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幼女の妹、ピンチになる

「見たまえ、ギャラリー達も今か今かと待ちわびているよ」

「女目当てのお前の部下ばっかじゃねぇか」

「散々お預けを食らったから辛抱たまらんみたいだね」

「顔見りゃ分かるわ。この国の奴等は皆そうなのかよ」

「シックス王国は性欲で成り立っていると王が自慢するくらいだしねぇ」

「世も末だな」


 急に新たな情報が出てきたよ。シックス王国が今回の厄介事を起こした奴の居る国か。


 奴等が居るのは如何にもって感じの怪しい儀式をする様な暗い部屋。ただ広さはどこぞの闘技場くらいの広さがある。

 中央付近に魔方陣が二つ、片方には連れて来られた連中と思われる者達が固まって乗っていた。

 逃げる素振りも抵抗する素振りもしないので魔法が使えなくなってるのかもしれない。


 たぶん人が乗ってる魔方陣から魔力を吸収して、効果は知らないけどもう片方の魔方陣が作動するんだと思う。


 そして観客席みたいな二階に設置された場所には飢えた獣の様なむさ苦しい野郎共が歓声を上げて中央を見ている。


 魔方陣に近づき書いてある模様を見てみるが、当然何の事やら分からない。

 これをどうするかはともかく、このまま上手くいっても癪なので適当に落書きしとこっと。


「例の奴等が数十キロ離れてるとはいえあと何時間かすれば到着するだろうし早めにやりたまえ」

「到着した所で地下にあるここをすぐに見つけられるとは思えんが、まぁいいか」


 天使の男が取り出したのは何故か本。杖で何か呪文でも唱えるのかと思ったが違った。


「相変わらず本頼りだね」

「うっせーな、魔法何か知らねぇって言ったろ」

「それで難しいゲートを繋ぐ魔法を使おうって言うんだから驚きだよ……何かもう失敗しかみえないや」

「黙ってろ、本の通りなら間違いない」


 本が間違ってた場合はどうするのだと。こいつは頭は良くないみたい……

 何の確証も無しにリスクのある誘拐してまで魔法を使うとかお姉ちゃんなら鼻で笑うね


「まずは吸収からだ、おらお前ら、どいつか一人でいいから発動させろ」

「誘拐した者達に任せるとか凄いセルフサービスだ。そして本を出した意味が無い」

「ならお前の部下にやらせろ。本は気分だ気分」

「仕方ない……」


 小さい方が観客席で騒いでる野郎の方を向き、右手を掲げると何処から出たのか鎖が飛び出し一人を拘束して戻ってきた。

 ユキちゃんやマオちゃんみたいに武器を自在に操るタイプの奇跡人かな……まぁあの二人はお姉ちゃんの創った武器のおかげなんだけど。


「ふぉぉぉぉぅ!?どうせなら女の子に縛られたいいいぃぃぃっ!!」

「救いようがねぇ……お前、その魔方陣を発動しろ」

「縛られた上に蝋燭攻めだと!?」

「終われば用済みになった女は好きにしていいぞ」

「お任せあれ」


 変態的な部下が魔方陣に近付き手を置いて魔力を注入している、のだと思う。ただ目線は魔方陣ではなく捕まってる女性陣に向けられているが……

 ただ仕事はきっちりした様で魔方陣が作動したのだろう、紫の輝きを放つと乗っている者達が苦悶の表情を浮かべだした。


「まさかちゃんと発動するなんて……」

「当たり前だろ」

「ほら、もう片方に十分魔力が貯まったみたいだよ」

「予想より大分早く貯まったな、よっぽど魔力持ってる奴がいたんだな」

「ならこんなに集める必要無かったじゃないか……」

「本に大体これくらいの人数が必要って書いてあるんだよっ!」


 二人がアホな事言ってる間にもう一方の魔方陣が発動しだした。どうやらこっちは魔力が貯まると自動的に発動する様になってるみたい。

 本を見ながら書いただけでこうもまともに発動するなんて……魔道書ってのは危ないなぁ


「いよいよだね、君が仲間だと思い込んでる連中が来るよ」

「思い込みじゃねぇよ!」

「お、角が見えてきたね」

「……角?」


 そう、二人が言う様に魔方陣からやたら大きい角が出てきた。というか角だけで魔方陣がいっぱいいっぱいだった。

 だが魔方陣の中でしか有効じゃないのか角から先が出て来れないでいる。しかし妙にサービスが良い魔方陣が範囲を広げて輝きだすと今度は頭と思われる部分が……というか頭がこれまた大きいみたいで地面を大きく揺らしながらゆっくりと出てくる。


「君のお仲間ってのは随分と大きいね。何処の怪物だい?」

「こんな奴知らねぇよ、てか餌達がヤバイな」

「魔力を吸われて動けないだろうからね。でも安心しなよ、ウチの連中がきちんと助け出してる」

「女だけな。とりあえず怪物を送り返すか」

「……勿体無い」


 そのままデカブツをこの大陸に解き放つのかと思ったが、変なところで常識があるのか本を捲りながら送り返す為の準備を始めた。

 頭があれだけの大きさなんだ、きっととんでもない大きさの生物だろう。何かお姉ちゃんが喜びそう……


「何か制御不能だ……不味いな。てかこりゃなんだ!?俺は魔方陣にこんなの書いた覚えはねぇぞ!!」

「これは、子供達が大好きな所謂ウンチマーク」

「何だそりゃ!?」

「とぐろを巻いた人糞。またの名を巻きグソというんだ。だが実際にとぐろを巻けるほど長い排泄物を出せる者は居ないとされる伝説の人糞だ」

「そんな解説いらねぇよっ!……くそ、何処のどいつの仕業だ。あー、もう知らねぇぞ」

「だから魔力を使って魔方陣を書いた方がいいと言ったんだ。ペンで済ますからこういう事になる……だが、これはこれでいいじゃないか、この未知なる巨大生物を解き放てばこの大陸も楽しくなりそうだ。ところでこの化け物は君の居た所の生物かい?」

「いや……居るかもしれねぇけど、俺は見たことない奴だ」


 何という事だ……私の描いた落書きでこの大陸がヤバイ事になった。

 だが元はと言えばあの二人が悪い。よし、私は無罪だった。


 そんな事を考えてる間にも巨大な生物は姿を出して行き、今では目と思われる爬虫類の様な目がギョロギョロと辺りを見回している。

 そしてパラパラと天井から小さい埃みたいなのが落ちてきたので上を見ると、そいつの角が天井を突き刺し、破壊された天井の瓦礫が降ってきた。助け出されなかった連れてこられた男達の一部がその瓦礫に敷かれている。当たり所が悪かったら死ぬね、あれは。


「何て事だ。アイツのせいでこの場所の目印が出来てしまったじゃないか」

「あれが全部出てきたらここはぶっ壊れるな」

「僕の秘密の施設が壊されるのはいただけない。仕方ないから魔方陣を外に持っていこう」

「そうしろ……って待てよ、ひょっとしてこうなったのってお前のとこの幽霊のせいじゃねぇか?」

「僕の所に幽霊がいるとか初めて知った」

「なら、そいつはお前の知り合いじゃねぇのか……」


 天使の男が指差した先には私が居る。気付いてないと思ってたけどバッチリ気付いてたらしい。

 もう片方にはちゃんと透明で見えない様になってるけど……


「そこに居るのかい?」

「おう、さっきから堂々と近くに居たからてっきりお前のペットか何かだと思ってたわ」

「なぜ早く教えない。君ほどの馬鹿を見たのは初めてだ」

「悪かったなっ!……とにかく奴が邪魔した犯人で間違いないだろ。クソ幽霊め、よくも俺の計画を台無しにしてくれたな」

「行き当たりばったりで失敗すると思ってたけどね。とりあえず僕は魔方陣を外に出してくるから、そこに居るっぽい幽霊は任せるよ」

「任せろっ!」


 ちっ、結局あの天使の手の内が分からないまま戦う事になったか……

 私自身は人間の時と変わらない身体能力だから奇跡ぱわーだけが頼りだ。


「頼むね、アイツを倒さないと後でお姉ちゃんが面倒な事になっちゃうから力を貸してよ!」

「なに言ってんだか知らねぇが、俺を倒そうとか面白い事言ってくれるなっ!」


 力押しで何とかなる、とはお姉ちゃんの持論。だから私が奇跡ぱわーに願うのはアイツを圧倒する力。

 ただ天使相手となると身体能力だけでも相当な代償が必要になるかも。


「いくぞボケぇぇぇぶぉわぁぁぁっ!」


 馬鹿なだけあって一直線に向かってきた天使をカウンターで思いっきりぶん殴った。

 しかし、最初から奇跡ぱわーを発動してなかったらすでにやられていたかもしれない。そう思えるほど速かった。


「おうふ……まさか俺が逆に殴られるとは思わなかった。ただの幽霊じゃないみたいだなぁ……」

「ボッコボコにしてあげるっ!」


 ニヤリと雑魚っぽく笑うと天使がまたもや愚直に向かってきた。

 もしかしてコイツは物理しか出来ないのかな?

 だがまだ安心は出来ない。天使の攻撃を紙一重で避けつつ少しでも隙があれば反撃に出る。確かに普通に考えたら強い、だがあの海を越えてこれる程の強さには思えない。


「アリスちゃんキーーーッック!!」

「おふっ!」


 男の急所と言われる部分を思いっきり蹴った。流石の天使もそこを蹴られると弱いみたいで、股間を押さえながら膝をついた。

 私も何となく嫌なのでパンパンと手で足を払っておく。


「そ、そこは狙っちゃダメじゃね?」

「私女の子だからわかんなーい」

「この、野郎……」


 動ける様に待つ義理は無い。今の内に蹴るっ!

 脇腹を蹴って吹っ飛んだところを追いついて更に背中を蹴るっ!

 四つん這いになった所で更に尻を蹴るっ!蹴って蹴って蹴り続けるっ!そう、私はひたすら尻を蹴るのだっ!!


「ケツばっか狙うんじゃねぇよ!?」

「ありがとうございますはっ!?」

「言わねぇよっ!……てか調子に乗んな」


 おっと、危ない。あの体勢から逆立ちの要領で立ち上がり蹴りを放ってきた。後ろにちょっと飛ぶ事で回避したけど距離があいてしまった。

 その間に天使は体勢を整えて再び私に対峙する……


「大体分かった。お前物理攻撃しかできねぇのな」

「何そのお前が言うなは」

「俺が物理しか出来ないとかいつ言ったよ、でも物理のみじゃあ俺には勝てねぇな」


 やけに余裕ぶった顔だ、本当に自信があるのかただのハッタリなのか……

 だがその奴は今までと変わらず馬鹿みたいに突っ込んでくる。


 またギリギリで避けてガラ空きだった脇腹にカウンターでパンチを叩き込む、はずだった。

 確実に当たったハズの私の拳は思いっきり空振りした……というかすり抜けた?

 少し混乱して隙が出来てしまったのか、私に向かって天使の蹴りが向かってきてたので両手でガードの形を取る。と言っても私も透過状態なので攻撃は当たらない……


「ぐっ」

「やっと一発目だこの野郎」


 何が一発目だ、ちゃんと防いだじゃんっ!

 しかも結局物理だし……じゃなくて、アイツの攻撃がすり抜けずに当たった?


「何で当たるの、こんな奴の攻撃が」

「こんな奴言うな。見えてるんだからそりゃ当たるだろ」

「なにその理論。やっぱり馬鹿じゃん」

「うっせ。しかしまぁ……こりゃ勝負がついたな。お前は俺に攻撃を当てられない、お前は俺の攻撃を食らう。何故かお前の方が能力上なのは癪なんだが、まぁいいや」


 一気に形勢が逆転した。何度か反撃を試してみるが、やっぱり当たってるのにすり抜ける……どうなってんのコイツの身体はっ!

 これで私は今は避けるだけに専念するしか無くなった……失敗したなぁ、やっぱり身体能力を上げる以外にすれば良かった!


「見切ったわ小娘がっ!」

「痛った!この、放せ変態!!」

「口の悪いガキにはおしおきだボケっ!」


 奴の膝が私のお腹に思いっきり直撃する……おぉぉ、こ、これはキツイ

 てか、女の子の大事なお腹を思いっきり蹴るとか頭おかしいんじゃないっ!?


 痛みに耐えてる所に脇腹に激痛が走った。今度は脇腹を狙って蹴りを入れてきたらしい。

 ちくしょうめ、痛いじゃないっ!!


 一度で済まされず、更に何度か蹴られる。動けない時を狙うとか卑怯者め……やっば、ちょー痛いかも……


「とりあえず脇腹の借りは返したな……となると次は尻か」

「へ、んたい……」

「因果応報って奴だなぁ……」


 身体能力が上がっても痛いものは痛い、痛みを我慢して何とか攻撃を防ごうと思うにも身体が付いて来ない。

 一人で余裕こいて戦いに挑んでこのザマか……だがまだだ、最後に勝てばいい。


 だが、急に身体が重くなり痛みも激しくなった。正直意識を保つのも辛い……なんで?


 奇跡ぱわーの効果が切れた……?

 それは……あまりに早い、今の状態で奴の蹴りを受けたら。


 すでに目の端では奴の振り上げた足が見えた。か弱い女の子相手にあそこまで助走をつける必要ないだろと思う。

 尻から肉片が飛び散る自分を想像しながら痛みが来るのを待つ……


 ……来ないじゃないか?


「あ?誰だてめぇ……急に現れやがって」

「あ?うっさいわね、喋らないでよ口臭い」

「お姉ちゃん……?」


 ……助けに来てくれたの?ここが何処かも知らない筈なのに?


 ふ、ふふ……面倒な事を私が処理する為なのが、私がここに来たせいでお姉ちゃんがやって来た。

 何だ、結局お姉ちゃんに迷惑かけただけじゃないか。元の世界でも、この世界でもだ。


 私は情けなくもここで散る覚悟を決めていたのに、でも……思わず泣いてしまうほど嬉しい。あの性格の悪いお姉ちゃんが私を助けに……


「そうよ、貴女の美しくも素敵なお姉ちゃんよ」

「帰れよ」


 お姉ちゃん、と思われた人物の方を見たら何かデカかった。

 外見は確かにお姉ちゃんそっくりだがやたら成長していた。


 というかフィーリアだった。


「何で貴女がここに居るの?というか私の感動を返してよ、お姉ちゃんを返せっ」

「情けなく尻を蹴られそうな所を助けてあげたのに随分な言い様ね、あー可愛くない」

「あ、幻覚かと思ったらやっぱり本物だ」

「ふふん、別れ際に貴女の持ってた杖にちょっと細工をしてね、一度だけ具現化出来るように仕掛けをしておいたのよ。この私が変えた未来ってのを見てみたかったからねー」


 ケラケラと笑うこの場に居るハズのない私達の先祖……恐らくお姉ちゃん以上に凶悪で最悪で最強な人物。

 そんな奴がこの場に来てくれたと思うと悔しいけど凄く安心する……物凄く悔しいけど!!


「よく分からんが、お前が相手になるのか?」

「誰に向かってお前とか言ってるの?私はね、そりゃもう優しい愛に溢れた聖女だけれど、お前とか言われると思わず殺したくなるの」


 こんな風に――


 フィーリアが言い終わる前に天使の姿は大きな衝撃音と共に奥にある壁に埋まっていた。

 圧倒的じゃないか……どうなってんだよコイツは。奇跡ぱわーの効果が切れた私にはもはや何があったのか分からない。

 それよりも私では当たらなかった相手にあっさりと攻撃するとかおかしい。


「ありえねー」

「やっぱり本体と違うから完全な力は引き出せないわね……ホントはもっと早く登場してさっさと倒す予定だったけど、お馬鹿な子孫がいきなり力を使うから出るに出れなかったじゃない」

「効果は重複しない、だっけ?……てか細工してるかなんて分かる訳ないじゃないっ!いったぁー!?」

「怪我人のくせに叫ぶからよ、馬鹿ねぇ」


 フィーリアは手を握ったり開いたりして身体の状態を確認してるみたい。奇跡すてっきに身体を借りてるとか言ってるが、相変わらず何でも有りな力だと思う。

 納得が言ったのか天使が吹っ飛んだ方を見た。未だに埋まって出てこないけど。


「もしかして倒した?」

「この程度でやられる軟弱な天使は居ないわ。特にこの大陸まで来る様な奴はね」

「……何で私を助けるの?相手が天使だから?」

「生意気な娘だけど、仮にも貴女は私の子孫の一人よ?それを目の前で害する奴とか、ぶっ殺すでしょ……ご先祖様として」

「……今までもお姉ちゃん達が怪我することあったと思うけど」

「それは結局二代目が何とかするでしょ。力を使ってこの場に来ると思ったのに来ないから今回は仕方なく私が出てきてやったの。一度しか使えない具現化を使ってやったんだから感謝しなさいよ?」


 やっぱりお姉ちゃんに似てるなぁ……この無責任ぶりと身内限定で見せる謎の優しさがある所が。

 一気に緊張から安堵に気持ちが切り替えられたからか、何か凄く眠くなってきた……ああ、奇跡ぱわーの代償かな……

 意識が落ちる前にもう一度だけ初代の背中を見てから、私はその場で倒れて眠りについた。



★★★★★★★★★★



「助かったぜ兄弟!お前さん達が引きずってくれてるおかげで大分早く着くぜ」

『良いって事よ、しかしこんな所で偶然会うとはやっぱり俺達はソウルブラザーズだな!』

「全くだぜ……しかし何処に行くつもりだったんだ?」

『場所は知らんが真っ直ぐだ。……何かこう、言葉では言い表せないが行かなきゃならんという使命感に襲われた』


 目の前で神獣と五丁目の冒険者達が仲良くお喋りをするという衝撃の現場を見てしまった……

 何だこの凄くない奴が知り合いだけは凄いって言う学園に居そうな奴は。


「疲れてないかジェイチョス」

「混ぜるなっ!」

「それだけ元気なら大丈夫だなっ」


 このユニクスという神獣には乗れないみたいなので尾に紐を結び、適当な布にこれまた結んでから引きずってもらうという運び方をしてもらっている。

 ただし座ると地面に落ちてる石が当たって痛いからただしゃがんでいるだけだ。だから物凄く足にくる……こんな辛い移動する事になるなんて。

 だが確かに速度はかなり速いから文句は言ってられない。一刻も早く彼女を救出出来るならこの程度の障害乗り越えてみせる……!


『見て見ろ、前方にまるで巨大なドラゴンみたいな山があるぜっ!』

「本当だな、あの方向は平原か……あそこにあんな山があるとはなー」

「まだかなり距離が有りそうなのに良く見えるな」


 平原に山がある訳ないだろ……と言いたいけど確かにドラゴンみたいな大きいオブジェがある。

 遠目だからまだ良く見えないが、一本角みたいだからドラゴンでは無さそうだ。


「あれって……動いてるでしょ」

「はっはっは、山が動くわけないだろお嬢ちゃん」

「山じゃなくてでっかい生き物でしょ!?」


 あぁ……やっぱりそうなのか

 僕達にはエルフの娘を救出するという目的が有るのに……ちょっとした勘だけど、あの大きい生物の近くに彼女が居ると何となく思った。

 そう言えばまだあの娘の事はフェルと呼んでいたっけ……正式な仲間になったら本当の名前を聞いてみようか。


「行こう。ちょうどいい目印だ、あの化け物の元に向かおう!」

「つまり真っ直ぐだな」


 正直あんなの相手にしたくはない……けど、僕達の目的は救出。彼女を救い出して退避してからアイツをどうするか考えよう。

 しかしどれくらい大きいんだろうか、あの化け物は……

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