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第7話 木梨鷹子

「艦長、間もなく潜望鏡深度です」

「了解」

潜水艦伊-19艦長・木梨鷹子(きなし ようこ)少佐は潜望鏡に取付き、腰を落とす。

それは同時に尻を突き出すセクシーな格好となるが、女性の、しかも露わなものとなれば尚更だ。

いや、露わにしているのは何も尻だけではない。彼女は身体の全てを惜し気も無く晒していた。

身に着けているといったら、僅かに脚元の短靴のみ。そう、全裸なのである。

では何故、彼女がその姿でいるのかは後述するとして、まずは彼女の言動を見る事にしよう。


「奴さんたち、出てくる様子は無さそうね」

木梨は潜望鏡を覗きながら、幾分気の抜けた様に呟く。

「残念ですね。必殺の魚雷を御見舞いしてやりたいところなのですが」

部下の砲雷長も応える。

「ま~ね。連中も本国の後ろ盾が無くなった今、おいそれとは出撃出来ないのでしょうよ」

「それにしても、本部の連中は人使いが荒いですね。アメリカ本土から今度はハワイ沖。

少しは休ませてほしいもんです。正月も何もあったものじゃ無い」

「そうかな? 私は割と満足しているんだ。この(ふね)の中なら、この格好で居られるしね。

軍装なんて堅苦しくていけないわ。それに貴方たちも一緒だし・・・」

彼女は潜望鏡を収納しながらクスリと笑う。

潜水艦乗務を考慮してなのか、髪はショートだ。

そして、只今洩らした屈託のない笑顔と全てを晒した肉体が、全体に若々しい印象を与え、

狭く陰湿な艦内にあって、活力剤かの様に輝いている。

彼女が艦長を務める伊-19をはじめとする10隻の伊号潜水艦は、

当初ハワイ~アメリカ西海岸間の偵察と通商破壊を目的に東太平洋に展開していたが、

アメリカ本土消失の報を受けて、急遽ハワイ近海に集結、真珠湾軍港の動向を探っていたのである。


姿無く忍び寄り、敵艦(戦艦や空母といった大型艦も含む)に魚雷を叩き込んで沈める。

この小をもって大を制すという潜水艦という艦種は、一見カッコ良く映る。

しかし、その報復として爆雷攻撃に曝された際には、ひたすら身を鎮めて耐えるしかないのだ。

しかも、攻撃が命中した場合は、乗員全員の棺桶とも成り果てもする。極めて脆弱といえた。

これは戦闘時の事であるが、平時においても過酷さは変わりない。

水中を航行するという特性上、水漏れには始終悩まされ、エンジンの廃熱は狭い艦内に充満する。

つまり潜水艦というのは、高温多湿が常なのだ。

とても身だしなみを整えて、清潔な格好で任務を遂行するなんて事は出来はしない。

故にそうであれば、裸であっても同じだろうと、彼女は潜水艦内では全裸で過す事に決めていた。

しかし、彼女の意気込みがいくらそうであろうとも、周囲の状況がそれを許すはずが無い。

普通はそう思うだろう。けれども潜水艦なら、いや、潜水艦だからこそ、それが可能であった。

何度も言う様だが、潜水艦の環境は劣悪だ。

それに加えて外国艦船に較べて日本艦船に共通する居住性の悪さが輪を掛ける。

潜水艦は例外なのではなく、殊更(ことさら)酷いという有様だ。

そんな環境下、敵からの攻撃に常に神経を張巡らせてなくてはならず、

長い時には数ヶ月、それこそ狭い艦内に身を寄せ合い、任務に就かなければならない。

この状態が続いていくと、自ずと潜水艦の乗員は位階の上下に関係なく、

全てが一つの運命共同体-家族の様相を呈してくる。苦楽を共にする様になるのだ。

これは潜水艦の乗員ならばこそだ。

だから、彼女が全裸でいても(よこしま)な想いをする者はいない。

いたとすれば、直ちに村八分となる。過酷な潜水艦内で、それでは生きていけない。

又、彼女もその身の全てを晒すという事は、それだけ乗員を信頼しているという証でもあった。

女性士官が大部分を占める海軍内にあって、機関科とこの潜水艦乗員だけが、

その過酷な内容もあって、男性士官が独占する数少ない部署である。

そんな中に身を投じた唯一無二の存在である木梨鷹子と、彼女が率いる潜水艦伊-19の乗員達は、

事実、日本潜水艦の中で断トツの成績を挙げていた。

史実において、日本潜水艦のエース・木梨鷹一はこの時点では伊-19に乗艦してませんが、

やはり空母ワスプ撃沈の殊勲艦ですからね。変更させていただきました。


今回、短くてすみませんorz

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