師祖の後手 錬丹炉の奇跡
青野蒼斗は心拍数が上がった —— 午前 0 時が近づいていることを知った。この世に残された時間は、分単位で計算できる。
果然、この世には奇跡什么のない。
待っているのは死亡だけだ。
この瞬間、青野蒼斗の心は無限の不甘心で満ちていた。当然、こんな風に死ぬわけにはいかない —— 幼い時から両親を亡くし、師父に育てられた。銃林弾雨の中を駆け巡り、一つ一つの敵を打ち破ってきた。心の中に、そんな鉄血な豪情がないわけがない。青野蒼斗は小さい時から、自分が何か違うと感じていた。
もちろん、これは本当の「違い」ではない。誰でも一度は、自分がこの世界の主人公だと思ったことがあるだけだ。
特に青野蒼斗は敵を打ち破るごとに、この「主人公感」が強まった。夢の中でさえ、一夫当関万夫莫開の猛将になっていた。
今、城健朗から「天命者」だと聞かされて、この主人公感は一層強烈になった。が彼は更にはっきりと知っている —— 今晩が過ぎれば、すべてが無くなる。就算かろうじて生き残ったとしても、運気を奪われれば、自分はもう廃人だ。
青野蒼斗がどんなに考えても、城健朗たち三人は既に鉄門を開けて入ってきた。
月光が三人の身上に降り注いだ。城健朗は最も前に立ち、顔は厳しく青野蒼斗を無視した。吉田陽翔と龍玄に言う「錬丹炉の中に捨て込め」
「はい、主人!」二人は応えて、青野蒼斗の脇に回りこんで左右から挟み上げた。この二人体の高手に対し、青野蒼斗は全盛期でも掙けない。何況今は重傷を負っている?
その錬丹炉は高さ 3.5 メートルで、横に梯子が立てられていた。
青野蒼斗は吉田陽翔と龍玄に架け上げられ、最後に乱暴に錬丹炉の中に捨て込まれた。
ドン!青野蒼斗は激しく地面に叩きつけられ、全身がバラバラになるような痛みを感じた。
それに伴って、無限の恐怖が襲いかかった —— これは決して観客が孫悟空が錬丹炉に捨て込まれるのを見る感じとは違う。
青野蒼斗はこの中に無限の恐怖が隠されていることを知っている。城健朗の「錬成」が到底どんなものか分からない。
その後、錬丹炉の蓋が閉じられた —— 内部は完全な闇に包まれた。
青野蒼斗は中で、四周が丸い感触を感じて、手がかりがなかった。
突然、お尻が当たって痛いと感じた。すぐに手を伸ばして触ると、青野蒼斗は呆然とした。
クソっ、何これ?
自分が座っているのは……AK47 だ!最強の自動小銃で、36 発連射可能!
青野蒼斗は心の中で狂喜したが、すぐに違和感を感じた —— なぜ銃がここにある?クソっ、城健朗が俺を戲るの?青野蒼斗は AK47 を手に取って重量を量った。彼は銃に精通しているため、一触っただけで性能が良好で、弾も満タンだと分かった。
「違う、この銃は絶対に城健朗が置いたものじゃない。彼にそんな必要はない」青野蒼斗の頭は速く回転した —— 自分は重傷を負っている。就算 AK を持っても、局面を逆転できないことを知っている。
がそれでも、青野蒼斗の心に一筋の希望が生まれた。確かに望みは薄いが、待って死ぬよりはましだ。
なぜ銃がある?
青野蒼斗の頭は非常に聡明だ —— 瞬く間に思い巡らせた。
やがて、青野蒼斗は亡くなった師祖を思い出した。
青野蒼斗は目を輝かせて心の中で思った「そうだ!城健朗は確かに厉害だが、師祖こそ玄衣門の頂点だ。城健朗が占い当てられるなら、師祖が占い当てられないわけがない。きっと師祖が俺のために銃を残したのだ —— 自分の仇を討ってもらうためだ。がこの銃だけでは局面を逆転できない。師祖は俺が重傷を負うことも占い当てているはずだ」
青野蒼斗は心の中で思った「師祖が俺の重傷を占い当てているなら、きっと他の手配もしているはず。也许、この錬丹炉の中に他のものがある?」こう思うと、すぐに四周を摸索し始めた。
すると、本当に小さな箱を見つけた —— 指輪を入れるような小さな箱だ。青野蒼斗は箱を手に取って心の中で狂喜した。この箱の中はきっと師祖が残した薬だ —— 自分の傷を速く治すための丹薬だ。
確かにこのような丹薬は神話のようでバカげているが、青野蒼斗は玄衣門が本来不思議な存在だと思っている —— 彼らの身上で何が起きても不思議ではない。
パンドラの箱を開けるような興奮感を抱えて、青野蒼斗は心から敬虔に箱を開けた。
錬丹炉の中は闇だが、青野蒼斗の視力は強靭で暗闇の中でも物が見える。箱の中には果然として一粒の丹薬が入っていた。
その丹薬は金色をして、仙俠小説の金丹のようだ。青野蒼斗は鼻先に近づけて嗅いでみたが、何の匂いもしなかった。
「この小さな丹薬で自分の傷が治るの?」青野蒼斗はすぐに冷静になって疑問を抱いた —— まるで天方夜譚だ。
が青野蒼斗はこれ以上考えるのをやめた —— 反正今の状況より悪くなることはない。
捨て身で挑むしかない!
こう思うと、丹薬を口に運ぼうとした。
がすぐに手を止めた。
突然冷汗をかき —— これは城健朗の罠じゃない?
城健朗は非常に聡明だ —— 彼の小宿命術がこの金丹の補助を必要とするのじゃない?この一切が幻覚で、小宿命術の一種じゃない?
青野蒼斗は一時的に疑わしくなった。
3 秒間考えた後、金丹を口に入れて噛み砕き、腹の中に飲み込んだ。
クソっ、杞憂症になるな。多疑な毛病を犯すわけにはいかない。城健朗が俺に丹薬を飲ませたいなら、こんな面倒な手間をかける必要はなく、直接無理やり飲ませればいいじゃない。
こう思うと、青野蒼斗は疑いもなく丹薬を飲み込んだ。
その後、胡坐をかいて静かに丹薬の威力を感じ始めた。
丹薬が腹の中に入ると、最初は何の感じもなかった。5 分後、腹の中が熱くなり、丹薬の薬力が発散し始めた。
その薬力は非常に激しく、強力だ。
青野蒼斗の体は極度に虚弱だったため、貪欲にこの薬力を吸収し始めた。薬力は全身に広がり、豊かな栄養が細胞に激しく吸収された —— まるで渇いた土地に甘霖が降るようだ。
本来、このような薬力は普通人では耐えられない。
普通人が飲めば、即座に暴死するだろう。
就算青野蒼斗が全盛期でも、この薬力に耐えられず経絡が破裂して死ぬだろう。が今、青野蒼斗は栄養が極度に不足している上に、体の底子が強靭だったため、丁度この薬力を吸収できた。
青野蒼斗の頭は清明になり、薬力によって血液が沸き上がった。細胞が激しく癒合し、再生しているのを感じ取れた。
青野蒼斗の強さは、全身に満ちた一筋の「気」によるものだ。本来は傷を負ってこの「気」が散ってしまい、血気を調動できなくなって強さを発揮できなかった。が今、再びこの「気」が凝集し、血気を引き連れて血管の中を奔れ始めた。
銃傷の部位で、青野蒼斗は猛然に筋肉を収縮させた —— その瞬間、銃弾が押し出された。その後、内臓の治療を始めた。絶え間ない栄養が内臓に注がれ、血小板の作用で血液が再生し始めた。
20 分後、青野蒼斗の内傷は奇跡的に治った。更に不思議なのは、折れた歯まで細かく生え始めた。
まさに骨をつなぎ肉を生やす、死人を甦らせる神薬だった。
しかも、その栄養と薬力はまだ奔れている。
青野蒼斗は大喜びした —— 今日、ここから逃げ出せると確信した。
あと 1 時間ここで修行すれば、全盛期まで回復できると思った。
クソっ、今度は AK47 を手にしている。就算吉田陽翔が 10 人来ても、俺は全部倒せる!
これは青野蒼斗の自信だ。
吉田陽翔は「銃神」と称えられ、射撃技術は神業だが、青野蒼斗の射撃技術も傭兵界では恐怖の存在だ。ただ青野蒼斗は普段銃に依存しないため、人々は彼の格闘技に注目し、射撃技術を無視しているだけだ。
以前、青野蒼斗と北条真绪が吉田陽翔と龍玄に直面した時、北条真绪が銃を持っていたが、青野蒼斗は彼女から銃を受け取る機会を得られなかった —— 吉田陽翔がその機会を与えなかったからだ。
その上、北条真绪の銃は性能が悪かった。就算青野蒼斗がその銃を手に取っても、吉田陽翔の相手にはなれない。
すると、午前 0 時がやってきた。
青野蒼斗は緊張した —— 陰陽の気が交替し、陽気が大盛りになるのを感じ取った。
外の城健朗は、錬丹炉の中で起きていることを全然知らなかった。城健朗はそれまで線香を焚いて心を落ち着けていた。錬丹炉の下に描かれた八卦陣図の上に座っていた。
この錬丹炉は既に空中に浮かび上がっていた。
八卦陣図は道家の高手が作ったもので、細かな構造が多く、磁場の力を調動できる。
城健朗はこの時、複雑な手つきをしながら、瞑想の中で感知した磁場の力を引き寄せ始めた。
様々な磁場の力が彼の強大な精神力によって調動され、首につけている龍玉を通じて八卦陣図の磁場の力と結びついた。
これらの力が融合して、強大な脳波の力になった ——
つまり精神力だ!
この瞬間、様々な運気や運命の糸、その他の不思議な磁場が城健朗の頭の中に浮かび上がった。
龍玄と吉田陽翔は、城健朗の手つきが激しく変化して馬車の輪のように速いのを見た。が一つ一つの手つきには不思議な律動があった。
伝説によれば、本物の道家の高手は脳域の神通の門を開け、精神力を実体化できる。そのような高手は、こんなに多くの道具を借りる必要はない。
この道家の説は聞き慣れないほど不思議に聞こえる。
が科学的な説明でも解釈できる。
人は生まれた時、脳細胞の開発率はわずか 4% だ。成長すると 10% まで上がる。12% まで開発できれば絶頂の聡明な人間だ。アインシュタインは 14% まで開発していたと言われている。
脳細胞は脳波を発生させる。
科学者たちは論証をしている —— もし人間の脳細胞の開発率が 20% に達せば、強大な脳波の力で万物とコミュニケーションが取れる。その時、脳波によって生まれる精神力は「法力」と呼ばれる。
もし脳細胞の開発率が 30% に達せば、法力で空中に磁場を凝集させて元神を形成できる。
伝聞によれば、脳細胞の開発率が 100% に達すると、人は小さな部屋の中にいながらも、法力で元神を凝集させて空を遨遊し、さらに無限の宇宙まで行けるという。




