婚約者が男友達だと主張する令嬢との交流を強制してきたので
婚約者のジョン様がわたくしとの交流の場にご友人の令嬢を連れてきました。
わざわざ隣同士に座って腕に触れ合ったり目配せして笑い合ったりし始めたので顔をしかめてしまいます。それを見たジョン様が流行りの小説のような台詞を言い出しましたのでわたくし、はしたなくも目を見開いて驚いてしまいましたの。
「こいつは男友達みたいなもんでさ。お前も仲良くしてやってくれよ」
「よろしくね、メアリーちゃん」
「名前で呼ばないで頂けますか?」
「いいじゃないかそれくらい」
「うわー、綺麗な髪だねえ。」
「触らないでくださいまし」
「お肌もつやつや。いっぱいお手入れしてもらってるんでしょ?お嬢様って感じ〜」
「だから触らないでくださいな」
「減るもんじゃないし構わないだろ」
ヴァッサー様とおっしゃるご友人と離れようとしないジョン様に苦言を呈したところ男同士ならこれくらいの距離感は普通だ、友情を理解できない冷たい女、婚約者の友人と交流できないなんて非常識だなどと何故かわたくしが責められます。ジョン様とはこれまで順調に仲を深めてきたと思っておりましたのに、すうっと気持ちが冷めてゆきました。
そうしている間にもヴァッサー様はジョン様と肩を組んでわたくしに見せつけてきます。
「私ってサバサバしてるからか男扱いされやすいんだよ、メアリーちゃん」
「名前で呼ばないで下さいと先程から申し上げております」
何度も言っているのに伝わらないのは何故でしょう。ジョン様はわたくしたちのやりとりを見ても笑っているだけです。
態度を改めて頂くことは諦めた方がよさそうです。では最後に大切な事をもう一度確認しておきましょうか。
「ジョン様にとってヴァッサー様は男友達と同じで、他の男性のご友人と同じ扱いをなさっているということで間違いありませんね?」
「ああそうだ」
「やっと分かってくれた?」
答えが得られたので挨拶をしてその場を辞すと、急いで帰宅してお父様にジョン様の所業を訴えました。
「メアリー!婚約解消とはどういうことだ!?」
手続きが無事終わってのんびり過ごしていたら、ジョン様がわたくしのクラスまで突撃して参りました。
「どういうこともなにも、貴方様の言動を父に伝えましたらそんな男との結婚はやめるようにとおっしゃられまして」
「俺が何をしたというんだ!」
「お分かりになりませんの?貴方様はわたくしに男友達を紹介して、その方が勝手にわたくしの名を呼んだことを咎めず、髪や顔に触れることすら許容しろと仰いました。そんな方と結婚する事を父が危惧して婚約解消とあいなりました」
「ヴァッサーは女性じゃないか!」
「あの方の性別が問題なのではありません。貴方様は、あの方を他の男友達と同じ扱いをしていると仰いました。つまり貴方様は、男友達が自分の婚約者の名を呼び体に触れる事を許しているという事になります」
「男友達にそんな事はさせない!」
「そうなのですか?でしたら尚更、婚約を解消して正解でした。婚約者に嘘を吹き込んで優位に立とうとする方など御免ですもの」
「そんなつもりじゃ……」
「そうそう。もう婚約者では無いのですから、わたくしのことを名前で呼ぶのはおやめ下さい。それでは失礼いたします」
これ以上話す事もありませんし、さっさと次の授業に移動するとしましょう。
この件ではジョン様のお父上が情に厚い方で助かりました。婚約解消の理由としては弱いのに、ジョン様と信頼関係を築くのは無理だというわたくしの気持ちを大切にして下さいました。
それにしてもジョン様は何がしたかったのでしょうか。
わたくしに嫉妬させたかったのではとお父様は言いますしヴァッサー様を愛人にする布石だったのではとお母様は言いますが、そうならもっと上手いやり方があったと思うのですよ。
まあ正解はどうでもいいです。わたくしは自分の男友達が婚約者や妻に常識的な距離感で接することを望む殿方と、新たな縁を結ぶだけですから。
男友達と同じだっていう女の行動を咎めない奴って、男の友達がヒロインに同じことしても構わないって言ってるも同じだよね?と自サバ女系のお話を読んで思ったので勢いで書き上げました。
婚約解消の理由としてヒロインはジョンの女性関係は問題にしなかったので「彼女とはそんなじゃない。勘違いするな」の言い訳は通用しません。夫の友人からセクハラされても笑って見てるだけで助けてくれなさそうだから結婚したくないって主張です。
ジョン父は無理に結婚させても幸せな家庭は築けないだろうと婚約解消を受け入れました。
ジョンとヴァッサーが何をしたかったのかは作者にもわかりません。もう一度言いますが勢いで書いただけの話なので。




