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幼女、ふにふにする

『昔ね、貴女と一緒の顔した娘を造った事があるのよ』

『はぁ』

『でも、ちょっと一緒に居て少しの教育しただけで別れちゃったわ』

『何故でしょう?』


 んー、と敬愛する創造主は腕を組んで唸っていらっしゃる……

 そんなにダメな人だったでしょうか、私の姉にあたる人は


『だってさぁ、あのまま一緒に居たら絶対に必要以上に愛情を持っちゃいそうだったから』

『愛情、ですか?』

『そそ、あの娘可愛いのよ。流石は私が造った娘だね。あの娘は生まれたてはそりゃ弱いんだけど、やろうと思えば何でも出来る、そんな風に努力すれば報われる……なーんて私に似合わないタイプにしたの。そのせいか何か目が離せなかったのよねー』

『そうなんですか、最初から強力な力を授かっている私はちょっとズルイですね』


 会ったことも無い姉とはいえ少々心苦しいですね。弱いと聞きましたので今でも生きているといいのですが


 あれ?何か聞き逃してはいけない様な単語があったような……

 でも聞いてはいけないというか聞いたら後悔してしまうような


『あ、あの……創造主、様。もし、かしたら私もその内別れる様な事があるのでしょうか?』

『んぁ?……あー、死ぬ前には別れるかも』

『……愛情、とやらを持っても?』

『え?何で私が貴女に対して愛情を持つの?』


 ……え?

 持たないの?愛されてないの私?


 いや待って下さい。愛されてない場合はそのまま同行してもオーケーという事なので何も悪い事ではありません。そう、別に悪い事では


 ぽん……と頭に手を置かれて撫でられました


 急に黙り込んだ私を心配なさってくれたのでしょうか……いけないいけない


『貴女はお人形だもの、あの娘と違って。だから私も愛情を持たなくて済むわ』

『お人形……ですか』

『そ、お人形。まぁ愛情持たないって言っても嫌いではないわ』


 人形……とはあの人形の事でしょうね。き、嫌いじゃないのならいいですよね?うん、きっとそうです

 だけど……


『名は体を現すって良く出来た言葉よねー、我ながら良い名前を貴女にあげたと思うわ』

『……そうですね』

『元気ないわねー、ほら!あと数日もすれば面白そうな場所に着く予感がするからさっさと行くわよ』

『はい』


 ――嫌な話を聞きました。聞かなきゃ良かった、知らなきゃ良かった。

 でも聞いてしまいました。


 愛されるけど一緒に行けない姉

 愛されないけど一緒に行ける私


 どっちが良かったのでしょう……

 いえ、きっと私の方が良い。別れ、いえ捨てられるより例え人形扱いでも一緒にいける方がいい


 創造主もお人が悪い……


『はよ来い!――――!』

『た、ただいま参りますっ』


 名付けられた時は嬉しかったですけど、今は何となく嫌な名前


 どうせなら

 どうせ人形だったら感情なんて余計なものを付けられなかったら良かったのに



★★★★★★★★★★



「はっ……ひ……」

「こらこら、逃げちゃダメでしょ」


 這いずったまま逃げようとするマリネとやらの襟をずいっと掴む

 ここまで怯えていると転移でつい逃げちゃった、って事も有りえるので掴んだままにしとこう。これなら転移されようが私まで連れて行く事になるからどの道逃げられまい


 ただこうも近いとコイツの不意討ちも気をつけねばいけないのだが……

 もはや完全に私に怯えているから戦意消失してるっぽいな


「まるで私が悪者だと誤解されそうね」

「え?」

「何か文句でも?」

「さぁ来なさいルピナス、偽者だろうが本物だろうが倒してあげます」


 私の台詞に何言ってるのこの人、って感じのヨーコの声が聞こえたが一睨み何事も無かったかの様に小僧と対峙した。そっちに集中してろよ


「しかし……こう、サヨが怯えていると考えるとどうしようもなく苛めたくなってくるわ」

「ぅぅ」

「マリネ……だったわね。いい名前ね、自分で考えた渾名にしては」

「な、なにを」

「でも私には何となく分かるわ。だって私は先代に似てるんでしょ?なら貴女の本当の名前を何となく分かってもおかしくないわ、そうねぇ……貴女の名前は」


 バタバタと暴れだした。よっぽど名前を言われたくないようだ。というかトラウマでもあるのだろうか?


 やだ、楽しい


「あ、な、た、のお名前なんてーの?それはね?」

「い、嫌ですっ!放してください!聞きたくありません……っ!」

「マ?ねぇねぇマから始まるの?」

「っ!?」


 びくっとした

 この反応は当たりに違いない。いや、マリネなんて渾名なんだから普通に考えてそうなんだろうけど


「マ、マリ……」

「い、ぐぐ……は、離れないっ」

「良い加減力の差ってのを認めなさいな――」




「マリオネットちゃん」

「…………」

「あ」


 地に突っ伏した。ここまで反応するって事は先代の奴が何かいらん事をしたな


「例えば操り人形なんて名前を付けた事から察するに貴女の事を人形として扱ったとか」

「……ひっ」

「実はサヨの代わりなだけの存在だったり」

「……――っ」

「操術を使える操り人形ね、なるほど。あ、ごめん。口に出てた、わざとだけど」


 蹲ってふるふると震えてしまった。恐らくガチ泣きしている

 こりゃしばらく立ち直らないかも


 じーっと悪魔の妹がジト目で見てきたが、鼻で笑ってやると軽蔑した目に変わった。あの娘はコイツが敵だって事を覚えているのやら


「ち、がいます……私は、人形じゃ」

「でしょうね。私から見たら奇跡人に分類されるわ」

「へ?」

「ま……先代にとっては人形だったのかもね……サヨと違って」

「づっ!!」


 ガバっと勢いよく立ち上がり、私を無視してサヨの方へと飛び掛る、が


「落ちろボケぇ!」

「がふっ……」


 奴の片足を両手で掴んでビターンと叩き付けた

 分かりやすい奴だこと


「な、んで……こんな、捨てられる様な、奴に」

「貴女だってどうせ最終的には捨てられたのでしょう?」

「お前と、一緒にするな……っ」

「……そうですね、私としても貴女と一緒にされたくありません」


 つかつかとサヨが近寄ってくる。別に見下した様な目をしている訳ではない

 ただ、いつも通りの表情で近づき倒れて顔だけ上を向いているマリオネットの目を見ている


「別に……今更捨てられたとかどうでも良いのです」

「な、んで……」

「何で?決まっているでしょう……創造主よりも敬愛するお姉様に拾って頂いたのですから」


 そう言ってきょとんとした顔をしているであろう私を見て見惚れる様な笑みを浮かべる


 やだ、この娘可愛い


「……先代ざまぁ、とか言えばいい?」

「ご自由に」

「拾うとか、犬や猫やルリじゃないんだからそういう表現はやめなさい」

「ふふ、分かりました」


「ワシがどうかしたのか?」

「可愛いペットだそうです」

「そ、そうか……にゅふふふ」

「ルリ、不憫な娘」


 今のやり取りが気に食わなかったのかまた暴れだしたので今度は背中を思いっきり踏みつけて立てない様にしといた


「は、腹立たしいっ!なな、何を幸せそうにっ!」

「いや、貴女は創造主と好きなだけ一緒に居たんでしょう?ならお相子という事で」

「……貴女の代わりの人形として一緒に居ただけです。別に私が居なくとも、あの方はお一人で何でも出来ます、一緒に居る意味なんて特にありませんでしたよ」

「あの創造主ですからね、それなら私だって本当にただ捨てられたって可能性も有ります」

「ん?いやサヨは間違いなく先代に好かれて居たと思うけど?」


 何を根拠に?と首を傾げて考えつつこちらに注目してくる

 分かってない様なので奇跡すてっきをサヨの方へ向けて投げた


「わ、っと……あまり雑に扱わないで下さいよ?」

「いいじゃない」

「それで……」

「好き嫌い云々の話でしょ?だからその子が答えじゃない」

「ここにきて謎解き……」


 謎解きって言うほど難しいものではないんだけど……


「その子、サヨを助けたじゃない。この私がサヨに止めを刺した時に。私の意志に反して」

「そうですね、いやぁ……今となっては懐かしいです」

「そんな昔でもないでしょうに。で、その子だけど、異常なほどに先代スキーなその子は先代の好きな者は同じく好きなんでしょうね、思わず死にかけてる所を使い手を無視して勝手に力を発動しちゃうくらい」

「なるほど……お姉様の言いたい事は大体分かりました。それで……創造主は私を嫌っていないと。やや強引な気もしますが、まぁ悪い気はしませんね」


 一番先代の事を知ってる、というか分かっているのは奇跡すてっきだ。奇跡ぱわーってのは使い手がこんなんになれーって本気で想って初めて発動する。奇跡すてっきをを介して発動する時は当然私や先代の心の内がわかっている筈。だったらどういう気持ちで先代がサヨを産んだかかも分かっているだろう。推測だけど多分間違ってない


 あの子はただの補助役かもしれないけど、奇跡ぱわーと奇跡すてっきは二つで一つの存在っぽいから、媒介を使わずに発動しようがきっと想いはバレてる


 しげしげと眺めるサヨにすてっきを返す様に伝えると素直に渡してくれた

 こう……人の心を覗き見るすてっきと考えると何ともゲスいすてっきに見えるな、スケベすてっきに変えてやろうか


「そこで、私は考えました」

「はぁ」

「どうよ、マリオネット……貴女が先代にどう思われていたか、知りたくない?」

「……何をしようとお思いでしょう」


 とりあえずうつ伏せのまま私に踏まれてるマリオネットを仰向けにして再び暴れない様に腹を踏んづける。割と強めに踏んだので「うぐっ」と苦しそうにしている


「簡単な事よ、貴女もサヨみたいに私に殺されなさいな。奇跡すてっきがサヨの時みたいに助けてくれれば少なからず貴女は先代に好かれていたって事でしょう、その時は見逃してあげるから好きに生きればいいわ……ただし」

「た、ただし?」

「そのまま死ぬようなら貴女はサヨと違い先代にとってどうでもいい存在、人形で、ゴミで、本当にただのサヨの代わりに造った模造品にすぎない……と、絶望しながら死んでもらう」


 しかめっ面になるマリオネットをもう一回ぎゅむっっと腹を踏んづけてからいつぞやの様に腹に跨ってすってきの持ち手を両手で持って刺す体勢を取る


「で?どうする?」

「どうするも何も、すでに殺す気じゃないですか……」

「命乞いでもすれば気が変わる事もあるわ」

「二代目様がそんな人とは思えません。それに、私としてもアイツに負けるのは癪なので。私だって……不要な存在ではなかったと証明してみせます」

「ふーん、私を押しのけて逃げるなんて選択肢は無いのね」

「……逃がすつもりがないでしょうに」


 いっそ楽にしてくれって感じでもはや抵抗もしない

 こちらとしても楽でいいわ。

 サヨは生き残っているので初の奇跡人殺しはコイツが初になるかもしれないなぁ


 いざ、両手を振り上げマリオネットの心臓へとぶっ刺そうとした時――


 何か嫌な音が自分の身体からしたと思ったら激しい痛みが襲ってきた


「ぐ……ぉ……ぉぉぉ……」

「……?」


 身体の至る所からピキッとかミシッとか何かヤバそうな音と共にズキズキとした痛み……いや、そんな生易しいものではない……っ


 これはいつぞや体験した筋肉痛の酷いバージョンっ!

 ほんの少し力を入れるだけで走るこの激痛……間違いないっ


 今はすてっきを振り下ろす体勢なのでかなりツライ、しかし動くのもツライ。どうすればいいのだろうか

 と、とりあえずこの無理な体勢をどうにかしよう……そーっと、そーっと手を下ろすしてなるべく痛みがこない様にするんだ、頑張れ私


「あの」

「動くんじゃねええぇぇぇっっ!」

「は、はいっ」


 マリオネットが動いた事によりわずかに伝わった衝撃で私の身体に激痛が走ったので思わず怒鳴ってしまった

 軽い衝撃とはいえ今の私にはかなりのダメージを与える恐ろしい一撃だ


 ゆっくり……ゆっくりだ、両手さえ地につけば多少は楽になる

 自分の顔に冷や汗が浮かんでいるのが良くわかる……まさか戦闘じゃなくて筋肉痛で冷や汗をかくとは思わなかった


 あの空耳の野郎……アフターケアは無しかよ、というか肝心な時に元の力に戻すとか有りえないだろ

 力を貸してもらっていた身で文句言うなよって感じだけど、勝手に貸したんだからやっぱ文句言ってもいいわ


 と、色々考えて痛みを紛らわしている間に徐々に下げていた両手がやっと地に……いや、地面じゃなくて跨っているんだからマリオネットの上だけど、とにかくやっと楽な体勢になれる


 ふに


 やわっこい感触がした。手の位置からして間違いなくおっぱい。別に狙った訳ではない。しかし、これは……

 指だけを動かす分には大丈夫そうなので揉んでみよう


 ふにふにふにふにふにふにふに


「あ、ああああ、あの!?」

「サヨよりおっきい」

「何してるんですかお姉様。さっさとそいつの息の根を止めて下さい」

「必死ね」


 乳の大きさが負けたのがそんなに悔しいのか

 身体を変えれるんだから乳の大きさだけ変えてるって可能性もあるけど


「覚悟を決めたのに今されてるのは胸を揉まれながら至近距離で顔を見合わせる事。私にどうしろと言うのでしょう」

「……しばらくこのままで」

「これは……お姉様が寝取られっ……!たかが乳が大きい程度で!?」

「姉さんも結構頭が残念な人ですね。失礼します」


 お?


 ユキに引き剥がされると言うか抱き上げられるが、振動、衝撃を限りなくゼロにする絶妙な抱き加減で激痛が走る事は無かった

 腕を動かす際に痛みは走ったが一瞬なので何とか我慢した


「危ないとこだったわ。一週間くらいマリオネットの胸を揉みながら生活する事になるかと思った」

「お身体は大丈夫ですか?」

「動かなきゃ大丈夫」


 しかし……ふにふにだった。実にふにふにだった。

 マオの乳とはまた違ったふにふにっぷりだった。気付けば無意識の内に手をにぎにぎしている


「実は私はノーマルだけどおっぱいは好きなのかもしれない」

「良かったですね、幼女のフリをしてれば大体の方は揉まれても笑って許してくれると思います」

「フリというか幼女なんだけど」

「あ、あのっ、私はどうすれば?」


 未だ一思いにやってくれな体勢で寝ているマリオネット

 すでにただの酷い筋肉痛持ちの幼女に戻っている私では止めを刺すのは無理である。どうしようか


「今の私は貴女を殺す事は出来ないわ」

「なぜ、急に」

「複雑な事情があるのよ」

「事情……胸を揉んだ事と何か関係が……」


 のそりと上半身だけ起き上がり、声に出しながら考えているがそれは無いと言いたい


 もうあれだ、サヨに任せればいいんじゃね?最初本人もやる気だったし


「サヨ、私は新たな戦い、そう自分との戦いが始まってしまったの、つまり出番は終わったわ。だから後は貴女に任せる」

「……だったら最初から私にやらせて頂ければよかったのに。しかし、相手の手の内が分かりましたので助かりましたよ」

「存分に褒めるが良いわ」

「はいはい」


 サヨがユニクスの血をぶっかけてしまったのですでにお互い無傷みたいなもんだが、操術しか能が無いのなら負けはしまい


「いつまでボケっとしてるんですか?さっさと立ちなさい」

「……何を、偉そうに言っているのでしょう」


 心底不機嫌そうにサヨを睨みながら立ち上がる

 しかし何を思ったか一転して勝ち誇った笑みを浮かべる


「……気色悪い、何をニヤニヤと」

「いえ別に?ただ、どうやら二代目様は貴女のその小さい胸より私の方がお好みらしい、と」

「いいでしょう、その胸抉ってやります」

「哀れですね……貴女はもう御役御免な存在なのです。そう、二代目様は貴女より私をお選びになった」


 どうしてそうなった


「何でそういう結論に至ったのですか、頭大丈夫ですか?」

「惚れた私を殺す事は出来ない、と仰られましたので」


 言ってない言ってない

 勝手に私惚れてます設定出さないでほしい。奇跡人は潜在能力が反面頭の中はが残念な奴が多いなぁ


 前にアイツとは相容れないと感じたが、やはり間違いなかった。今のアイツと二人きりになったら何されるか分からん、いや、何をさせられるか分からん。一応自重できる変態なユキ達と違って欲望のまま突っ走る真性だ、恐ろしい奴……!


「転移で誰か来ます」

「良く分かるわね」


 ユキの目線を追うと、確かに一部の床に丸い光が出ているので何かしら魔法が発動しているのだと思う

 発動が若干遅い転移が完成するのを待っていると、光が強くなりその光の中から人影が浮かび上がった


「私のシリアナはどこだぁっ!!」


 現れて早々、研究室内に響きわたる大音量で叫んだのはどこかで見た事あるババアだった

 元気だなぁ……

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