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幼女、戦場を見る

「何か寒いわね」

「夏も終わりですかねー、まぁ標高はさほど高くないとはいえ山の中ですからそれも関係しているのでしょう」

「先ほどまでの戦闘するって雰囲気はどこいったのじゃ」


 と言われてもなー

 確かに戦う気満々だった、というかユキ達に戦わせる気満々だった。しかしいざ戦おうって時に乱入者が現れて獲物を横取りされたのだ。二度も獲物を横取りされるとは腑抜けたもんだ


「……」

「「「もきゅっ!」」」

「集団フルボッコが終わった様ですよ」


 今回の乱入者はもっきゅん一同だった。流石は紳士、痴漢行為を見逃すことはなかった


「ノータッチ精神を貫く紳士の前で尻を触るなんて愚行するからダメなのよ」

「いつからそんな設定付いたのですか……」

「しかし悪魔のくせに集団とはいえBランク程度の魔物にやられるとは雑魚い」

「悪魔だからって強いとは限りませんよ」


 そうかも知れんがさっきまでの威勢はどうしたってくらいの弱さだが……


「今回はお遊び無しで相手をしよう……ぶふぅっ!ダッサ」

「これは恥ずかしい」

「肉体的苦痛の後は精神的か……鬼じゃな」

「……ぐぬぬ、魔物を手懐けていたとは誤算……数の利からして負けは覚悟していたがまさか魔物に邪魔されるとは不覚」


 生きてはいたようでヨロヨロと立ち上がって言い訳を始めた。雑魚にはよくある事だが

 てかもっきゅんが一緒にいた時点でおかしいと気付かないのだろうか


 しかしホント寒いな……もう暑い時期もすぎて今度は寒い日々が始まるのか……あー、馬車の快適空間が恋しいなぁ。あの悪魔の青色を見ていたらいっそう寒い気がする

 何か思考が大分戦闘から逸れてきた。悪魔の相手が適当になってきた証拠だな


「めんどっちくなったから逃げるなら逃げていいわよ」

「敵に情けをかけるとはお姉様らしくありませんね」

「敵にすらなってなかったって事じゃろ」

「なるほど」


 そんな事より戦争見ようぜ、という事で新展開でもないかと目を戦場に戻す……というか見る前に邪魔が入ってたっけ。どれどれと遠目の魔法をかけてもらって覗くと門を突破せんと攻撃をしかける兵士と防壁の上から迎撃をする兵士達が見える

 攻める側のが数が必要とは聞くが、確かに守る方が有利だな。防壁の上からだとただの石ですら武器になるようで落ちた石で死んだと思われる兵士も見える。梯子をかけて侵入を試みる者も居るが同じく石か弓矢で射抜かれてしまう……兵士の数が多い国はこういう迎撃が厄介だな


「転移で入ればいいのに」

「ですから転移は使える者がかなり少ないと」

「そんなレアなのにウチは二人も使えるとかこのパーティは何を目指してるのよ」

「知りませんよ」


 しかし偽者、シリアナなら転移使えるじゃないか……まぁ完全にペロ帝国の味方って訳じゃ無い様だろうからわざわざ使ったりしないのかもしれない。人間同士の醜い争いを見るのが楽しいって感じしてたし


 開戦から結構日にち経ってるのに未だに国内に侵入出来ないとは確かに戦争ってのは時間がかかるな


「あ、あそこにちい姉好みの人間がいるよ」

「いつ私の好みを知った……どれどれ」


 アリスの指差した先をどいつだと探して一人だけ兵士っぽくないのを発見した。多分アリスが言っていたのはアイツだろう……性別は女


「別に私は女好きって訳じゃないんだけど」

「……え?」

「後で馬車裏に来なさい」


 だが確かにこの戦場では目立つ奴だ。服装は何故か神官の様な格好、身長はユキより若干低い程度、髪は白い……サヨに言わせるなら灰色に近い銀だっけ?鎧を着た兵士に囲まれているから余計に目立っている。そして武器は見覚えある杖……


「……てかあれ、偽者じゃない」

「そうなんですか?この前見た様なサヨさんっぽい姿じゃないですね」

「あの姿は、創造主……」

「……それか、あれは前に見た事ある先代の格好か」


 サヨの偽者の次は先代の偽者ときたか……髪の色とか全然違うけど。偽者というかただのなりきりだな

 そういえばアナルババアと初めて会った時にサヨを見てもシリアナと勘違いする事は無かったな……つまり今の姿がペロ帝国のシリアナとして今まで過ごしてきた格好なのだろう

 どれが本当の偽者の姿なのか全く分からんな……


「私、復活。おい君達、敵を放って高見の見物とはいい度胸じゃないか」

「もっきゅん、頼むわ」

「分かった分かった、待ちたまえ黄色い生物達よ……私は悪魔、そして君達は魔物……同じ魔に属する者としてここは穏便にいこうじゃないか。そもそも何故人間の味方をするのか私には」


 悪魔は説得を試みた


 もっきゅんは無視して殴った。悪魔は再び集団リンチされている


 脳内で実況するならこんな感じだな……


「無様すぎて笑う気も失せるわね」

「結局あの青いの何しに来たの?」

「それはアイツに聞きなさい」

「面倒だからいいや」

「おー……何かお姉ちゃんが二人いる感じです」

「好奇心は有るのに行動するのがダルそうな所がですか?」


 アリスと同類とかやめてくれ


 と会話している時に若干大地が揺れた。地震ではなく、どうやら戦場の方で派手な魔法か何かを撃った奴がいるようだ……言うまでもなく偽者だろう

 下を見ればこれまで長いこと守ってきたであろう防壁の門があっさり破られている。たった一人強者が参加しただけでこの様とはフォース王国残念だな……いや、まだ実験体共は参戦してないのか


 どうせ一番大事な城か研究所を守っているのだろうなぁ……これがヨーコ達がさっさと突入出来ない原因の一つでもあるか

 ペロ帝国の兵士が王都へ突入した後にどさくさに紛れて同じく潜入する手はずだっけか?このままペロ帝国が防壁すら突破出来ずに敗れたら、と思っていたがあの偽者のおかげでその心配は無さそうだな


「おー、突破しましたよ」

「何じゃ、たった一人増えただけであっさり突破するとは……最初から参加しておれば被害も少なかったじゃろうに」

「そうですね。まぁあの女はペロ帝国に対する忠誠心は無さそうでしたから兵士がどれだけ死のうが関係無いのでしょう」

「……創造主の様に振舞いたいのでしょう、あの方なら他人の命などどうでもいいと思ってるでしょうし」

「あ奴に創られたとはいえ、あんな外道を慕うお主らをワシは信じられんのじゃ」


 先代の悪口はそこまでだ。いや、もっとやれ


 しかし……先代の様にぃ?


「アホらし」

「あら」

「先代ならどんな理由があろうと他人の下についたりしないわ。常に上から見下すのが先代よ、最強にして最低、人間失格なのが先代。2回しか会った事しかない私でも分かるってのに……アイツは偽者にすらなりきれないクズ、ゴミ、うまのふん、つまりぺけぴーのうんこよ」

「……ぺけぴーが泣いてますが」

「悪かったわ、ユニクスのふんだったわね」

「泣く理由はそこじゃ無いと思います」

「子孫にまでこの言われようとはの……ざまぁみろじゃ」


 ともあれ門が開いた事で戦況が大きく変わった。ペロ帝国の兵士達は我先にと門を突破していく……この調子なら隠しだまである実験体の投入も早くなりそうだ


「じゃあ私達は王都でヨーコ達と合流して見届けるとしましょう」

「わかりました」

「もっきゅん共、いつまでも遊んでないで行くわよ」


 従順な僕と化したもっきゅん達は素直に暴行をやめてこちらに集まってくる。魔物がみんなこうなら楽だけどなー


「ふー、待ちたまえ諸君」

「男悪魔って回復早いの?」

「ギャグキャラは種族問わず早いです」

「失敬なメイドだな、口の悪い主にしてこの従者有り」


 言い終わる前に悪魔の上半身と下半身が切り離された

 ……こんな最後でいいのだろうか


「お母さんの悪口は聞き逃せません」

「酷い死に様もあったものですね」

「全くだ。おちおち冗談も言えぬ」


 生きてた。よく喋れるな……喋ると言えば奇跡ぱわーを食らっておきながら普通に喋れているのも変だな


「よっこらセクシー」

「わ、謎の掛け声と共に上半身と下半身が一つにっ!」

「実況しなくていいわ」


 不死身かこいつは……む?確か不死身みたいな存在を本で読んだ。吸血鬼だっけ?リディアの取り巻き二人が確かそうだ、不死身か知らんけど


「あなた吸血鬼?」

「違うぞ、ただ丈夫なだけの悪魔だ」

「真っ二つにされてどこが丈夫なのかと、私の力を無効にして普通に喋ってるのもおかしいわ」

「なに、不死身ではない……先程も、以前貴様のせいで喋れなかった時に会った女にもちゃんと殺されている、ただ死んでも生き返るだけだ」

「何だ、ちゃんとクソ女に殺されてたのね」


 すげー……実際見てなかったらとんでもない妄想野郎だが、今しがたこの目で再生するのを見ていたので嘘ではない

 奇跡ぱわーの効果は一旦死んだ事によって解除されたのか……便利だな、ヤバくなったら死ねばいいのか


「殺しても生き返るとは困りました。どうやって消滅させるか」

「いや、何故ワシらを襲ってくるのかまず聞くべきではないのか?」

「嫌よ、長かったらどうするのよ」

「話の途中で転移すればいいじゃん」


 その発想は無かった


 流石はアリス、考え方が私達より頭一つズレている。本で律儀に敵の身の上話を聞いている主人公達が馬鹿みたいだ


「そうね……本の読みすぎで話は最後まで聞く、何て概念にとらわれていたわ」

「お母さんは元々長い話は聞いてられない方ではないですか」

「何だかんだ聞いてたじゃない。よく考えたらペラペラ喋ってる奴って隙だらけだし」

「そうそう、話の途中で攻撃、逃走こそが私達だよっ!」

「不意討ち イズ ベスト」

「なぜ横文字」

「お前達は近年稀に見る外道だな。ここまで精神が腐った人間はそうはおるまい」


 ルリの評価が下がってきているが問題無い。あの心優しかったマオも最近おかしくなってきてるからいずれルリも外道寄りになるだろう

 マオには外道になって欲しくないと思った事もあったがありゃ嘘だ。この世の中優しさなんかじゃ生きていけないのだ


「本音はすでに教育を間違えてしまって矯正するのが面倒くさいからだけど」

「何の話ですか?」

「姉を目標にしたのね、可愛い妹だこと」

「ホントに何の話ですか?」

「こっちの話よ……さて、死なない便利なストレス発散悪魔に聞きましょうか、なぜ私達を狙うのか」

「先程までの会話を聞かされて話す気になると思うのかお前たちは」

「じゃあバイバイ」

「理由は二つあるな」


 結局話し始めた。こちらはいつでも話の途中に攻撃か離脱できる様に準備をしておく

 ブルーは大げさな仕草をしながら熱弁し始めた……悪魔ってこんな奴が多いイメージだ。劇団種族と言っても過言ではない


「一つ目は……お前達、少し前にある女悪魔を殺しただろう?」

「違うわ、燃やしたのよ」

「一緒だ馬鹿者め……アイツはな、今の私の生きがいだったのだよ」

「恋人?それとも嫁さん?」

「ストーキングターゲットだ」

「サヨ、転移」

「まぁ待て待て待て待て」


 誰が待つか真の馬鹿者め

 すでに真面目な展開は望めなくなったのでここで去るが良し。私の人生の貴重な時間をコイツに使うなど許されない

 しかし転移しようがコイツは追ってくるだろうから結局さっさと始末しないといけないのも事実……今は再びもっきゅん達に袋叩きにされているが、死なないならどうしようもない


「飽きずに聞きたまえ。まずは何故私がこの様に不死の存在になったかだが……あれは私もまだ美尻の少女と同じくらいの年の事だった」

「お姉ちゃん」

「褒められてるんだから良いじゃない」

「…………」

「その頃の私は人間達と同じく学び舎で勉学に励んでいてな、その中でも特に優秀な頭脳を持った将来有望な悪魔だったのだ」


 何故か自慢が始まった


 何か長そうなのでユキに頼んでテーブルと椅子を出してもらい腰かけてから適度に聞き流しつつルリに淹れてもらった紅茶を嗜むことにする。うーむ……ユキの淹れる紅茶は度々味が変わるのだがルリの紅茶はいつも同じで飽きるな……覚えた味しか創れないのだろうから仕方ないのだが。美味しい事は美味しいけど


 これは何か考えなければならない。ユキから色々教えて貰えばいいのだが、出せる味がかなり有るしそれならユキが淹れればいいんじゃね?という事になってしまう

 しかし豊富な種類のジュースが有るがマオ以外あまり頼まないし需要が少ないのでドリンクバーという名の紅茶係りなルリが拗ねるのが目に見えている。まぁ液体系の調味料係りとしては重宝されるけど


「……聞いているのかね?」

「ルリの存在価値の低さなら分かってるわ」

「……ぇ?」

「冗談よ、ルリ万々歳。……たった一言で涙目とは打たれ弱いわね」

「ふむ、幼女の涙目は好物の一つだが今は私のターンだ」


 結局聞いてなかったので何の話か忘れてしまったが、数分聞いて長引くようなら退散しよう。ヨーコ達の所へ転移してクソ女に押し付ければ解決


「当時の私はまだ若かった……精神もな。他の悪魔もだが男悪魔は女にモテない、女悪魔は好みを人間を攫っては子供を作り子孫を残す。ならば男はどうすればよい?襲うしかないじゃないか」

「急に何の話よ……そんな肌の色じゃキモいんだから仕方ないじゃない」

「そう、何故か同族である女悪魔もそう言うのだ。人間と交わって様が産まれる男の悪魔は皆こうだ……憎い、男にだけ酷い仕打ちをする遺伝子が憎いっ……悪魔の男にモテ期が無いとか酷すぎるっ!」

「ざまぁ」

「お前は本当に容赦無いな。……だがモテ無さ過ぎて打ちひしがれていた時、私はある一言を学び舎の休憩時間にお喋りしていた女悪魔の連中から耳にした」



『この前さー、吸血鬼を見たけど何か格好良かったよ』



「という事で不死になってみた」

「どうしてそうなった」

「流石に種族の壁は越えられぬ……吸血鬼と言えば不死、普通の悪魔なら無理だろうが私は優秀だったので何とか不死になる方法を見つけ実行した。それがもう数えるのも面倒なくらい昔の事だ」

「あっそう。襲ってくる理由言わないなら帰っていい?」

「分かった、言おうじゃないか。結論としては不死になった所でモテるわけ無かった。ただ終わる事の無い長い時間を永遠に生きる羽目になっただけだった。いつしかピンクロータ君に襲われる女を見ることだけが楽しみになっていた」


 急かしたら一気に話が過程をすっ飛ばして変態化した話まで飛んだ。話してる本人が至って真面目に話しているのが何とも反応しづらい


「そして運命の相手に出会ったのだ……そう、お前達が殺してしまった女悪魔だ。実に触手が似合う女だった」

「何でお姉ちゃんが出会う人は変な人が多いんですか?」

「あ?私のせいだって言うの?葱をぶっ刺すわよ?」


 どこに、とは言わない


「というか今更だけど殺したのは私達じゃ無いわよ。……ほら、あそこで無双してる神官服着た女が犯人よ、狙うならあっちを狙ってちょうだい」

「こっそり見てたから知っておる。だがアイツは問答無用で襲ってきそうだから敢えて矛先をお前達にした。時には妥協も必要である」

「威張って言うなクソ悪魔」

「まぁ長年目を付けていたターゲットを奪われたのは癪だが、お前達……いや、お前を狙った本命の理由は別だ」


「外道な少女よ、お前なら私を不死から解放出来るのだろう?」


 ……なるほど、私を見る目から察するに確かに本命はこっちか


「こんなか弱い少女にそんな事出来る訳ないでしょう?」

「出来るだろう?私の声を封じた謎の力で」

「私が出来るのは簡単な事だけよ」

「誰にも解けない封印を解けるのだろう?不死から解放するより難しい事ではないか」


 ……ふむ、メルフィの事か


「ストーカーは厄介な情報を知ってるから困るわ」

「お前達が廃墟に来た時に私を無視して勝手に話し始めただけではないか」


 あー……そう言えばあの時居たっけなぁ……くそぅ、クソ女に殺されるまでは予想通りだったが、まさか不死で生き返るとは考えて無かった。

 余計な情報を知られてはいるが、幸いこのことを知っているのは恐らくこのブルーだけだろう


「何故なら孤独なぼっちだからよ」

「悪かったな、ほっとけ」

「あなたの頼みはお断りよ、不死から解放なんて代償が酷そうだもの。考えたくもないわ」

「……そう言えばあの時お前は急に意識を失っていたな、そうか……あれは代償か」

「察しの良い者ほど早く死にますよ?」

「そう睨むな侍従の娘よ……お前達相手に力ずくで頼もうなど無理な事は分かっておる」


 ならなんで襲ってきたし


「何故襲ってきたのか?……とでも考えてそうな顔をしておるな」

「その通りよ」

「……ついカッとなってやっただけだ!」


 という捨て台詞を吐いた後に踵を返して逃げていった。意味が分からん

 意味不明すぎて逆に怪しい……自力で不死になれる頭脳を持った奴がカッとなっただけで襲ってくるわけが無い……例え長く生きすぎて変態になった奴だとしてもだ




「というのは嘘だよ君。何故襲ったか?それはお前が常に抱っこされて守られてる状態だったからだよ」


 背後から声が聞こえた

 と同時に縄の様な物で縛られる、なるほど……意味の分からない襲撃は私を抱っこから降ろす為か。影から影へ移動できる事を失念していたとは情けない


「優雅に紅茶を飲んでた自分を恨むのだな」



★★★★★★★★★★



「何処に潜んでるのかと思えば山の中なの?さっきまで居たし飽きたわ」

「あ、お久しぶりです……って何で魔物も一緒に」

「そこまで久しぶりって訳じゃないでしょ。もっきゅん達は味方よ、女性に優しい紳士だから安心して。役に立ちそうだから私がわざわざ仲間にして連れて来たわ、嘘だけど」

「あなたも暇な奴よね」

「黙れクソ女。……さっき防壁の門が突破されたわ、一人桁違いの化け物が居るから長くても数週間か一ヶ月でペロ帝国の兵士が王都まで来るんじゃない?」

「……分かりました」


 まだまだ時間あるしベレッタで遊んでいよう。と言ってもクソ女と違って良い娘なので酷い意味で遊ぶという事ではない

 ここは山だし、ついでにマオを誘って山ならではの遊びをして時間を潰そうという考えだ


「ねー、そのゴミはなぁに?」

「ストーカーで女の尻が好きな変態よ。この私を襲った償いとしてヨーコ達の為に囮にでもなってもらう事にしたの」

「……役に立つのですか?」

「これでも不死だからもしもの時に身代わりに使っても良し」


 今はボロボロのゴミと化したこの悪魔、散々勝ち誇っていたくせにこの様である

 私の後ろを取って拘束したまでは良かったが、生きた髪飾りであるマイちゃんの事には気付かなかった様で至近距離からマイちゃんアタックを食らってそのまま意識を失った

 で、終わる事はなく私に手を出した事で怒りに怒った家族ともっきゅん達から壮大なリンチを食らって今に至る。どうせ死なないからと手加減無しでボコっていたが、遠くに居るとはいえ強大な力を持った偽者に気付かれちゃマズイと止めた、やるなら転移した後でやれと


 言ったら適当な位置に転移してリンチが再開された。私は何も言わなかった


 近くで繰り広げられている惨劇を無視してマイちゃんを髪飾りに擬態するのは使えるな、とか考えていた。リディアの御守りが有るが拘束されるとどうしようもない……普段は抱っこで守られつつ、ユキが戦闘中に不意を突かれてもマイちゃんが対処する……おお、良いな


 言ってなかったマイちゃんへのお礼を言ってしばらく処刑の様子を眺めていたのだが、流石に終わる気配の無いので止めた

 その後ヨーコ達のところへ転移したと。復活したらどうせまた来るからとゴミになった悪魔を持ってきたという事である。ついでに扱き使おう


「さてヨーコ……いよいよね」

「はい……異界の地に住む人間達への反逆をついに……」

「そう言うと格好良いけど、実際はおっぱいの処分よね」

「……言わないで下さいよぉ」

「ふふん、安心していいよヨーコお姉ちゃん。この私が付いてるからねっ!」

「ふふ、ありがとう」


 ……仲良くなってるなー。同じ身勝手な実験をされて者同士だからか

 この二人なら研究所を破壊する事は出来ると思う……実験体が何体か居るだろうがヨーコの敵ではないだろう、物理は効かないし恐らく魔法も通用しない。しかしヨーコは生前と変わらずあの理不尽な力で攻撃が出来る、幽霊って割と卑怯な存在じゃなかろうか


 だがここに来て問題が起きた。


 あの偽者だ。仮に私と似た力を持っていたらヨーコでも危ない……というか奇跡ぱわーなら代償はかなり必要だろうがヨーコを消滅させるなど余裕である。仮にヨーコと偽者が出会ってしまったなら勝つのは偽者だと思う。

 仮にそうなっても別に見殺しにすればいい、いつもの私ならそうする。けど……相手があの偽者なら、フィーリア家に関わる者なら話は別だ


「邪魔する様なら殺しましょう……ムカつくから。そう、私がムカつくからよ、決してサヨを馬鹿にされたからじゃないわ」

「呼びました?」

「呼んでないわよ、山の中は肌寒いしさっさと馬車に入りましょう。ぺけぴーなんてすでに寛いでいるハズよ」

「そうですね、ふふ……」


 こんにゃろう……聞こえているじゃないか、くそう

 口に出してしまった事を後悔しながら馬車に入る……頭の上でパタパタとマイちゃんが慰めているかの様に羽を動かしていた

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