでいよいよお姉様が危ない。どうにかして鎖を外さないと……マオさんのワイヤーであっさり壊れたって事は動けさえすれば簡単に壊せるということ。
マイさんがもっと頭が良ければお姉様のワイヤーを壊すなりしてくれたかもしれません。
「こ、こんな小娘以下のガキんちょがメル、さんと乳繰り合うとか……僕には我慢ならないっ!」
視界に姿が入ったので相手の容姿が分かった。やはりまだ子供と言った体格。
そいつは容赦なくお姉様の背中を踏みつける……あんのガキャ…!
再び私と愚妹に殺気が生まれた。残りのメンバーにも怒気を感じる。
いや、待って下さい。奴はどこを踏みました?……背中
背中にはお姉様の大事なうさぎのリュックが……
『実は……うさぎに気を付けろというお告げが出たんです。意味が分からないと思いますが、大惨事になりかねないみたいなので念のため伝えておきます』
すっかり忘れてました。これだけは忘れてはならないって事を忘れるなんて……
愚妹の殺気が焦りに変わりました。あの娘も敵以上に身内がヤバイと気付いたみたいです。
「こんのちんくしゃがぁっ!僕のっ!怒りっ!!……てかやけに固いなコイツっ!?」
あの野郎は無理やりお姉様のリュックをこじ開けようとする。何やってんですかあの馬鹿はっ!?
開く為のボタンすら見えないのか腐れ坊主めえええぇぇぇぇっ!!
ビリッ……
その音が聞こえて私は目を瞑る事にしました。もう知りません……
「これか、玩具の杖のくせに固いなぁ」
目の前に何か落ちてきたので見れば奇跡すてっき……あいつ、創造主が創り出した存在のくせに愛用の杖すら忘れたんでしょうか?
「この不埒者めっ!!」
「うぉっ!?……どこから出てきたこの、幽霊?」
「大丈夫、お姉……じゃなくてちい姉っ!」
パキっとお姉様の鎖が壊れました。声の主はアリスさん……やっぱりここに居たみたいです。
だけどもう少し早く助けに来てほしかったですね……
「アリス、ちゃん……?」
何か、お姉様がマイさん以外使わなそうなちゃん付けが聞こえた様な……?
★★★★★★★★★★
いつも通り一人で遊んでたら急にその娘が現れた。
例えではなくいきなり目の前に現れたのだ。
『初めましてっ!……うはぁ、見てよこのちっちゃいお姉ちゃんっ!?』
『別に変わってはおられ……こほん。確かにまだ表情が幼いみたいです』
「だれ?」
『私?……私は、アリスって言うの』
不思議の国から来た様な格好の少女はアリスと名乗った。
『アリス様、長居は出来ませんから用事は手短にお願いします』
『……お姉ちゃん一人ぼっちみたいだし、ちょっとは一緒に遊んでも大丈夫じゃないかな?』
『後で負担がかかるのはアリス様自身ですよ』
『ケチ。あ、このケチな女の人はユキって言うの』
『……初め、まして。会えて光栄でございます』
一緒にいたメイドの人は何故か震えていた。こわい。
『ねねっ、何でお姉ちゃんは一人でいるの?』
「らくだから。何でわたしがおねえちゃん?」
『あー……あだ名だよあだ名』
変なあだ名。だけど不思議と呼ばれなれしてる気がした。良く分からないけど。
『一人は、寂しくない?』
「ぜんぜん。おかあさんいるし」
『お父さんは出なかったね。不憫な人』
『アリス様』
『分かってるよもう……ユキは何か伝えておく事ある?』
『有ります。伝えるのではありませんが……これを食べて頂けませんか?』
なんだこれ?……飴?
飴、だと思うけど……なんか赤黒くて不味そう。
「きしょくわるい」
『味は悪いと思いますが……必要な事なのです。どうかお願いします』
「むー……まずっ!」
『吐いてはだめです。舐めなくて良いので飲み込んで下さい』
「むうううぅぅぅ!」
『何やってんのユキ!?』
『大事なことなのです』
くそ不味い飴を無理やり飲み込まされて気分悪くなったけど、ユキって人が妙に真剣だったから文句は言わなかった。いつもなら言うけど。
『何飲ませたの?』
『私の血、肉、髪、魔力、その他色々を凝縮して作った飴です。ちなみに溶けずにご主、ではなくこの方の中でずっと残ります』
『何てもの飲ませるのかなっ!?』
『……ご主人様は私をお造りになりおよそ2年間もの間眠り続けました』
『そう、なの?』
『はい。私が生まれて丁度2年後、痺れを切らしたのか周りの人の命を代償に奇跡すてっきはご主人様を眠りから覚ましたのです。しかし……周りに不審な死が相次ぎ、そこにご主人様が目覚める。そんな都合の良い時期に目覚めた事からご主人様は他人の命を吸い取る化け物扱いです』
『……そんな事あったんだ』
『ですから、私の元となる物を前もって用意しておけばそこまで長い眠りにはならない筈です』
なにを言ってるのかわかんないけど、誰かが大変な目にあったみたい。
それにしても後味も悪い。ジュース飲みたいなー
『てか、ユキの事だけで大分未来変わりそうなんだけど』
『ではこのまま帰りますか?』
『馬鹿言わないでよっ!……めちゃくちゃ頑張って作ったんだから』
「?」
『うー……はいこれっ!お姉ちゃんにあげるっ!』
なんかまた贈り物みたい。今度はまずい飴じゃなくてぬいぐるみ……?
『それ、うさぎの形したリュック』
「うさぎ……?」
『へ、下手で悪かったねっ!?』
『別にそんな事仰られてませんが』
うさぎのリュック……口の所のボタンを外すと開いた。確かにリュックだ。うさぎにしては不細工だけど……
「もらう理由がない」
『私が好きであげるだけ。要らなくなったら捨ててもいいけど……出来れば大事にしてほしいなぁ』
「ぷれぜんと……おかあさん以外からは初めて」
『そっか……昔からぼっちだったんだ。一人は確かに楽だけどさ、やっぱり大勢でわいわいやる方が良いと思うなー。けど、お姉ちゃんは妙に人を見る目があるらしいから、仲良しを作るには難しいよね』
『特に人間は、ですね』
『……ねっ!私は?……私は、友達になれる?』
ともだち……友達……?
私に……?
『やっぱ……ダメ、かな。会ったばっかりだしねぇ』
『会ったばかりで物で釣るアリス様ですからね。怪しんで当然です』
『釣ってないよっ!?』
会ったばかり……だけど、なぜかこの人は家族みたいに安心できた。
おねえちゃんとか呼ばれてるからかもしれない。ただの勘違いかもしれない、けど。
「いいよ。気が変わるまでともだちにしてあげる」
『……ふ、あはははははっ!!見たか、聞いたかユキっ!私の大勝利』
『気が変わるまでですけどね』
『……あー、でも、私達って』
「なに?」
『……なんでもないっ!私に会えない時はそのリュックが私の代わりっ!……だから、大事にしてね。それを持ってるだけでも未来が変わるはず』
「ん?」
『……気にしないでいいよ。じゃ、私達は行くね。これからちょっと用事があるから』
不味い飴と変なうさぎのリュックを持ってきてともだちになっただけだった。
なんか忙しい人達だなー
「いつ、会える?」
『いつかなぁ?……遅くても十年ちょっとすれば会えるんじゃないかな?』
「……さきが長い」
『ごめんね。でも必ず会えるから』
「おぼえてたら、待ってる」
なんかあっという間のお別れだ。
たぶん来たときみたいに消えるんだろな……まほうかな?
あ、そういえば一つ聞きたいことがあった。
「なんで、うさぎのリュックなの?」
『ん?……だって、アリスと言えばうさぎでしょっ!』
そういってあの子達は消えた。
そして再び会う事はなかった。
しかし、言ってる事が本当ならば十年もすれば再会出来るだろう……それまで、一応、このリュックは大事にしといてやろう。
……ともだちだし
「ふ、ふぐ、ぎ……っ」
「あ、あの……ちい姉?」
「こわれちゃった」
「はい?」
「アリス、ちゃんに貰ったリュック、壊れた」
「っ!?……お、覚えて、じゃなくて思い出した、の?」
「違った。壊したんだ」
思い出した?……思い出したとか、そんな事より大事な事があるだろ?
何を言ってるんだアリスは……ん?アリスちゃんか?
どっちでもいいか。
でもうさぎのリュックは良くない。実に良くない。
ずっと、持っててあげたのを壊された。
そう、この私のリュックを壊した奴がいる……
このリュックはともだちの代わり、つまり壊されたのは私のともだち。
だったら、壊さなきゃだめでしょ?……そいつも




