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幼女と先代と妹

「ところで私はこんな所に何でいるのでしょうか?」

「現実逃避してもアリエを半殺しにした罪は消えないわよ」

「うぐ……いえ、あれは自業自得という事で。で、この目の前で土下座してる方は?」

「ワンス王国のお姫様」

「……おぉ、ついに私はどこぞの姫を跪かせる存在になってましたか」

「貴女に用があるんだってー、聞いて差し上げればー?」


 サヨに丸投げしとけばこっちに被害はない、と良いな。

 なるべく他人ですって感じに離れて位置で見守るとしよう。にしても姫同士は仲がいいと思うが、兵士達はそうでもないみたいだ。あからさまにギリギリまで離れた位置でそれぞれ待機している。

 どっちかと言えばトゥース王国側がワンス王国側に劣等感を抱いてるって感じか……まあ実力に差が有りそうだし妬んでるんだろうなぁ


 とか思ってる間に一国も早くこの場から去りたかったのかトゥース王国の兵士達は城の中に戻っていった。ミラには元々護衛がいたから問題ないと判断したのかもしれない。


「ワンス王国の兵士は怪しい奴がいるから変な事まで喋らないといいけど」

「サヨ様なら余計なことまで喋らないと思いますが、念のため忠告しましょうか?」

「いいわ、あの娘も馬鹿じゃなでしょうし余計な事は言わないと信じとくわ」

「しかし頼みって何でしょうか」

「その辺はミラにでも聞きましょうか、あの様子じゃ知ってそうだし」


 てな訳で私達はミラの方から事情でも聞いとこうとサヨ達とは逆の方向に集まる。

 あの内緒話っぷりから察するに簡単には教えてくれないだろうが、そこは強制的に喋らせれば済む。


 別に自ら巻き込まれに行く訳ではない。聞いたらおさらばだ。


「実はねー、最近ウチの国とワンス王国で」

「あっさり喋りやがったぞコイツ」

「いや、ドンちゃんの事だから早く喋らないと何されるか分かんないし」

「姫様はアレですが、どの道フィーリア様のパーティ構成からして無関係とは言えないので喋ってしまっても良いんじゃないですかぁ?」


 パーティ?ウチに関係あるとしたら女性がどうたらって事か?


「何か最近、両国から魔法使いが姿を消す、ていうか攫われてるんだよ」

「正確には行方不明なのですが、魔法使いのみが急に居なくなのを考えるに何者かに連れ去られたのだと私達とワンス王国側は推測してますねー」

「へー、別に隠す様なこと?」

「いやいやフィーリア様、魔法使いって事は大体は貴族が行方不明になってるって事です。大問題ですよー」


 あぁ、そういやそうだった。もう自分達のパーティに慣れてしまって世間の魔法使いが貴族ばっかだと言う事を忘れていた。

 なるほど、それは大問題だろうな。これが冒険者だったら騒ぎにすらなってなかっただろう。何処かで死んだという適当な報告で終わりだ。


 しかし魔法使いねぇ……ウチは魔法使い系ばっかで確かに無関係ではないけど全く心配する必要がない気がする。


「で、どこのどいつが犯人か目星は付いてるの?」

「最初の被害があったのが分かってる範囲ですが、フォース王国が戦を始めて2週間後となってますー。邪魔なフォース王国が動けない内によからぬ事をしようとするのはサード帝国なんじゃないか?……というのが私達の考えですねー」

「それはまた相手が悪いわねぇ。犯人がサード帝国だった場合、貧弱なトゥース王国は強く物申す事が出来るのやら」

「そこは姫様がばしっと」

「いや外交官に任せようよ」

「それよりアリエってば何時まで寝てるつもりでしょう」

「鼻水だから効き目が悪かったのかもね。とはいえ貴重な神獣の体液、きっちりお金は頂きましょう」

「ドンちゃんのお仲間さんが暴行したのに高額な治療代まで請求するなんて極悪だよ」


 払うのはアリエだと言ったら、ならいいかとあっさり見放す所を見るとミラも割とゲスである。我が身の方が大切なのが人間というものだ。


 サヨの方はどうなったのか?未だにワンス王国側が説得中みたいだが……サヨのあの拒否する感じのジェスチャーを見る限り交渉決裂と言ったところか。

 ふぅむ……あの監視っぽい奴が良く分からんなぁ、何処かの密偵なのかリーベの身内が差し向けた監視なのか判断出来ん。


「キキョウ、ワンス王国側のあの前から2番目と3番目の兵士をどう思う?」

「どうと言われましても私はフィーリア様と違って観察眼がありませんが……」

「奴等が普通の護衛なのか怪しいのよねぇ」

「護衛という事は近衛騎士でしょうか、少なくとも数年か十数年は仕えているかと。とはいえ長期間潜入する者も居ることはいます。そうですね、奴等が独身だったら怪しいかもしれませんね」

「ほぅ?」

「20代後半から30代前半、すでに子供が居てもおかしくはありません。しかし他国からの間者ですと独身の者が多いです。というのも子供は生まれ育った国を裏切る傾向が低いからですね」

「知りもしない親の祖国より生まれ故郷を選ぶ、か。伴侶と子供に反国精神を植えつける手間を考えれば独身の方が楽ってわけね」

「中には念には念を入れて親子数代に渡って潜入する者達も居ますが。その場合は洗脳が出来る魔法使いが多いです。と言っても今時そこまでして潜入させる国は無いでしょうね」


 ふむ、全く分からん。まぁいいや、五丁目にまでゴタゴタが来ない範囲でよろしくやってろって話だ。

 お姫様含む王族は色々面倒なことあって大変ですね、で済ませるとしよう。


「私としてはあのお姫様が余計な事を仕出かさない様に見張る為の監視だと思いますけど」

「そういやそうね、姫のくせに何で誘拐云々に首を突っ込んでるのかね」

「居るところには居るんですよ、妙に正義感出して周りが迷惑してる事に気付かず突っ走るお偉いさんって」

「そして失敗した後に後悔するのよね。あーやだやだ」

「ふ、二人して酷くない?」


 そしてここに何だか巻き込まれそうな頭の中がお花畑のお姫様が一人。流石に戦力に数えられないだろうし、メイド二人が居れば大丈夫だろうけど……


 そういえば三大名水湖にルリの分体とやらが居たな。あれを派遣しとけばいいか。


「よし、帰るか」

「もう帰るの?」

「厄介な事になっても私が与えた最強武器があれば大体何とかなるでしょ。あとメルフィに頼んで精霊にルリの分体を連れてくる様に伝えて貰いましょう」

「めんどくさい」

「それは恐縮しちゃうかも」

「扱き使えばいいのよあんなの」


 この何か後々めんどくさそうな事になりそうな案件は私はノータッチの方向で済ませてみせるっ

 とか言ってると巻き込まれるんだよなぁ……


「もう何百年も戦争とか無かったんでしょ?何で私が冒険しようって時に起こるかね」

「本当だよっ。せめて私が死んでからやればいいのに……誰か疫病神的な人が居るんじゃないかな?」

「そうかもね。でも私を見ながら言うな」

「他意は無いんだけど、何となく?」


 私が最近のごたごたの元凶だと?フォース王国では色々やってしまったが、元々戦を仕掛けたのはアホな国だろ。そのアホもフォース王国がアホな事するからであって結論として私のせいではない。

 うむ、私は無実だったか。


 証明された所で帰ろう。未だにサヨの方は交渉中というか、説得されてるのか話し中なので放っておくか。

 アリエはまだ起きないので請求書はミラに渡しておこう。相場は知らんが2000万くらいはふんだくれるだろう。


「じゃあメルフィ、請求書を書いてそれをミラに渡してちょうだい。そしてアリエに宜しく」

「ん。逃げられない様に精霊契約にしとく」

「守らなかった場合は?」

「精霊達が色々無茶をする」

「極悪だよ……」


 人に尻の形したチョコレートアイス食わせようとする方が極悪なんじゃなかろうか。自業自得だ馬鹿者め。



★★★★★★★★★★



「なんじゃ、サヨ殿が戻ったかと思ったら主殿じゃないか」

「私達で悪かったわね」

「別に悪いとは言っとらんが……しかし仕事放棄して一体何処に行ったのじゃろうか」

「仕事放棄って事はまだ完成してないのね」


 完成どころか建物の一つも見当たらないのだが。

 しかし遠くを見ると何か大きい壁、防壁と思われるものに囲われている事に気付く。どうやら最初は防壁を囲む事から始めたらしい……


 それはいいのだが、どう見ても周りの森ごと囲んでいる。

 これではその辺の魔物まで中に入れてしまう事になるのだが……


「森の魔物は大丈夫なの?」

「うむ。すでに服従しておる」

「ほー」

「元々この湖にいた水竜が頂点に立っておったようでな、マオ殿が水竜と遊んでおるのを見たら何もせずとも服従したぞ」


 なるほど。私達が水竜と同格かそれ以上だと判断したわけだ。魔物にしては考えてるな……


「そんな事より見て下さいっ!この湖にいた色違いの水竜さんですっ」

「おやまぁ、何ともピンクですこと」

「名前はキュゥちゃんです」


 件の水竜はキュゥっと鳴いた。また鳴き声から名付けたらしい。

 桃色の水竜とか威厳ないな


「何これレアいの?」

「色素によって色が変わったドラゴンが居てもおかしくはない」

「じゃが水竜のくせに火竜より威力のある炎を吐くぞ」

「ならこの水竜はおかしい」

「おかしくありませんっ!!」

「強いならいいじゃない」


 ちなみに他にも水竜はいた。全部で5体いたようだ。この広さの湖なら5体いても余裕だな。

 どいつもこいつもマオに懐いてる様だが……ぶらっくうるふに警戒されてた奴と同一人物とは思えん。


「そういえば主殿、分体の方のワシをミラの護衛にするとは何かあったのか?」

「保険よ保険。怪しいのが来てたからね」

「お主と同じ国の者ではないか」

「同じ国だろうが信用ならないでしょ」


 ぐるっと遠くを見渡して防壁がどう設置されてるか見てみたが、見える範囲で囲ってるって事は本当に小さい町と同じくらいの大きさで造るみたいだな。

 それでも数百人は住める広さだし、建物を数階建てにすればもっと暮らせるだろう。

 恐らく最初は数十人か多くても百人くらい集めて、徐々に子孫が増えていく計算なんだろうな。私達が居なくなった後に入りきらなくなったらどうする気なのか


「そう言えば五月蝿いのが見えないけど何処いったの?」

「五月蝿いのと言えばアリス殿か?主殿に付いていったのじゃろ?」


 そうだっけ?勝手に消えて見えなくなるから分からんのだ。

 しかし今は近くに居る気配は無いし、五月蝿い発言に文句を言う為に出てこないのでこの場には居ないと考えられる。

 あ奴は自由と言うか勝手気ままな娘なので何処かに遊びに行ってるんだろう。人に取り憑いておいてホイホイ何処かに行きすぎじゃなかろうか



★★★★★★★★★★



『もういいでしょ?お嬢さん』

『……絶対、この場で殺す』

『無理よ、無理無理。貴女その力を借りてるだけでしょ?私は正当な使い手、その杖が私を害する事は無いわ』


 そう、今の私はお姉ちゃんから借りてるだけの仮の主。7年ほどかけて漸く、一時的にだけどこの子に力を貸してもらったのだ。

 何故かと言えばこの目の前にいる


『お前を殺すため……初代フィーリア』

『生身のまま過去に来るなんてとんだ無茶をする娘ね。しかも一人じゃなくて二人で……まぁあっちの娘はすでにやっちゃったけど』


 本当は一人で来るつもりだったんだけど……いつも命令に忠実なあの娘が頑固に一緒に行くって言ったからつい一緒に来ちゃった、しかしそれは失敗だったかも。

 横目で見れば死んではいなさそうだけどボロボロになって倒れてるメイドの娘。帰ったらお姉ちゃんに怒られるかも。


『大体なんで私が子孫に殺されなきゃいけないのよ』

『お前の、せいで私の家族は……何で、お前が使った力の代償を私達が払い続けなきゃならないのっ!?』

『代償……?この力のかしら……言っておくけどちゃんと自分で払ってるわよ』

『嘘だっ!!』

『本当だってば、貴女は仮にも私の子孫だから教えてあげるけど……私の代償って存在よ?』

『……存、在?』


 存在……寿命じゃなくて?

 初代が代償を私達、子孫に支払わせてるからフィーリア一族は短命、そう考えていたけど違うの?


『証拠になるか分からないけど、貴女達の時代に私の名前って残ってる?残ってないでしょ、忘れ去られるんだから。どれだけ派手に暴れてもね』

『そんな……』

『身内には何とか覚えて貰ってるみたいだけどね……貴女がここに来たって事は子孫にも忘れられずに済んだみたい』

『ねぇ、貴女が一人でいる理由って、それ?』

『そうよ、自分で創った子供達にいつか貴女誰?とか言われたら嫌じゃない。私の子達が忘れないっていう確証は無いんだし』


 ……そうだったんだ

 じゃあフィーリア一族が短命なのは何で?

 初代の代償が存在なら原因は別……なら原因は二代目のお姉ちゃん?

 いや、そんな事はない。そもそもお姉ちゃんが生まれる前から短命一族だったんだし……


『……一つ聞きたい事があるわ。貴女の暮らしてる未来は平和?』

『どうかな、魔物はその辺うろついてるし平和とは言えないかな。でもまぁ戦争とかはもうずっと起きてないよ』

『そう、そう言う事……』

『何か、分かったの?』

『今この時代はお世辞にも平和とは言えないわ。戦争はしょっちゅう起こってるし絶滅する種族だって居る。自然が破壊され住処が減って精霊の数も減ってるわ』


 何か急に言われても困るんだけど、昔は酷い世界だったんだなぁ、って思うだけ。


『原因は何だと思う?……って聞いても分からないでしょうね』

『その話は、短命の事と関係あるの?』

『あるわよ。この世界が混乱しているのは……私が生まれた大陸に住むアホ共のせいよ』

『分かんない……』

『海の向こうに未知の大陸があるんじゃないかって話は流石に知ってるでしょ?あれは事実よ、そして私は海を越えてこの大陸に来た』


 割と衝撃の事実だ……誰も辿り着けないと言われていた海の向こうからこちらに来た者が居るなんて

 少なくとも向こうには海を越えるだけの実力を持った者が居るって事か、この初代みたいに。


『向こうはこっちと違ってそれはもう地獄だったわ。生きて明日を迎えられるか、そればかり考えて過ごす者ばかりだったわ。そして生きる為にある存在を生み出した』

『異世界人?たまに居るわ、勇者とか言って異世界から呼ぶ奴』

『異世界?……ああ、たまに迷い込む旅人の事、違うわ。でも似たようなものよ、異界に人を送り出し、帰ってこれた者は絶大な力を得る。原理は恐らく一緒ね』


 異界に送る……もう何言ってるのか良く分からない。異界とやらに行くだけで何かしら力を得られるって事で合ってるよね?

 でも帰ってこれた者だけって事は早々戻って来れないのかも……てか絶大な力って


『なら、奇跡ぱわーって』

『そうね、らぶりぃぱわーはそうして得た力で合ってるわ』

『名前はともかく、貴女が力を得た理由は分かった。で、それが何か関係あるの?』

『せっかちだこと。まぁ私みたいな凄い存在の事を神から力を得た者、通称天使なんてクッソ笑える名称で呼んでる訳。この大陸が荒れてるのはその天使達が色々と暴れてるからね。ある者は戦争を扇動したり、ある者はただただ破壊したりとまあ色々よ』

『迷惑な奴等ね』

『その迷惑な奴等をこの私がわざわざ殺しに回ってるのよ』


 はぁ?

 初代がこの大陸の為に馬鹿共を始末してる?

 うそ臭い……一緒に荒らしてるって言われた方がしっくりくる。


『でもそんな事してもキリが無いわ。今も続々とこの大陸にやってきてるんだし……私が死んだ後はこの大陸も地獄になってるかもね。だから私は一つ大仕事をしようと考えてたのよ』

『……』

『向こうの大陸に帰って天使共が海を渡れない様に結界を張る。未来永劫この大陸に渡れない様にね』

『なんで』


 この大陸の者でもない初代がそんな事するのか


『こっちには子供達が居るしね、それに全てが美しいわ。人々には笑顔が溢れ、自然には緑が映える。向こうの奴等が気に食わない程に素敵で平和な大陸よ』

『そうだね、私も好きだよ』

『そんな場所を守る為に未来の私は計画を実行したんだろうけど、どうやら一人では代償を支払いきれなかったみたい。永遠に続く結界なんだし当然かもしれないけど』

『それを、貴女の子孫である私達の命で支払ってる……って事?』


 ふ、ふははは……家族以外どうでもいいってのに、どうでもいい奴等の為に私達が寿命を縮めているとか、笑えない。


『勿論私がその方法を実行しなきゃ貴女達が短命一族になる事はないわ。でもその場合、天使共によって大陸を荒らされ、フィーリアの血筋が途絶えて貴女も二代目も生まれて来ない、なんて未来もあるでしょうね』

『ふ、なら……どうしようもないんだね、私達が不幸になるのは』

『別に貴女達が生まれると共に結界を消失するように願っとけば問題ないわ』

『へ?……出来るの!?』

『出来るわ、けど貴女は背負えるの?貴女達が生まれる前に生きていた先祖は代償を払う、なのに貴女達はのうのうと生きれる。結界が消えれば天使共がまた大陸に現れる、そしてそれを相手にするのはきっと二代目でしょう。楽に幸福を得るのは貴女だけよ』


 そう、だね……浮かれてる場合じゃなかった。先祖を捨て、自分達だけ幸せに暮らす……出来る!

 私だけがその罪を背負えばいい、お姉ちゃん達は何も知らずに笑っていればそれでいい。顔も知らないご先祖様よりお姉ちゃんを選ぶでしょ普通。


 次は、天使とかいう奴等か……これはお姉ちゃんじゃなくて大陸の皆が何とかしろって話だね。けど問題は強さ、初代みたいなのがわんさか来たら流石にダメかもしれない。

 このままでは奴等を相手にするのはお姉ちゃんになってしまう。どうする……


『悩んでる所悪いけど、私ほど凄い奴は早々いないから安心なさい』

『自分で言うんだ』


 でも始末して回ってるんだから言うだけの事はあるか

 それなら大陸にもそれなりに強い者だって居るし、何とかなるかも。


 というか考える余地とかない。私がここに来たのは私達が幸せになるため、犠牲とか知った事かっ!


『決めたからやって。私達が幸せになる様にして』

『自分達の為に他者を捨てるのね。くされ外道め』

『何とでも言って、私は……後悔しないから』

『まぁいいでしょう。死後の事なんか私としても知った事じゃないわ……そうね、貴女の母が生まれたと同時に結界を消失させるか。少なくとも30年は無事でしょ』

『わかった』

『じゃあその方向で。ところで貴女、名前はなに?』


『アリス。アリス・フィーリア』


『そう、見た目も名前も娘にそっくりだわ。そんなアリスに一つ言っておくけど』

『?』

『未来は無数にあれど、過去は一つよ。貴女が今日ここで未来を変えようが貴女が帰るのは何も変わってない世界よ』

『そんな事か、構わないよ。それでお姉ちゃんが幸せになる世界があるんでしょ。私も一つ聞きたい、良く私に協力してくれたね?』

『言ったでしょ、未来は無数にあるって。ここで貴女を殺す未来だってあった、殺さなくても聞く耳持たず送り返した未来もあった。その中で私一人くらい貴女の戯言を聞く優しいご先祖様が居てもいいでしょ。未来は並行してるわ……貴女が助けたフィーリア一族が幸せに暮らせるといいわね』

『ふん』

『可愛くない子、じゃあ帰りなさい。罰として送ってあげるわ。ああ、あのメイドの娘なら一足先に帰らせたから』


 何時の間に……横目で再び見ると確かに倒れていたユキがいない。

 でも罰として?

 どういう事だろ……


『おら帰れ帰れボケナス娘。あーうぜぇ、時間を無駄にしたわ』

『口汚っ!?』


 急に本性現したよこの先祖!

 文句を言う間もなく私は初代によって元の未来へと戻された……


 と思ったら違った。


 目覚めた私は何故か半透明になっていた。これって幽霊になったのかな?初代め……何故私を殺した


 起きた場所は例の天使によって荒廃していた世界。死んだ様な目をした人々は今日を生きて明日を迎える事だけをただただ願う者ばかり

 緑に溢れていた山々は抉れて消失してしまっている。


 初代は私に結界が消失した後に襲来した天使によって荒らされた世界を見せていたんだ。だから罰か……

 でも犠牲はつきものだから仕方ないよねっ!……と、他人事の様に考える私がいた。

 この程度の惨状で私が堪えると思ったら大間違いだ。


 だけどフィーリア一族どころかワンス王国が滅亡した世界を見せられたら結構へこんだ。お姉ちゃんや私がどうなったのかは分からなかったが、生き延びている事を願う。


 その後も見せ付けられるのは惨劇が起きた世界ばかり……私の放った言葉一つでこうも世界が変わるのだと思い知らされた。実際は初代の行動なんだけど、元凶はこの私だ。


 反省はちょこーっとしたけどやっぱり後悔はしなかった。


 どのくらい時間が経ったのか分からないが、何度も何度もいつになれば地獄と化さなかった世界にいくのかと嘆いてしまうくらい変わり果てた世界を見て……


 次に目を覚ましたのは漸く知ってる世界、に似た場所。

 やっと戻ってきたか、と思ったけどどうやら違う。


 何故なら起きたら横に寝てるお姉ちゃんが居たから。


 私のお姉ちゃんはベッドで覚めない眠りについてるハズだから、これはきっと違う未来のお姉ちゃん。時代は何時なんだろうか……後で調べて見よう


 しかし何で木陰で寝てるのかな?

 しばらく頬をぷにぷにしながら寝顔を観賞してると何やら魘されてる様子。


『こんなところで寝てると取り憑いちゃうぞ?……ほぐぁっ!?』


 善意で起こしたら何故か殴られた


 知らない相手にこの暴挙、初代に似たんだね、お姉ちゃん……

 ともあれ、折角会えたので取り憑くという名目でこの世界がどうなっているのか観察する事にした。


 この目では見た事なかった母親の姿も見た。性格ちょっと難ありそうだったなぁ


 こっちのお姉ちゃんの周りには仲間が沢山いた。ぼっちを卒業してたんだね……

 流石に天使とやらを相手にお姉ちゃんとユキの二人では厳しいかと思ったけど、皆が皆強いみたいなので安心だ。中には初代の忘れ形見も共にしてて割と驚いたが、まさか初代がお姉ちゃんの為に遺しておいてくれたのかな?と思ったけど偶然だろう。


 逆に襲ってきた忘れ形見の一人である人形も居たし。

 ともあれこれならお姉ちゃん達だけは不幸にはなるまい、そう思ったが


『もう何百年も戦争とか無かったんでしょ?何で私が冒険しようって時に起こるかね』


 夢だったんだっけ?冒険家

 今大陸内がゴタゴタしてるのは恐らく天使がやってきているからだと思う。

 何で初代がここに私を送ったのか分からないが、感謝しよう。元凶が天使なのかそうじゃないのか知らないが、我が姉の夢を邪魔するなら排除してやるわ

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