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幼女とカレー

「却下です」

「「けち」」

「ま、そりゃ却下でしょうね」


 ヨーコ達と合流したはいいが暇なのでベレッタを拉致して遊びにでも行くか!……とした所をユキに却下されたところだ。

 私はどうせユキ達過保護組が許可してくれないだろうなと何となく思ってたのであっさり引き下がったがお子様コンビのマオとアリスはぶーたれている


「この辺りは静かとはいえ戦場となってる国の中である事に違いはありません。バラバラに行動されてはお母さんの護衛だけで手一杯です」

「じゃあバラバラで遊ばなきゃいいんじゃないのかな?」

「では何をして遊ぶつもりですか?」

「狩り」

「山の中で狩りをして遊ぶ少女達……なかなか斬新ですがやはり危険なので却下です」


 いや、やらないから。言ってるのアリスだけだし……

 しかしまぁユキの言う事も一理あるか、別行動してる奴に偶然会って見られたからには殺すなんて展開あってもおかしくないし。そういう単独行動してる奴とか別行動してる奴等に限ってやたら強いんだよね


「ここはユキの言う通り大人しくしてましょう。暇を潰す方法なんていくらでもあるわ」

「そりゃ数時間くらいなら我慢出来るけどさー……一日二日の話じゃないじゃん」

「ですねぇ……」

「ペロ帝国が早く進撃してくるのに期待してましょう」


 補給とかあんまり無さそうなペロ帝国だし急ぎ目でくると思うけどなー

 とは言ってもこの国は広いから進むだけでもかなり時間がかかるだろう……ただの人間の兵士だし。とか言ってると偽者が転移であっと言う間に突入してくるって事も可能性は低そうだが有り得る

 こういう時どんな行動するか把握しにくい奇跡人は困るな……てか奇跡人は転移使える奴が多すぎる。サヨみたいな長年生きた中身がババアなら年の功として分かるが。というか皆そうか、今生きてる奇跡人は中身老人ばっかだし


「仕方ない、暇ならあそこのゴミでも殴ってストレス発散してなさい」

「えー……ばっちぃ」

「もっきゅん達が楽しそうに殴ってますのであの悪魔はもっきゅん達に譲りましょう」

「そう!あの変な青いの何さっ!」

「忘れてそうだけど貴女が廃墟で殺した悪魔でしょ」

「覚えてない!……って、私が殺したのなら何で生きてるわけ?」

「不死身らしいわ、便利よね」

「へー……私には生き地獄にしか見えないなぁ」


 今の状態を見る限りはそうだろうな……


「暇なら丁度良い機会なのでヨーコさんの世界の話を聞きたいのですが」

「はい?私の世界ですか……?まぁ、覚えてる範囲でしたら答えますけど」

「はいはいっ!最初は私からねっ!」

「ではウザスさんからどうぞ」

「アリスだよ白銀のペタン子!……異世界って魔物いないんでしょ?なら人間同士の醜い争いがあってそうなんだけどどうなの?馬鹿なの?」


 流石アリスえげつない質問から入る。最後の馬鹿なのは関係ないと思うが、しかし魔物が居るのに人間同士で今まさに戦争をしているこの世界の人間の方が馬鹿なのを分かっているのだろうか


「えー……確か私が住んでた国では有りませんが、他の国だとあったと思います」

「まぁ予想通りね、異世界にもわざわざ平和を乱す阿呆がいると分かって安心したわ。皆が皆争いは野蛮なので話し合いで解決しましょう、とか言ってたら気色悪いもの」

「では次は私が……異世界のメロンの種類について詳しく」

「じゃあ次は私ね、異世界の美味しい料理について詳しく」

「え……?お姉様?まだ私の質問が……」


 メロンの種類とかどうでもいい。メロンはメロンだ。そんな事よりご飯だろう……未だ知らない異世界の料理を知る機会なのだから聞かない手はない


「料理……?うーん……私が好きだったのはカレーでしょうか?」

「かれぇ……何か辛そうな名前ね」

「実際辛い料理です。いや駄洒落じゃないですよ?」


 聞いたこと無い料理だ。真っ先にヨーコの口から出た料理という事はメジャーで美味い料理なんだろう。おのれ過去の異世界人どもめ、出し惜しみしおって……


「で?作り方は?」

「え?知りませんよ?」

「分かんなきゃ意味ないでしょう」

「と言われても……私がこの世界に来たのは子供の時ですし、そんなまともに料理した事もありませんでしたし……」


 そういやそうか、私だって子供だから料理しないしな……そうだよ、見た目の事だよ馬鹿野郎


「ユキも知らないわよね?」

「残念ながら……特徴を教えて頂ければ似たような料理を知ってるかもしれません」

「特徴?……えっとね、色は黄色かな?」

「黄色?……ウン」

「それ以上はいけません。食材などは分かりますか?」

「じゃがいも、にんじん、たまねぎ、牛肉……後はカレールー?」

「最後の以外は入手出来ますね」


 あー……何か物語で似たような展開を見たなぁ、お宝を集める話で最後の一つ以外は簡単に入手できるって感じの。きっとかれぇるぅとやらが最大の難関なんだな


「……そのかれぇるぅは何処に売ってあるの?」

「……スーパー?」

「ふむ、トゥース王国のスーパー手強い町の事でしょうか」

「何でそんな所で限定販売してんのよ、まぁあっけなく入手出来そうで良かったわ」

「あ、ごめんなさい、待って下さい!えっと、スーパーというのは私のいた世界のお店の事で……」


 やはり難易度が高かった。ならばやるしかない……そのかれぇるぅとやらを私達で作るのだ!主にユキが!!


「何か理不尽なことを考えませんでした?」

「別に?ヨーコ、少しでもかれぇるぅの情報を頂戴。作れそうなら作るわ」

「……沢山の種類のスパイスを調合してると聞いた様な?」

「何だ無理か、スパイスなんか胡椒しか知らないわ」

「諦め早いですね」


 名前も知らないスパイスを集めるなんざやってらんないわ、そんな事するくらいなら他の料理聞いて作った方が良い。だが一応今後そんな感じの料理に巡りあった時の為に特徴くらいは聞いておくか

 材料から察するにじゃがいもが要るって事は煮込み系とみた。似たような材料を考えるとシチューみたいなもんだろう


「かれぇってスープなの?」

「そう、ですね……スープというかご飯の上にかけて食べるのが一般的だと思います」


 液状の食べ物という事は理解した。だがご飯にかけるとは何だろう……ご飯と言えば料理全般の事を指す。つまり料理なら何でも合う、という事だろうか?どんな料理でも合うとか夢の様な食べ物だな……


「ご飯にかける、つまりメロンにかけるのですね?」

「何でだよ」

「……野菜?」

「ドレッシングみたいな感じね、メルフィはサヨと違ってまともそうな意見で宜しい」

「しかし食材から想像すると黄色いシチューの様なので野菜にはかけないのでは?」


 発想がユキと同じだった。流石は娘よ……普通に考えたら似たような料理を思い浮かべるよね

 うーむ……聞けば聞くほど謎の料理だ。何故にかれぇなんぞにこんなに悩んでいるのだろうか……


「あの、ご飯って言うのはお米の事でして……」

「おこめ?」

「お母さん、おこめという言葉をいやらしく聞こえるまで繰り返してみて下さい」

「何でだよ」


 ホントに何でだよ、一日に何回ツッコミ入れなきゃいけないんだボケ。

 それはともかくおこめである。かれぇとやらはおこめにかけて食べるらしい……やはり異世界、食文化が違うのが良く分かった。きっと作り方が難しい料理は過去の異世界人も伝えられなかったんだろう


「サヨは知ってる?」

「はい。符術を習っていた地域で米という作物を栽培していましたので恐らく……えっと、これですかね?」

「あ、それです」

「……これぇ?美味そうに見えない」

「む、これは毎日食べても飽きない食べ物ですよ!」


 怒られた。下手に出てたヨーコが怒鳴ったという事はそれほどまでに美味な食材なんだろう……この小さい粒々がねぇ……触った感じは固くて食べれそうにないけど


「炊飯器で炊けば美味しく食べられます」

「そのスイハンキとやらは何処にあるの?」

「……デ、デパートに行けば」

「流石のトゥース王国でもデパート手強い町なんて名前の町は有りませんね」

「どうせ異世界のお店の事でしょ、入手不可じゃない」

「ヨーコさん、そのスイハンキとやらではどの様に調理するのでしょう?」

「水を入れて……加熱?」


 なるほど……と、何やらコメを見ながら思案するユキ。恐らくスイハンキが無いなら他の方法で炊けばいいじゃない、的な事を考えているのだろう。だがそんな事考えなくても調理は出来るはず


「何故ならサヨが食べたこと有りそうだもの」

「はい。お米の炊き方なら教えて頂いてます」

「ほぅ……つまり今日の献立はその米とやらか……異世界の者が飽きぬ味、楽しみなのじゃ」

「まだよ、異世界の者が9割以上絶賛するかれぇとやらも食べる」

「どうしましょう……いつの間にかハードルが上がってる……」

「異世界の食べ物なんてどうやって手に入れるんですか?お姉ちゃん」

「んなもん召喚すればいいじゃない」


 何言ってんだこいつ、みたいな顔をしたものが役3名。誰とは言わないが後で制裁を加えるとする

 簡単に言ったが、たかが食べ物とは言え異世界からの召喚だ。恐らく普通に奇跡ぱわーを使えばとんでもない気絶タイムとなるだろう


「召喚魔法ならユキが知ってるでしょ?」

「知ってますけど……無理ですよ?」

「大丈夫、魔力のショボいユキに頼む訳じゃないわ。あなたは途中までをやってくれればいいのよ、仕上げだけ私がする。要するに補助をやれってこと」

「しかし……」

「いいからいいから」

「ポリポリ」


 召喚に必要なのは魔法陣と魔力、魔力と言っても大量に必要だろう。普通の奴等なら何十、何百といった魔法使いを用意しなきゃダメなのだろうが、そこは私。優秀な家族もいるし足りなきゃ精霊に頼めば良い。よって私が支払う代償は召喚する対象を指定する事のみ、イケるイケる


 ちなみにポリポリ音は小腹が空いたメルフィがきゅうりを食べてる音だ。一人だけ全く我関せずという態度だが未知の料理に一番やる気を出しているのは実はこの娘な気がする


「という事でちゃっちゃとやりましょう。面倒だから異論は認めないわ」

「はぁ……」

「まぁ心配するなユキ殿、ワシらが補助すればたかが食材程度ならさほど代償もあるまい」

「私も食べたいのでサポートしますよ、召喚で一番重要なのは魔力……仮にも大精霊が手伝ってくれるのですし大丈夫ですよ」


 皆の説得により案外早くユキが折れた。まぁ言っても聞かない事が分かっているから最初から大反対という訳では無かったのだろう。

 了承したらすぐに準備に取り掛かった。魔法陣とか丸の中に星のマーク描いて終わりだろうと思ったがそんな事無かった。中にも外にも読めない字で何か書いていき、よく分からん宝石っぽいアイテムを一定間隔で置いていく。食材を召喚するだけなのだがやたら大掛かりだな……これは準備にしばらくかかるかもしれない


「ちい姉」

「なに?……あぁ、アリスは食べられないんだっけ?残念だけど諦めなさい」

「いいの?」


 何がいいのだろう……まさかたかが食材の召喚で一生気絶とか有り得るのか?

 いや、すかぽんたんのアリスがそんな事分かる訳ないし、私は何となくそこまで気絶しなくて良いと予想している


 しかし、いつもアホみたいに笑顔のアリスにしてはやたら真面目というか……厳しい顔で私を見ている


「やれやれ、貴女も心配性ね。あれだけ補助があれば大丈夫だって」

「私が言ってるのは次の還す方だよ」

「……」


 ……oh


 この無邪気な娘を甘く見ていた。ユキもサヨも誰も気付かないであろう私の考えはアリスにはバレていた

 今回の食材召喚なんていわばただの練習。どれくらいの代償で済むのかおおよその目安にする為の実験である。何故にそんな実験が必要なのか?そりゃあ……もしかしたら還さなきゃいけない存在がすぐそこに居るからだ


「お見事、ユキでも分からなかったのに良く気付いたわね」

「人と物じゃ支払う代償は全然違う」

「でしょうね、生きてる者と無機物だもの。でもあれは死者よ、多少はオマケしてくれるんじゃない?」

「いつの間にお人好しになったの?」

「なってないわ。もしかしたらあの幽霊が私に御礼に元の世界に還す、くらいの何かを与えてくれるかもしれないじゃない」


 それにしてもアリスは何をプンスコしてるのか……姉を気遣う妹心故に、とか?


「……ちい姉は代償を甘く見すぎ」

「ん?」

「何でもない。あーあ、ヨーコはちい姉の玩具にはなれなかったかぁ」

「ゲスい事言うわね。私にはマオを筆頭に遊び相手ならいるから要らないわよ」

「なら私とも遊べー!」


 アリスと遊ぶと憑かれそう、ではなく疲れそうだもの。

 準備をしているユキ達の邪魔になるからあっちで一人で遊んでろ、と言ったら「一人遊びとか……ちい姉のエロ幼女!」と、謎の罵声を浴びせつつ去っていった。むしろお前の頭のがエロいだろ


「でも気に入られてるとはいえ過剰な心配っぷりね。そんな長い付き合いでもないし、うーむ」



☆☆☆☆☆☆


 食材を異世界から召喚する、にしては中々に大げさな魔方陣が完成した

 魔法陣の周りには私の代わりに魔力を提供する補助役達が取り囲んでいる。ちなみにどうせ食べるだろうかとクソ女にも参加してもらった。ほぼヨーコから貰った力頼みとはいえ一応悪魔の力もあるので多少は魔力を持っているからだ

 もちろん断固拒否の体制だったが働かないならかれぇはやらん、と言ったら渋々従った。やはりヨーコの故郷の料理を食べたかったのか


「私もお手伝いするのですか?」

「もちろんよ。私はかれぇるぅとやらを知らない、貴女には呼び出す対象を念じてもらうわ」

「念じろと言われても……実際に召喚するのは貴女ですし」

「貴女、じゃなくてフィーリアと呼んでも構わないわ、ペドは許さん。それと何も問題は無い、貴女が頭に描いた情報を奇跡ぱわーが勝手に読み取って召喚してくれるハズ」


 そういや自己紹介したっけ?と思って今更ながらの各自の紹介はすでに済んでいる。普段があまり素性をバラさない様にしてるから教えなくてもいいのだがヨーコ達ならまぁいいだろう


 さてさて、いざ異世界からの召喚だ

 食材とはいえたったこれだけの人数で異世界の召喚とか他の魔法使いが聞いたら嘲笑必須だろう


「じゃあやるわよ?」

「いつでもどうぞ」

「ヨーコ、私と一緒に魔法陣の中に立ちなさい、真ん中じゃなくていいわ」


 というか真ん中に現れる

 ユキが地に描いたのは通常の召喚用の魔法陣、異世界から召喚の魔法陣とは大分違うだろうがそこは奇跡ぱわー、何事もなく召喚するというご都合主義を発揮してくれるはずだ


 右手に奇跡すてっきを持ち左手はヨーコと手をつなぐ。私を通して奇跡すてっきは情報を読み取りそれを呼び出すという簡単なお仕事だ


「ヨーコ、イメージ出来た?」

「はいっ」

「宜しい。では命じましょう、かれーるーこーい」

「軽っ!?」


 参加してない野次馬からツッコミが入ったがちゃんと発動はした。何故なら魔法陣がくっそ眩しく輝いているからだ

 ……これってフォース王国に見つからないだろうか?気付かれる前にさっさと来いやぁ!


 とか思ってる内に魔法陣の中央でより輝く四角の物体が現れる。大きさは案外小さいがこれがかれぇるぅなのだろう


 ……マジで召喚したのか。別世界の物体を、この私が。異世界嫌いの私が

 想いの力で発動する奇跡ぱわー、異世界の物など召喚するか馬鹿野郎って心の底では思ってるんじゃないかと思っていたが、そうか……何だかんだで案外私は異世界をそこまで嫌ってないのかもな、それとも食材相手だったからか


「……起きたら、ヨーコ絶賛のかれぇを食べるのを楽しみにしてる」

「お疲れ様でした。ゆっくりお休みくださいませ」


 すでに私はユキの膝の上に倒れている。

 ここからが本題だ。あんな小さい物体を召喚するのにどのくらい気絶するのか……時間によってはヨーコから元の世界に還してと懇願されても断固拒否だ

 しかし、この感覚だと短時間で済む気がする。これで万が一、予想が当たればヨーコに借りが出来た場合も安心だ。まぁ私に借りを作らせるのは困難だけどね


 あー、そんな事よりかれぇ食べたい

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