表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
132/245

幼女、厄介事回避に失敗する

 私も十分ちょっとの眠りから覚めた。マオもトイレから帰還した。

 という事で無事解決したので祭りの続きと洒落込もう。と思ったのだがそうはいかない模様。


「一応聞いておきましょうよ。マオさんを攫った不届き者の事」

「わたしは、あれを我慢するのに一杯一杯だったから良く覚えてませんよ?」

「攫われた上に犯人も分からないと。役に立ちませんね」

「うぐっ……で、でも私だけじゃなくて他にも捕まってる人が何人か居ましたよ?」

「つまり例の誘拐犯の可能性が高いのね?行かなくて良かったわ」


 持ってて良かった奇跡ぱわー。おかげで敵のアジトに乗り込んで囚われのマオとついでの娘達を助け出すなんてヒーローみたいな事しなくて良かったわ


「ところでその捕まってる者達の中に例のエルフは居ましたか?」

「見てません……けど、こういう場面では偶然同じ場所に捕らえられてるのがお約束だと思いますっ」

「そのご都合主義な考え方はやめるべきですよ」


 何でマオは無事なのに未だに誘拐犯の事を気にしてるのだろうか

 気持ち切り替えて遊んだ方が良いじゃん。嫌だわー、この流れ……まるであのエルフを助けに行くかの如く進んでる。


「もし、そこの貴女方……お困りの様ですが占いなど如何ですか?もちろんこちらから持ち掛けた話ですのでお代は結構です」


 ほらな……今度は五丁目の連中をけしかけたとも言える占い師が出てきた。

 顔の見えないローブを纏い、右手には手乗りサイズの水晶玉。ただし色が緑なので本当に水晶なのかは不明だ。


「何でもタダで占ってくれるって?」

「はい。例えば、連れ去られてしまった方など居れば……」

「誰の話よ」

「ふふ、私は何でもお見通しな占い……あれ?結果がさっきと変わってる……何で?」

「それが素の話し方か」

「こほん、えー、連れ去った者に復讐したいとか考えてるなら」

「考えてないからこの国で一番美味しい屋台を教えて」

「…………ちょっと待ってて下さい」


 後ろを向いたと思ったら水晶玉に向かって「どういう事!?」「ちゃんとやってよ!?」などと怒鳴っている。

 誰が見ても見事に頭がおかしい人物だ。声と喋り方からしてまだ若そうな女だと思うが……



★★★★★★★★★★



「君相手にあっさりと救出されたみたいだね」

「ああ、吃驚だ。だがまぁ俺に気付かない程度の奴等だ。厄介なのはお前のお気に入りだけだろ」

「いやぁ素晴らしい……流石は僕の主の力を受け継ぐ者」


 どう考えてもコイツらが私達の敵だって会話を目の前でされてる。

 奇跡すてっきの倒れた方向に向かって進んでいたが、どうやら当たりに会えたみたい。ホント万能だね、このステッキ。


 敵のアジトらしき建物はだだっ広い平原の地下にあった。

 広いが何もない普通の平原だから気付くのは難しいと思うけど、奇跡すてっきを何度倒しても同じ場所を指し示すから地下にあると気付けた訳だ。


 そして幽霊っぽい存在である事を利用して姿を消し、障害物をすり抜けてここまでやって来た。

 気配も消せてるかは怪しいので注意しとかないと……


 先ほどの会話を聞く限り誰か捕まってたがすでに救出されたみたいだ。多分というか間違いなくお姉ちゃんが助けてあげたんだろうな


「で、結局どっちが目的の奴か分かったのか?」

「ん?そんなの……美人でおっぱい大きい方に決まってるじゃん」

「真面目に考えろ」

「僕は真面目だよ。だってメル・フィーリアとペドフィーリアだよ?どう考えてもメル・フィーリアが女神!圧倒的女神!!あの方こそが我が主の再来とも言える御方……おお、ふかふかマシュマロ……」

「ダメだこいつ。てか標的決まってたんならソイツ連れてくりゃ良かったじゃねぇか?」

「バカ野郎、僕は奥手なんだ。奥ゆかしいんだよっ!……そんな僕に出来る告白といえばこの娘の命が欲しければ結婚して下さい、と脅すくらいだ」

「相変わらずゴミ野郎だな」


 どうやら二代目をお姉ちゃんではなくメルフィちゃんだと勘違いしているみたい……勘違いというか願望というか。


 そんな事より我が主という単語、そして次代の使い手に向けるあの執着心から判断すると初代の置き土産で間違いない。

 つい最近人形が出てきたばかりだってのに次から次へとうざったい。


「その我が主ってのはどんな奴なんだ?あの二人は赤と緑で髪の色が違うんだし似たような色の方が可能性あるだろ」

「我が主か……僕を創られて『あ、失敗した』の一言を残してすぐに去ってしまわれたから容姿は分からない……だがきっと美人で巨乳だ」

「捨てられてんじゃねぇか!?」


 置き土産ですら無かった。

 あんのクソアマ、失敗したならきっちり処理しとけよ!


「僕の事より君の方はどうなんだ?」

「魔力なら連れてきた分で足りてるハズだ」

「ならやりたまえ。ウチの馬鹿な連中が女に飢えてて鬱陶しいんだ。君が純潔の魔法使いでなければダメだと駄々こねるからこうして我慢させているんだ」

「ろくでもねぇ部下だなおめぇの所は。念には念を入れてもっと欲しかったが、しゃあねぇな」

「なら野郎共を呼んでおくとしよう。しかし君が男ばっか連れてくるから数少ない女性諸君は壊れてしまいかねんな。純潔云々に拘るなら全て女性を連れてくれば良いではないか」

「それだと女性を付け狙う変態野郎と勘違いされるじゃねぇか」


 おーゲスいゲスい、魔力を貰うだけでは飽き足らず、ついでに性欲の捌け口にするってか。

 それはともかく片方が初代が創った奴なのは分かるが、もう一人は何だろうか。お姉ちゃんのパーティ相手に誰かは知らないけどあっさり連れ去ってきた事を考えると実力は高そうだけど……それを考慮するにやはり天使か?


 カッコつけて来たはいいけど、初代と同じ良く分からない化け物を一人で相手にするのは厳しいかも。私は正式な使い手じゃないし……

 せめて奴等の手の内を見てから仕掛けたいなぁ……都合よく勇者ぶった奴がここに来る展開とか無いかね。


 僕って言う見た目12歳くらいのガキんちょは大した事無さそう。ボッサボサの青い短髪で何故か白衣を着ているから戦闘と言うか研究者タイプだと思う。まぁ見た目が絶対って事はないだろうけど。

 問題のもう一人は見た目はヒョロ長いオレンジ色した長髪の男……一般人みたいにシャツとズボンを穿いてるだけだで武器は見当たらない。最近は武器に頼らないのがブームなの?


 この部屋に居るのはこの二人のみ、アジトに居る兵士っぽいのが多分100人程度。規模から考えると国と天使がどうたらって事ではなく、個人と個人が手を結んで何か企んでるみたい。


「侵入者がいるな」

「その台詞を聞くとまるで僕達は悪の組織みたいに感じるんだけど」

「間違ってないだろ、そんな事よりどうする?」


 バレた……?いや、私は大分前からこうして聞き耳立ててたし、わざわざ自分達の目的とかをペラペラ喋った後で対処するとは思えない……って事は私以外に誰かがここに気付いて来たのかな?


「その侵入者とやらは何処に居るんだい?」

「そうだなぁ……ここから60キロくらい離れた位置に数人」

「それは侵入者と言えないじゃないか……ただの冒険者じゃないかい?」

「見覚えあんだよ、確か攫ってきた奴の仲間だな」

「へー……良く何の手がかりも無しにここだと気付いたもんだね」

「全くだ。それとは別に……」

「まだ居るのか」


 今度こそ私に気付いたか?

 それともお姉ちゃん達が報復にでも来た?


「まだ大分距離があるから10日は大丈夫だろうが、何処かの国の軍隊が来るみたいだな。見境なく攫いすぎたか、ハッハッハ!」

「魔法使いは貴族がほとんどだからこうなるのは仕方ないね。それよりそんな遠くの事を察知出来るなんてやっぱり使い魔もってると便利だねぇ」

「ちゃんとサード帝国ってとこからは攫ってないから安心しろ」

「当たり前だよ、アイツらまで邪魔してきたら君の計画は失敗するかもしれないよ」

「そんな警戒する程の国かね」


 サード帝国はノータッチか、ややこしい事にならないから良いけど。

 にしても軍隊……?まさかとは思うけど、ワンス王国とトゥース王国だったりする?


 でも正直あの二国がこうも早く犯人とアジトを見つけるとか無理だと思う。誰かがここを教えたとしか思えない早さだ。


「このクソ広い平原の地下だ、ここまで来ても俺達を探し出すには時間がかかるだろう……が、すぐに見つかる可能性もゼロじゃねぇ。ややこしくなる前にとっととおっぱじめるか」

「やっと君のご同胞とか言う者達を見れるのか」

「ああ、だが海を渡れない軟弱共だ。強さには期待すんなよ」


 天使だあいつ。海を渡るとか物凄く分かりやすいキーワードを言ってくれたおかげで確信した。そして奴を殺す事も確定した。

 魔力を集めるって事は魔法使いの類と思うけど……初代があんなのだし訳分からない理不尽な能力を持ってるかもしれない。


「じゃあさっさとやっちまうか」

「終わったらちゃんと僕の告白大作戦に協力したまえよ」

「わーってるよ、何だそのダサい作戦名」


 ……何をするか知らないけど、厄介なものなら阻止したい。

 でも我慢だ我慢。奴に確実な隙が出来るまでは様子を窺う事にしよう。



★★★★★★★★★★



「シルフィーヤ平原に行けば貴女達の来世の幸せが確定しますっ!!」

「何でヤケクソになってんのよ、行かないって」

「じゃあどうしたら行ってくれるんですかっ!?」

「何で私達がそんな場所に行かなきゃいけないのよっ!」


 物静かな雰囲気はなりを潜め、やかましく喚く駄々っ子の様になった占い師に何とかお帰り願いたい所だが、言う事を聞く気配が全くない。


「困るんです、貴女達が行ってくれなきゃあっ!」

「やっかましぃわ!」

「はいはい、そこまでです。怪しい占い師さん、目的を言わなきゃ私達は間違いなく動きませんよ」

「……分かりました。その前に人気の無い所へ行きましょう」

「変態」

「そういう目的ではありませんっ!」


 お人好し連中はこの変なのの事情を聞くつもりらしい……

 私のみが拒否した所で抱っこされてる状態につき強制連行されるのでもはや何も言わん。降りない私もどうなのかと思うが。





 人気の無い場所と言えば定番の路地裏である。

 しかしこの国の路地裏にはガラの悪そうな連中がたむろしていた。が、私達の姿を確認するや否や猛ダッシュで逃げていった。

 捨て台詞は「やべぇ、決闘されるぞっ!?」だ。少しはしゃぎ過ぎたかもしれない……


「何なんでしょうね、あの方達。居なくなってもらって都合は良いですが」

「用があるなら早くして、貴女の無駄話はいつでも出来るけど祭りは今日だけよ」


 顔は見えないが雰囲気から察するとムッとしてるっぽい。

 しかし特に文句を言う事無くまずは纏っていたローブを脱いだ。


 痴女かと思ったが、下には何処と無く豪華に見えるドレス、ローブ?何か中間みたいな白い服を着てた。

 顔は間違いなく美人、しかしもう美人とか見慣れてるので感嘆はしない。皆も特に大げさなリアクションはしなかった。と思ったらマオだけおおっ!っと盛り上がってた。

 特に注目すべき箇所は耳だろう。長い耳、長耳族改めエルフの象徴と言える尖がった耳がある。


「私、見ての通りエルフでございます」

「そうね」

「シュクミナル族というエルフの姫だったりします」

「へー、凄い凄い」

「どうすれば驚いてくれますか?」

「早く本題に入りなさいよ」

「そうでした、時間が無いんですよまったくもー」


 こいつ殺していい?

 そうユキに目線で訴えると無言で首を横に振った。ダメなのか……でも何時でも対処出来る様に奇跡すてっきは装備しておこう。


「実は私と同じ一族であるエルフが危険な目に遭うと占いに出たのです。私から占ったのではなく、水晶に勝手に映し出されたので余程の危機が迫っているのだと思います」


 それって黒髪のあのエルフの事だろうな


「結果、現実にあの娘は何処かへ連れ去られ……あんな事やこんな事を……ぶふぅ」

「おい」

「し、失礼しました。つまり酷い目に遭って挙句に死ぬかもしれないのです。あの娘に私達は酷い仕打ちをし、結果あの娘を追い出す形になりました。これまで辛い仕打ちを受けたのにこの上更に酷い目に遭うなど私には我慢なりません」

「そう思うなら最初から迫害とかしなきゃ良いのよ」

「そうですね……当時は姫と言う身分に縛られてあの娘を庇う事は出来ませんでしたが、それは間違いだったと今では思います。見た目が違えど同族、私達は受け入れるべきだったのです」

「良い話だったなー」

「まだ終わってませんっ!……んん、貴女は長い話を聞く事に不向きみたいなので簡潔に言います。占いによれば今回のあの娘の救助は貴女達に任せるのがベストなのだと出ました」


 何だその占い。やけに私達を狙い打ちにしてるな

 あの水晶玉が得たいの知れない物に見えてくるわ。


「もちろん他にも手は打ってあります。貴女達の援軍となる様に色々な方に敵の元へ向かう様に仕向けました」

「貴女に踊らされた奴等が他にもいるんだ」

「失敬な、同じく誘拐された者がいる国の方達に犯人の場所を教えてあげただけです」

「つまりミラ達もあそこに行くのか。援軍というか私達が確実に敵のトコに行くように誘導する為に思えてくるわね。あの五丁目の馬鹿達も仕向けたみたいだけど、役に立つわけ?」

「いえ、役には立たないでしょう……しかし、あの方達は悲劇を喜劇に変えてくれる可能性があると出たので割と重要な鍵だと思います」

「物凄く納得した」


 てかそのやたら詳しく教えてくれる水晶が益々気になる。奇跡すてっきみたいに意思があるのだろうか?

 サヨやメルフィの占いよりランクの高い占いじゃないか。


「その占いどうなってんのよ。やたら未来に詳しいわね」

「ああ、この水晶玉は世界の根源に繋がってる……のではないかと言われてる大神木からお告げがあるのです。占いというよりは神託みたいなものですね」

「へー、割ってみたい」

「止めてくださいっ!……あ、また新しいお告げが……」


 私が覗いてみても特に何も浮かんではいない。

 元エルフであるメルフィなら見えるのかと言えば同じく見えない様子。精霊が見えるのとは関係ないのか。エルフの王族にしか見えない効果でもあるのかね


「何か不思議の国から来た様な格好の金髪の少女が危ない目に遭うみたいですね」

「マジかよ」


 心当たりしかない。どっかに遊びに行ったと思わせといて実は捕まってたのかアリスは。


「でも捕まったのではなく、どうやら戦いに行ったみたいです」

「……はて、何であの娘が戦いに行かなきゃいけないの?」

「さぁ?何か事情があるのかもしれません」

「確実に言えるのはアリス殿が攫われた者達を助けに行ったハズがないという事じゃな」

「残念ながら否定は出来ませんね」

「詳しい事は私には分かりません……けど、そのアリスという方は貴女の為に戦うみたいです」


 私か?私を見てくるんだから私か


 そんな遭った事もない相手が私の害になるとか……もしかして先代の創った奇跡人が相手なのかもしれない。それなら今後に私達の障害になる可能性がある。

 けど何でアリスはそんな奴を事前に察知して始末しに行けたんだろ……


「どうします?アリスさんが危険なら行くべきだと思いますが」

「もちろん行きますっ!……よね?」

「そうね……相手は奇跡人の可能性があるわ。戦いになったら無事では済まないかもしれないわよ?」

「相手は無事では済まないでしょうね。ちゃちゃっと行って終わらせましょうか」

「帰ったら祭りの続き」

「では夜までには終わらせましょうか」


 頼もしい奴等だこと……せっかく面倒そうな事を回避したつもりだったけど、結局こうなったか。

 あの一人で突っ走った馬鹿たれを殴ってやらないと気が済まない。



☆☆☆☆☆☆



「あの……行く前にちょっと言わなきゃいけない事があるのです」

「何故こそこそと私だけに?」

「いえ、別に貴女でなきゃダメという事ではないのですが……」

「何ですか?お姉様には言いづらい事ですか」


 急かしたのはこのエルフなんだから言いたい事があるならさっさと言ってほしい。

 すでに愚昧達は転移の準備をしてるし、私だけ手伝わなかったら何を言われるか……


「実は……うさぎに気を付けろというお告げが出たんです。意味が分からないと思いますが、大惨事になりかねないみたいなので念のため伝えておきます」

「……うさぎ」


 まさか……お姉様のリュックの事でしょうか。

 いえ、大惨事になると言ったらあのリュック以外考えられません。


「貴重な情報ありがとうございます」

「いえ、お役に立てたのなら幸いです。どうか頑張って下さい」


 アリスさんを助けるというより、お姉様のリュックを守る方に気を使わなければならない戦いになりそうですね……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ